作品名 | うつし世は夢 |
初 出 |
戦後の未完随筆を中心にまとめたもの。計101編収録。
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内 容 |
タイトルの「うつし世は夢」は、乱歩がよく筆にした「うつし世は夢、夜の夢こそまこと」より、中島河太郎が採用した。
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感 想 |
今回の乱歩文庫の目玉ともいえる、未完随筆集の一冊。文庫半ページ分しかないような随筆まで収録されているのだから、よくぞここまで探し当てたというべきか、それとも乱歩自身がこれだけ記録していたというべきか。 内容は他愛のないものが多いが、それでも乱歩という人がどう考えていたか、推理小説、探偵小説についてどう思っていたか、故郷についてどう思っていたか、作家などとの交友についてなど多岐にわたった内容が収録されている。短い文章だからこそ、今までにはなかった視点のものがあるかもしれない。乱歩を研究する人でないと、そこまで読まなくても……という内容ではあるが、読んでも退屈するようなことは無い。 本巻の最大の欠点は、目次に収録作品のタイトルが並べられていないこと。さすがに100編以上あるとまとめるのが大変だったのかもしれないが、重大な手抜きであることに間違いはない。多方面から指摘されたらしく(私は『ミステリマガジン』で新保博久が怒っていたのを読んだ記憶がある)、以後の評論集、随筆集にはタイトルがすべて目次に並べられている。 |