作品名 | 十字路 |
初 出 | 昭和30年10月、「書き下ろし長篇探偵小説全集」(講談社)第一巻、書下ろし |
粗 筋 |
美しい秘書との結婚を夢みる商事会社社長は、逆上した妻を誤って殺してしまった。友人の商業美術家と自分の妹との結婚に反対する売れない絵かきは、泥酔している。その夜、神宮外苑の十字路で二つの運命が交錯した! 売れない絵かきと瓜ふたつの私立探偵・南が、運命の糸をあやつり始める! (裏表紙より引用)
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感 想 |
プロットやトリックは渡辺剣次によるものであり、乱歩がアレンジして書いた作品である。そのためか、今までの乱歩の長編作品と異なり、リアリティな部分に力を入れた作品となっている。もちろん、社会派推理小説という言葉が出る前の作品である。 乱歩が時々使った倒叙形式の作品であり、「乱歩らしさ」はほとんど出てこない。乱歩の長編では毛色の違った作品となったわけであり、読んでみても面白い。ただ、乱歩にこういう作品を書かれてもなあ、という戸惑いがあるのも事実。はっきり言えば、他の作家でも書ける作品である。やはり乱歩には、例えワンパターンでも乱歩らしさを求めてしまうのが読者だろう。出版当時好評であったという乱歩の述懐があるが、読者は本当にこれを乱歩に求めていたのだろうか。 |
備 考 |