収録作品

作者 直井明(なおい・あきら)
1931年東京生まれ。東京外国語大学インド語科在学中、南達夫名義で「宝石」の懸賞小説に佳作入選。商社に入り、カラチ、ヒューストン、ニューヨークなど海外支店に勤務する傍ら、ミステリーを耽読。とくにエド・マクベインに惹かれ、1984年に研究書『87分署のキャレラ』を刊行。さらに、日本推理作家協会賞『87分署グラフィティ』『87分署シティ・クルーズ』などをまとめる。ほかに『海外ミステリ見聞録』。

(作者紹介より引用)

作品名 『87分署グラフィティ―エド・マクベインの世界』
初出 1988年12月、六興出版より書き下ろしで刊行。
粗筋 架空の都市アイソラを舞台にした江戸・マクベインの87分署シリーズは、1956年の『警官嫌い』以来、警察小説の代表的作品として読み継がれてきた。そのシリーズを徹底的に分析し、創作の秘密に迫っていく。マクベイン自身よりも87分署に詳しいと言われる、精緻な研究の成果をたっぷりとこの一冊に。第42回日本推理作家協会賞評論その他の部門賞受賞。

(粗筋紹介より引用)

感想 1956年2月にポケット・ブックス社のパーマブック版での第一作『警官嫌い』が出版されて以来、87分署シリーズは警察小説の代表として読み継がれてきた。 マクベインは政治・経済・社会問題にほとんど触れず、年代を曖昧にしたまま物語を構築しているため、 60年代とも80年代とも取れる独特の“時代の無時間性”がシリーズの魅力となっている。 ただし、作中には「何月何日」といった具体的な記述があるため、年代の推定は可能である。

著者・直井明は、作品中のわずかな手がかりから事件の年代を推定し、 当時の時代背景や風俗を丁寧に紐解きながら、マクベインの創作世界に迫っていく。 本書は1988年刊行の原著に加筆した増補版で、 第52作「Fat Ollie's Book」や最終作予定「The Frumious Bandersnatch」までを補完している。 エド・マクベイン本人の推薦文付きという点もファンには嬉しい。

直井明の87分署研究は『87分署のキャレラ』『87分署グラフィティ』『87分署シティ・クルーズ』、 さらに来日時の『87分署インタビュー』と続き、 ミステリファンから高く評価されてきた。 特に本書は、87分署シリーズを知らなくても十分楽しめる構成になっており、 もちろんマクベインファンならなおさら必読である。

「マクベインよりも87分署に詳しい」と言われる著者の研究成果が凝縮された一冊であり、 ひとつのシリーズに惚れ込み、徹底的に掘り下げることの素晴らしさを教えてくれる。
備考 第42回(1989年)評論その他の部門。