作品名 | 盲獣 |
初 出 | 『朝日』昭和6年2月号~昭和7年3月号。 |
粗 筋 |
【紹介】参照。
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感 想 |
盲人の殺人狂が美しい肉体を持つ女性に接触し、関係を持ち、飽きたら殺してしまう話。触覚芸術という着想は非常に素晴らしいものがあるのに、無駄にエログロに走ってしまっているのが残念。
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備 考 |
作品名 | 目羅博士 |
初 出 |
昭和6年4月、『文芸倶楽部』増刊号掲載。
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粗 筋 |
探偵作家の私は、動物園の猿の檻の前で会った青年から真似にまつわる奇妙な話を聞く。丸の内のビルの五階の北の端の窓で、三度も首吊りが繰り返されたのだ。それはいずれも、月の冴えた晩だった。
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感 想 |
連続自殺の着想は、H・H・エーヴェルス「蜘蛛」からの借用とのこと。しかし月光の魔術というべき表現は、乱歩ならではの美学というべきだろう。通俗長編小説ばかり書いていたと思われていた時代に描かれた好短編。この連続自殺の着想が乱歩オリジナルだったら、まさに傑作と言っていただろうに、惜しい。
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備 考 |
雑誌掲載時タイトル「目羅博士の不思議な犯罪」。
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作品名 | 恐怖王 |
初 出 | 『講談倶楽部』昭和6年6月号~昭和7年5月号。 |
粗 筋 |
鳥井純一の元へ送られてきたのは、許婚で8日前に死んだはずの布引照子がゴリラみたいな男との結婚記念写真だった。写真屋に確認すると、撮影したのは5日前だという。翌日、布引氏の元に照子からの電話がかかり、身代金を持ってくるよう伝えてきた。翌朝、五百万円を持ってきた布引氏はゴリラみたいな男に薬で眠らさられた。目が覚めるとそこにいたのは、鳥井と照子の死体だった。そして照子の背中には、恐怖王と傷つけられていた。
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感 想 |
通俗物だが、明智は出てこず、大江蘭堂という青年探偵作家が主人公を務める。といってもこの大江、犯人に翻弄されるだけ。だからこそ、明智にしなかったのだろうが。それはともかく、犯人の動機や犯行方法、どうやって予告状を出したのなど、色々と不明な点が多い作品。収拾がつかなくなり、何とか無理矢理結末を書いたけれど、実際のところ何も終わっていないような終わり方で、これほど投げっぱなしな作品は、乱歩にしても珍しい。乱歩作品でも一、二を争う駄作である。誉めるところが何一つない。
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備 考 |