日本推理作家協会賞受賞作全集第68巻
『時計館の殺人』綾辻行人



【初版】2006年6月20日
【定価】857円+税(当時)
【解説】権田萬治
【底本】『時計館の殺人』(講談社文庫)

【収録作品】
作 者
綾辻行人(あやつじ・ゆきと)
 1960年東京生まれ。法律事務所等に勤務の後、87年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、『火車』で山本周五郎賞、『蒲生亭事件』で日本SF大賞、『理由』で直木賞と受賞を重ねる。2001年の『模倣犯』は毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。
(作者紹介より引用)
作品名
『時計館の殺人』
初 出
『時計館の殺人』(講談社ノベルス)1991年8月刊行、書き下ろし。
粗 筋
 鎌倉の森に佇む洋館「時計館」。十年前、館主の十四歳の娘が死んでから、死の影が館を覆う。自殺、事故死、病死……そして亡霊となって現れる娘。雑誌取材のため、霊能者や大学のミステリー研究会の面々と館を訪れた江南は、館に閉じ込められてしまい……。異才の建築家・中村青司の設計による館で起こった連続殺人の真相とは!?
(粗筋紹介より引用)
感 想
 1987年に発表した『十角館の殺人』で新本格ブームを巻き起こした綾辻の代表作。作り物の館と推理、そしてホラー要素を兼ね備えるところが綾辻の作風であるとすれば、本作はまさにその作風通りの一品と言えよう。ただ、私自身は綾辻に叙述トリック以外の本格要素は似合わないと思っている。トリックと解決の部分がどうしても物語から乖離しているようにしか思えないのだ。綾辻自身も、自らが新本格ブームを巻き起こすきっかけになるとは夢にも思っていなかっただろう。
 館の謎自体は予想が着く人も多かっただろう。本作の面白さは、やはりホラー要素との融合にあるわけで。本格ミステリなのに、ホラーとして解けない謎を残しておくところが、この人の持ち味でもあり、特徴。ただ、本作はちょっと長すぎた。もう少しコンパクトにまとめることはできなかったのか。
備 考
 第45回(1992年)長編部門。

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