日本推理作家協会賞受賞作全集 第81巻
『日本殺人事件』山口雅也
- 初版:2009年6月14日
- 定価:686円+税(当時)
- 解説:杉江松恋
- 底本:『日本殺人事件』(創元推理文庫)
収録作品
| 作者 |
山口雅也(やまぐち・まさや) 神奈川県横須賀市生まれ。大学在学中よりミステリー・音楽・映画などの評論を発表。1989年、『生ける屍の死』で作家デビュー。キッド・ピストルズのシリーズほか、独自の舞台設定で展開される論理が特徴。ミステリー関係のグッズ・コレクターとしても知られ、エッセイに『ミステリー倶楽部へ行こう』など。 (作者紹介より引用) |
|---|---|
| 作品名 | 『日本殺人事件』 |
| 初出 | 『日本殺人事件』(角川書店)1994年9月刊行、書き下ろし。 |
| 粗筋 |
継母の母国で私立探偵をせんと、日本の地を踏んだ東京茶夢ことサム。トリイ・ゲートが港で待ち受け、リキシャが走り、サムライが歩くカンノン・シティで早速、難事件に出くわした。不可解なセップク、<ワビの密室>の死、クルワ島でのオイラン見立て殺人……不思議の国・日本に戸惑う探偵サム。はたして真のサムライになれるか。 (粗筋紹介より引用) 今は亡き継母カズミの母国であり、憧れの国である日本で私立探偵をすべく、アメリカからやって来た東京茶夢ことサム。伯父を訪ねる前に日本に慣れるべく、カンノン・シティの宿屋に泊まり、そこで働くエクボという女性と仲良くなった。その夜、間違えて入った部屋で遭遇したのは、港で知り合った男性の切腹であった。しかし、なぜか男性の死体には首がなかった。「微笑と死と」。 俳人である伯父に誘われ、エクボといっしょに侘び茶に誘われたサムであったが、そこで起きたのは茶室での密室事件。家元の後継問題が事件の動機と思われるが……。「侘びの密室」。 来日時の屋形船で知り合ったサヘイジに誘われ……というより騙され、クルワに足を踏み入れたサム。ミウラ屋でもいちばんの花魁であるアリスガワと一夜を共にすることとなったサムだが、次の朝、隣の部屋で発見したのはアリスガワの死体であった。「不思議の国のアリンス」。 |
| 感想 |
サミュエルXという米国人の著作を山口雅也が翻訳した、という体裁の連作短編集。
人力車、侍、鳥居、遊郭といった“誤解された日本像”をそのまま世界観として構築し、
その舞台ならではの事件が起きるという、非常に凝った本格ミステリ。 山口雅也らしいひねくれた設定だが、こうした世界観は “どこまで巧みに構築できるか”で評価が大きく変わる。 「微笑と死と」はうまく処理されているが、「侘びの密室」は説明不足。 「不思議の国のアリンス」は遊郭の雰囲気がよく出ており、完成度が高い。 ただ、再読すると“自分に都合のよい設定”が目立つ部分もあり、 特に「微笑と死と」の動機は普通に推理するのは困難。 もちろん、それを前提に楽しむ作品なので欠点とは言い切れない。 この一冊で終わっていれば見事な連作短編集だったが、 続編は今ひとつで、この作品だけで止めるべきだったという印象もある。 |
| 備考 | 第48回(1995年)短編および連作短編集部門。 |