収録作品

作者 松山巌(まつやま・いわお)
1945年、東京生まれ。東京芸術大学建築学科卒業。建築家・評論家・作家。主著に『百年の棲家』『うわさの遠近法』(サントリー学芸賞)『闇のなかの石』(伊藤整文学賞)『群衆』(読売文学賞)『世紀末の一年』他。

(作者紹介より引用)

作品名 『乱歩と東京 1920都市の貌』
初出 1984年12月、PARCO出版より書き下ろし刊行。文庫化時、文章を加筆修正。
粗筋 大都市を成立させた上京者たちの希薄な人間関係が『D坂の殺人事件』を生み出し、単身者の住まう下宿館の再現が『屋根裏の散歩者』の密やかな猟奇的悦楽を可能にした。1920年代の東京で、都市文学として胚胎した探偵小説が、鮮やかに花開くさまを精緻に解き明かす力作評論。

(粗筋紹介より引用)

感想 江戸川乱歩の作品を通して1920年代の東京を描き出し、 都市の発展と探偵小説の誕生を結びつけて論じる、異色の都市論・乱歩論である。

初読はパルコ出版局版が出た頃で、当時は高校生だったが、 「ミステリをこういう角度から読むことができるのか」という衝撃は強烈だった。 古いものと新しいものが混在する1920年代の東京を背景に、 乱歩作品の新たな読み方が提示される点がとにかく刺激的だった。

今回十数年ぶりに再読したが、その印象はむしろ強まった。 建築を多少なりとも学んだことで、都市構造と乱歩作品の関係がより鮮明に感じられたからだ。 1920年代の東京が立ち上がり、乱歩作品がより深く味わえる一冊である。

乱歩ファンはもちろん、乱歩作品を一度でも読んだことがある人にはぜひ薦めたい。
備考 第38回(1985年)評論その他の部門。