収録作品

編者 笠井潔(かさい・きよし)
東京都生まれ。1979年、名探偵・矢吹駆の初登場作『バイバイ・エンジェル』で小説家デビュー。同シリーズは『サマー・アポカリプス』『薔薇の女』『哲学者の密室』と続き、2003年、『オイディプス症候群』で本格ミステリ大賞を。『ヴァンパイヤ戦争』ほか伝記小説やSFも。評論家・思想家としての著書多数。『探偵小説論』などでミステリ界も刺激する。

(作者紹介より引用)

作品名 『本格ミステリの現在』
初出 ・「笠井潔論」:『創元推理2』1993年春号に加筆
・「島田荘司論」:『野性時代』1995年10月号に加筆
・「東野圭吾論」:『野性時代』1996年3月号に加筆
その他は書下ろし。1997年、国書刊行会より刊行。
粗筋 【上巻】
綾辻行人『十角館の殺人』で扉が開けられた<新本格>・10年後、活気あふれる本格ミステリの核となっている作家に、気鋭の評論家が独自の視点でアプローチしていく。上巻では、その綾辻をはじめ、竹本健治、笠井潔、島田荘司、東野圭吾、折原一、法月綸太郎、有栖川有栖と、<新本格>以前からの流れを踏まえつつ、8人の作家が論じられる。

(上巻粗筋紹介より引用)


【下巻】
ますます多様化していった1990年代の日本のミステリ界において、本格ミステリはどのような姿を見せていたのか。気鋭の評論家による鮮やかな作家論が、それを解き明かしていく。下巻では、宮部みゆき、我孫子武丸、北村薫、山口雅也、麻耶雄嵩、井上夢人、二階堂黎人、京極夏彦と、個性的な作品で新たな地平を開いた8人が論じられる。

(下巻粗筋より引用)

目次 <上巻>
・まえがき【探偵小説の地層学】 笠井潔
・竹本健治論【尾を喰う蛇は<絶対>を夢見る】 千街晶之
・笠井潔論【大量死と密室】 法月綸太郎
・島田荘司論【挑発する皮膚】 法月綸太郎
・東野圭吾論【愛があるから鞭打つのか】 北村薫
・綾辻行人論【館幻想】 濤岡寿子
・折原一論【決算後の風景】 田中博
・法月綸太郎論【「二」の悲劇】 巽昌章
・有栖川有栖論【楽園が罅割れるとき】 千街晶之

<下巻>
・宮部みゆき論【語りと灯】 濤岡寿子
・我孫子武丸論【メタ・ヒューマニズム序説】 夏来健次
・北村薫論【可憐なる巫女たちの物語】 加納朋子
・山口雅也論【パンキー・ファントムに柩はいらない】 有栖川有栖
・麻耶雄嵩論【形式の大破局(カタストロフィ)】 佳多山大地
・井上夢人論【意識・身体・小説・現実】 田中博
・二階堂黎人論【怪人のいる風景】 鷹城宏
・京極夏彦論【フロイトの「古井戸」】 武田信明
感想 東京創元社の創元推理評論賞(1994?2003)の選考委員・受賞者・入選者による探偵小説研究会メンバーが執筆した作家論集。 タイトルは『本格ミステリの現在』だが、実際には“新本格以後”の作家を中心に論じた内容であり、本格ミステリ全体を俯瞰したものではない。

井上夢人や宮部みゆきを本格ミステリ側から語る試みは、ややこじつけに見える部分もあり、 メタ的な論考も多く、読み手によっては違和感が残る。 そもそも「本格ミステリとは何か」という根本命題が共有されていないため、 全体としてアンバランスな印象を受ける。

本格ミステリの流れを俯瞰しているのは笠井潔の「前書き」だけだが、 その論法も思い込みが強く、好みが分かれる。 個人的な印象であり誤りではないが、どうにも好きになれない。

期待値が高かっただけに、全体としてはがっかり感が強い評論集。 ブームに合わせて受賞させたのでは、という印象も拭えない。
備考 第51回(1998年)評論その他の部門。