作品名 | 猟奇の果 |
初 出 | 『文芸倶楽部』(博文館)昭和5年1-12月号。 |
粗 筋 |
金と暇を持てあましている青年が刺激を求め猟奇に魅入られる。ある日友人とそっくりの男を見かけ追跡していくうちに妻と通じているのではないかとの疑惑にかられ、幽霊男を撃ってしまった。殺人者となった青年は奇蹟を売る男から声をかけられ闇の世界へ入り込む。一方幽霊男は……? 明知名探偵登場の長篇。 (裏表紙より引用)
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感 想 |
青木が友人であり科学雑誌の社長を務める品川とそっくりの人物を見かけるという冒頭は非常に魅力的なのだが、その後のだらだらした展開は、作者が言うように連載に追われて仕方がなく書いたとしか言いようがないもの。後半で明智が登場すると、前半の退廃したムードはどこかへ飛んで行ってしまうが、内容も支離滅裂でどうしようもない。乱歩長編のなかでも一・二を争う失敗作だと思うが、単行本では案外売れたとあるから不思議だ。
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備 考 |
前篇が「猟奇の果」、後篇が「白蝙蝠」と分かれている。当時編集長だった横溝正史の依頼を受けて連載したものだが、筋もなくやりかけたため連載途中で困ってしまい、見かねた横溝が「一そ題も替えて、『蜘蛛男』風のものにして下さい」と申し出て、乱歩も喜んで冒険物に変えた作品。「猟奇」という言葉は、『新青年』大正13年8月号に掲載された佐藤春夫「探偵小説小論」に出てくる。
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