江戸川乱歩推理文庫第15巻(講談社)
『幼虫』



【初版】1989年2月8日
【定価】520円
【乱歩と私】「摩訶不思議な魅力」坂本光一


【紹介】
 墓地に囲まれた空家で、素人探偵相川守は、行方不明になっていた当代一の美人女優が全裸にされ、いたぶられ、虐殺されるのを覗き見た。あとには血で描かれた赤いサソリの紋章とバラバラの死体が……。
 次の獲物は東京一の美人女学生と誉れも高い相川青年の妹。名探偵三笠竜介が赤いサソリに立ち向かう。
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
幼虫
初 出
『キング』昭和8年12月号~昭和9年10月号。
粗 筋
 【紹介】参照。
感 想
 翻案でもないのに、珍しく明智小五郎が出ない長編作品。三笠竜介という老探偵が出てくるが、なぜこんな探偵を出したのか、理解に苦しむ。読者はやはり明智小五郎の活躍を読みたかっただろうにと思ってしまう。編集者は何も言わなかったのだろうか。途中失敗するから、明智を出すわけにはいかなかったのだろうか。それとも明智を最後に出すと見せかけたミスディレクションだろうか。犯人は若い美人ばかり狙うのだが、動機があまりにもチープ。こんな首領についていく部下がいるというのも不思議。つまらない作品である。
備 考
 

作品名
悪霊
初 出
『新青年』昭和8年~昭和9年1月。未刊。
粗 筋
 新聞社に勤める祖父江進一は、所属する心霊学会の例会の打ち合わせで尋ねた未亡人が、鍵のかかった土蔵の中で殺されているのを発見する。そして異様な符号が書かれた紙が落ちていた。そのことは黒川博士の家に住む盲目の少女である霊媒によって予言されていた。そして例会の席上で少女は、集まった中に殺す人と殺される人がいると予言した。
感 想
 書簡形式で語られる作品であり、心霊学会が舞台という何とも無気味なムードが漂う中での本格探偵小説である。スタートから密室殺人も登場し、謎の記号も残される。構想がまとまらないまま始めたせいか、未完で終わったのが非常に残念である。
備 考
 

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