求刑死刑・判決無期懲役【2001~2005年】






事件概要
罪 状
判 決
判決理由
備  考
O・T(53)  O被告は2000年2月13日夜、家政婦として住み込んでいたことのある元歯科医の女性(当時94)方に忍び込み、潜んでいたところを家政婦の女性(73)に見つかって騒がれたため、ガラス製の花瓶で頭を殴るなどして殺害。寝室で寝ていた元歯科医の女性も殺し、寝室や台所などにあった現金計約2万6000円を奪った。 強盗殺人、殺人他 2001年3月12日
名古屋地裁
石山容示裁判長
無期懲役
 裁判長は判決で「かけがえのない生命を奪われた2人の被害者の無念は筆舌に尽くしがたい。被害感情も厳しい。自己中心的で短絡的な動機にはくむべき事情もほとんどない」と指摘。死刑を選択しなかった理由について「事前に周到に計画された事件でなく、偶発的な要素がある。被告の健康状態が良くなかったことも事件の一因で、冷酷非情な人格とは断定できない。一生涯、反省と悔悟の日々を送らせるのが相当」と指摘した。検察側は強盗殺人罪の適用を主張したが、裁判長は家政婦の女性殺害について殺人罪を適用した。  
2002年3月29日
名古屋高裁
堀内信明裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は、被害者の一人について強盗殺人罪の成立を否定した一審判決の認定は相当と判断した。
上告せず確定。
M・Y(36)  岡山市のパチンコ店元店長で無職M被告は、同居していたトラック運転手の女性(一・二審懲役8年(求刑無期懲役)が確定)とともに1999年9月6日午前2時18分頃、かつて働いていたパチンコ店の駐車場で店の責任者の男性(当時41)を襲い、両手足をガムテープで縛った上、車のトランクに押し込み、倉敷市の海岸から車ごと海に落として溺死させた。この後、奪ったカギでパチンコ店の金庫などを開け、現金約1,064万円を奪った。
 他に無免許運転の余罪がある。
強盗殺人、建造物侵入、道路交通法違反、道路運送車両法違反、自動車損害賠償保障法違反 2001年3月29日
岡山地裁
楢崎康英裁判長
無期懲役
 被告側は起訴事実を全面的に認めた。
 裁判長は「完全犯罪、一獲千金を狙った短絡的犯行。殺害方法も極めて残忍、冷酷で厳しく非難されなければならない。犯行の首謀者であり死刑選択もありえない事案ではないが、深く反省している」と述べた。
 
2002年2月27日
広島高裁岡山支部
片岡安夫裁判長
検察・被告側控訴棄却
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 検察側は量刑不当を理由に控訴。被告側は殺意と計画性を否定し、被害者の妻と文通をするなど反省していることから酌量の余地があると控訴した。
 裁判長は、犯行を深く反省していることと、パチンコ店を辞めさせられたのは、トラック運転手の女性と中学の頃から性関係を強要してきた女性の母親の愛人が店に嫌がらせをしたためであることを考慮すると、死刑を適用することにはなお、躊躇せざるをえないと判断。しかし、酌量減軽すべき理由もなく、一審判決は不当では無い、とした。
上告せず確定。
N・K(39)  N・Kは1996年7月26日夜、名古屋市中区栄のマンション7階で、帰宅した写真店経営者(当時70)と妻(当時66)の胸などを文化包丁で刺して殺害、現金約10万円などを盗んだ。N・Kはこのほか、強盗致傷、強姦、窃盗、覚せい剤取締法違反の罪に問われた。 殺人、窃盗他 2001年4月18日
名古屋地裁
山本哲一裁判長
無期懲役
 捜査での簡易鑑定は責任能力を認め、一審での2回の精神鑑定は、刑事責任を問えない「心神喪失」と、責任能力を限定する「心神耗弱」に結論が分かれた。
 裁判長は「強固な殺意に基づく残虐な犯行で、非情さは際立っている。被害者の苦痛、無念さは筆舌に尽くし難く遺族の憤りは計り知れない」と指摘する一方で「極刑に処するべきだが、覚せい剤使用による影響で心神耗弱状態だった」と極刑を回避した。
 Nは前科処分歴九犯。1993年10月15日に満期出所していた。
2002年5月9日
名古屋高裁
堀内信明裁判長
検察側控訴棄却
 「ビルの屋上から隣のビルに飛び移るなど犯行時の行動は異常で、覚せい剤の影響があった」と判断。検察側の「覚せい剤乱用で殺傷事件を起こすかもしれないことを熟知していた」との主張も採用できないと退けた。
上告せず確定。
N・N(34)  オウム真理教元幹部N被告は以下の4つの事件で起訴された。(1)1993年11月からのサリン生成プラント建設。(2)1994年6月27日、長野県松本市でサリンを撒布し住民7人を殺害、被告は実行現場の警備役を担当。(3)1994年7月10日、信者の逃亡を手助けしようとした元信者の首をロープで絞めて殺害、遺体を焼却。(4)1995年2月28日、逃亡した女性信者の所在を聞き出すために信者の実兄である目黒公証役場事務長を逮捕監禁、死亡させ、遺体を焼却。 殺人、殺人損壊、殺人未遂、逮捕監禁致死、殺人予備 2001年5月30日
東京地裁
永井敏雄裁判長
無期懲役
 裁判長は「各事件はいずれも教団で絶対的な存在だった松本智津夫被告の指示で実行され、N被告は教団の仕事として犯行に加担し固有の動機はなかった」と指摘。一方で「被告が今も独自の宗教観にとらわれ、生じた結果を現実的なものと受け止めておらず、真しな反省は認めがたい」としたが「首謀者の松本被告とは行為の実質に大きな差異があることは否定できない」とし「極刑がやむを得ない場合とまでは認めることはできない」と結論付けた。  
2003年9月25日
東京高裁
仙波厚裁判長
検察・被告側控訴棄却
 検察側は一審で未必の故意にとどまるとされた判決について「確定的殺意による犯行。死刑とすべきだ」と主張。弁護側は「殺意はなく、今は反省している」と有期刑を求めた。
 判決理由で裁判長は「サリンをまくことは犯行前に認識したが、ボツリヌス菌培養など多くの失敗経験から多数の死傷者が出ることを見越していたとまではいえず、確定的な殺意とするには疑いが残る」と述べた。
2006年9月4日
最高裁第二小法廷
古田佑紀裁判長
被告側上告棄却、確定

横田謙二(52)  作業員横田被告は1999年1月9日、家事手伝いの女性(当時21)を誘い、東京都足立区の自宅で2万円の小遣いを渡したが、「これっぽっち」などと言われ腹を立て、女性を絞殺した。13日~14日ごろにかけて、自宅のふろ場で女性の遺体を刃物でバラバラに切断して、それぞれポリ袋に包んだ。15日~16日ごろにかけて計3回にわたり、自転車で足立区と埼玉県川口市内の荒川左岸にビニール袋に包んだ遺体を捨てた。胴体は見つかっていない。 殺人、死体損壊・遺棄 2001年6月28日
さいたま地裁
若原正樹裁判長
無期懲役
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 裁判長は「社会復帰して1年足らずで犯した大罪だが、犯行は偶発的」と述べた。  78年9月、千葉県松戸市で知人の男性(当時60)を絞殺して現金などを奪った罪で千葉地裁松戸支部で無期懲役の判決を受け、98年1月仮出所。2008年現在、再審請求中。
2002年9月30日
東京高裁
高橋省吾裁判長
一審破棄・死刑
 裁判長は「(羽振りがよいように装った)虚言に満ちた生活で自らが招いたもの。不合理な弁解をしており、真に反省しているとは言えない」「仮出獄から1年足らずで殺人を犯すなど、ささいなことに過剰に反応する性格は矯正は事実上不可能。被害者が1人でも、極刑はやむを得ない」と述べた。 とした。
2002年10月25日
上告取り下げ、死刑確定

小森淳(25)/芳我匡由(25)  少年集団10人が、集団リンチ事件を引き起こした。概要は以下。
【大阪事件】1994年9月28日、大阪市中央区の路上で通りがかりの大阪府柏原市の無職(当時26)を同区内のたまり場に連れ込み、絞殺。遺体を高知県の山中に遺棄。(殺人、死体遺棄)
【木曽川事件】同年10月6日夜、愛知県稲沢市の知人宅を訪れた同市の型枠解体工(当時22)をビール瓶などで殴打。翌7日未明、同県尾西市の木曽川堤防でさらに暴行、河川敷に放置して殺害。(傷害、傷害致死)
【長良川事件】同7日、稲沢市のボウリング場で3人に因縁をつけ、車で連れ回し暴行、11,000万円を強奪。翌8日未明、岐阜県輪之内町の長良川河川敷で3人のうち、尾西市の会社員(当時20)と同市のアルバイト(当時19)を金属パイプで殴り殺した。大学生は大阪市で解放。
 起訴された8人のうち、小森被告ら3人を除く5人は有罪判決が確定。また2人は少年院送致されている。
強盗殺人、殺人、傷害致死、死体遺棄、傷害、強盗致傷、監禁 2001年7月9日
名古屋地裁
石山容示裁判長
無期懲役
 小林正人被告は求刑通り一審死刑判決。一審判決で木曽川事件については殺人ではなく、傷害致死を適用。小森被告、芳我被告は追従的立場だったとして無期懲役判決。  同一の少年事件で、複数の被告の死刑が確定したのは戦後初。再審請求中。
2005年10月14日
名古屋高裁
川原誠裁判長
一審破棄・死刑
 木曽川事件は殺人を適用。3被告の果たした役割に差はないとした。
2011年3月10日
最高裁第一小法廷
桜井龍子裁判長
被告側上告棄却、確定
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 争点となった3人の役割については、小林被告を「犯行を強力に推進し、最も中心的で重要な役割を果たした」と認定した。一審では従属的とみなされた他の2被告については、小森被告を「小林被告とともに主導的立場で犯行を推進した」とし、芳我被告も「進んで殺害行為に着手するなど主体的に関与し、従属的とは言えない」と指摘、いずれも積極的に関わったと認めた。そして「3人が少年だったことや場当たり的な犯行、遺族に謝罪の意を示していることなどを最大限に考慮しても、死刑はやむを得ない」と述べた。
H・T(49)/O・M(51)  測量会社事務所に勤務していたH被告は約束の給料をもらえないまま働かされ、逃げ出しても連れ戻されたため社長夫婦の殺害を計画。H被告はO被告とともに1999年8月30日午後6時40分ごろ、同市東原の測量会社事務所で、社長(当時47)の首を絞めて殺し、遺体を茨城町の山林に埋めた。さらに、同年9月6日午前9時ごろ、栃木県湯津上村の路上で、社長の夫である金融業者(当時48)を棒で殴って殺し現金7万円入りの財布を奪い、遺体を同県黒羽町の山林に埋めた。H被告は住宅購入や事務所の運転資金などで銀行やサラ金から合計約7,686万円の借金を、またO被告もギャンブルと住宅購入資金として、サラ金などから約340万円の借金をそれぞれ抱えていたが、被害者の社長夫婦がその多額の借金を立て替えていた。 強盗殺人、死体遺棄他 2001年7月26日
水戸地裁
鈴木秀行裁判長
無期懲役
 裁判長は「刑事責任は極めて重大」と指摘したが、暴力団関係者と付き合いのあった社長夫婦から執ように脅されていた事情などを考慮し、「極刑以外にないと断ずるには躊躇を覚える」と述べた。  
2002年11月27日
東京高裁
村上光鵄裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は、両被告に約束通りの給料が支払われなかった事情を考慮し、「被害者に恨みを持ったことが不条理とはいえず、極刑とするにはちゅうちょせざるを得ない」と述べた。
上告せず確定。
I・Y(29)  人材派遣業I被告は1997年4月21日深夜、人材派遣会社設立の出資金を巡ってトラブルになった福井市の日系ブラジル人の男性(当時30)方で、男性と同居人(当時30)の胸や背をナイフで刺して殺害、遺体を福井県丸岡町の山中に捨てた。 殺人、死体遺棄 2001年8月2日
福井地裁
松永真明裁判長
無期懲役
 被告側はアリバイを示して無罪を主張。物的証拠は乏しい。検察側が凶器と位置付けたサバイバルナイフは「凶器とは認められない」と裁判所は否定。凶器を特定しないまま殺人を認定した。裁判長は「犯行は残忍で悪質だが、犯行時24歳で、矯正の可能性がないとは言い切れない」とした。  
2003年10月30日
名古屋高裁金沢支部
安江勤裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は「状況証拠や証拠隠滅工作から、I被告の犯行を強く推認できる。交際相手の女性の証言は信用できず、遺体の搬送や投棄は単独でも可能」と述べ、被告側の「犯行時間帯は恋人と一緒にいた。犯行や証拠隠滅は単独では不可能」とする主張を退けた。そして「証拠隠滅工作などから被告人の犯行と認めるべきだが、矯正不可能とはいえない」として、一審判決を支持した。
2004年7月29日
最高裁第一小法廷
横尾和子裁判長
被告側上告棄却、確定

