作 者 |
北方謙三(きたかた・けんぞう) 佐賀県生まれ。学生時代に『明るい街へ』を『新潮』に発表したデビュー。1981年、長篇ハードボイルド『弔鐘はるかなり』を刊行し、男の生き方を追求しつづけている。時代・歴史小説も多い。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『渇きの街』 |
初 出 |
1984年、集英社より書き下ろし刊行。
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粗 筋 |
上得意の客に暴力をふるい、横浜の高級クラブのボーイを首になった25歳の川本高志は、喧嘩の遠因となった男・室田の仕事を手伝いはじめる。それはかなりヤバかった。だが高志は、熱く滾る内なるものに激しく衝き動かされ、体を張って、一直線に自分の道を切り拓いていくのだった。 (粗筋紹介より引用)
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感 想 |
1980年代の「冒険小説の時代」の代表的作家ともいえる北方謙三。メジャーデビューした頃の鮮烈な印象は忘れられない。とはいえそのイメージもせいぜい5,6年といったところだったか。毎年数冊の本を出していくうちに、その印象が徐々に薄れていったことは否定できない。それなりに題材なり主題なりを変えてきても、根本に流れるものが同じなのだから、どうしても飽きが来てしまう。途中で歴史小説にシフトを変えたのは、正解だったかも知れない。 この作品も、そんな冒険小説ブーム、というか北方ブームの中で書かれた作品。川本の若さともいえる破壊的な衝動を書いていることは間違いないが、この手の内容だと大藪春彦の初期短編の方が上かな、などと思ったり。作品を引き締める上で「老いぼれ犬」こと高樹良文警部が出てくるが、この人物がいなかったら、単なる暴力小説で終わっていただろう。北方作品の中では、中位の出来程度ではないか。やはり北方作品だと、『眠りなき夜』『檻』『過去』あたりの方が面白いし、出来もよい。北方の活躍した時期と、そこそこの出来の作品、という二つの要素がたまたま絡み合っての受賞となったと思う。 |
備 考 |
第38回(1985年)長編部門。
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