作 者 |
山村正夫(やまむら・まさお) 1931年、大阪生まれ。49年、名古屋外語専門学校一年在学中『二重密室の謎』でデビュー。伝奇本格推理『湯殿山麓呪い村』、伝奇小説集の『陰画のアルバム』、ユーモア物の『逆立ちした死体』など作品は多彩。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『わが懐旧的探偵作家論』 |
初 出 |
昭和50年〜51年、『幻影城』連載。新稿三編を添えて51年に刊行。
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粗 筋 |
作品でしか窺うことのできなかった戦前戦後の探偵作家の人柄を伝え、より親しみを感じさせてくれる貴重な回顧の数々。若くして探偵作家としてデビューし、消長を繰り返した探偵文壇の動向をつぶさに見てきた著者が、親交のあった作家20人を取り上げ、その実像を明らかにする。 (粗筋紹介より引用)
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目 次 |
戦後探偵文壇の思い出の作家たち=序論 人生派探偵小説の異彩=朝山蜻一論 アリバイ崩しのトリック・メーカー=鮎川哲也論 アンチ・リアリズムの大御所=江戸川乱歩論 風俗派の奇人探偵作家=大河内常平論 王朝物探偵小説の開拓者=岡田鯱彦論 探偵文壇の錬金術師=大坪砂男論 関西本格派の鬼=香住春吾論 爬虫類怪異譚の創始者=香山滋論 探偵小説界の新感覚派=狩久論 芭蕉に挑んだ文学派の総帥=木々高太郎論 脱獄トリックの名手=楠田匡介論論 事件記者とトップ屋の名付け親=島田一男論 怪奇幻想の異端詩人=城昌幸論 戦後派本格探偵小説の驍将=高木彬光論 英文学者のフーダニット=千代有三論 伝奇時代小説と本格探偵小説の長老=角田喜久雄論 フランス仕込みの名人芸探偵作家=日影丈吉論 文学派きってのロマンの残党=氷川瓏論 探偵文壇の生んだ奇想小説の鬼才=山田風太郎論 怪奇ロマンの本格派の巨匠=横溝正史論 |
感 想 |
山村正夫が「私自身も実作にたずさわる作家であって評論家ではない。したがって、客観的な目で対象となる作家の本質を鋭く抉り出したり、厳正な価値判断を下して優劣を論じたりすることは不可能である。本書の題名を「我が懐旧的探偵作家論」としたのはそのためで、探偵小説の時代に青春期を過した私という作家の、いわば郷愁の作家論として読者に読んでいただければ幸いだ」と序論で書いているとおり、作家たちの過去のエピソードと業績を交えながら、作家論を語った評論集。ここで語られるエピソードの数々は、若くしてデビューし、以後も活躍し続けた作者ならではのものである。本作品の性格上、批判的な部分が影を潜めているのは少々残念ではあるが、探偵作家の人柄と作品を並列にして論じるには格好の一冊であろう。
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備 考 |
第30回(1977年)評論その他の部門。
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