M・A(41)/S・K(38)  自動車部品販売会社社長M被告、会社員S被告は、中古車販売業川村幸也被告及び同従業員野村哲也被告の指示により、他の2被告とともに2000年4月4日午前0時半頃、約束手形金240万円の支払いに応じなかった名古屋市の喫茶店経営(当時58)を待ち伏せて襲い、約2週間のケガを負わせた。だが逃げてしまったため、一緒にいた妻(当時64)と妻の妹(当時59)を乗用車ごと拉致。現金24,000円などを奪った。さらにM、S両被告は瀬戸市の山林で二人をドラム缶に押し込み、ガソリンをかけて焼死させた。さらに遺体をチェーンソーなどで切断、山中に放棄した。 強盗殺人、死体損壊・遺棄、強盗致傷 2002年2月19日
名古屋地裁
三宅俊一郎裁判長
無期懲役
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 M、S両被告の弁護人は「川村、野村両被告に5,000万円の生命保険金を掛けられ、『言う通りにしないと殺す』と脅されて殺害を強要された」として、刑事責任の軽減や情状酌量を求めていた。  川村幸也被告及び野村哲也被告は2006年6月9日、死刑が確定。2009年1月29日執行、川村被告44歳没、野村被告39歳没。
2003年6月19日
名古屋高裁
小出☆一裁判長(☆は金ヘンに享)
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は「死刑求刑にも相当な理由はあるが、主犯二人と刑責は同一ではない」と述べた。
2004年2月3日
最高裁第三小法廷
藤田宙靖裁判長
被告側上告棄却、確定

C・K(54)  日立市のC被告は、前妻と離婚したのは隣人で仲人だった漁業Iさん夫妻のせいだと逆恨みし、一家を道連れに自殺しようと計画。2000年3月1日未明、Iさん方に侵入しガソリンをまいてライターで火を放ったうえ、物音で起きてきた家族にも次々とガソリンを浴びせた。Iさんの妻(当時71)は、やけどのため翌月に死亡、長女と長女の夫、長女の娘の3人が顔や手などに大やけどを負った。Iさんは漁に出ており留守だった。 殺人、現住建造物等放火他 2002年3月4日
水戸地裁
鈴木秀行裁判長
死刑
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 裁判長は「確定的殺意に基づく理不尽で残虐極まりない犯行」と指弾。「不合理な弁解や自己正当化に終始し、今後も被害者への慰謝に努めることは期待出来ない」と理由を述べた。弁護側は、C被告が心神耗弱状態だったとして情状酌量を求めたが、裁判長は「妄想は重症ではなく、完全な責任能力があった」と退けた。  
2003年12月9日
東京高裁
山田利夫裁判長
一審破棄・無期懲役
 裁判長は「冷酷かつ残忍な犯行だが、犯行当時は妄想性障害で心神耗弱の状態にあった」と述べた。争点だった事件当時の被告の精神状態について、判決は「被害者夫婦が信仰する宗教団体から、組織的嫌がらせを受けているという妄想に支配されていた」と指摘し、限定的な責任能力しか認めなかった。
2004年6月22日
最高裁第三小法廷
浜田邦夫裁判長
被告側上告棄却、確定

I・Y(49)  2000年7月27日、漁師I被告は、東京湾羽田沖で千葉県富津市の3人が乗り込んだ漁船にレジャーボートで襲撃し、船長(当時51)、乗組員(当時29)を刃物で刺して海に突き落とし死亡させ、乗組員(当時50)に重傷を負わせたうえ、逃走した。I被告は船長から500万円を借りて返済を迫られていたので、漁船の差し押さえを免れようとして犯行に及んだものだった。二人の遺体は、31日に発見された。 殺人、殺人未遂 2002年3月12日
東京地裁
秋吉淳一郎裁判長
死刑
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 裁判長は「借金の返済期日前に被害者を殺害し、漁船の差し押さえを免れようとした極めて短絡的で身勝手な犯行」と指摘。さらに「逃げ場のない場所を選び、鋭利な刃物で執ように攻撃を加えるなど、極めて残虐な犯行」「発覚を防ぐため、同乗していた2人の殺害を決意した。動機に酌むべき事情は全くない」と述べた。  
2003年11月11日
東京高裁
安広文夫裁判長
一審破棄・無期懲役
 裁判長は「借金のかたに漁船を取られることを恐れての計画的な犯行で責任は極めて重大だが、1人目を殺害した後は積極的な殺意は失っており、最後まで執拗な犯行だったとは言えない」と指摘。その上で、「死亡した被害者が2人の同種事件と比較しても極刑にためらいを感じざるを得ず、終生贖罪させるのが相当だ」と結論づけた。
上告せず確定。
O・K(24)  2001年8月8日午後2時半頃、北海道広尾町に住む無職O被告は、金に困って自宅の2軒隣の重機運転手(47)方に盗みの目的で侵入。子供たちに見つかり、持っていたカッターナイフで長女(当時6)に軽傷を負わせた。ナイフが折れたので台所の包丁を持ち出し、二女(当時5)と長男(当時2)を刺殺した。 住居侵入、殺人、殺人未遂 2002年3月18日
釧路地裁帯広支部
榎戸道也裁判長
死刑
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 裁判長は争点となった下着の持ち出しについて、「逃走後、直ちに投棄したもので、下着類から生じる効用を利用、享受する意思は認められない」として、窃盗が成立しないと認定し、殺人罪と同未遂罪を適用した。公判廷で被告が「あまり思い出したくない」と供述したことを示し、「結果や責任の重大性を直視せず、反省の真摯さに疑問を抱かざるをえない」と指摘。自首については「自責の念からとはいえない」と断じた。そして「人間性の一片もうかがうことはできず、残虐非道の極みというほかない」と断じた。  検察側は、下着を盗んでいることから強盗殺人で起訴。遺族がO被告を相手取り2000万円の損害賠償を求めた民事訴訟は2003年8月21日、同支部で和解している。
2003年9月2日
札幌高裁
仲宗根一郎裁判長
一審破棄・無期懲役
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 判決では、被告が事件後に自首していることについて「理由や経緯にかかわらず、十分考慮しなければならない」と指摘。さらに、(1)「自分も死刑になった方がいい」と自責の念にかられた言葉を述べたり、被害者のめい福を祈るなど真しな反省悔悟の念を抱いている(2)平素の行状に格別粗暴非道な点はなく、26歳で矯正の余地がある(3)計画性がない(4)民事訴訟で和解している――などと情状を挙げた。そのうえで「真しな反省悔悟の念が認められ、著しい犯罪性向はなく若年で矯正の余地が十分あり、極刑がやむを得ないとは言えない。被告には終生、被害者のめい福を祈らせ、しょく罪に当たらせるのが相当」と結論付けた。
上告せず確定。
O・T(45)  自称デザイナーO被告は、派手な生活を維持するため、証券会社の課長代理に顧客から金を集めさせ、これを奪うことを計画。1995年9月ごろ、架空の出資計画を作り上げ、課長代理に持ち掛けた。
 出資計画を信じた課長代理が顧客に説明し、出資金4億1,900円を集めた。O被告は1996年1月に横浜市内でナンバープレートを盗んだほか、山梨県小淵沢町内の貸別荘を借り、遺体を埋める場所を下見するなど犯行を準備。1996年2月5日、O被告は「小淵沢でミーティングをする」とだまして課長代理を連れ出し、午後10時すぎに山梨県内の中央自動車道小淵沢インターチェンジ近くに止めた自分の車の中で、課長代理(当時33)の首をロープで絞めて殺害、現金を奪い、遺体を長野県富士見町の山林に埋めた。O被告は事情聴取中の1996年9月25日より、狂言誘拐事件を起こした。11月には自分で指を切って自宅に送るなどの工作も行っている。
強盗殺人、窃盗、有印私文書偽造他 2002年5月8日
東京地裁
岡田雄一裁判長
無期懲役
 被告側は強盗殺人、死体遺棄について無罪を主張した。
 裁判長は「完全犯罪を企て、周到な準備に基づき実行した計画的な犯行。労せずして一挙に多額の現金を得ようとした動機に酌量の余地はなく、非道の極み」と指摘したが「更生が全く期待できないわけではなく、極刑がやむを得ないと断じるには躊躇を感じる」と述べた。
 
2004年9月9日
東京高裁
河辺義正裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は「事件の重大性や計画性、遺族感情に照らせば、死刑の選択もあり得るが、被害者が1人にとどまり、極刑がやむを得ないとまではいえない」と述べた。
2006年9月12日
最高裁第三小法廷
上田豊三裁判長
被告側上告棄却、確定

