作 者 |
京極夏彦(きょうごく・なつひこ) 北海道小樽市生まれ。広告代理店等勤務を経て制作プロダクションを設立。1994年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。1997年に『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞を、2003年に『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞を、2004年に『後巷説百物語』で第130回直木賞を受賞。アートディレクターとしてデザイン・装丁も手掛ける。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『魍魎の匣』 |
初 出 | 1995年1月、講談社ノベルスより書き下ろし刊行。 |
粗 筋 |
駅のホームから転落した加菜子が電車に! 瀕死の美少女が運び込まれたのは、箱としか言いようのない医学研究所。だが、衆人環視のなか、忽然と姿を消す。その事件を追う刑事の木場と、奇妙なバラバラ殺人事件を調べる作家の関口。そして、探偵の榎木津も加菜子を捜し始めたとき、皆が頼りにしたのは、古本屋にして憑物落しの拝み屋・京極堂だった。(上巻粗筋より引用) 箱を祀る奇妙な霊能者と美少女の秘めた過去、そして箱詰めにされた四肢。バラバラ殺人の被害者を結ぶ線が明らかとなり、犯人としてある男が手配されたが……。探偵の榎木津、文士の関口、刑事の木場を従えて、京極堂はついにあの研究所へと向かう。美少女はいったいどこに? 魍魎という憑き物をいかにして落とす? 驚愕の真実がいま明らかになる。(下巻粗筋より引用) |
感 想 |
デビュー当時のフィーバーぶりが懐かしい。あのころの京極は、とんでもない厚さの長編を短期間で連発し、その中身も含めてファンを驚愕させたものだった。気が付いたらミステリから離れてしまい、いつしか京極堂シリーズも書かれなくなったのだが、そろそろ復活しないだろうか。 さて本書は、まだ京極がミステリと妖怪もののバランスを保っていたころの作品である。選評では小栗虫太郎や夢野久作との名前が出てくるが、確かに戦前の探偵小説と呼ばれていた時代の妖しさが漂ってくる。科学よりも怪が勝っていた時代を舞台にした傑作。この頃の作品を思い出すような探偵小説を、もう一度書いてほしいと思っているのは私だけではないだろう。 |
備 考 |
第49回(1996年)長編部門。
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