作品名 | |
初 出 | 『写真報知』1925年4月の号(「恋二題」として執筆) |
粗 筋 |
内気なTは同僚のS子へ告白することができないため、代わりにS子の算盤へ暗号を残しておくことにした。S子は気づいてくれるだろうか。
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感 想 |
「日記帳」同様、内気な青年の恋物語。暗号で告白し、気づいてもらおうとする姿がいじましいが、普通だったら不気味に思うだろうなあ、などと考えてしまう。簡単な暗号だけど、無駄に難しくて理解できないものよりはいいと思う。
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備 考 |
『新青年』以外の雑誌に初めて掲載された作品。編集顧問格の野村胡堂の推挽によるもの。
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作品名 | 日記帳 |
初 出 | 『写真報知』1925年4月の号(「恋二題」として執筆) |
粗 筋 |
内気だった弟の初七日の夜。私は弟の書斎で日記帳を見つけた。そこに書かれていた、遠縁にあたる娘の名前。いっしょに残されていた、彼女からの絵葉書。そして弟が彼女に葉書を出していたことを知る。
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感 想 |
内気な青年の、暗号を絡めた恋物語かと思いきや……。同じ暗号を前作品と比べると、悲劇的なラストが余韻を残す。
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備 考 |
作品名 | 幽霊 |
初 出 | 『新青年』1925年5月号 |
粗 筋 |
実業家平田をつけ狙っていた辻堂老人が死亡した。ところが平田のところに、辻堂からの手紙や電話が続き、更に本人と思われる姿まで。幽霊となってまでも、恨みを晴らすべく平田を狙っているのか。
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感 想 |
実は、という感じで明智小五郎が登場。怪異な話を理知的に解き明かすというのは名探偵ものの基本だが、そこに推理があるわけではないので、単なる種明かしに過ぎない。お手軽な掌編と言ったところか。
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備 考 |
作品名 | 盗難 |
初 出 | 『写真報知』1925年5月の号 |
粗 筋 |
私が働く宗教団体の教会へ、本日夜12時に金庫の中の金を頂くという予告状が届いた。私と主任は数日前に知り合った警官に警備を依頼した。予告時間は無事に過ぎたのだが。
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感 想 |
乱歩本人は息休めと書いているが、その通りと一言で終わってしまう掌編。談話体は乱歩が時々用いている手法、結末もよく使っている手法である。盗難方法については、後の『怪人二十面相』に繋がりそうな作品。
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備 考 |
作品名 | 白昼夢 |
初 出 | 『新青年』1925年7月号(「指輪」とともに「小品二篇」として掲載) |
粗 筋 |
蒸し暑い日の午後。四十男が道端で演説をしていた。男は女房を殺した、それを死蝋にしたと訴えていた。
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感 想 |
タイトル通り白昼夢みたいな話だが、散文詩のような形式がかえって読者を幻想怪奇の世界へ誘い込んでいる。「小品」といいながらも、乱歩らしさをよく表している逸品。
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備 考 |
作品名 | 指輪 |
初 出 | 『新青年』1925年7月号(「白昼夢」とともに「小品二篇」として掲載) |
粗 筋 |
列車の中で偶然再会した掏摸二人が話題に取り上げたのは、前回会った列車の中で起きたダイヤの指輪が盗まれた事件。一人が犯人として疑われ、徹底的に調べられたにもかかわらず、指輪は出てこなかった。
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感 想 |
AとBの会話のみで構成。こうやって読むと漫才の台本みたいな話だが、隠し方のトリックというミステリの味付けをしたユーモア作品として綺麗な仕上がりをしている掌編。
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備 考 |
作品名 | 夢遊病者の死 |
初 出 | 『苦楽』1925年7月号 |
粗 筋 |
彦太郎は夢遊病に悩んでいた。ある日、目を覚ますと父親が死んでいた。自分が殺してしまったと思った彦太郎は逃走するが。
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感 想 |
夢遊病者ネタとしては当時としてもありきたりではなかっただろうか。そもそも「二廃人」でも取り扱っており、二番煎じは免れない。この殺人トリックは推理クイズでも有名だが、実は海外短編に先例があるらしい。
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備 考 |
編集者川口松太郎に依頼されたもの。持ち込みや他人の世話にならぬ初めての注文原稿。原題「夢遊病者彦太郎の死」。
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作品名 | 屋根裏の散歩者 |
