作品名 | 闇に蠢く |
初 出 | 『苦楽』1926年新年特別号-11月号(全9回 中絶)。1927年、『現代大衆文学全集』第3巻「江戸川乱歩集」(平凡社)収録時に30数枚加筆し、完結。 |
粗 筋 |
両親の遺産で遊んで暮らせるほどの財産を持つ名ばかりの洋画家野崎三郎は、浅草の踊り子お蝶に理想の女性像を見出す。お蝶の誘いで三郎はアトリエの管理を友人に依頼し、信濃山中のS温泉にて快楽をむさぼっていたが、お蝶は行方不明になり、底なし沼に落ちたと推定された。そしてかつてお蝶と接触したことがある画家植村喜八もS温泉へやってくるが。
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感 想 |
短めだが、乱歩初の長編作品。とはいえ、内容はエログロ作品であり、こういう作品が乱歩をエログロ作家と位置づけてしまったことは残念でならない。乱歩が言うように、何も準備がないままに書き始めて行き詰まり、無理矢理終わらせたことがよくわかる作品。後期の作品とは違って、開き直るほどの度胸もなかったのだろう。
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備 考 |
「人間椅子」が好評だったことから、川口松太郎編集長に懇望されて連載するも、途中で行き詰まった。予告時タイトルは「暗闇に蠢くもの」。
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作品名 | 湖畔亭事件 |
初 出 | 『サンデー毎日』1926年2-20号(全11回) |
粗 筋 |
山奥深く、湖のほとりに宿が一軒。泊まり客の一人、のぞき趣味の男が潜望鏡を女風呂に仕掛け、隠微な楽しみに耽っていた。ある夜、女の背中にギラリと光る短刀がつきつけられ、まっ赤な血がタラタラと流れた。あわてた男が調べると風呂場には大量の血の跡が……。同宿の画家と探索に乗りだした。(裏表紙より引用)
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感 想 |
レンズや覗き趣味といった、乱歩ならではのアイテムを用いた中編本格探偵小説。さすが乱歩、と唸りたくなるような前半部はまだしも、後半部の尻窄みでつじつま合わせみたいな解決と、毎度おなじみなひっくり返し方は、ワンパターンといわれても仕方があるまい。前半部のアイディアが生きて、悪くはないなと思わせる作品である。
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備 考 |
探偵趣味の会を乱歩らと設立した春日野緑が大阪毎日新聞の記者であり、彼を通じて同社発行の週刊誌に依頼を執筆された。乱歩唯一の週刊誌連載作品。
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