江戸川乱歩推理文庫第21巻(講談社)
『悪魔の紋章』



【初版】1988年11月8日
【定価】480円
【乱歩と私】「乱歩からの逃走」内田康夫


【収録作品】

作品名
悪魔の紋章
初 出
『日の出』昭和12年9-昭和13年10月号。
粗 筋
 会社取締役川手氏は脅迫されていた。長年の準備の末、復讐の時がきた、一家はみな殺しにあうだろう――。いくら考えても脅迫者に心当たりはない。しかし次女が衛生博覧会場で死体で発見され、葬儀の日、長女の頬に三重渦上の指紋が捺されていた。まさしく犯人の印だ。明智名探偵は外遊中。次の犠牲者は?
(裏表紙より引用)
感 想
 明智小五郎が外遊中ということで、探偵役は法医学者宗像隆一郎が努める。明智と並び立つというほどの評判なれど、第一の助手が殺されたのはともかく、川手氏の次女、長女、二人目の助手が殺されるという失態。
 まあ、乱歩ファンならずとも、どういう展開を辿るかはすぐにわかるだろう。乱歩の長編は『蜘蛛男』『魔術師』『黄金仮面』の3パターンしかないと言ったのは中島河太郎だったと思うが、これはそのうちの二つと類似。新味は全くないが、当時の乱歩の需要が絶大なものだったのだろう。連載を読む読者を喜ばせながらも、結局はお茶を濁している乱歩の苦痛が目に見えてくるような作品である。
備 考
 

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