江戸川乱歩推理文庫第39巻(講談社)
『奇面城の秘密/夜光人間』



【初版】1988年6月8日
【定価】640円
【乱歩と私】「あの「透明人間」は夢だったのか」菊地秀行


【紹介】
 ギリシア神話の美青年アドニスの石膏像に潜み、レンブラントの名画を窺う怪人二十面相! 彼の美術品・宝石への飽くなき渇望は、「奇面城」と名づけられた隠れ家に、燦然たる美の宝庫を造りあげていた。単身、奇面城へ潜入したポケット小僧の知恵と勇気に、城を守る猛虎も、猫と変わる。いま、奇面城の扉が開く!
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
奇面城の秘密
初 出
『少年クラブ』1958年1月号-12月号連載。
粗 筋
 【紹介】参照。
感 想
 四十面相が『宇宙怪人』で捕まってから三か月後という設定。『宇宙怪人』から8作も書かれているのは無視ですか(苦笑)。今回は四十面相も変梃りんな怪人などに変装することは無く、奇面城という四十面相の秘密基地がメインである。そして明智も小林少年もほとんど動かず、ポケット小僧が大活躍。秘密基地探検といった面白さがメインであり、二十面相シリーズでは異色の作品といえる。子どもの頃、ステーキを食べるシーンが本当においしそうだと思ったのは内緒だ。ただ、明智のあの行動だけはいただけない。ところで、あの美人は何もの?
備 考
 

作品名
夜光人間
初 出
『少年』1958年1月号-12月号連載。
粗 筋
 小林少年たち少年探偵団員は、木下君の家の近くの森で肝試し大会を行った。そこに現れたのは、全身が銀色に光る夜光怪人。それから夜光怪人は街の中に現れ人々を脅かすようになる。そしてついに本性を現した。ある金持ちの家にある千四、五百年前に造られた推古仏を盗むとの予告状が、蛍光で書かれて届いたのだ。小林少年が一緒に見張るものの、夜光怪人が現れ、盗まれてしまった。
感 想
 夜光怪人という怪奇性はよいし、挿絵もなかなか無気味なもの。ただ、そのトリックを明智に説明されると、あまりにもチープなものでがっかり。まあ、少年ものでリアリティを求めても仕方がないのだろうが、さすがに無理があるだろう。それにしても、明智まで夜光怪人の格好をするなんて、結構おちゃめなところがある。もうここまで来ると、仮装大会と一緒である。
備 考
 珍しくタイトルに“怪人”を使わなかったのは、先に横溝正史が『夜光怪人』という少年ものを出していたからだと思われる。

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