日本推理作家協会賞受賞作全集第6巻『社会部記者』島田一男(双葉文庫)



【粗筋】
 東京日報の片桐デスクのもとに、出所後の報復を恐れて刑期延長をかさねていたヤクザから手紙が……。ついに出所の日が来たというのだ。遊軍の亀田記者や写真班の山口らと一緒に、かねてからの約束どうり、真夜中に迎えにいったのだが……(午前零時の出獄)。ほか3篇を収録。(粗筋紹介より引用)
【初版】1995年5月15日
【定価】480円(税込み)
【解説】山村正夫
【底本】不明(記載なし)

【収録作品】
作 者
島田一男(しまだ・かずお)
 1907年、京都市生まれ。戦前は新聞記者。昭和22年にデビューし、新聞記者物や刑事物に多数の作品がある。"捜査官シリーズ"は20作以上になる。人気TV番組だった『事件記者』の原作者としても知られている。1996年没。
作品名
「午前零時の出獄」(別題「社会部記者」)
初 出
 『週刊朝日』昭和25年6月増刊号発表。
粗 筋
 東京日報の片桐のところに、府中刑務所に服役しているヤクザの芝山定次郎から手紙が来た。出所後の報復を恐れて刑期延長を重ねていたが、ついに出所することとなった。北崎社会部長に許可をもらった片桐は仲間とともに出所時間に迎えに行き、芝山を迎えに来ていた兄貴分の小島福松を振り切ったまではよかったが、今度はその福松が殺された。
感 想
 ヤクザを相手に動き回る記者たちの熱い心を描いた、一昔前の人情ものに近い話。スリリングでスピーディーな展開は、この作者ならでは。
作品名
「遊軍記者」
初 出
 『宝石』昭和24年9月臨時2号発表。
粗 筋
 商業美術専門学校写真研究所が火事になり、二階から3年生の寒川真砂子の死体が発見される。競争相手である都タイムスは他殺を否定していたが、北崎社会部長は他殺説を主張。遊軍だった高野が取材した結果を基に、北崎は都タイムスの記事に穴を見つける。
感 想
 なんか、新聞記者のエゴを見せられたような作品。まあ、発表当時の情勢を考えれば、人権とかないに等しい時代だから仕方が無いだろうが。
作品名
「新聞記者」
初 出
 不明。
粗 筋
 最近不振の軽演劇団、奇面座が公演する三本立て興業の中幕「狂人王国」は、匿名の投書台本によるものであった。公演直前、匿名作家から届いた手紙に犯罪の影を見た北崎社会部長は取材を始め、公演当日の朝刊で匿名作家の正体を暴きだす。そして警察が警備するなか、舞台中に女優が殺害された。
感 想
 スピーディーな展開の中で浮かび上がる意外な犯人像。ただ、ここまで警察を簡単に出し抜くことができるものなんだろうか、と疑問に思ってしまうのも確か。
作品名
「風船魔」
初 出
 『面白倶楽部』昭和25年2月号掲載。
粗 筋
 北崎社会部長らがいる東京日報が入っているビルの前を、長襦袢一枚の女の死体が、無数のゴム風船によって吊るし上げられ、漂っていった。消防車のはしごに載った生じ掲示の拳銃によって風船が割られ、死体はゆっくりと下降。刺されていたのは、舞踊会の異端者、仙石踏絵。そして亭主は北崎が十年前に書いた記事で首になった赤木次郎吉元巡査だった。
感 想
 奇妙な死体と、被害者を取り巻く怪しい人々。次から次へと出てくる容疑者たちに、めまぐるしい展開。本短編集のベスト。
全体感想
 北崎を始めとする新聞記者たちの掛け合いと、記者たちの機動力を活かしたスピーディーな展開が、本作品の売りなのだろう。事件当時の社会風景も完結に上手く描写されていると思う。ただ、特ダネを抜くことばかりに目が向けられ、警察をも簡単に出し抜いてしまうというのは少々首をかしげてしまう。また、容疑者を簡単に自殺させてしまう展開もどうだろうか。
備 考
 受賞対象は「社会部記者」を含む連作短篇。「風船魔」は「社会部記者」とは別に、短編部門候補に挙がっていた。
 第4回(1951年)短編賞。

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