日本推理作家協会賞受賞作全集第56巻
『明治の探偵小説』伊藤秀雄



【初版】2002年2月20日
【定価】943円+税
【解説】山前譲
【底本】『明治の探偵小説』(晶文社)

【収録作品】
作 者
伊藤秀雄(いとう・ひでお)
 1925年神奈川県生まれ。49年日本大学国文科卒業。長年にわたって黒岩涙香を研究し、『黒岩涙香―その小説の全て』や伝記をまとめた。ほかに『大正の探偵小説』『昭和の探偵小説』『近代の探偵小説』など。(作者紹介より引用)
作品名
『明治の探偵小説』
初 出
『明治の探偵小説』(晶文社)1986年10月、書き下ろし。
粗 筋
 ポーの「モルグ街の殺人」(1841)に始まったミステリーが、明治になってようやく日本にも移入される。だが、当時数多く書かれた創作や翻訳は、いつしか歴史のなかに埋もれてしまった。それらを実見し、明治の探偵小説の全貌を初めて明らかにした待望の研究書。初の文庫化なる。(裏表紙より引用)
目 次
 はしがき
 序説――黒岩涙香から横溝正史まで
 第一部 日本探偵小説事始   第一章 涙香以前――成島柳北、神田孝平、三遊亭円朝
  第二章 黒岩涙香の活躍
  第三章 探偵小説論――黒岩涙香、内田魯庵、島村抱月
 第二部 花開く明治ミステリー   第四章 森田思軒と春野や朧
  第五章 涙香につづく人々――丸亭素人、快楽亭ブラック、南陽外史
  第六章 探偵実話の流行
  第七章 硯友社の「探偵小説退治」
  第八章 創作探偵小説の展開――半井桃水、尾崎紅葉、多田省軒
  第九章 押川春浪と武侠冒険小説
 第三部 翻訳小説篇
  第十章 涙香以後の翻訳――徳富蘆花、柳圃散史、原抱一庵
  第十一章 乱歩の先駆者――菊池幽芳、暁風山人、羽化仙史
  第十二章 怪盗ルパンとソーンダイク博士
  第十三章 『新青年』創刊まで
 あとがき
 明治探偵小説年表
感 想
 黒岩涙香研究家として名高い伊藤秀雄が、黒岩涙香を初めとする、明治期における探偵小説史をまとめ上げた労作。あの中島河太郎でさえ、明治期の探偵小説は、涙香や当時の文壇小説家による探偵小説に近い作品にしか触れなかったのに、作者は翻訳、探偵実話、創作に至る明治期の隠れた巨大な流れを調べてまとめ上げた。ある意味読み捨てられてきたような作品群まで調べてきたその労力に脱帽するし、流行なども含めて纏められているのだから、もう言うことはない。超一級の価値がある資料、評論だろう。
 膨大ともいえる明治期の作品の数々が紹介されているのだが、粗筋を読んでもぜひ復刊してくれ、と思えるほどの作品が無いことは残念だが、それは無い物ねだりだろう。ただ、涙香全集は出してほしいと思う。選集でもいいけれど。
 一応『昭和の探偵小説』『近代の探偵小説』は持っていたはず。『大正の探偵小説』があったかな……。
備 考
 第40回(1987年)評論その他の部門。

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