U・Y(44)  元山口組系暴力団組員U被告は、1999年3月28日夜、神戸市内でクレーン運転手(当時41)を短銃で射殺した。また3月28日から4月14日にかけて、(1)乗用車を盗んだ。(2)大阪市此花区内でクリーニング店主に拳銃を発射し重傷を負わせた。(3)時計宝石店で、経営者男性に向け拳銃を発射した。(4)理容店で、経営者男性に拳銃で重傷を負わせた。 器物損壊、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反、建造物侵入、窃盗、道路交通法違反、住居侵入、殺人、火薬類取締法違反 2002年5月8日
大坂地裁
米山正明裁判長
無期懲役
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 植村被告は「全く身に覚えがない」と否認した以外はほとんど黙秘を貫いた。
 判決で裁判長は連続銃撃事件について、共犯者の元組員が「U被告の犯行」とした証言が具体的で詳細▽犯行車両を被告が運転する姿が目撃されている-ことなどから「実行犯」とした。また、不明だった連続銃撃事件の動機については「組関係者への報復のため、組事務所のある地区で無差別犯行に及んだ」と指摘。神戸の事件も「被害者にけがを負わされたことへの復しゅうと推測できる」と述べた。そして「無差別に面識のない者を襲うなど残忍かつ冷酷で、反省も全くないが、改善の余地が皆無とは言えず、生涯をかけて償うべきだ」と述べた。
 共犯者の元組員は殺人未遂ほう助、犯人隠匿などで起訴。2000年6月20日、大阪地裁で懲役6年(求刑懲役10年)が確定している。
2003年7月15日
大阪高裁
白井万久裁判長
検察・被告側控訴棄却
 検察側は「地域住民を恐怖に陥れた犯行で極刑にすべきだ」として控訴。被告側は無罪を主張して控訴した。
 裁判長は「(被告の逃走を助けたとされる)別の元組員の証言は信用できる」と一審の判断を追認。検察側控訴については「死刑以外は許されない事案とまでは言えない」と述べた。
2006年3月20日
最高裁第二小法廷
裁判長名不明
被告側上告棄却、確定

Y・K(53)  暴力団元幹部Y被告とM被告は、2001年8月18日午後6時すぎ、東京都葛飾区の斎場で、別の暴力団幹部の通夜に出席していた暴力団会長(当時52)と別の暴力団総長(当時57)の2人の頭や背中を拳銃で撃ち殺害したほか、別の暴力団幹部にも重傷を負わせた。 殺人、銃刀法違反他 2002年5月10日
東京地裁
八木正一裁判長
無期懲役
 裁判長は「親分を守るため、その命を狙っているという者を殺害するという動機は法秩序に真っ向から反し、卑劣で危険な犯行」と指摘。しかし「事件は被告らの判断ではなく、組の幹部の指示で起こされた疑いが強い。矯正の可能性がないと断定することは困難で、極刑がやむを得ないとまでは言えない」と述べた。  M被告は求刑無期懲役に対し、懲役20年が二審で確定。Y被告は1977年9月8日、群馬県前橋市の繁華街で対立する暴力団組員を射殺。前橋地裁で懲役13年の判決を受け服役。89年5月に仮出獄していた。
2002年12月25日
東京高裁
中川武隆裁判長
検察・被告側控訴棄却
 一審は減軽理由として「危険を覚悟して実行したもので、利欲的動機とは言えない」と述べたが、控訴審は「必ずしも賛同できない」と退けた。
上告せず確定。  
N・T(45)  元建設会社社長N被告は自分の借金返済のため、東京都江戸川区に住む知人のマージャン店店長の女性(当時49)殺害を計画。1999年8月24日夜、店長宅を訪ね、頭部を鈍器で十数回殴打し、首をタオルで絞め、両手首の内側を切るなどして殺害した。その上で、店長が同被告に貸すために用意した現金200万円を奪い、持参したガソリンを室内にまいて放火、室内の一部を焼いた。 強盗殺人、現住建造物等放火 2002年8月30日
東京地裁
池田修裁判長
無期懲役
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 被告側は無罪を主張していたが、裁判長は被告が事件当日にガソリンを購入していたことや、血を洗い流したとみられる紙幣を所持していたことなどから、同被告の犯行と認定。その上で「残虐な犯行で、反省もしていない」と述べた。しかし「同種事案の量刑などを考慮すると、死刑には躊躇を覚える」と無期懲役にした。  被告側は捜査段階から無罪を主張。
2004年7月14日
東京高裁
原田国男裁判長
検察・被告側控訴棄却
 検察側は量刑不当を主張、被告側は無罪を主張した。
 裁判長は被告側の主張に対し、「間接事実を総合して被告の犯行と認めた一審判決は正当」と述べた。また検察側主張については「死刑はあくまで例外的なもの。強盗殺人の被害者は1人であり、無期懲役が相当だ」と退けた。
2005年3月8日
最高裁第一小法廷
島田仁郎裁判長
被告側上告棄却、確定

M・K(31)  無職M被告は2000年10月19日夜、通りすがりに見かけた東京都板橋区の女性会社員(当時26)を気に入り、女性の自宅に4回にわたって侵入。1、2回目は女性に叫ばれて逃走し、3回目は不在だった通帳やパスポートをいったん奪い、その後返却した。4回目となる12月16日午前1時30分ごろ、金を盗もうと侵入したが気付かれたため首をタオルで絞めて殺害。現金1,500円が入った財布や携帯電話などを奪った。 住居侵入、強盗殺人、強盗強姦未遂、窃盗、傷害、強姦未遂 2002年9月4日
東京地裁
木口信之裁判長
無期懲役
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 裁判長は判決理由で「自己の性欲や金銭欲を実現するため、命を奪うこともためらわない非情な犯行。悪質さは言葉に尽くしがたい」と指摘。しかし「殺害された被害者が1人で、被告なりに罪を自覚している」などと死刑の適用を回避した。  
2003年10月22日
東京高裁
白木勇裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は「欲望の赴くまま何度も侵入し、命ごいした被害者を殺害した凶悪かつ重大事案」と指弾。「被害者が1人でも死刑を求める検察側の主張はもっともだが、真剣に反省するようになっており、無期懲役を是認できないとまではいえない」と述べた。
2005年4月12日
最高裁第三小法廷廷
金谷利広裁判長
被告側上告棄却、確定

M・M(62)  無職M被告は、2001年5月4日夕、かつて住んでいた三原町のマンションに入り、顔見知りだった3階のパート従業員の女性(当時35)宅に侵入。帰宅した女性をひもで縛り現金やキャッシュカードを奪った。また南被告は女性の部屋に居座り、5日午後6時ごろ、女性をベッドの枕に押しつけ窒息死させたうえ、6日午前、部屋に火をつけた。 住居侵入、強盗殺人、強盗強姦未遂、現住建造物等放火、死体損壊、窃盗、窃盗未遂 2002年10月22日
神戸地裁
杉森研二裁判長
無期懲役
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 裁判長は「犯行は卑劣かつ計画的。被害者の苦痛や無念さは想像するに難しくなく、遺族らが極刑を望むのは当然のこと」と指摘した上で、「殺害を長時間ためらうなど、事前の犯行計画を冷徹に実行したとは必ずしも言えず、十分ではないが反省の態度を示している」などと死刑を選択しなかった理由を述べた。  
2003年7月17日
大阪高裁
裁判長名不明
検察・被告側控訴棄却
 判決理由は不明。
2003年12月18日
最高裁第二小法
北川弘治裁判長
被告側上告棄却、確定

E・Y(37)  農林水産省京都食糧事務所職員だったE・Y被告は、パチンコなどのギャンブルで作った数百万円の借金を巡り妻(当時33)と不仲になったうえ、以前から交際していた女性と再婚するため、妻と長男(当時5)の殺害を計画。2001年12月2日午前7時半頃、和室で寝ていた妻の首を両手で絞めて殺害、居間でテレビを見ていた長男の首を背後から絞めて殺害した。その後、妻の首を台所の包丁で切り、包丁を手に握らせて無理心中を偽装した。 殺人 2002年12月18日
京都地裁
竹田隆裁判長
無期懲役
 E・Y被告が犯行後、妻の首を包丁で切るなどして無理心中を偽装したことに対し、「偽装工作に長男の死を利用し、犯行後に交際女性と会うなど、情状も極めて悪い」と指摘した。長男殺害について「無限の可能性を秘めた息子の将来を一瞬で奪ってしまい、父親とは思えない非道な選択」と厳しく非難した。しかし、取り調べ段階で犯行を認め反省しているとして、「生涯をかけて2人に対する罪を償わせるのが相当」と判断した。
2003年8月28日
大阪高裁
那須彰裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は判決理由で「極めて自己中心的な犯行」としながらも「不倫やギャンブルなどで妻に責められ、精神的に追い詰められた状態にあった。長男の殺害を一度ためらうなど周到に計画された犯行とは言えず、更生の可能性も認められる」と述べた。
上告せず確定。
K・A(54)  会社役員K被告は2000年8月12日、借金の返済などで金に困っていたことから、妻(一審懲役20年判決)と共謀して保険金殺人を計画。社員の男性(当時35)に8社分1億4500万円の生命保険をかけ、廃品回収業の男(家宅捜査中に逃走しようとして転落死)に依頼し、男性を殺害させた。また別の知人の男二人と共謀し、西区の無職女性を立ち退かせようとして2000年2月16日、ガソリンをまいて女性宅に放火し、約230平方メートルを全焼させた。 暴力行為等処罰に関する法律違反、脅迫、殺人、詐欺未遂、現住建造物等放火 2003年1月29日
広島地裁
小西秀宣裁判長
無期懲役
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 裁判長は「犯行は計画的で悪質だが、被害者が1人というのは(過去の)刑の均衡性からみて、ただちに死刑にはならない」と述べた。  控訴審初公判で、被告は臓器提供の意思を示した手紙とドナーカードを証拠申請、採用された。
2004年5月27日
広島高裁
久保真人裁判長
検察・被告側控訴棄却
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 裁判長は「暴力団からの借金返済のためなどに計画した保険金殺人。動機は極めて身勝手で酌量の余地はない」と指摘。「殺人の被害者は1人で、極刑にすべきとまでは断定しがたい」として死刑を選択しなかった。
上告せず確定。  
Y・R(44)  愛人関係にあった佐賀県鹿島市の古美術商外尾計夫被告と元生命保険会社営業職員Y被告は、1992年9月11日未明、佐賀県太良町の海岸で睡眠導入剤などで眠らせたY被告の夫(当時38)を水死させ、保険金約1億円をだまし取った。
 1998年10月27日、長崎県小長井町の海岸で、Y被告の次男の高校生(当時16)に睡眠導入剤入りのカプセルを飲ませ、海に放り投げて殺害、保険金3,500万円を騙し取ろうとした。
 他にも鹿島市内の女性宅に押し入り、現金約13万7千円などを強奪していた。
暴力行為等処罰に関する法律違反、脅迫、殺人、詐欺未遂、現住建造物等放火 2003年1月31日
長崎地裁
山本恵三裁判長
死刑
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 裁判長は夫殺害について「発案・主導したY被告の方が責任が重い」▽次男殺害については「両名が一体となって実行したもので、刑に軽重の差はつけられない」との判断を示した。また、Y被告側が「残された被告の2人の子供も極刑を望んでいない」と情状酌量を求めていたことについては「Y被告が死刑になれば(2人の子供は)実父と兄弟を殺害されたうえ、実母までなくすことになるが、(酌量の)評価には一定の限界がある」と述べた。しかし、裁判長はY被告の長男や長女らによる母親の助命嘆願などを配慮。判決宣告後、死刑をやむなく選択したとして、控訴するよう呼びかけていた。  外尾計夫被告は2008年1月31日、被告側上告棄却、死刑判決が確定。
2004年5月21日
福岡高裁
虎井寧夫裁判長
一審破棄・無期懲役
 裁判長は、夫殺害事件では夫が家庭を顧みなかった点などを指摘し「犯行に至った経緯には一片の同情があってもよい」とした。一審は「Y被告主導」としていたが、裁判長は「両被告の果たした役割に大きな違いはない」と述べた。さらに次男殺害についても、外尾被告から繰り返し誘われたことや、外尾被告が次男を殺そうとするのを度々妨害した点を挙げ「人間性と更生可能性を考える上で、十分斟酌するに値する」と判断。Y被告の2人の子供が極刑回避を求める嘆願を出していることも考慮に入れ、「責任は重大だが、それぞれに酌むべき点があり、原判決の量刑は重過ぎる」と結論付けた。
2005年10月25日
最高裁第一小法廷
島田仁郎裁判長
被告側上告棄却、確定

