日本推理作家協会賞受賞作全集第49巻
『乱歩と東京 1920都市の貌』松山巌



【初版】1999年11月15日
【定価】571円+税
【解説】平井隆太郎
【底本】『乱歩と東京』(ちくま学芸文庫)

【収録作品】
作 者
松山巌(まつやま・いわお)
 1945年、東京生まれ。東京芸術大学建築学科卒業。建築家・評論家・作家。主著に『百年の棲家』『うわさの遠近法』(サントリー学芸賞)『闇のなかの石』(伊藤整文学賞)『群衆』(読売文学賞)『世紀末の一年』他。
(作者紹介より引用)
作品名
『乱歩と東京 1920都市の貌』
初 出
 1984年12月、PARCO出版より書き下ろし刊行。文庫化時、文章を加筆修正。
粗 筋
 大都市を成立させた上京者たちの希薄な人間関係が『D坂の殺人事件』を生み出し、単身者の住まう下宿館の再現が『屋根裏の散歩者』の密やかな猟奇的悦楽を可能にした。1920年代の東京で、都市文学として胚胎した探偵小説が、鮮やかに花開くさまを精緻に解き明かす力作評論。
(粗筋紹介より引用)
感 想
 江戸川乱歩の作品から、1920年代の東京を映し出し、東京という都市の発展から探偵小説が産み出された夢想を紡ぎ出す、異色の都市論、乱歩論。
 これは再読。パルコ出版局から出たときに読んだが、この頃はまだ高校生だった。それでもこの本には衝撃を受けた。ミステリをこういう角度から読むことが出来るのかということに。1920年代の東京という、古いものと新しいものがごちゃ混ぜな時代を描くことから、新しい乱歩を読みとることができるのかということに。10数年ぶりに再読したが、その印象は変わらなかった。いや、建築を多少なりとも勉強したことから、よけいに強い衝撃を受けた。1920年代の東京が再現され、そして乱歩作品がより深く味わうことのできる、そんな一冊である。乱歩ファンならずとも、乱歩の作品を読んだことがある人なら、是非ともお薦めしたい。
備 考
 第38回(1985年)評論その他の部門。

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