作 者 |
天藤真(てんどう・しん) 1915年、東京生まれ。東大国文学科を卒業後、同盟通信記者。62年『陽気な容疑者たち』が江戸川賞候補作。64年「鷹と鳶」で宝石賞。『皆殺しパーティ』や『殺しへの招待』など長篇は数少ないがいずれも凝った作品。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『大誘拐』 |
初 出 |
1978年11月10日、株式会社カイガイ出版部から書き下ろし刊行。
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粗 筋 |
紀州随一の超大富豪・柳川家の女主人とし子刀自が、「虹の童子」と名乗るものに誘拐された。要求された身代金は何と百億円! しかも犯人は、金と引換えの場面をテレビで中継せよと捜査陣を煙に巻く。いよいよ身代金受け渡しの場面となるが、前代未聞の大事件はさてどんな結末に? (粗筋紹介より引用)
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感 想 |
「虹の童子」と名乗る誘拐犯。実は誘拐された方が全面協力。身代金100億円。テレビ生中継による被害者と家族との対面。身代金受け取りの世界生中継。 スケールの大きさと奇想天外な展開。テンポ溢れる文章。全編に漂うユーモアと暖かさ。家族愛や幾つかの社会問題に対する作者なりの視線。身代金の受け取り方法とその意外な結末。誘拐という犯罪を取り扱っておきながら、主要登場人物の誰もが悪人とはならず、それぞれ成長する。どこを見ても傑作という名に相応しい逸品である。結末付近で膨らみすぎた風船がちょっとだけ萎むような呆気なさがあるものの、それは些細すぎる傷だろう。 天藤真の作品としてはもっとも知られている作品である。今更分かり切った感想は書くまでもない。「週刊文春ミステリーベスト10 20世紀ベスト10」国内部門第1位に輝いたのも、当然の話なのである。 |
備 考 |
第32回(1979年)長編部門。
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