A・K(32)  パチンコの出玉を不正操作する「ゴト師」グループのメンバーA被告、S被告はリーダーの男性(当時36)と、ナンバー2の男性(同30)に黙って他の2名と手を組み、パチスロ機を不正に操る装置「裏ロム」を仕掛け、稼ぎを得ていた。この行動がリーダーに発覚し暴行を受けたため、恨みを晴らすのとグループを乗っ取る目的で殺害を計画。2001年2月7日未明、リーダーら2名の首を絞めて殺害し、計約120万円を奪い、2人の遺体を登別市内のトレーラー荷台に遺棄した。 強盗殺人、死体遺棄、窃盗他 2003年2月14日
札幌地裁
遠藤和正裁判長
無期懲役
 裁判長は「動機に酌量の余地はなく、犯行は残虐非道だが、被害者らが殺害される一因は、反社会的集団で活動したことにあり、典型的な強盗殺人と同列視できない」と指摘した。  S被告は求刑通り無期懲役判決が一審で確定。共犯2名は一審懲役15年判決(求刑無期懲役)が二審で確定。
2004年3月22日
札幌高裁
長島孝太郎裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は「リーダーに対する不満や憤りなどが募り、犯行に及んだ。金品目的が中心の典型的な強盗殺人事件と同列視できない」と指摘した。
上告せず確定。
Y・A(31)  交際していた庄子幸一被告とY被告は共謀して、2001年8月28日、神奈川県大和市の主婦(当時54)の家にて刺殺、現金約23万円とキャッシュカードなどを奪った。同年9月19日、同市の主婦(当時42)の家で主婦の手足や顔に粘着テープを巻き、浴槽内に顔を押しつけて窒息死させ、現金6万円と通帳などを奪った。被害者はどちらもY被告の顔見知りだった。 強盗殺人他 2003年4月30日
横浜地裁
田中亮一裁判長
無期懲役
 Y被告については「庄子被告の指示に従い行動した」と情状を酌んだ。  庄子幸一被告は2007年11月6日、最高裁で死刑が確定。2019年8月2日、執行、64歳没。
2004年9月7日
東京高裁
安広文夫裁判長
検察側控訴棄却
 検察側は量刑不当を訴えたが、「事件は庄子被告が発案、主導したもので、庄子被告に利用された面があることも否定できない。Y被告の更生が不可能とはいえない」と指摘して退けた。
2005年1月25日
被告側上告取り下げ、確定。

N・S(63)  養鶏場を経営しているN被告は、従業員だったF被告に頼み1989年4月5日午後9時20分ごろ、住込従業員方に放火させ、従業員の妻(当時48)を焼死させ、従業員にも4カ月のやけどを負わせた。N被告は従業員夫婦や住宅にかけた保険金計2773万円余を入手し、F被告に報酬として現金300万円を渡すなどした。 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火 2003年5月12日
さいたま地裁
金山薫裁判長
無期懲役
 裁判長は「経営の失敗を従業員を殺害することで穴埋めしようとした首謀者」と検察側主張を全面的に認め、「反省の情はまったくみられない」と断罪した。  被告側は無罪を主張。分離公判だったF被告は一審死刑、二審無期懲役判決。上告中に病死。
2005年5月26日
東京高裁
田尾健二郎裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長はN被告の無実主張を退けた。一方、「被害者のために家を建て、養鶏場で雇用し続けるなど、矯正不可能とまでは言えない」として、量刑不当とした検察側の主張を退けた。
2005年11月29日
最高裁第二小法廷
古田佑紀裁判長
被告側上告棄却、確定

加納恵喜(53)  無職の武藤恵喜被告(旧姓)は金に困り、2002年3月14日午前3時頃、名古屋市内のスナックに押し入ったが、経営者(当時61)と口論になり、店にあったマイクのコードで首を絞めて殺害。現金約8,000円を奪った。 強盗殺人、詐欺、窃盗 2003年5月15日
名古屋地裁
伊藤新一郎裁判長
無期懲役
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 裁判長は「刑事責任は極めて重大だが、計画性はなかった」と無期懲役を言い渡した。  旧姓武藤。武藤被告は1983年に長野県諏訪市で旅館経営者の女性(当時64)の首を電気こたつのコードで絞めて殺害し、現金などを奪ったとして殺人などで懲役15年の判決を受けていた。
 2013年2月21日執行、62歳没
2004年2月6日
名古屋高裁
小出☆一裁判長(☆は金ヘンに享)
一審破棄・死刑
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 裁判長は「偶発的犯行の面も否定できないが、そうした状況は悪事を働こうとしている者が自ら招いた。場合によっては抵抗する店の人を殺害する事態になることは予想できた」と指摘。さらに「今回と類似する犯行で満期近く服役した後も無銭飲食や窃盗をする生活を続けてきた。起きるべくして起きた事件」とし、判決理由で「弁護側が主張する『反省している。計画的でなかった』などいう情状はいずれも死刑を回避する理由とならない」と述べた。
2007年3月22日
最高裁第一小法廷
才口千晴裁判長
被告側上告棄却、確定
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 裁判長は「強固な殺意に基づく冷酷な犯行。死刑はやむを得ない」と述べた。
M・N(23)  M被告は祖父名義の口座から約1,000万円を勝手に引き出したが、スナック通いや車購入に使い切ったので、さらに別の口座から金を引き出そうと印鑑を盗むことを計画。2001年6月18日夜、祖父宅に侵入し、祖母(当時81)の手首に手錠を掛け、両手で首を絞めるなどして殺害。さらに寝ていた祖父(当時83)の頭にコンクリートブロックを投げつけて殺害し、13万5千円を奪った。 住居侵入、強盗殺人 2003年6月4日
神戸地裁姫路支部
伊東武是裁判長
無期懲役
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裁判長は「自ら出頭するなど、反省の態度を示している」と極刑を回避。  
2004年4月20日
大阪高裁
那須彰裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は「利欲的で自己中心的だが若さゆえの思慮不足もあった。矯正の可能性があり極刑がやむを得ないとまでは言えない」と判断した。
上告せず確定。  
A・Y(56)  東京江戸川区でホームレスだったA被告は、1999年9月8日未明に覚醒剤を使用。8日午前7時30分頃、江戸川区内の荒川河川敷で、水くみを命じて文句を言われたホームレス仲間のKさん(当時60)の胸などをナイフで刺し殺害、さらに自分を馬鹿にしていると疑って仲間のHさん(当時57)、Sさん(当時61)も続けて刺殺し、翌日早朝、三人の遺体を荒川に投げ捨てた。さらに8日午後10時頃、路上で男性(当時36)にナイフで切り付けた。 殺人、死体遺棄、殺人未遂、覚せい剤取締法違反 2003年6月10日
東京地裁
中谷雄二郎裁判長
死刑
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 被告側は公判で「覚醒剤の影響で幻聴に支配されており、心神喪失状態だった」と主張したが、裁判長は「捜査段階初期の動機の供述には高い信用性がある」、さらに精神鑑定の結果などから「善悪を認識し、行動を制御することが著しく困難な状況ではなかった」と責任能力を認めた。  
2006年6月27日
東京高裁
須田※(※=賢の又を忠)裁判長
一審破棄・無期懲役
 裁判長は判決理由で「法秩序を全く無視した理不尽極まりない犯行で、当時完全責任能力があれば死刑を選択せざるを得ない」と指摘。その上で、覚せい剤使用の影響で当時心神耗弱の状態だったと認定し、刑法に従い減軽した。
上告せず確定。
F・D(78)  養鶏場従業員だったF被告は経営者であるN被告(求刑死刑に対し、無期懲役が確定)に依頼され、1989年4月5日午後9時20分ごろ、住込従業員方に放火し、従業員の妻(当時48)を焼死させ、従業員にも4カ月のやけどを負わせた。N被告は従業員夫婦や住宅にかけた保険金計2773万円余を入手し、F被告に報酬として現金300万円を渡すなどした。 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火 2003年7月1日
さいたま地裁
川上拓一裁判長
死刑
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 被害者である従業員の証言の信用性を認めた上で、裁判長は「人の生命に対する畏敬の念はみじんもうかがわれず、利欲と打算に基づいた冷酷非道な犯行の動機に酌量の余地は一片もない」と述べた。  被告側は無罪を主張。F被告は殺人罪で1969年8月1日に懲役20年の判決を受けて服役。1984年6月14日に仮出所し、事件当時は満期を迎えていはいなかった。78歳での一審死刑判決は、戦後最高齢と思われる。
2006年9月26日
東京高裁
池田修裁判長
一審破棄・無期懲役
 裁判長は「保険金目的で何の落ち度もない夫婦を殺傷した凶悪で冷酷な犯行」と非難。その上で、首謀者のN元被告の無期懲役刑確定を挙げ、「N受刑者は仮出所中の被告を雇った立場を利用し、恩を着せて殺害を依頼した。無期懲役とは歴然とした差異のある極刑は、共犯者間の刑の均衡を失する懸念をぬぐい難い」と述べた。
2007年5月28日
被告側上告中に病死。82歳没。

