作 者 |
長谷部史親(はせべ・ふみちか) 1954年東京生まれ。早稲田大学在学中から評論を発表。88年間の『探偵小説談林』を最初として、『探偵小説に見る古書趣味』『日本ミステリー進化論』『海外ミステリ歳時記』『私の江戸川乱歩体験』『海外ミステリ遊歩道』『ミステリの辺境を歩く』と論考をまとめていく。『日本ミステリーの一世紀』(共著)ほかアンソロジーの編集も。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『欧米推理小説翻訳史』 |
初 出 | 『欧米推理小説翻訳史』(本の雑誌社)1992年5月刊行。クリスティー、ヴァン・ダイン、マッカレー、フリーマン、ルルー、クロフツ、フレッチャー、ウォーレス、カーに関しては、1989年5月から『翻訳の世界』に連載中の「欧米推理小説翻訳史」に基づいて加筆したもの。フランス推理小説の怪人たち、マーシャル、ルブラン、ドイツ文化圏の作家たち、チェスタトンについては書き下ろし。 |
粗 筋 |
推理小説もまた、明治維新以来の、西洋文化の急激な移入のなかで日本で紹介されていった。そこには当然ながら、翻訳という手段が介在する。アガサ・クリスティーを最初に、S・S・ヴァン・ダイン、F・W・クロフツ、モーリス・ルブラン、ディクスン・カー、G・K・チェスタトンといった作家の受容の歴史を、丹念に追っていく。 (粗筋紹介より引用)
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感 想 |
各作家がどのように日本で翻訳されていったのか。その歴史を丹念に追った一冊。クリスティー、ヴァン・ダインなどの有名作家から、フレッチャーやウォーレスのように戦前のみ人気があった作家まで、幅広い作家が収録されている。なんといってもこの作品のすごいところは、それぞれ実物をもとに書いているところ。戦前の探偵小説雑誌を探すだけでも一苦労だと思うし、すべての記録がそろっているわけでもない時代の雑誌や単行本がさらりと出てくるところは、ミステリファンを泣かしてくれる。本だけではなく、映画についても触れられているのもうれしいところだ。労作という言葉がぴったりくる一冊。 セイヤーズ、クイーン、ドイル、ハメット、シムノンなどはいずれ執筆する予定とあとがきで書かれているが、残念ながらこれらは未だに本となっていない。早く続編、もしくは改訂版を読んでみたいものである。 |
備 考 |
第46回(1993年)評論その他の部門。
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