作 者 |
高橋克彦(たかはし・かつひこ) 1947年岩手県生まれ。早稲田大学卒業。美術館勤務を経て『写楽殺人事件』で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。伝奇SF『総門谷』で吉川英治文学新人賞。サスペンスの『緋い記憶』で直木賞。歴史小説も多い。(作者紹介より引用) |
作品名 | 『北斎殺人事件』 |
初 出 | 『北斎殺人事件』(講談社)1986年12月、書き下ろし。 |
粗 筋 |
北斎隠密説を追いかけて――義兄の遺稿集の出版話が思わぬ方向にすすみ、津田は戸惑う。たしかに、転居と改号を繰り返し、九十歳で亡くなった北斎は謎めいていた。隠密説の証拠を津田はつぎつぎと見つけるけれど……。一方、ボストン美術館では日本人の他殺死体が発見された!(裏表紙より引用)
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感 想 |
1983年に第29回江戸川乱歩賞を受賞した『写楽殺人事件』に続く「浮世絵ミステリー三部作」第二作。前作同様、津田良平、結婚した冴子(旧姓国府)、そして探偵役である塔馬双太郎が登場する。前作では写楽の謎に迫るとともに殺人事件の謎を解くこととなるが、本作では北斎隠密説を追いかけることとなる。前作では写楽の謎と現実の殺人事件とのバランスが悪いという指摘をされていたが、本作品ではその欠点もそれなりに改善されている。写楽の謎は有名だが、北斎隠密説は今まで取り上げられることがなかった新説である。題材にしても技術にしても、いずれも格段に向上していることが読めばわかるだろう。 三部作は次作『広重殺人事件』(1989)で完結する。『北斎殺人事件』を読むなら先に『写楽殺人事件』を読んでほしいと思うし、そして読んだ人は次に『広重殺人事件』を読んでほしい。高橋克彦のミステリ作品は、この三部作がもっとも傑作だと思っている。 |
備 考 |
第40回(1987年)長編部門。
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