N・Y(50)  元暴力団組長で無職N被告は無職S被告、スナック従業員でフィリピン国籍のL被告と共謀。2000年3月2日午前4時ごろ、野田市上花輪でスナックを経営する韓国人女性(当時42)の自宅に押し入り、手足を縛って「金や株券を出せ」と脅しながら暴行を加え、現金約350万円や貴金属、乗用車1台など計約660万円相当を奪った。同日夜、スナックで女性の首をひもで絞めて殺害。同日、S被告が当時住んでいた茨城県岩井市の住宅床下に遺体を捨てた。
 N被告は逃亡して指名手配され、2002年2月12日、潜伏先の東京都葛飾区の知人名義のアパートの一室で逮捕された。
強盗殺人、死体遺棄他 2003年7月11日
千葉地裁
下山保男裁判長
無期懲役
 裁判長は動機について、暴力団組織のビルの建設資金を調達して、自らの暴力団での地位を盤石にするためだったとし、犯行の主犯者だったと認定。「不自然不合理な弁解を弄し、共犯者に責任を転嫁しようとしており、真摯な反省の態度は見られない。自らの欲得のために及んだ、他人の生命を顧みない残虐で悪質な犯行。罪質、動機は極めて悪質だ」としたが、一方でN被告は『(被害者に)自分なりの戒名をつけて一生涯生活を共にしていく』と被告なりの反省を示している。人間性はいまだ残っていると評価できる」とし、共犯者の判決も考慮に加えたうえで、「反省の日々を送るべく、無期懲役に処するのを相当」とした。  S被告、L被告はともに一審無期懲役判決がそのまま確定。
2004年4月21日
東京高裁
原田国男裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は「死刑を求める検察の主張は理解できるが、被害者が1人の殺人事件で、死刑になるケースはほとんどない」と述べた。
上告せず確定。
K・T(22)  K被告は会社役員(当時28)から借金10万円の返済を求められた仲間のK被告から相談を受け、知人のS被告や少年4人らと共謀。2002年7月14日夜、名古屋市北区内の駐車場で会社役員とその知人を襲って包丁で刺すなどし、15日未明に会社役員を車で連れ出して犬山市内の雑木林でゴルフクラブでめった打ちにするなどの暴行を加え、生き埋めにして殺害した。その間、財布やアパートから現金約24万円を奪った。他に自動車の窃盗3件、傷害1件がある。 殺人未遂、強盗殺人、傷害、窃盗 2003年8月19日
名古屋地裁
片山俊雄裁判長
無期懲役
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 裁判長は「被害者が借金返済を求めるためK被告の仲間に脅迫を加えたことが(事件の)きっかけになったのは否定できない。K被告は遺族に謝罪の手紙を書くなど反省がみられる。刑事責任は重大だが、『極刑をもって臨むしかない』とまでは言えない」と結論付けた。  K被告は懲役15年(求刑無期懲役)判決が二審で確定。S被告は一審無期懲役判決(求刑同)がおそらくそのまま確定。
2004年3月15日
名古屋高裁
小出☆一裁判長(☆=金ヘンに享)
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は「被害者が被告の仲間を脅迫したことが事件の発端になったのは否定しがたい。年齢が若く、服役を通して人間性に目覚める可能性を否定できない」と死刑を回避した理由を述べた。
2004年9月10日
最高裁第一小法廷
島田仁郎裁判長
被告側上告棄却、確定

坂本正人(37)  2002年7月19日午後、無職坂本被告は、終業式を終えて群馬県大胡町内の路上を帰宅途中だった女子高生(当時16)に道を尋ねるふりをして無理やり乗用車に乗せ連れ去り、約5キロ離れた同県宮城村の山林で首を手で絞めたあと、さらにカーステレオのコードで絞めて殺した。殺害後の同日夜から翌日昼ごろまでの間、数回にわたり、女子高生の携帯電話を使い、「金を用意しろ。娘がどうなってもいいのか」などと自宅に脅迫電話をかけ、同県内の路上で身代金として23万円を受け取った。犯行の動機については、児童相談所にいる別れた妻や子に会うため、職員に面会を強要する手段として女子高生を人質に取ろうとした、などと説明した。前妻らは坂本被告から家庭内暴力を受けたため、保護されていた。他に前橋市の民家で約10万円を奪った強盗罪などにも問われた。 殺人、わいせつ略取、人質による強要行為等の処罰に関する法律違反、強姦、窃盗、拐取者身代金取得、住居侵入、強盗、傷害 2003年10月9日
前橋地裁
久我泰博裁判長
無期懲役
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 裁判長は、「冷酷、残虐かつ凶悪な犯行」「行き当たりばったりの犯行で残虐極まりない」と指摘したが、以下の理由で無期懲役判決を下した。(1)殺人は偶発的であり、計画的な犯行でない。場当たり的である。(2)殺人は執拗であるが、極めて残虐であるとまで言うことはできない。(3)捜査段階の途中からはおおむね素直に事実関係を認めて捜査に協力している。(4)これまで前科前歴がない。(5)被告人に被害者に対する謝罪の念や、反省悔悟する気持ちなどが芽生えてきている。  2008年4月10日執行。41歳没。
2004年10月29日
東京高裁
白木勇裁判長
一審破棄・死刑
 裁判長は「生きたまま頭にビニール袋をかぶせて首を絞め、殺害した犯行は残虐というほかない」と述べ、一審の「同種の犯罪のなかでは極めて残虐とまではいえない」とした判断は誤りだったと指摘した。
上告せず確定。
S・K(42)  重機オペレータS被告と無職K被告(求刑通り無期懲役が確定)は暴力団員H被告(2008年7月28日逮捕)と共謀して、神戸市などで展開しているテレホンクラブチェーンの襲撃を計画。2000年3月2日午前5時5分頃、盗んだナンバープレートを付けた乗用車で神戸駅前店に乗りつけ、一升瓶で作った火炎瓶1本を店内に投げ込んで同店の一部を焼き、店員1人に軽傷を負わせた。10分後には東約1キロの元町店に2本を投げ込んでビル2、3階部分計約100平方メートルの同店を全焼させ、男性客4人を一酸化炭素中毒で殺し、店員ら3人に重軽傷を負わせた。 現住建造物等放火、殺人、殺人未遂、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反他 2003年11月27日
神戸地裁
笹野明義裁判長
無期懲役
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 裁判長は、「何らかの組織的背景のもとに、制裁、ないし嫌がらせを加える目的で敢行され、酌むべきものはまったくない」と指摘したが、「多数の死傷者の発生を欲して行動したものではない」として「極刑がやむを得ないとは認めがたい」とした。  犯行を依頼したテレホンクラブ経営者N被告は無期懲役判決(求刑死刑)が2010年に確定。実行グループのリーダーで仲介役のS被告は無期懲役(求刑死刑)判決が2013年に確定。運転手H被告は一・二審懲役20年(求刑無期懲役)。手引き役のN被告は二審で懲役6年(求刑懲役15年)判決が最高裁で確定。
2005年7月4日
大阪高裁
近江清勝裁判長
検察・被告側控訴棄却
 検察側は「4人を殺害した事件の主犯格で、死刑以外に選択の余地はない」と主張。被告側は「死者が出たのは元町店の防災設備の不備のためで、脅迫か営業妨害程度しか考えておらず、殺意はなかった」などと主張した。
 裁判長は一審判決同様未必の故意があったと認定したうえで、「計画的で悪質な犯行だが、何者かに依頼され、報酬目的で店の営業を妨害するのが主な目的だった。殺害方法は執拗とはいえず、死刑選択の基準を満たさない」と指摘した。
2006年11月14日
最高裁第一小法廷
甲斐中辰夫裁判長
被告側上告棄却、確定

