作 者 |
小池真理子(こいけ・まりこ) 東京都生まれ。1985年ショートミステリー集『第三水曜日の情事』と長編『あなたから逃れられない』を刊行、日常に潜むミステリーや恐怖を描いた長短編で注目された。『恋』で直木賞を、『欲望』で島清恋愛文学賞を、『虹の彼方』で柴田連三郎賞を受賞し、恋愛から人間の深層心理に迫る作品が近年はメインである。 |
作品名 | 「妻の女友達」 |
初 出 | 「小説推理」1988年8月号 |
粗 筋 |
家庭的で控えめな妻志津子と、おとなしい三歳の娘ちえみ。市役所に勤める広中肇は、平凡すぎるが幸せな日々を送っていた。しかし、妻の元クラスメートで女流評論家だった多田美雪が、妻に身の回りの世話をさせるようになってから、慎ましく平穏な家庭が崩れていった。
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感 想 |
人気女性エッセイストだった小池真理子が格段の成長を続けて女性サスペンス作家の第一人者となり、見事受賞を得ることとなった「妻の女友達」は、男の視点から見て平和だった家庭が崩壊していく様と、その家庭を取り戻そうとする男の努力の結末における落差が素晴らしい。これぞ短編、と言いたくなる妻の優しさが見事である。
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備 考 |
第42回(1989年)短編および連作短編集部門。
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作 者 |
鈴木輝一郎(すずき・きいちろう) 岐阜県大垣市生まれ。家業を継ぐ一方で作家を志し、1991年、近未来サスペンスの『情断!』でデビュー。ユーモアものからシリアスなタッチまで、多彩なミステリーを発表する。旺盛な創作意欲は、歴史小説、時代小説、現代小説でもユニークな視点を見せる。さらに小説作法やエッセイと、まさに八面六臂の執筆活動である。 |
作品名 | 「めんどうみてあげるね」 |
初 出 | 「小説フェミナ」1993年8月号掲載 |
粗 筋 |
費用が安いと評判の私立新宿職安前託老所。ここの入所者が、立て続けに首吊り自殺をした。老人性痴呆症が進行したからか。託老所に一人だけ居る子供は何を語るのか。
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感 想 |
「めんどうみてあげるね」は、託老所という設定を生かし切ったブラックな展開がうまい。舞台を除けばありがちな展開だが、託老所にいる無邪気な子供の存在が結末に至るまでの不気味さを盛り上げる。
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備 考 |
第47回(1994年)短編および連作短編集部門。
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作 者 |
斎藤純(さいとう・じゅん) 岩手県盛岡市生まれ。「北の文学」に短編を発表したあと、1988年、『テニス、そして殺人者のタンゴ』でデビュー。音楽や美術、あるいはオートバイと趣味を生かし、ハードボイルド・タッチの繊細な小説世界を構築する。さらに、恋愛小説の『凍樹』や戦前の本州縦断自転車ロードレースを描く冒険小説『銀輪の覇者』など。 |
作品名 | 「ル・ジタン」 |
初 出 | 「小説推理」1993年2月号 |
粗 筋 |
パリで出会った盲目のギタリストが、持っていたギブソンのエレキギターをネオ・ナチの若者達に盗まれた。その場に立ち会っていたカメラマンの彼と人気歌手の彼女は、成り行きでギターを取り返す事になるが。
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感 想 |
「ル・ジタン」はパリが舞台。ル・ジタンは、サンドニ門近くにある店の名前であり、盲目のギタリストを含む六人バンドが演奏をしている飲み屋である。中身は人情物語だが、それを覆うのがパリという舞台と、流れてくるメロディである。本を読みながら、哀しい場面では静かな音楽が、緊迫する場面では激しい旋律の音楽が流れてくる。音楽は国境を越える、と言いたくなる作品かもしれない。音楽を取り扱ったミステリとして、一級品の素晴らしさである。
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備 考 |
第47回(1994年)短編および連作短編集部門。
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