作 者 |
高木彬光(たかぎ・あきみつ) 1920年青森市生まれ。28歳の時『刺青殺人事件』でデビュー。『成吉思汗の秘密』『白昼の死角』『破戒裁判』『誘拐』など本格推理を中心に多数の作品を発表。本格派一の理論家でありながら神秘論者でもある。(作家紹介より引用) 1995年没。 |
作品名 | 『能面殺人事件』 |
初 出 |
『宝石』昭和24年4月号一挙掲載。
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粗 筋 |
次々と一族が死んでいく呪われた千鶴井家の当主泰次郎が、その行く末を案じて探偵作家高木彬光に善処を依頼する。だが、その翌日に泰次郎は密室で殺されてしまう。香水の微香漂う現場に不気味な鬼女の能面……。そしてさらに第二、第三の惨劇が続く。探偵の推理は果たして?(粗筋紹介より引用)
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感 想 |
冒頭で『アクロイド殺し』の犯人をネタバレし、「探偵が自分で犯罪を解決しながら自分の行動を叙述していく」形式であると宣言。全編が手紙と手記だけで構成され、高木彬光が狂言回しで登場。名門千鶴井家の人物が次々と死んでいく。振り回される検事と警察。密室殺人。能面に関するペダントリー。大好評を得た『刺青殺人事件』に続く第二作ということで、かなり力が入っていることがわかる。 ただ、力が入りすぎていて、トリックばかりが浮き上がってしまっている。作者のやりたいことばかりをこれでもかと詰め込んでしまい、それだけで推理小説を構成してしまったので、千鶴井家の人たちが次々に殺されていくというサスペンスが全く感じられない作品に仕上がってしまった。謎解きのカタルシスが全く感じられない。一部のトリックについては、怒る人は怒るだろうね。という私もその一人なんだが。トリックのための推理小説。アイディアだけにはお疲れさまでした、と言いたい。 この作品が探偵作家クラブ賞を受賞したのは、多くの文章で書かれているように、前作『刺青殺人事件』のインパクトが強かったからとしか言い様がない。トリックも含め、推理小説の歴史上に残る作品ではあるが、傑作でも佳作でもない。力が入った失敗作である。 |
備 考 |
第3回(1950年)長編賞受賞。
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