作 者 |
辻真先(つじ・まさき) 1932年、名古屋生まれ。29年NHKに入社。開局間もないTVの制作演出からアニメ脚本家に。ジュニアもの『仮題・中学殺人事件』を最初にミステリーを手掛け作品多数。旅、鉄道、温泉にまつわる本も多い。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『アリスの国の殺人』 |
初 出 |
1981年4月、「夢の図書館」シリーズの一冊として、大和書房より書き下ろし刊行。
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粗 筋 |
児童文学の編集を志しながら、はからずも漫画誌編集に携わる綿畑克二。夢のなかの『不思議の国のアリス』の世界でチェシャ猫殺害事件の容疑者にされて慌てていいると、現実世界では上司の編集長が殺されて大騒ぎ。交錯する夢の世界と漫画ジャーナリズムの現に翻弄され克二は……。 (粗筋紹介より引用)
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感 想 |
小説内小説などの多重構造、仕掛けなどを駆使した先駆者ともいえる辻真先の代表作。本作では編集者である綿畑克二が現実世界と仮想世界の両方で容疑者にされてしまうのだが、その仮想世界というのがアリスなどに加えてニャロメ、ヒゲオヤジなどの漫画キャラクターが登場する不思議な世界。そして現実世界では、辻作品ではおなじみのスナック「蟻巣」が登場。どっちがどっちなんだかわけがわからなくなってくるのだが、いつの間にか作者の腕によって丸め込まれてしまうのは、やはり読者の負けなんだろう、それも心地よい。 とはいえこの作品、読むのなら絶版である大和書房版を探すべし。この作品は、イラストがないとその面白さが半減する。権利関係もあるのだろうが、どうしてイラストも収録してくれなかったんだと問いつめたい。 |
備 考 |
第35回(1982年)長編部門。
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