収録作品

作者 小杉健治(こすぎ・けんじ)
1947年東京生まれ。プログラマーのかたわらカルチャーセンターで小説作法を学ぶ。1983年、『原島弁護士の愛と悲しみ』でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。さらに『絆』で日本推理作家協会賞を、『土俵を走る殺意』で吉川英治文学新人賞を受賞。法廷ものを中心とした正義感溢れるミステリーの他、人情味たっぷりの『向島物語』、『曳かれた者』以下の警察小説、あるいは時代小説と作品多数。

(作者紹介より引用)

作品名 『絆』
初出 1987年6月、集英社より書き下ろし刊行。
粗筋 夫殺しの罪で起訴された弓丘奈緒子は、事実関係を全面的に認めた。だが、弁護人の原島は無実を頑強に主張する。若い頃の奈緒子を知る法廷記者にも、それは無謀な主張に思えた。証言と証拠から着実に犯行を裏付けていく検察官。孤立無援の原島弁護士は、封印された過去に迫る。スリリングな公判の結末は? 第41回日本推理作家協会賞長篇賞受賞。

(粗筋紹介より引用)

感想 弓丘産業の社長・弓丘勇一が自宅で殺害され、妻・奈緒子が死体を発見して通報する。 当初は強盗殺人と見られたが、1週間後に奈緒子が逮捕され自白。 裁判では奈緒子が起訴事実を全面的に認める一方、弁護人・原島保は無罪を主張する。 証拠も証言も揃った事件で、原島はいかにして無罪を立証するのか――。

第41回日本推理作家協会賞長編賞受賞作。再々読になるが、いつ読んでも素晴らしい。 法廷小説特有の「どうひっくり返すのか」という謎解きの面白さに加え、 被告人の秘められた過去が明かされる瞬間の悲しみと感動が胸を打つ。 弱者への温かい視線と社会への問題提起が、物語の奥にしっかりと息づいている。

法廷小説は動きが少なく単調になりがちだが、 小杉健治は証拠・証言の積み重ねと真相追及のドラマを見事に両立させている。 この難題を真正面から突破した作家は多くない。 日本法廷小説の先駆である高木彬光『破戒裁判』に並ぶ成功例といえる。

何度でも言いたい。本作は傑作である。読まない人は損をする。
備考 第41回(1988年)長編部門。