日本推理作家協会賞受賞作全集 第58・59巻
『伝説なき地』(上)(下)船戸与一
- 初版:2003年6月20日
- 定価:上巻933円、下巻886円
- 解説:関口苑生
- 底本:『伝説なき地』(講談社文庫)
収録作品
| 作者 |
船戸与一(ふなど・よいち) 1944年、山口県下関生まれ。早稲田大学卒。75年、豊浦志朗名義で『硬派と宿命』を刊行。79年の『非合法員』以下、『夜のオディセイア』『血と夢』『神話の果て』『山猫の夏』『猛き箱舟』などの海外を舞台にした冒険小説を発表。2000年、『虹の谷の五月』で第123回直木賞を受賞。ほかに『黄色い蜃気楼』『炎流れる彼方』『砂のクロニクル』『蝦夷地別件』など。 (作者紹介より引用) |
|---|---|
| 作品名 | 『伝説なき地』 |
| 初出 | 1988年6月、講談社より上下巻書下ろしで刊行。 |
| 粗筋 |
ベネズエラの名門エリゾンド家が所有する涸れた油田地帯から希土類と呼ばれる超伝導物質が発見された。独占的採掘権を餌に巨億の富を手に入れようと画策する当主ベルトロメオ。欲望に操られて憎しみ合う親兄弟と情婦ベロニカの血で血を洗う闘争が始まる。南米冒険小説巨編。(上巻) 南米左翼革命運動の闘士、鍛治志朗が麻薬密売組織から強奪した2000万ドルの隠し場所こそ、エリゾンド家の涸れた油田だった。そこには、マグダレナのマリアを中心とするコロンビア難民が共和国建設を唱えていた。マリアに受け入れられた鍛治ら二人の日本人と冷酷な新当主との殺戮劇が幕をあける。(下巻) (粗筋紹介より引用) |
| 感想 |
ベネズエラの名門エリゾンド家が所有する涸れた油田地帯から希土類が発見され、
そこから始まる血で血を洗う闘争――物語は冒頭から濃密な暴力と欲望に満ちている。 偽名で刑務所に入っていた丹波春明は、所長の陰謀で“死人が出る”と噂される第九雑居房へ移される。 この事件の黒幕は南米左翼革命運動の闘士・鍛冶志朗であり、 麻薬密売組織から強奪した2000万ドルの在処を知る丹波は、鍛冶の思惑どおり脱獄する。 一方、マグダレナのマリアを中心とするコロンビア難民たちは共和国建設を掲げ、 涸れた油田地帯に集結していた。マリアは「この地で祭りが始まる」と予言する。 運命に導かれるように集まった人々は、やがて血の祭りへと巻き込まれていく。 『山猫の夏』『神話の果て』に続く南米三部作として1988年に発表された本作は、 船戸与一の代表的な冒険小説のひとつである。 1980~90年代はまさに船戸の時代であり、圧倒的なスケールと重厚な筆致は他の作家を寄せつけなかった。 15年ぶりに再読したが、結末を知っていても面白さはまったく色褪せない。 重厚なストーリー、迫り来るバイオレンス、そして徹底した取材に裏打ちされた南米の空気感。 歴史の裏側にある“血と涙”を描き切る筆力は圧巻である。 この頃の船戸は、何を読んでも本当に素晴らしい。 |
| 備考 | 第42回(1989年)長編部門。 |