服部純也(31)  建設作業員服部純也被告は2002年1月22日午後11時5分ごろ、静岡県三島市の国道136号沿いで、アルバイト先から自転車で帰宅途中の女子短大生(当時19)を見かけ、誘いの声をかけたが、断られたため自分のワゴン車に押し込み強姦。同23日午前2時半ごろまでの間、三島市などを車で連れ回して逮捕・監禁したうえ、同市川原ケ谷の市道で、短大生に灯油をかけてライターで火をつけ、焼死させた。服部被告と短大生に面識はなかった。 殺人、逮捕監禁、強姦 2004年1月15日
静岡地裁沼津支部
高橋祥子裁判長
無期懲役
 裁判長は「犯行の発覚を恐れ、身元不明にするために焼殺という方法を選んだ異常残虐な犯行」と断罪した。しかし死刑の適用については(1)殺人など人を傷つける前科がない(2)周到な計画に基づく犯行でない(3)幼少期の劣悪な生活環境は量刑上考慮されるべきだ--とし「死刑をもって処断することは、ちゅうちょせざるを得ない」と結論づけた。  服部被告は1995年に強盗致傷罪で懲役7年の実刑判決を受けている。
 2012年8月3日執行、40歳没。
2005年3月29日
東京高裁
田尾健二郎裁判長
一審破棄・死刑
 裁判長は「監禁後、殺害をちゅうちょしたのは、発覚すれば重い罪で処罰されることを恐れたためで、専ら自己保身に基づく」と断じ、生活環境については「服部被告と同じ環境で育った兄弟に犯歴はない」と指摘。「人気のない場所で被害者を粘着テープでしばり、灯油を浴びせるなど計画的な犯行に劣らぬ迅速な行動をとっている。被告の犯罪性向は、成育環境よりも、被告の生き方に由来するところが大きい」と述べて、一審判決の情状酌量を否定した。そして「強盗致傷などの罪で服役し、仮出獄後、1年もたたないうちに犯行に及んでいる」「被害者に何らの落ち度もなく、犯行の動機は誠に身勝手。殺害方法も残虐きわまりなく、冷酷、非情だ」と述べ、一審を破棄した。
2008年2月29日
最高裁第二小法廷
古田佑紀裁判長
被告側上告棄却、確定
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 判決では遺族の処罰感情や、自己中心的で非情な犯行であることを指摘。そして強盗致傷罪の仮釈放約9ヶ月後に犯行に及んだ点を強調。「犯罪に向かう傾向は根深く、さらに深化、凶悪化している。反省を示しているが、意識のある人間に火をつけて殺すという残虐な殺害方法などからすれば死刑を是認せざるを得ない」と結論付けた。
T・H(25)  無職T被告はパチスロ等で消費者金融に約150万円の借金があった。2002年11月13日午後10時頃、京都府大宮町の農業を営む男性(当時81)宅に侵入。居間で男性を、寝室で男性の妻(当時80)を、タオルを巻いた金属バットで殴って殺害。レターケース内から現金約12万7000円を奪った。 住居侵入、強盗殺人、建造物侵入 2004年1月19日
京都地裁舞鶴支部
新井慶有裁判長
無期懲役
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 裁判長は判決理由で「パチスロなどに金を使い込み、消費者金融業者に借金をし、老人が住む一軒家に侵入して現金をとろうと考え、夫婦を金属バットで強打し殺した残忍な犯行」と指摘。「バットはたまたま車に積まれていたもので、家人に見つかったと思い心理的に追いつめられ、殺意が生じた。計画性には疑問が残る」とした。公判で犯行を認め反省しているとして、「生涯をかけて罪を償わせるのが相当」と判断した。  
2004年11月5日
大阪高裁
島敏男裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は「姿を見られれば殺害もやむを得ないと考えていたが、当初確定的な殺意はなく相当ためらった。残忍で冷酷非道な犯行で極刑も考えられるが、綿密な計画性はなかった」と述べた。
上告せず確定。
H・H(31)  無職H被告は、1999年7月から静岡県沼津市の高校生とつきあい始めたが、2000年3月に別れ話を持ちかけられた。被告はあきらめきれずに連日電話をかけたり、待ち伏せしたりしてストーカー行為をした。2000年4月19日午前8時ごろ、JR沼津駅北口の駐輪場で高校生(当時17)を待ち伏せて復縁を迫ったが、拒否されたことに激怒し、顔や腹などを出刃包丁で胸や腹など約30カ所を刺して失血死させた。 殺人、銃刀法違反 2004年1月29日
静岡地裁沼津支部
高橋祥子裁判長
無期懲役
 裁判長は「精神的に依存していた相手に交際を拒否され、逆上したのは逆恨み。残酷な犯行には酌量の余地はない」と指摘した。公判で争点になっていた殺意の有無については「力を加減せず突き刺し、傷の状況などから確定的殺意があったことが認められる」と明確に認めた。しかし裁判長は「犯行は極めて残虐かつ凄惨だが、被告は反省しており、罪を償わせるのが相当」と述べた。被告が精神鑑定で境界性人格障害という精神疾患と診断されたことについて、裁判長は「矯正教育で治療の余地がある」と述べた。  H被告は1993年、恋愛感情を抱いていた女性を包丁で多数回刺した殺人未遂罪などで有罪判決を受けた。1998年にも恋愛感情を抱いていた女性に交際を迫って包丁を突きつけた暴力行為等処罰法違反の罪で有罪判決を受け、それぞれ服役した。ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)が成立するきっかけとなった事件の一つ。
2005年12月22日
東京高裁
田尾健二郎裁判長
検察側控訴棄却
 検察側は、H被告が過去に殺人未遂罪で実刑判決を受けるなど、恋愛感情を抱いた女性に対して危害を加える犯行を複数回起こしていることを指摘。「同様の犯行を繰り返す可能性が高い」と主張した。
 判決は、「被告人の人格障害は治癒が困難で、再犯の可能性はかなり高い」としながらも、「犯行が計画的とまでは言えず、一審判決の量刑が軽すぎて不当とまでは言えない」「困難ではあるが、被告に更生の余地がない訳ではない」と結論づけた。
上告せず確定。
手柴勝敏(60)  手柴被告は不動産ブローカー菅峰夫被告と組み、土地開発計画で得られる利益を独占しようと一緒に計画を進めていた佐賀県鳥栖市の不動産会社社長(当時59)殺害を計画。1996年6月に社長を庄内町の作業場で絞殺し遺体を埋めた。約5カ月後には知人の建設会社社長(当時54)も殺害、現金900万円と約束手形二通などを奪い、遺体を造成地に埋めた。 強盗殺人、死体遺棄他 2004年3月11日
福岡地裁
林秀文裁判長
無期懲役
 裁判長は2社長殺害などの共謀共同正犯を認定したが、主従関係や全容解明に寄与した手柴被告の自供内容などを重視。「手柴被告には素朴、人間的な心情がなお残っており、極刑にはためらいを覚える」と刑の軽減理由を述べた。  菅峰夫被告は一・二審死刑判決。同日、被告側上告棄却、確定。手柴死刑囚は2010年4月14日、病死。66歳没。
2006年5月24日
福岡高裁
虎井寧夫裁判長
一審破棄・死刑
 検察・被告両方が控訴。裁判長は、自白が事件解明に貢献したことを認めた上で「菅被告の計画に従い、共同で殺害を実行しており、量刑に差をつけるほどのものではない」と、対等な共犯関係と認定した。
2009年12月11日
最高裁第二小法廷
古田佑紀裁判長
被告側上告棄却、確定
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 裁判長は菅被告を「事件を主導した首謀者」と認定。手柴被告については「菅被告に誘われて加担したが、果たした役割は大きく、相応の分け前を得た」として、死刑はやむを得ないと判断した。
H・J(50)  H被告は、携帯金融を含む業者30社から借りた約1300万円の返済に追われていた。2002年4月15日午後2時頃、義母である福岡市のアパート経営者(当時82)方を訪問。5年前に病死した義父の遺産について分与を依頼したが断られた。さらに同居している義姉(当時51)から借金問題でも非難されたため、義姉の殺害を決意。同日、鉄パイプなどを用意して義母方に侵入。義母と義姉の頭を殴って殺害、現金47万円などを奪った。奪った現金は返済に充てていた。 強盗殺人他 2004年3月17日
福岡地裁
林秀文裁判長
無期懲役
 裁判長は「尊い命を奪った犯行は残虐極まりないが、計画は周到なものではなく、親族でもある遺族の処罰感情は複雑で、極刑適用にはためらいを禁じ得ない。矯正教育による改善の可能性がないとはいえない」「これまでは通常の社会生活を送っており、経済状態が芳しくなくなったことが犯行に及んだ最大の原因」「生涯を通じて被害者二人のめい福を祈らせ、命の尊厳、罪の重さを自覚させ、永く贖罪生活を送らせることが相当」と述べた。  
2005年2月8日
福岡高裁
虎井寧夫裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は「2人もの命を奪った誠に凶悪な事件だが、更生の可能性があり軽すぎて不当とはいえない」と述べた。
上告せず確定。
H・A(25)/A・K(34)  出会い系サイトで知り合ったH被告とA被告は、2002年7月7日未明、H被告が知人女性(当時27)を呼び出し、A被告が和歌山市内でドライブ途中に女性の首をタオルで絞め殺害した。現金約35000円を奪い、遺体は和歌山県かつらぎ町の山中に運んで焼いた。H被告は、殺害した女性の弟とも出会い系サイトで知り合い、交際していた。
 さらにA被告が以前勤めていた同市内のカー用品店店長(48)から売上金を奪うため、殺害を2人で計画。同月13日夜、A被告がサバイバルナイフで刺し、重傷を負わせた。他に空き巣や車上狙いなど計5件の窃盗罪でも起訴されている。いずれもH被告の指示でA被告が実行した。
強盗殺人、強盗殺人未遂、窃盗、銃刀法違反、死体損壊、死体遺棄、建造物侵入、窃盗、犯人隠避 2004年3月22日
和歌山地裁
樋口裕晃裁判長
無期懲役
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 裁判長は「異性との自由な交遊のため無関係な人間を殺害するなど、極度に身勝手で冷酷非情な犯行」と指摘した上で、「A被告は天涯孤独の身でH被告への依存を深め、金づるとして利用された。H被告も自分から警察に事件を打ち明け、いずれも反省している」と、死刑を回避した理由を述べた。  
2005年1月11日
大阪高裁
那須彰裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は「動機は短絡的、残忍な犯行で、死刑選択も考慮に値するが、反省しており、極刑がやむを得ない場合にはあたらない」「遺族に反省の手紙を出すなど、矯正の可能性はある」とした。
2005年12月12日
最高裁第二小法廷
津野修裁判長
被告側上告棄却、確定
(H被告のみ上告)
I・K(63)  福島市の産廃収集運搬業者I被告は、産廃処理のため土地を借りていた福島県石川町の無職男性(当時74)と処分法をめぐってトラブルとなり、2000年6月6日午後9時50分頃、男性方にガソリンをまいて放火し、男性と妻(当時69)を焼死させた。 殺人、現住建造物等放火 2004年4月23日
福島地裁
大沢広裁判長
死刑
 I被告は逮捕段階から容疑を否認し、裁判でも一貫して無実を主張。有力な物証がない中、検察側は、I被告が男性の敷地を借りて行っていた違法な古タイヤ焼却を巡ってトラブルになっており、被告が事件当夜にやけどを負ったことや、被告と同居していた女性の「I被告が事件直後に『火をつけた』と話していた」との証言などの状況証拠を積み重ね、「I被告が犯人であることは明白」とした。弁護側は「被告には犯行の動機がなく、同居女性の証言も信用性に乏しい」などとして無罪を求めた。
 裁判長は「被告には殺害の動機がある。同居女性の証言も具体的で信用できる」と述べ、無罪主張を退けた。そして「犯行は冷酷残忍で凶悪極まりない。弁解を二転三転させるなど狡猾だ。極刑をもって臨むしかない」などと述べた。

2005年9月1日
仙台高裁
田中亮一裁判長
一審破棄・無期懲役
 判決は、I被告が住宅に火をつけて2人を焼死させたとの認定は支持した。しかし、「計画的犯行」とした一審判決については▽事件当日ガソリンを購入する際に人目を避ける行動をとっていない▽自身も重いやけどを負った--ことなどから、計画性を否定。「ガソリンを持ち込んだのは被害者との交渉を有利に進めるためで、交渉中に激高して火をつけた」と偶発的犯行と判断したうえで、「死刑の選択はやむをえない場合に限る」として無期懲役に減刑した。
2006年7月18日
最高裁第二小法廷
古田佑紀裁判長
被告側上告棄却、確定
 被告側は無罪を求めて上告した。
T・M(44) (1)吉田純子被告、T被告は1997年、同僚看護師から500万円を搾取した。
(2)I・K被告は、吉田被告から夫(当時39)について「愛人がいる」「保険金目的で(I被告を)殺そうとしている」などと虚偽の事実を告げられて殺害を決意。吉田、T、I・K被告は1998年、I被告の夫に睡眠剤入りのビールを飲ませ、静脈に空気を注射して殺害。保険金約3500万円を詐取した。
(3)吉田、T、I・K、I・H被告は1999年、I・H被告の夫(当時44)に洋酒や睡眠薬を飲ませ、鼻からチューブで大量の洋酒を注入して殺害。保険金約3300万円を詐取した。
(4)吉田、T、I・H被告は2000年、預金通帳を奪う目的でT被告の母を襲撃した。
殺人、強盗殺人未遂、詐欺他 2004年8月2日
福岡地裁
谷敏行裁判長
無期懲役
 裁判長は元看護師の吉田純子被告が一連の事件を主導したと認定した上で、「犯行は吉田被告に引きずられた従属的な面がある。医療知識を悪用した点も、吉田被告に体よく利用された」として情状酌量し、無期懲役を言い渡した。  吉田純子被告は求刑通り死刑判決が2010年に確定。2016年3月25日、執行。56歳没。
I・K被告は死刑を求刑されるも判決前に病死、公訴棄却。I・H被告は一審懲役17年判決(求刑無期懲役)が二審で確定。
2006年5月18日
福岡高裁
浜崎裕裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判では一審と同様に、犯行を主導したとされる吉田純子被告らとの主従関係が争点となり、T被告は「吉田被告に利用された」と従属的な立場を強調した。
 裁判長は「吉田被告の虚言を信じ込まされ、操られたという面はあるが、虚言は容易に作り話と分かる稚拙な内容だった。被告の果たした役割は大きい」とした上で、「吉田被告とは対等の関係ではなかった。現在では反省、後悔の念を深めている。死刑とするにはちゅうちょせざるを得ない」と述べた。
上告せず確定。
H・T(66)  秋田県神岡町の無職H被告は借金返済のために保険金殺人を計画。2002年10月13日午後5時38分ごろ、後部座席に妻(当時59)と義母(当時84)を乗せたまま、金浦町の金浦漁港西側岸壁の突端近くで止めていた乗用車を発進させて深さ約4メートルの海中に転落させた。H被告は海中に沈んだ乗用車から自力で脱出し、近くにいた観光客に救助された。約40分後に地元のダイバーに引き揚げられた妻と義母は、本荘市の病院に搬送されたが死亡した。水死だった。妻は人工透析を受けるなどの病弱、義母も高齢で、ともに泳げなかった。 殺人 2004年9月22日
秋田地裁
田村眞裁判長
死刑
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 H被告側は初公判で起訴事実を全面的に認めたが、第2回公判から殺意を否認。裁判長は日没後でも岸壁や海面が見えていたことや、車がマニュアル車で意識的な操作が必要なことなどから「車を意図的に転落させ、殺意の存在が認められる」と指摘。「反省の情を示しているとは認めがたい」「客観的状況から保険金目的の殺意が認定できる。冷酷極まりない動機に酌量の余地はない」と述べた。
2005年11月29日
仙台高裁秋田支部
畑中英明裁判長
一審破棄・無期懲役
 H被告は二審で殺意を認めたが、計画的ではなかったと量刑不当を訴えた。裁判長は「被告人の刑責任は十分極刑に値するものとも考えられるが、犯行がそれほど周到な計画に基づくものとまではいえず、積極的に死刑を選択すべきものと断ずるにはなおちゅうちょを感じる」などと述べた。
2009年1月14日
最高裁第二小法廷
古田佑紀裁判長
検察側上告棄却、確定
判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 裁判長は「残酷、非情で結果は重大」と指摘する一方、被告に前科がなく反省の態度を示したことなどから、「(無期懲役が)著しく正義に反するとは認められない」と判断した。
C・A(24)  中国から留学生として来た京都の短大生C被告は、短大の学費の支払いに窮して人を殺してでも金を奪おうと企て、2003年1月15日未明、伏見区に住むアルバイトの女性(59)方に侵入。物色中に女性に見つかり、包丁で女性の頭や胸などを刺して殺害、現金約25,000円などを奪った。
 さらに同日午後、約2km離れた伏見区に住む女性(当時86)方に侵入し、女性の頭を陶器鉢や岩で殴って重傷を負わせ、現金約95000円を奪った。
強盗殺人、強盗殺人未遂、現住建造物等放火、住居侵入、銃刀法違反、窃盗、窃盗未遂、建造物侵入 2004年9月24日
京都地裁
東尾龍一裁判長
無期懲役
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 ▽殺害は1人▽高度の計画性はない-ことなどから「死刑の適用はやむを得ない場合のみであり、本件は該当するとまでは言い難い」とした。
2006年3月9日
大阪高裁
片岡博裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は「人間性のかけらもない残虐な犯行だが、反省し更生が不可能とは言えない」と述べた。
2008年11月4日
最高裁第一小法廷
甲斐中辰夫裁判長
検察側上告棄却、確定
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 検察側は「殺害の手段方法は執拗で残虐。刑の均衡からも極刑で臨むほかない」などと主張した。
 裁判長は「死刑を選択することも考慮される」とした上で、「反省悔悟の情を示し、若年で日本での前科前歴もない。無期懲役とした判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない」と判断した。
S・H(60)  松戸市の会社員S被告は2002年12月8日午前6時半ごろ、かつて交際していた女性方を訪問。しかし女性が不在であったため、他の男性に会いに出掛けたと腹を立て、1階にあった石油ファンヒーターの灯油をまいてライターで放火。木造2階建て住宅約100平方メートルを全焼させ、2階で寝ていた女性の母(当時78)、女性の長女(当時24)、長女の長男(当時3)を焼死させた。 殺人、現住建造物等放火他 2004年9月27日
千葉地裁松戸支部
小池洋吉裁判長
無期懲役
 検察側は、S被告が以前から女性宅を訪れており「家族が2階で暮らしていることを認識していた」と指摘。「刑事責任は極刑以外あり得ない」と求めた。弁護側は「家族が室内にいるという認識はなかった」として、殺人については無罪を主張した。
 裁判長は「3人が2階にいることは想像できた」と未必の故意を認定したが「衝動的で計画性はなく、殺害が目的ではなかった」として、無期懲役を言い渡した。

