作 者 |
梅原克文(うめはら・かつふみ) 富山県生まれ。会社勤務やアルバイトの傍ら執筆活動を続け、1993年、同人誌「宇宙塵」に発表の中編を大幅に改稿した『二重螺旋の悪魔』で本格的にデビュー。娯楽性に富むダイナミックな作風で注目を集めた。さらに、『ソリトンの悪魔』、『カムナビ』、短編集の『サイファイ・ムーン』を刊行。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『ソリトンの悪魔』 |
初 出 | 1995年8月、朝日ソノラマより上下二巻で書き下ろし刊行。 |
粗 筋 |
日本最西端に位置する与那国島の沖合に建設中の<オーシャンテクノポリス>。その脚柱が謎の波動生物の攻撃を受け、巨大海上情報都市は完成目前で破壊されてしまった。とてつもない衝撃は、近くの海底油田採掘基地<うみがめ200>にも危機的状況をもたらす。オイルマンの倉瀬厚志は基地を、そして遭難した娘を救出するため、死力を尽くすが……。(上巻粗筋より引用) 本能の赴くままに海上保安庁の巡視船を次々と破壊し、海上自衛隊や台湾海軍の潜水艦を翻弄していく、< |
感 想 |
やっと読めた。今頃読んでこう書くのも何だが、これはSF近未来海洋冒険物の大傑作である。“ソリトン”という設定といい、海洋という舞台といい、読者に本を閉じさせないほどの展開の早さといい、とにかく面白い。作者の言う「“自然科学のデータなどを土台にした、現実とSFの区別がつかなくなっているアイディア・ストーリー”と“ノンストップ・ジェットコースター・アクション”のリミックス」という言葉に偽りなし。無条件でこれは読め(といってもみんな読んでいるだろうなあ)と言いたくなる作品。ただ、やっぱりこれは“ミステリ”よりも“SF”の範疇という気もしますがね。まあ、『日本沈没』や『妄想銀行』(どっちも傑作だぞ)も協会賞を取っているんだから、この作品が協会賞を取ることには何の問題もなし。 なお初刊本では2006年が舞台となっているが、後に2016年と書き直されている。あと5年で舞台の都市となるが、残念ながら、巨大海上情報都市はできそうにもない。 |
備 考 |
第49回(1996年)長編部門。
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