作品名 | 偉大なる夢 |
初 出 | 『日の出』昭和18年11-昭和19年12月号。 |
粗 筋 |
異相矮?の老科学者が軍の秘密会議にもたらした緊張と興奮。聖戦勝利を具現する新鋭機の開発は、隔絶された山荘で密かに進められる。老博士の妻と美しき息子、気鋭の青年科学者とその妹。憲兵隊の将校……完璧に守られた邸内で、姿なき侵入者の凶刃に斃れる老博士! 想像を絶する陰謀の種が怪しく花開く。
(裏表紙より引用)
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感 想 |
戦時下で書かれた、長編防諜小説。執筆要注意者リストに載っていた江戸川乱歩だが、『日の出』は従来通りの筆名でという依頼で書かれた長編。連載開始前に内務省、外務省、警視庁などの係官と打ち合わせて書いたとある。乱歩は生前、単行本としてまとめることを許さなかったが、死後にまとめられた講談社版全集(昭和45年)で初めて収録された。 確かに国策小説であるし、アメリカを敵として書いているものの、それでもトリックを用いたミステリになっているところは興味深い。若者同士のロマンスも加味し、余計なエログロもない点、すっきりとした仕上がりになっている。特に本書で用いられたトリックは、カーよりも早かったと乱歩が自負するぐらいだから、よほど愛着があったのだろう。後に短編「月と手袋」で形を変えて使われている。 |
備 考 |