2005年8月2日
東京高裁
安広文夫裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は「身勝手で酌量の余地はないが、犯行に計画性はなく、確定的殺意までは認められない」と指摘し、一審同様に死刑を回避した。
上告せず確定。
元留学生(22)  別府大留学生である中国福建省出身の男(事件当時19)は、留学生朴哲容疑者と共謀。2001年12月26日夕、大阪市内のビジネスホテルに風俗店の女性(当時35)を呼び出し、男がナイフで脅して手足をテープで縛り、キャッシュカードを奪った上、ナイフで胸や首を多数回刺して殺害した。
 また朴哲、張越両容疑者、他2人の留学生と共謀し、2002年1月18日午前2時半ごろ、大分県山香町の建設会社会長(当時73)宅に強盗目的で侵入し、社長の妻の顔などを棒や拳で多数回殴り、刺し身包丁で胸部を刺すなどして重傷を負わせ、社長の腰部を刺して殺害した。
強盗殺人、強盗致死傷、強盗傷害、銃刀法違反、住居侵入 2005年4月15日
大分地裁
鈴木浩美裁判長
無期懲役
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 検察側は二事件とも強盗殺人で起訴。裁判長は「殺意は認められない」とし、山香町の事件は強盗致死傷罪の適用が相当とした。さらに「大阪で女性を殺害した約3週間後に夫婦を襲うなど人命軽視の態度は顕著。死刑も考慮しなければならないが、捜査当局に進んで供述するなど事件解明に寄与した。極刑がやむを得ないとまでは認められない」と述べた。  社長は旧満州(現中国東北部)で暮らした経験から、留学生の世話を始め、30人以上の身元保証人になるなど物心両面から支援、「留学生の父」と慕われていた。4人の留学生のうち、1人は二審で求刑無期懲役に対し懲役15年判決、検察・被告側上告棄却で確定。1人は一・二審で求刑懲役15年に対し懲役14年判決が確定。
 朴哲、張越両容疑者は中国に逃亡したため、国際手配。2013年11月、中国当局が別の事件で身柄拘束したとの連絡が日本側にあった。張容疑者の拘束を受け、中国公安当局の関係者ら約10人が2013年春、被害者宅を訪れ、犯行現場を確認していた。日中間には犯罪人引き渡し条約が結ばれていないため、警察当局は、中国の国内法で司法手続きを行う代理処罰を求めた。
 2017年3月、中国の裁判所は、張越被告に執行猶予2年付きの死刑、朴哲被告には懲役15年の判決を言い渡した。2人は控訴せず、判決が確定した。
2007年2月26日
福岡高裁
正木勝彦裁判長
検察側控訴棄却
判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
山香町の事件について、裁判長は「もみ合ううちに倒れ込んだ際、その力も加わって包丁が深く刺さった可能性も否定できない」などとして、殺意を認定するには不十分との判断を示した。その上で、元留学生に対し「被害者宅に侵入後、悲鳴などが聞こえたために外に逃げ出した上、共犯者に逃げるよう促しており、言動は消極的」と指摘。逃走中の2容疑者が主犯とした。
2009年12月17日
最高裁第一小法廷
宮川光治裁判長
検察側上告棄却、確定
判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 裁判長は「刑事責任は誠に重大で、死刑を選択することも考慮される」と指摘。その上で、「夫妻殺傷事件で殺意は認められない」と判断。強盗致死傷罪を適用した一、二審の判断を支持した。犯行当時、未成年だったことも考慮した。
O・T(26)/O・M(24)  指定暴力団住吉会系組員O・T被告、O・M被告、暴力団交友者でとび職F被告は、2003年11月24日深夜、いわき市の同じ住吉会系暴力団員で建設業の男性(当時26)の事務所で男性と、交友者で飲食店員の男性(当時24)の頭を拳銃で撃って射殺。現金数十万円を奪い、遺体を広野町の山林に埋めた。男性は組長の息子だった。主犯がO・T被告、拳銃を撃ったのがO・M被告である。被告ら3人と被害者で組員の男性との間では、女性をめぐるトラブルや組織内でのトラブルなどがあった。 強盗殺人、死体遺棄、銃刀法違反 2005年4月22日
仙台地裁
大沢広裁判長
無期懲役
 裁判長は判決理由でO・T被告には「交際相手を奪った相手の殺害が主目的で、典型的な強盗殺人とは類型を異にする」「冷酷かつ非情な犯行だが反省の態度もあり、矯正の可能性がないとは言えない」とした。弁護側の「財産を奪う目的はなく強盗殺人罪は成立しない」とする主張は「恨みによる殺人の付加的なものだが金を奪う合意があったことは疑いがない」と退けた。O・M被告には「O・T被告の従属的な立場にあり、犯行動機の一つに、暴力団から足を洗いたいという思いがあったことは考慮に値する」「O・T被告から命令されて犯行を実行したが、深く反省している」とした。  F被告は求刑通り無期懲役判決が一審で確定。
2005年12月22日
仙台高裁
田中亮一裁判長
検察・被告側控訴棄却
 双方とも量刑不当を理由に控訴。O・T被告は強盗目的を否認している。
 裁判長は「被害者に交際女性を寝取られて逆恨みした身勝手な動機で、2人の命を奪った重大な犯行だが、財産目当てに無関係の第三者を狙う典型的な強盗殺人とは異なる」と判断した。
2008年2月20日
最高裁第一小法廷
涌井紀夫裁判長
検察・被告側上告棄却、確定
判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 3裁判官は多数意見で、「若い2人の命を奪い、冷酷、残忍で死刑も考慮されるが、被害者への恨みが動機で、拳銃は被害者から預かったものだった。一般市民を巻き込むような事案ではない」とし、暴力団組織内で起きた犯行だったことなどを理由に死刑を回避した二審・仙台高裁判決について、「破棄しなければ著しく正義に反するとまでは言えない」と述べた。これに対し、2裁判官はO・T被告について、「O・T被告は暴力団幹部で、拳銃を使った被害者2人の強盗殺人事件の首謀者。先例に照らせば死刑が相当」「被害者が暴力団員だからといって、これを酌量すべきではない。本件が拳銃を使用した凶悪犯罪であることを重視すべきだ」などと述べ、二審判決を破棄すべきだとした。死刑か無期懲役かが争われた事件で反対意見が付くのは極めて異例。
M・T(42)  佐賀県北方町の運転手M被告は1987年7月8日、路上に止めた車の中で武雄市の料理店従業員(当時48)の首を手で絞めて殺害。ほぼ同様の手口で、1988年12月7日に北方町の主婦(当時50)、1989年1月25日に同町の縫製会社工員(当時37)を殺害した。
 佐賀県警は3件目の被害者と交際していたM被告を任意で事情聴取。M被告は1988年秋、覚醒剤事件で拘置中に県警の取り調べを受け、いったんは殺害を認める上申書を提出したが、その後否認に転じた。1件目の時効直前の2002年6月、県警が強制捜査に着手し、3件とも起訴した。M被告は1件目と2件目の間の1988年1月、覚せい剤取締法違反の罪で有罪が確定したため3事件は併合罪が適用できず、検察側は1件目の事件で無期懲役を、残る2人殺害で死刑を求刑した。
殺人 2005年5月10日
佐賀地裁
坂主勉裁判長
無罪

