江戸川乱歩推理文庫第26巻(講談社)
『化人幻戯』



【初版】1987年11月16日
【定価】480円
【乱歩と私】「乱歩作品の現代的魅力」小林久三


【収録作品】

作品名
化人幻戯
初 出
『別冊宝石』昭和29年11月、『宝石』昭和30年1月-10月号連載(途中休載有)。
粗 筋
 大河原元侯爵夫妻の双眼鏡に映った投身自殺を発端に、次ぎ次ぎに起こる青年の変死。遺留品の中に暗号で書かれた日記をみつけ、それを手がかりに明智名探偵は事件究明にのりだす。怪しい侯爵夫人・由美子の存在が浮かぶが……
 トリック研究の成果を織り込み、一人二役、変身願望を描いた長篇。
(裏表紙より引用)
感 想
 乱歩が一度は書きたいと願い、ついに始めた長編本格探偵小説であったが、いつしか注目が犯人とその動機の方に移っているのは残念。せっかくのトリックが今一つで、しかも密室トリックがあまりにもチープだったのも原因と思われる。しかしそれ以上に問題なのは、毎月の締め切りに追われたことだろう。こうやって考えてみると、結局乱歩という人には本格探偵小説の長編が書けなかった人だったんだと思ってしまう。本格という言葉に潔癖でありすぎたのか、それとも通俗長編の呪縛から抜けられなかったのか。
 犯人像があまりにも魅力的であり、いっそのことそちらを中心に書くべきで、明智に謎を解かせるべきではなかったと思ってしまう勿体ない作品。
備 考
 

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