作 者 |
佐々木譲(ささき・じょう) 1950年札幌市生まれ。コピーライター時代に冒険小説やハードボイルドを読破。本田技研で宣伝を担当していた1979年、「鉄騎兵、跳んだ」で第55回オール讀物新人賞を受賞する。タイムリミット・サスペンス『真夜中の遠い彼方』(『新宿のありふれた夜』と改題)が初期の代表作。1988年刊の『ベルリン飛行指令』に始まる三部作が、第二次世界大戦秘話をテーマとして注目を集めた。『エトロフ発緊急電』は第3回山本周五郎賞も受賞。歴史小説にも意欲的で、2002年、『武揚伝』で第21回新田次郎賞を受賞している。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『エトロフ発緊急電』 |
初 出 |
1989年10月、新潮社新潮ミステリー倶楽部より書き下ろし刊行。 |
粗 筋 |
1941年12月、日本海軍がハワイ真珠湾を奇襲し、太平洋戦争の口火は切られた。今も語り継がれるその歴史的瞬間の背後には、熾烈な諜報戦があったのだ。アメリカ、東京、そして機動部隊が極秘裏に集結した択捉島を舞台に、スパイが暗躍する。真珠湾攻撃前夜をダイナミックに、かつロマン豊かに描く傑作冒険小説。 (粗筋紹介より引用)
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感 想 |
第二次世界大戦三部作の二作目であり、協会賞や山本賞を受賞した佐々木譲の代表作。ロシア人の父と日本人の母との間に生まれた択捉島出身の岡谷ゆき、東京で布教活動を行うプロテスタントのロバート・スレンセン。スペインで義勇兵の経験がある殺し屋、斉藤賢一郎。アメリカのスパイである賢一郎を追い続ける東京憲兵隊の磯田茂平。多種多様な立場の人物が運命に導かれ、そして舞台は択捉島へ移り、太平洋戦争の幕が開ける。 第二次大戦を舞台にした戦争秘話を書いたものであり、戦争そのものは結末まで明らかになっていることから、そこへどうやって物語を絡めるかという部分が焦点となるのだが、この三部作についてはいずれも見事に成功しているといえるだろう。特に本作は、スケールという点から、そして人間ドラマという点からも非常に重厚かつサスペンスにあふれた作品となっており、作者の代表作という名に恥じない傑作となっている。 ただ、作品のつながりはないものの、どうせだったら第一作の『ベルリン飛行指令』から読んだ方が面白いと思うし、この作品を読んだら三作目の『ストックホルムの密使」もぜひ読んでもらいたいところ。』 |
備 考 |
第43回(1990年)長編部門。
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