江戸川乱歩推理文庫第51巻(講談社)
『幻影城』



【初版】1987年11月6日
【定価】580円
【乱歩と私】「乱歩の囁き」山崎洋子


【紹介】
 本書は乱歩がはじめて「探偵小説評論集」と銘うったもので、わが国の探偵小説評論としては画期的な大著である。また克明な収集家である乱歩が丹念に準備した研究文献目録や日本の叢書目録、雑誌目録など、探偵小説愛好家にはたいへんな便宜を与えている。ミステリーファンには必読の書である。
(裏表紙より引用)


【収録作品】

作品名
幻影城
初 出
昭和26年5月、岩谷書店から刊行。昭和29年7月、クロース装で誤植を訂正し、内容を若干増補した特装版が同社から刊行。
目 次
 再版に際して
 自序
 探偵小説の定義と類別
 二つの比較論
 倒叙探偵小説
 倒叙探偵小説再説
 英米探偵小説界の展望
 イギリス新本格派の諸作
 英米探偵小説評論界の現状
 英米短篇ベスト集と「奇妙な味」
 探偵作家としてのエドガー・ポー
 一般文壇と探偵小説
 続・一般文壇と探偵小説
 探偵小説純文学論を評す
 怪談入門
 「猫町」
 附録
  二つの会則
  ベーカー街不正規隊(イレギュラーズ)会則
  内外探偵小説研究文献目録
  ポーより現代までの路標的名作90冊
  欧米長篇探偵小説ベスト集
  欧米短篇探偵小説ベスト集
  探偵小説叢書目録
  探偵小説雑誌目録
感 想
 日本ミステリ評論の名著といえる一冊。海外作品の紹介もさることながら、やはり本書で最も注目すべきは「探偵小説純文学論を評す」だろう。いまでも取り上げられることが多い「一人の芭蕉の問題」を含むこの評論は、戦後ミステリの方向性の一つを決めるだけの影響力があったと思われる。もちろん純文学論を実践できるだけの作家がいなかった、ということも大きかったのだが。
 これ、というテーマを設定して書いた評論を集めたわけではないので、内容にばらつきがあるのは仕方がないが、それでも今後の探偵小説ということについて熱く語ったこの名著は、ミステリファンなら一度は目を通してほしいところ。今でも充分勉強に、そしてミステリへの情熱を湧き起こさせる一冊である。
備 考
 附録から「江戸川乱歩既刊随筆集目録」と「人名索引」が省かれている。
 昭和27年3月、第5回日本探偵クラブ賞受賞。

【江戸川乱歩推理文庫(講談社)】に戻る