江戸川乱歩推理文庫第30巻(講談社)
『畸形の天女』



【初版】1989年4月10日
【定価】600円
【乱歩と私】「私にとっての江戸川乱歩」尾崎秀樹


【紹介】
 義歯と変装が会社社長宮崎圭助に与えた甘美な二重世界。もう一人の自分、松永昌吉が先住の裏町で邂逅した少女は、彼の夢の国の天女か。江戸川乱歩、大下宇陀児、角田喜久雄、木々高太郎の四作家の個性が、意想外の展開となって花開く「畸形の天女」。他に七篇のリレー小説と、中断長篇「二人の探偵小説家」収録。
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
畸形の天女
初 出
『宝石』昭和28年10月号。
概 要
 リレー長編の第一回。以後、大下宇陀児、角田喜久雄、木々高太郎が続けて完結した。リレー長編にしては出来が良いということから、本作だけは全編収録されている。
備 考
 

作品名
五階の窓
初 出
『新青年』大正15年5月号。
概 要
 リレー長編の第一回。以後、平林初之輔、森下雨村、甲賀三郎、国枝史郎、小酒井不木と続いた。解答編を読者から募集した五百円の懸賞付き小説だった。
備 考
 

作品名
江川蘭子
初 出
『新青年』昭和5年9月号。
概 要
 リレー長編の第一回。以後、横溝正史、甲賀三郎、大下宇陀児、夢野久作、森下雨村と続いた。
備 考
 後にこの名を芸名にした踊り子が、浅草のカジノ・フォリイに現れた。

作品名
殺人迷路
初 出
『探偵クラブ』昭和7年10月。新潮社「新作探偵小説全集」に添付された小冊子。
概 要
 森下雨村、大下宇陀児、横溝正史、水谷準の後を受けたリレー長編第五回。以後、橋本五郎、夢野久作、浜尾四郎、佐佐木俊郎、甲賀三郎と続いた。
備 考
 

作品名
黒い虹
初 出
『婦人公論』昭和9年1月号。
概 要
 リレー長編の第一回。以後、水谷準、大下宇陀児、森下雨村、海野十三、甲賀三郎と続いた。
備 考
 

作品名
女妖
初 出
『探偵実話』昭和29年1月号。
概 要
 リレー長編の前編。香山滋、鷲尾三郎の中編、後編と一緒に掲載された。
備 考
 

作品名
悪霊物語
初 出
『講談倶楽部』昭和29年9月増刊号。
概 要
 リレー長編の発端篇。発展篇を角田喜久雄、解決篇を山田風太郎が執筆し、一挙掲載された。
備 考
 

作品名
大江戸怪物団
初 出
『面白倶楽部』昭和30年8月増刊号。
概 要
 リレー長編の第一回。城昌幸、角田喜久雄、土師清二、陣出達郎が続編を書き、一挙掲載された。乱歩にとって唯一の時代物。東映の映画用に作られた。
備 考
 

作品名
二人の探偵小説家
初 出
『写真報知』大正15年1月~2月。四回連載後、廃刊のため中絶。
粗 筋
 北村五郎と柴野金十はある商売の二階の部屋の隣同士となり、偶然話しかけてから友人同士となった。二人は書きためた探偵小説が売れて作家となった。柴野は忘れっぽくて時々北村に指摘されていたが、とうとう小説の筋まで忘れてしまい、北村から聞いた話を自分の筋のように話してしまった。
感 想
 「屋根裏の散歩者」の主人公のような二人がいつしか探偵小説家となり、そしてこれから、というところで中絶となっている。片方は物忘れが激しいことから空気男と呼ばれるが、このことがどう展開するのか。中絶が残念な作品である。
備 考
 

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