江戸川乱歩推理文庫第50巻(講談社)
『探偵小説の謎』



【初版】1988年9月8日
【定価】480円
【乱歩と私】「乱歩と私」藤本泉


【紹介】
 評論家としても大活躍した乱歩が、戦後間もなく入手した海外探偵小説を資料に、英米の作家・作品を熱ぽく語った「随筆探偵小説」、丹念に集めた内外の探偵小説文献をわかりやすく分類した「探偵小説研究文献」ほか、そしてトリックについて綴った「探偵小説の謎」を収録。探偵小説愛好家には必読の書である。
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
随筆探偵小説
初 出
昭和22年8月、清流社から刊行。
目 次
 自序
 推理小説随想
 アメリカ探偵小説の諸相
 フダニット随想
 人花
 カー覚え書き
 密室殺人の作家
 入り口のない部屋
 「ビッグ・ボウ事件」
 本陣殺人事件
 グルーサムとセンジュアリティ
 魔術と探偵小説
 手品師クイーン
 「Yの悲劇」
 クイーン・カー交友記
 アメリカの探偵雑誌
 評論家ヘイクラフト
 爆笑探偵トリオ
 探偵小説の方向
 二つの角度から
 トリックの重要性
 一人の芭蕉の問題
 探偵小説の意欲
 「文学少女」
 探偵小説と芸術的なるもの
 探偵小説の定義と類別
 不可能説に関連して(抜粋)
 探偵小説に現れたる犯罪心理
 「赤毛のレドメイン一家」
 付録
感 想
 乱歩四冊目の随筆集。主に戦後、諸雑誌の求めに応じて執筆した探偵小説に関する小文を集めた、とある。本人曰く「本書は従前のものに比べて探偵小説味最も濃厚であって、随筆集と云わんよりは評論集である」とあるが、仰る通り評論集であり、タイトルも「探偵小説評論」あたりにすべきではなかったか。特に木々高太郎の探偵小説純文学論への返答ともいえる「一人の芭蕉の問題」は、今でも推理小説評論史に長く残る一文である。本格探偵小説を書きたいと思いつつなかなか書けなかった乱歩にとって、評論とはいえ本格探偵小説について大いに語ることは喜びであるとともに、忸怩たる思いもあっただろう。
備 考
 付録には「探偵小説研究文献」「世界探偵小説傑作表」「クイーン著書目録」「カー著書目録」が収められている。

作品名
探偵小説の謎
初 出
昭和31年6月、社会思想研究会出版部、現代教養文庫から発行。
目 次
 序
 奇矯な着想
 意外な犯人
 凶器としての氷
 異様な凶器
 密室トリック
 隠し方のトリック
 プロバビリティーの犯罪
 顔のない死体
 変身願望
 異様な犯罪動機
 探偵小説に現れた犯罪心理
 暗号記法の分類
 魔術と探偵小説
 明治の指紋小説
 原始法医学と探偵小説
 スリルの説
感 想
 「私の随筆の中から、探偵小説のトリックを解説したものを集めてみた」とある通り、トリックに関する評論を採録したもの。本書のために新しく「密室トリック」35枚を書き下ろしている。まだ社会派推理小説が出る前の時代であり、トリックという言葉に神秘性があったころだろう。単に乱歩の名前がほしかっただけかもしれないが、いずれにせよ本書は現代教養文庫の目録に長く残ることとなった。
備 考
 本書において再録ものについては省略されている。

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