蘇部健一『六とん4 一枚のとんかつ』(講談社ノベルス)

 デビュー作から一応続いている保険調査員シリーズの「一枚のとんかつ」「大江戸5分30秒の壁」「新XXX殺人事件」の3本、最後のページがイラストで落ちがつく「犯行の印」「聖職」「ひとりジェンカ」「修学旅行の悪夢」「翼をください」「追われる男」「恋愛小説はお好き?」「琥珀の中のコートダジュール」の8本を収録。2010年、書き下ろし。
 まさかの「六とん」シリーズ最新作……といっても、ただタイトルにつけているだけじゃないか、などと言いたくなる一冊。せめて保険調査員シリーズで全部そろっていればまだしも、これではただの短編集じゃないか。収録されている短編も、蘇部じゃなかったら活字になることもなかっただろう。蘇部自身はぼやいているが、同じパターンばかりで飽きられているのも事実。ここまできたら、六とん5は長編にするしかない。最初から最後までバカミスに徹した会話を続ける本格ミステリ。これこそが、蘇部の最終駅だろう……って、勝手に作家の人生を終わらせるなよ。
 ということで、まだ固定ファンはいると思うので、がんばってね。




石崎幸二『記録の中の殺人』(講談社ノベルス)

「女子高生連続殺人事件」?――201X年9月、5人の女子高生の遺体が埼玉県山中、産業廃棄物の投棄現場で発見された。被害者の共通点は、生年月日が全員同じだということ。それから4ヵ月後、またも女子高生の遺体が東京と埼玉の県境にある産廃の現場で見つかる。被害者は同じく5人。全裸の上、手足を切断されていた……。凶悪な犯行に世間は大パニック! 犯人の次なる狙いは!?(粗筋紹介より引用)
 連続殺人犯ミキサーによる無差別殺人事件を避けるため、新潟県の深角姿島へ避難していた国会議員天羽総治朗の孫、結花に誘われ、石崎、ミリア、ユリ、仁美のミステリィ研究会メンバーは島へ行くことに。ところが結花、兄である聡が続けて殺害され、父総一の内縁の妻である戸沢裕子が犯行を告白した遺書を残して姿を消した。このメンバーが島へ行くと、必ず何かが起こる。
 2010年11月、書き下ろし。女子高生シリーズ7作目。

 連続殺人事件という物騒なストーリーかと思ったら、そちらはあくまで脇。本編は相も変わらず、島での殺人事件。本当に疫病神としか思えないな、ミステリィ研。犯人はバレバレなので、考える点は動機。正直言って異常な動機だが何となく受け入れてしまうのも、現実感がないこのシリーズならではか。
 ワンパターンすぎる石崎とミリアたちの会話だが、これもここまで続くとかえって楽しく感じるのは、どこかで毒されている? 結構好きなシリーズなので、もう少しペースを速くしてほしい。



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