作品名 | 陽気な容疑者たち |
初出 | 1962年度、第8回江戸川乱歩賞最終候補作を改稿の上、1963年4月、東都ミステリー(東都書房)から刊行。 |
粗筋 |
山奥に武家屋敷さながらの旧家を構える会社社長が、まさに蟻の這い出る隙もないような鉄壁の密室の中で急死した。その被害者を取り巻く実に多彩な人間たち。事件の渦中に巻き込まれた経理事務所所員の主人公は、果たして無事、真相に辿り着くことができるだろうか? 本書は、不可能状況下で起こった事件を、悠揚迫らざる筆致で描破した才人天藤真の、記念すべき長編デビュー作。 (粗筋紹介より引用) |
感想 |
天藤真の長編デビュー作。史上最大の激戦と今でも語り継がれる第8回江戸川乱歩賞の最終候補作品。受賞作が戸川昌子『大いなる幻影』と佐賀潜『華やかな死体』、もう1つの最終候補作が塔晶夫(中井英夫)『虚無への供物』である。大下宇陀児が本作を第1位に推したが、受賞までには至らなかった。 密室事件そのものの謎についてはそれほど面白味があるわけではない。むしろその密室を打ち破るのに警察が苦労するのが面白いわけであるし、その間も容疑者たちが陽気にわいわい騒いでいるところに味がある。事件の謎を解き明かそうと孤軍奮闘する女史の姿も笑えるし、結末ではほろりとしてしまう。やや人情劇として流れているところが不満と言えば不満か。のちの天藤ならもう少し毒を効かしたラストにしていたと思うが。 天藤真の原点ともいえる作品である。奇想天外な事件、ユーモアで温かく包まれた文体、弱者への優しい眼差し、ちょっぴりほろ苦いスパイスなどは、いずれも後の天藤作品に繋がるものである。出版に当たってどれだけ改稿されたのかはわからないが、これだったら乱歩賞を受賞していてもおかしくない出来である。天藤作品を知るためにも、ぜひとも読んでほしい一冊である。 ただ疑問なのは、当初の計画における実行者は誰だったのだろう。 |
備考 | 1962年度、第8回江戸川乱歩賞最終候補作。天藤真長編デビュー作。英文タイトル"MERRY SUSPECTS"。 |