天藤真推理小説全集11『わが師はサタン』



【初版】2000年9月22日
【定価】840円+税
【解説】新保博久
【底本】『わが師はサタン』(立風書房)および『闇からの狙撃者』(徳間文庫)

【収録作品】

作品名
わが師はサタン
初 出
『わが師はサタン』:1975年4月10日、立風書房より鷹見緋沙子名義で書き下ろし刊行。
「覆面レクイエム」:『瑠伯(ルパン)』(徳間書店)1980年夏季号(創刊号)に掲載。その後『闇からの狙撃者』(徳間文庫)に収録。
粗 筋
 謎の人物アスタロトを智慧袋に、正義感あふれる学生グループが金城学園大学の「革命」に乗り出した。手始めに乱行の悪名高い経済学部長夫人をノックアウトし、意気揚々と第二弾の計画へ駒を進める。ところが中盤に至って局面は急転、予想もしない殺人事件が待っていた!言い逃れようのない状況に追い込まれた学生たちは、千々に翻弄されながらも犯人を捜そうとするが…。鷹見緋沙子名義で発表された作品のうち天藤真の手になる、長編『わが師はサタン』と短編「覆面レクイエム」を収録。
(粗筋紹介より引用)
感 想
 天藤真、大谷羊太郎、草野唯雄のハウスネームだった鷹見緋沙子名義で書かれた長編に、短編「覆面レクイエム」を収録。ハウスネームを使っているためか、他の天藤長編と異なったトーンで書かれている。ユーモア味を抑え、エロティシズム度を増し、黒ミサというオカルトなムードを出すことには成功している。スムーズに読むことが出来るため気にはならないが、序章から事件の展開は強引そのもの。ここまで設計図通りに進むためには、犯人の超人的な努力が必要と思われる。また、殺人方法のカモフラージュもやや勇み足か。犯人、かなり自分を過信している計画である。
 むしろ短編「覆面レクイエム」の方が、天藤真のダークな部分を全面に押し出した佳作に仕上がっている。
備 考
 鷹見緋沙子名義で発表。天藤真が関与したのは本作に収録された長編1作、短編1作のほかには、草野唯雄との合作である「代理母」がある。

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