作 者 |
折原一(おりはら・いち) 埼玉県久喜市生まれ。「旅」の編集者などを経て、1988年、連作『五つの棺』でデビュー。黒星警部を主人公にしたユーモラスな密室ものだったが、その後、叙述トリックを中心に、凝った仕掛けをちりばめた独自の作風を確立。また、無名の画家・石田黙に惹かれ、その作品をモチーフに『黙の部屋』を発表。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『沈黙の教室』折原一 |
初 出 | 『沈黙の教室』折原一(早川書房 ハヤカワ・ミステリワールド)1994年4月刊行、書き下ろし。 |
粗 筋 |
交通事故に遭い、記憶を失った男。その男が所持していた手帳には、「青葉ヶ丘中学校3年A組における殺人計画」と記されていた。二十年前、重い沈黙が支配するそのクラスでは、何者かが不気味な「恐怖新聞」を発行し、陰湿ないじめが横行していた。復讐!? 記憶喪失の男の正体は!? 多くの謎を秘めたまま、ついに同窓会の日を迎える! 読者を迷宮に誘う叙述トリックの傑作! (粗筋紹介より引用)
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感 想 |
叙述トリックの名手である折原の受賞作。『倒錯のロンド』『異人たちの館』が過去に最終候補作として選ばれていた。 本来なら読者を驚かすために、叙述トリックであることは隠されるのが普通なのに、頑なまでに叙述トリックの作品を書き続ける姿には感心する。現実事件との融合、ホラーの加味などで、単純なだましに終わらないところはさすがだが、そろそろ作風に幅を持たせた方がよい気もする。 本作は、叙述トリックの佳作を次々に発表していたころの作品。「教室」シリーズ三部作の第一作である。シリーズは以後『暗闇の教室』(本作の主人公である仁科良作の恋人・高倉千春が主人公)が書かれたが、第三作『復讐の教室』は書かれていない。 「学校の怪談」「恐怖新聞」などの懐かしくも怖いネタを絡めつつ、同窓会ならではの恩讐も加え、一流のホラー作品に仕上がっている。とはいえ、三部作構成の本作品は、少し長すぎだったといえる。叙述トリックとしての仕掛けも盛り込まなければいけないこともあり、長くなるのは仕方がないことかもしれないが、逆に驚きという点ではマイナスとしか思えない。 ただ、脂がのっていたころの作品であり、ホラーが苦手な人以外には十分面白く読める作品である。 |
備 考 |
第48回(1995年)長編部門。
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