収録作品

作者 真保裕一(しんぽ・ゆういち)
東京生まれ。アニメーション制作会社に勤務していた1991年、『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。95年、巨大ダムを舞台にしたサスペンス『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞を受賞。『奪取』は山本周五郎賞も受賞した。2006年には『灰色の北壁』で新田次郎文学賞を受賞。『猫背の虎 動乱始末』ほかの時代小説にも意欲を。

(作者紹介より引用)

作品名 『奪取』
初出 「東京中日スポーツ」(1994年11月7日~1995年8月2日)、 「北日本新聞」「岐阜新聞」「中国新聞」「新日本海新聞」「苫小牧民報」「デーリー東北新聞」他の媒体に 『夢の工房』の題名で連載。 大幅に加筆訂正の上改題され、講談社から1996年8月に単行本として刊行。 1999年5月、講談社文庫化。
粗筋 【上巻】
友人の雅人がヤクザから1260万円の借金を! どうやって返す? おれは偽札を作ることにした。狙いは銀行の両替機。精巧なものは必要ない。センサーさえごまかせばいいのだ。ATMから紙幣識別機を奪い、解読し、雅人と一緒にパソコンで作った970枚の一万円札は、見事に機械を通った……。完璧な偽札を目指す、サスペンスに満ちた旅が始まる。

(上巻粗筋より引用)


【下巻】
印刷機、スキャナー、用紙、インク……。偽札造りの世界で「彫りの鉄」として知られるじじいと組んだ、完璧な偽札を造るという夢が、あと一歩で叶うという時、それを狙う組織の邪魔が。おれは許さない! 雅人が帰ってきた。印刷会社社長の娘だった幸緒もいる。完璧なものを造って、あいつらを騙してやるんだ。偽札を使った復讐の旅が始まる。

(下巻粗筋より引用)

感想 「第1部 手塚道郎編」「第2部 保坂仁史編」「第3部 鶴見良輔編」の三部構成。 第1部では銀行の紙幣判別機を騙すための偽札作り。 第2部では“完璧な偽札”の制作に挑むが、第1部で関わったヤクザが再び絡む。 第3部では、銀行やヤクザに狙いを定めた偽札計画が始動する。

偽札作りを軸にしたコンゲームもの。 技術が本当に通用するかは不明だが、詳細な描写からは相当な取材量が伺える。

偽札作りだけでも一本書ける題材だが、 ヤクザや銀行といった敵役を配置することで物語にスピード感が生まれ、 主人公たちへの感情移入も強まる。 頼りない小悪党の主人公が成長していく点にはやや違和感もあるが、 それが読者の共感を呼んだのかもしれない。

再読でも面白さは変わらず。 時代が変わっても色褪せない魅力を持つ作品である。
備考 第50回(1997年)長編部門。
1996年、第10回山本周五郎賞受賞。