作 者 |
北上次郎(きたがみ・じろう) 1946年東京都生まれ。明治大学文学部卒。1976年、勤務先で知り合った椎名誠と「本の雑誌」を創刊、ユニークな書評雑誌として読書界に新風を吹き込んだ。同誌の発行人を2001年まで務める一方、文芸評論家・書評家として健筆をふるう。とくに冒険小説を熱く語り、日本における活況を導いた。『気分は悲劇』『ベストミステリー大全』『上智小説の研究』ほか著編書多数。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷』 |
初 出 | 『ミステリマガジン』(早川書房)1986年2月号〜1992年12月号まで「活劇小説論」のタイトルで連載。それに補遺五回分をまとめ、連載の一部を外して他の雑誌に書いたバローズ論40枚を描き加え、1993年12月刊行。 |
粗 筋 |
冒険小説はいかに歩んできたのか。厖大な数の作品を読み込み、多くの参考文献に目を配ってまとめられた本書は、まず欧米における近代ヒーローの誕生から筆を起こし、水滸伝の世界に分け入り、『南総里見八犬伝』に始まる日本の冒険小説の流れを検証する。執筆期間およそ8年の大作は、多彩な切り口と軽快な文体で、どこから読んでも楽しめる、まさに冒険的な評論。(粗筋紹介より引用)
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感 想 |
『ミステリマガジン』1986〜1992年にかけて連載された「活劇小説論」をまとめたもの。作家や作品を論じつつ、現代までの大まかな流れを追っている。 一つ一つの節における作品の紹介量が膨大。この人はいったい何冊読んできたんだ、というぐらい、引用や参考文献の数が多い。毎月の連載で、ここまで労力を費やす対価を得ることができるのだろうかと思ってしまうぐらいである。あらすじなどもしっかり書かれており、ガイドブックとしても一流と言える。 ただ、作家や作品に深い思い入れを書いてしまった分、主題の一つである「近代ヒーロー像100年の変遷」という部分が見えにくくなってしまったことも確か。歴史的な流れを追おうにも、作家毎に解説していることもあって、時に時代が戻ったり進んだりしてしまう。そのため、歴史的な流れを追うという点ではわかりにくい仕上がりになっており、それが残念である。 Iは外国もの、Uは水滸伝について、Vが国産もの。この国産ものだが、江戸時代の『南総里見八犬伝』から始まっており、少年小説や時代小説など数多くのジャンルを扱っている。できれば戦後の小説や1980年以降の作品についてもっと語ってほしかったところだが。 それにしても、元版に有った人名索引と署名索引が無くなってしまったのは非常に残念だ。 |
備 考 |
第47回(1994年)評論その他の部門。
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