スタン・リー『ライブラリー・ファイル』上下(創元ノヴェルズ)

「そんな馬鹿な」クーリッジは愕然とした。全世界の情報を収集、分析する究極の諜報機関<図書館(ライブラリー)>。館員の一人クーリッジは、秘密漏洩防止のための仲間の監視を命じられていたのだが、ある日、<ドクター>と呼ばれる館員が外部と通じているらしいということに気づく。アメリカ合衆国の最高機密を知りつくした12名のアナリスト――彼らの中に裏切者がいるというのか? 現代スパイ小説と国際謀略小説の妙味が渾然となった、衝撃の超大作登場。(上巻粗筋紹介より引用)
 東ドイツの国境地帯。ソビエト連邦が始めた駐留軍隊の増強は、エスカレートの一途をたどっていた。高まる東西間の緊張。切迫する第三次世界大戦勃発の危機。だがこのときのために、<図書館(ライブラリー)>はひとつの切り札を用意していた……! 一方クーリッジは、紆余曲折のあげく、ついに<ドクター>の正体を突き止めるに至ったが、そのために絶体絶命の窮地に立たされてしまう。はたして彼の運命は――そして全世界は、どうなってしまうのか。(下巻粗筋紹介より引用)
 1985年にアメリカのハーパー・アンド・ロウ社から発行。1989年7月翻訳。

 ええっと、いつ、なぜこれを買ったのか全然覚えていない。多分、主人公の設定が面白そうだと思ったからだったと思う。
 本当に全世界の情報を収集、分析する究極の謀報機関<図書館>があるとは思わないし、あったところで結局それを分析するのは人であって、その分析が必ず正しい結果になるとは限らない。とはいえ、そんな機関があってもおかしくはないと思わせるところが大国アメリカであるし、またもう一つは作者の筆だろう。特にゴミからその人となりだけでなく、ありとあらゆるところまで"分析"してしまう主人公が面白い。
 ただ、情報の分析だけならまだしも、なぜかスパイ捜しをする羽目になり、気がついたら第三次世界大戦の危機が迫っている事態になっているのだから恐ろしい。どこをどう間違ったらそうなるのかと思いたくなるような展開だが、途中で銃撃を受けるし、濃厚なベッドシーンが出てくるし、アクション小説顔負けの場面まで盛り込まれるのは、良く言えばサービス精神旺盛、悪く言えばやり過ぎ。途中でお腹いっぱいになってしまい、最後の方は胸焼けしてしまった。個人的にはこの半分ぐらいの量で、緻密な情報戦を読みたかったところである。
 そういえば創元ノヴェルズというレーベルがあったね、なんてことを無意味に思い出した一冊、いや二冊だった。



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