作品名 | 赤の組曲 |
初 出 | 『オール讀物』連載。加筆訂正の上1961年5月、桃源社より刊行。 |
粗 筋 |
「ビゼーよ、帰れ シューマンは待つ」という謎めいた新聞広告の背後には、美貌の人妻の失踪事件が絡んでいた。そして、それに続く連続殺人事件。赤いネグリジェと赤い日記帳……赤の連鎖が導く真相に挑む千草検事と野本刑事。 (粗筋紹介より引用)
|
感 想 |
前作『影の告発』に続き、千草検事が登場。これで土屋のシリーズ探偵が確定したという意味では記憶に残るのかも知れないが、内容としては「赤」の連鎖やビゼー、シューマン、悲愴交響曲などの道具立てがちょっと作りすぎといえるだろうか。ストーリーの作り方は過去の作品と特に変わるわけではないのだが。それにしても同情してしまいたくなる犯人像は、読んでいてちょっと辛くなる部分もある。本格推理作品と言うことを強調したいのなら、こういった点はマイナスな気もしないではないが、そこは本格推理小説は小説がベースになっていることを忘れないようにしているのだろう。せっかくのアリバイトリックが薄くなってしまった感があるのは残念だが。
|
備 考 |
作品名 | 針の誘い |
初 出 |
『宝石』(宝石社)1962年5月~12月連載。1963年、文藝春秋社より刊行。
|
粗 筋 |
製菓会社社長の娘が誘拐され、五百万円を要求する脅迫状が発見された。やがて犯人の指示に従って身代金を持参した母親が、指定の場所で現金を投げ出したところで刺殺される。異変に気づき、妻の許に駆けつけた夫と刑事は、だが犯人の姿を捉えることはできなかった! (粗筋紹介より引用)
|
感 想 |
誘拐をメインに据えながら、事件は身代金受け取り場所での殺害事件という不可能トリック。冒頭の謎は強烈だが、その後はいつもの通り千草検事たちによる地道な捜査と推理が繰り広げられる。今までの作品で見られたような社会的背景や犯人自体の悲劇がないため、事件のトリックと推理を楽しむことはできるが、最後のとってつけたような告白には違和感が残る。
|
備 考 |