初 出 | 『新青年』1925年夏期増刊号 |
粗 筋 |
世の中に退屈している高等遊民郷田三郎は、引っ越しした新築の下宿屋で、屋根裏に上って各部屋を覗くという変態的な趣味に没頭する。その犯罪的嗜好は進み、ついに同じ下宿人である遠藤を毒殺するのだが。
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感 想 |
この作品の面白さは色々あるが、一つは主人公である郷田三郎の変態嗜好、一つは屋根裏を散歩するという誰にでもできる冒険趣味、一つは人の表と裏を垣間見る覗き趣味、一つは殺人方法。さらにこの作品は倒叙ミステリとしても傑作である。「心理的証拠」の手法を新たな形で示した乱歩の腕に脱帽。明智小五郎らしさもよく出ている。
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備 考 |
作品名 | 百面相役者 |
初 出 | 『写真報知』1925年7月の号 |
粗 筋 |
私は中学時代の先輩で新聞記者のRにある芝居へ連れて行かれた。座頭の女性は百面相役者で、男にも女にも老人に若人にも、あらゆるものに化けることができた。ある日、Rは墓場からの首泥棒が続くという記事を見せた。盗まれた首は、この間の役者が演じた老婆と同じ顔だった。
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感 想 |
オチは強引でつまらない。途中の展開も無理がある。破綻した作品としか言い様がない。
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備 考 |
作品名 | 一人二役 |
初 出 | 『新小説』1925年9月号 |
粗 筋 |
退屈した高等遊民のTは付け髭で別人に扮し、自分の細君を誘惑する。ところが細君はその別人を愛しているらしい。そのことを嫉妬したTだったが。
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感 想 |
一人二役というトリックを使って夫婦の恋愛を描いた掌編。息抜きなのかどうかはわからないが、乱歩は落語に近い話を時々書いている。自分が自分に嫉妬するというばかばかしい話であるが、肩の力が抜けている分、逆に楽しく読むことができる。
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備 考 |
作品名 | 火縄銃 |
初 出 | 1929年7月、「江戸川乱歩全集」(平凡社)第11巻に掲載。 |
粗 筋 |
私と友人の橘は、北村義兄弟が滞在するホテルへ遊びに来た。しかし兄が火縄銃で撃たれて死んでいた。仲の悪い義弟が逮捕されたが、橘は義弟が犯人ではないと主張した。
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感 想 |
乱歩が早稲田大学在学中の1914年頃、日記帳の余白に書き留めたものを全集に掲載。ここで使われたトリックはポースト「ズームドルフ事件」やルブラン「八点鐘」にもある有名なものだが、時期としては一番早かったと乱歩が周囲に自慢していたらしい。もっともこのトリック、英文の犯罪実話にあった事件が基になっているとのこと。 トリックをどのようにして小説にするかというだけの作品。三作品を読み、作家がどのような料理をするかを比べるのも一興。 |
備 考 |
作品名 | 人間椅子 |
初 出 | 『苦楽』1925年10月号 |
粗 筋 |
美人閨秀作家である佳子のところへ届けられてきた手紙。それは、醜い容貌を持つ家具職人が、ホテルからの依頼で丹精込めて作り上げた椅子の中で生活を始め、さらに椅子に座る女性からの触覚、聴覚、嗅覚のみの恋に明け暮れる毎日を記したものであった。
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感 想 |
本格探偵小説の傑作も書いている乱歩だが、やはり乱歩の持ち味はこういった「奇妙な味」作品にあることを証明する名作短編。乱歩ならではの美学、乱歩ならではの恋愛譚、そして乱歩ならではの結末を味わうことができる。
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備 考 |
作品名 | 疑惑 |
初 出 | 『写真報知』1925年8月から9月の26-27、29号 |
粗 筋 |
酒と女と暴力で恐れられていた父親が撲殺された。残った家族は悲しむどころか逆に喜ぶのだが、私は残されていたハンカチから兄が犯人ではなかったと疑ってしまう。そのうち、母や妹にまで疑惑の目を向けてしまう状況となってしまったが。
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感 想 |
学生同士の会話で構成。フロイトの精神分析なんかも出てくる。
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備 考 |
作品名 | 接吻 |
初 出 | 『映画と探偵』1925年創刊号 |
粗 筋 |
結婚したばかりの妻お花が写真に接吻をしている姿を、山名宗三は目撃してしまった。写真の男は上司である村山ではないかと宗三は疑い、タンスに隠した写真を見るとそこには村山の姿が。
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感 想 |
目撃トリックを使った恋愛譚。掲載誌を考えたのかどうかはわからないが、こちらも肩の力が抜けた楽しい作品に仕上がっている。
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備 考 |