作 者 |
北森鴻(きたもり・こう) 山口県下関市生まれ。1995年、明治初期の歌舞伎界を背景にした『狂乱廿四考』で鮎川哲也賞を受賞。『花の下にて死なむ』に始まる香菜里屋シリーズ、異端の民俗学者・蓮丈那智のシリーズ、骨董業界を描く旗師・宇佐見陶子のシリーズ、博多を舞台にした『親不孝通りディテクティブ』、京都を舞台にした『支那そば館の謎』など、多彩な作品を発表するも、2010年に48歳で死去。 (作者紹介より引用)
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作品名 | 『花の下にて春死なむ』 |
初 出 | 『創元推理』『オール讀物』等に掲載。書下ろしを加え、1998年、講談社より単行本刊行。 |
粗 筋 |
ひっそりとアパートの自室で息をひきとった、初老の俳人の片岡草魚。なぜか彼の身元や血縁関係を示すものは何一つなかった。俳句仲間でフリーライターの飯島七緒が、残された句帳から過去を追っていくと……。東京は三軒茶屋の路地に、ひっそりと佇むビアバー「香菜里屋」。料理も絶品なマスターの工藤が、常連が持ち込んでくる謎と人生を解き明かしていく連作短編集。(粗筋紹介より引用)
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収録作品 |
「花の下にて春死なむ」「家族写真」「終の棲み家」「殺人者の赤い手」「七皿は多すぎる」「魚の交わり」
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感 想 |
三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」のマスター、工藤哲也が、客の持ち込んだ事件の謎を解き明かす安楽椅子探偵シリーズ。この後、『桜宵』『螢坂』と続き、『香菜里屋を知っていますか』で完結する。 主眼がどうしてもビールとマスターの料理になってしまいがちになるほど描写が優れていているのだが、工藤の論理的な推理もまた魅力。まとめて読むとちょっと地味なところはあるけれど、一つ一つ読んだ方が作者の筆の巧さを実感できるのではないか。ベストは表題作だが、「魚の交わり」もまた面白い。 |
備 考 |
第52回(1999年)短編および連絡短編集部門。
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