収録作品

作者 鶴見俊輔(つるみ・しゅんすけ)
1922年東京生まれ。ハーヴァード大学哲学科卒業。京都大学、東京工業大学、同志社大学を経て文筆生活に。1946年、先駆社を設立し、丸山真男らと「思想の科学」を創刊。1951年には「大衆文化研究会」の発足に参加、日本の思想と大衆文化に独創的な論を展開させている。1965年、「べ平連」に参加。反戦平和運動にも取り組んだ。『誤解する権利』『限界芸術論』『戦後日本の大衆文化―1945~1980年』ほか著書多数。1962年、「思想の科学」に「ドグラ・マグラの世界」を発表、夢野久作再評価のきっかけとなる。

(作者紹介より引用)

作品名 『夢野久作 迷宮の住人』
初出 『夢野久作―迷宮の住人(シリーズ 民間日本学者)』(リブロポート)1986年6月刊行、書き下ろし
粗筋 怪奇幻魔探偵小説『ドグラ・マグラ』で知られる夢野久作は、政客・杉山茂丸の長男として生まれ、二・二六事件の直後、47歳で急逝するまで、「めくらまし」を表現しつづけた。戦争に向かって歩んでいく、昭和初期の世相を背景に捉えられたその実像と作品。独自の人物伝で知られる著者が、異能の探偵作家に肉迫する。

(粗筋紹介より引用)

感想 評論家として活動する鶴見俊輔が、中山茂・松本健一とともに編集し、リブロポートから刊行された 「シリーズ 民間日本学者」の一冊として刊行された作品。 鶴見は1962年に「思想の科学」で「ドグラ・マグラの世界」を発表し、 夢野久作再評価の契機を作った人物でもある。 その意味では夢野久作研究の第一人者と言えるだろう。

しかし本書は、夢野久作の実子・杉山龍丸の著書からの引用が多く、 他資料からの引用も多いため、鶴見自身の思想や視点が前面に出てこない。 物足りなさを感じる部分もある。

とはいえ、本書が目指したのは「夢野久作という人物像の提示」であり、 著者自身の思想を強く反映させないという判断は、 その目的に沿ったものだったのかもしれない。 その結果、奇々怪々な作品群を書き続けた夢野久作という人物を知るには 格好の一冊となっている。

これを読んで、久しぶりに夢野久作を読み返したくなった。 大学生の頃は理解できなかった世界が、 今なら少しは掴めるかもしれない。
備考 第43回(1990年)評論その他の部門。