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 佐賀地裁は67通の上申書のうち、殺害を認めた65通の証拠請求を却下、犯行を否認した2通を採用した。
 検察側は(1)交際していた女性の遺体の下着にM被告の唾液が付いていた(2)女性3人の遺体が同じ場所に捨ててあった、(3)被害者1人と面識があることを隠したり、虚偽のアリバイ供述を繰り返したりした、などの状況証拠を基に殺害を主張した。
 弁護側は「M被告と女性は交際していたがトラブルはなかった」と主張。(1)女性が失踪する前日に会ったものの、事件当日に会った証拠はない(2)M被告と女性の車が目撃されたと検察側が主張する場所には事件当日行っていない、とした。他の女性2人については「面識がなく、殺害の動機もない」と述べた。検察側が指摘した女性の下着についた唾液のミトコンドリアDNAと被告のDNAの型が一致したことについて、弁護側は「犯罪捜査の専門家である科学警察研究所でも実用化しておらず、鑑定に信用性はない」と反論した。
 裁判長は最後に起きた女性殺害事件を中心に遺体の状況などを詳細に検討した上で、犯罪の証明がないと結論付け、他の2件についても無罪と判断した。交際していた女性が殺害された日のM被告の行動について「合理的な理由がないまま幾多も供述が変遷している」としてアリバイの成立は認めなかった。しかし「変遷や虚偽のアリバイ主張があっても、直接犯人とは推認できない」とした。
 Mは2011年6月~12月、福岡、宮崎、大分、鹿児島の4県で127件の窃盗事件などを繰り返した。うち5件と、覚せい剤使用で起訴。2012年6月11日、福岡地裁で懲役2年10月(求刑懲役3年6月)の実刑判決が言い渡されている。
2007年3月19日
福岡高裁
正木勝彦裁判長
検察側控訴棄却(無罪
 控訴審で検察側は、M被告の軽トラック内にあった写真の付着物から検出したミトコンドリアDNA型が、被害者の女性(当時50)と一致したとの鑑定書を提出。「女性を軽トラックに連れ込んで殺害した」とする上申書の補強証拠とし、一審判決の破棄を求めた。これについて裁判長は「ミトコンドリアDNAは母系遺伝し、同一型の者は少なからず存在する」と指摘。「写真の保管状況も心もとない。個人識別の精度は判然とせず、証拠価値は低い」とした。
 M被告が任意の取り調べで作成した3人殺害を認める上申書については、「取り調べは遮二無二自白を獲得する目的でされた。任意の取り調べの限界を超え、違法捜査抑止の観点からも証拠能力を認められない」とし、一審同様に「迫真性が乏しく、取調官から相当具体的な指示、働きかけがあった」と述べた。そのうえで、「個々の状況証拠を詳細に検討し、総合考慮しても、M被告が犯人であると認めるには合理的な疑いが残る。被告と被害者が行動を共にしているところを見た目撃者はなく、指紋などの決定的証拠はない。直接的な客観証拠は皆無であり、この程度の証拠で被告人を有罪にはできない」と結論づけた。
上告せず確定。
G・H(40)  愛知県新城市の給食会社役員G被告は、フィリピンパブで知り合ったホステスとの結婚資金などを得るために、青年会議所(JC)仲間である新城市の建設会社役員の男性(当時39)を殺して金を奪い、家族から身代金名目の現金を脅し取ろうと、2002年4月17日午後10時10分すぎ、愛知県新城市の市商工会館の駐車場に止めていた乗用車内で、男性の首をロープで絞め殺害、現金約12万円などを奪った。
 翌18日には男性の生存を装い、家族に17回の脅迫電話をかけて身代金1億円を要求。東名高速道路上から現金を投下するよう指示したが失敗。19日、男性の遺体を同県額田町の残土捨て場に遺棄した。
強盗殺人、恐喝未遂、死体遺棄、脅迫教唆、犯人隠避教唆 2005年5月24日
名古屋地裁
石山容示裁判長
無期懲役
 裁判長は判決理由で「強盗殺人と恐喝未遂の犯行だが、実質は身代金目的の誘拐事件と同じ凶悪犯罪」と指摘。身勝手な動機や遺族の処罰感情から「死刑求刑には相当の理由がある」とした。しかし、たまたま条件が整った際の犯行で更生が困難とはいえないとし「量刑の平等性や同種犯罪の予防の見地から極刑がやむを得ないと断定できない」と述べた。  愛知県警はG被告を身代金目的誘拐容疑などで逮捕したものの、名古屋地検は最終的に誘拐罪の適用を見送った。
2006年12月15日
名古屋高裁
門野博裁判長
検察・被告側控訴棄却
 検察側は「実質的に身代金目的誘拐殺人と同等で死刑が相当」と主張した。弁護側は「殺害は交際女性のことを(被害者に)なじられたもので、恐喝や金品強奪の意思はなかった」と殺人と窃盗罪を適用し有期刑を求めた。
 裁判長は「身代金目的の意図があったことは合理的かつ自然で極刑はやむ得ない部分もあるが、殺意は直前に抱いており、計画自体が周到な準備にあったとはいえない」と検察側主張を退けた。また「被告の供述は信ぴょう性が乏しい」などと述べ、被告側主張を退けた。そして「利欲目的の凶悪な犯行で卑劣極まりない。刑事責任は極めて重く、有期刑の選択は到底考えられず、死刑求刑も理由がある」と指摘。その上で「計画自体が周到な準備にあったとはいえないこと、罪刑均衡などの見地から極刑はちゅうちょを覚えざるを得ない」と述べた。
2007年1月15日
被告側上告後取り下げ、確定。

H・T(55)  静岡県富士市の会社員H被告は、近所の女性(当時76)から借りていた12万円の返済期限だった2004年2月17日までに5万円しか用意できず、返済の猶予を頼んだが、女性に「家族に話す」などと言われたため、殺害を決意。2004年2月18日朝午前7時ごろ、自宅にいた女性の頭を用意した金属製ハンマーで数回殴るなどして転倒させ、さらに背後から頭などを数十回殴って殺害し、7万円の返済を免れた上、現金約13000円などを奪った。 強盗殺人 2005年6月2日
静岡地裁沼津支部
姉川博之裁判長
無期懲役
 検察側は「以前も借金返済に困って強盗殺人未遂事件を起こしており、実質的には2人を殺害したのと同じである。公判で供述を翻すなど反省もしていない」と述べ、死刑を求刑した。裁判長は「高齢者を何度もハンマーで殴るなど凶悪な犯行だが、刑罰の均衡を考えると無期懲役でしょく罪の日々を送らせることが適当」とした。  H被告は1978年にも強盗殺人未遂事件を起こし、懲役9年が確定している。
2006年8月24日
東京高裁
池田修裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は「周到な計画性はなく、前の事件の仮釈放後、16年余りは家庭を持ってまじめに働いていた。また遺族に謝罪の手紙を書き、反省の態度も示している。極刑選択には、躊躇を覚える」と述べた。
上告せず確定。
M・T(48)  元府警巡査で大阪刑務所刑務官M被告は、2002年4月14日、大阪市平野区の4階建てマンション3Fに住む養子の会社員宅にて、会社員の妻(当時28)の首を犬の散歩用のひもで絞めて殺害し、長男(当時1)を水を張った浴槽に沈めて水死させたとされる。さらに部屋に火をつけ、42平方メートルを全焼させたとして起訴された。。
 M被告は会社員の母親の再婚相手で養子縁組をしていた。また会社員が事業資金として借りた2000万円のうち500万円の連帯保証人となっていた。M被告は夫婦の生活に干渉したり、脅迫やセクハラまがいのメールを会社員の妻に再三送信したり、性的嫌がらせを続けていたが相手にされずトラブルとなっていた。
現住建造物等放火、殺人 2005年8月3日
大阪地裁
角田正紀裁判長
無期懲役
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 直接証拠はなく、被告側は無罪を主張。裁判長は「犯行は残忍かつ冷酷で、動機に酌量の余地はない」としたが、被告なりに被害者宅の金策に走り回るなど一家のために尽力していた▽犯行までの16年間を刑務官としてまじめに勤務しており、改善・更正の余地がないとはいえない――などと指摘した。  最高裁で死刑判決が破棄されて差し戻されたのは、1989年6月22日の「山中事件」最高裁判決以来(後に無罪確定)。
2006年12月15日
大阪高裁
島敏男裁判長
一審破棄・死刑
 裁判長は一審同様、状況証拠により森被告の犯罪であると認定し、被告の無罪主張を退けた。そして量刑について「残虐な犯行で罪責は誠に重大。事実を認めず、何ら反省しない被告には更生の可能性はなく、極刑はやむをえない」「1歳の子への徹底した攻撃など、被告には強い犯罪性向があり、反省の態度を一度も示したこともないことなどから、死刑を選択するほかなく、一審判決は軽きに失した」と指摘した。
2010年4月27日
最高裁第三小法廷
藤田宙靖裁判長
一・二審有罪判決破棄、地裁差し戻し
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 最高裁は、物証とされた事件直後に現場マンションの踊り場の灰皿から見つかった吸い殻が茶色く変色していた点について、合理的に説明する十分な検討がされていないと指摘。状況証拠を加えても被告が犯人でなければ合理的に説明できない事実関係があるかどうか疑問であるとし、審理が尽くされておらず、一審から再検討すべきだと結論づけた。そして、71本の中に被害女性が吸っていた銘柄が4本あることに注目。差し戻し審で71本を鑑定するよう促し、「被害女性のDNA型に一致するものが検出されれば、携帯灰皿の中身を(踊り場の)灰皿に捨てた可能性が極めて高くなる」と指摘した。裁判官1人は「一致すれば無罪を言い渡すべきだ」との補足意見を付けた。裁判官5人のうち3人による多数意見。1人は有罪方向の判断も許される余地があると意見を述べ、1人は被告の関与は十分立証されていると反対意見を述べた。
2012年3月15日
大阪地裁
水島和男裁判長
無罪
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 府警は、灰皿から見つかった残り71本の吸い殻を段ボール箱に入れ、平野署4階にあった捜査本部の整理棚に置いていたが、起訴から間もない2002年12月下旬に紛失が判明。府警は、公判で弁護側が吸い殻に関する証拠を開示するよう請求した後の2004年1月ごろまで検察側に紛失を伝えていなかった。また府警と検察はその事実を公表しなかった。弁護側は2003年12月から2004年2月の間に3回、吸い殻関連の証拠を明らかにするよう求めた。これに対し、検察は2004年1月、「開示に応じる理由がないので、開示しない」と回答。同年3月にも「証拠開示すべき具体的必要性が挙げられていない」などとして拒否したが、紛失には一切触れなかった。
 裁判で検察側は改めて有罪を主張。被告の靴の中から採取した犬の毛を新証拠として提出し、DNA型鑑定の結果、被害者宅の犬の毛の可能性があると主張。更に、被告自身が捜査段階で描いた現場室内の図面にある五月人形のかぶとは事件当日に飾られたものだとして、被告がその日に現場へ行ったことは明らかだと訴えた。
 裁判長は判決理由で、「短時間でも変色はあり得る」とした検察側の実験について「科学的知見に基づくとは言い難い」と一蹴し、「被告の吸い殻は携帯灰皿を経由し、被害者によって捨てられた可能性が高い」と述べた。獣毛についても、判決は「微物の採取状況を撮影した写真などは存在しない」と採取経過を証明する資料の乏しさを指摘。犬のDNA型の精度自体が低い点にも言及し「被告の靴内から採取されたという事実すら明らかでない」とした。他の状況証拠も、最高裁が示した「状況証拠で有罪認定するには被告が犯人でなければ説明できない事実が必要」との基準に照らし、いずれもMを犯人と推認させる事実とは言えないと結論づけた。そして裁判長は、「紛失がなければ、差し戻し前の審理の帰趨自体が別のものとなっていた可能性も否定できない」と付言をした。また、「物証の適切な保存管理は今後の捜査の最重要課題だ。紛失経緯の究明も不十分で、今一度、経緯を再検討し、組織などのあり方を含めた総合的な再発防止策を希望する」と、大阪府警を厳しく批判した。
2017年3月2日
大阪高裁
福崎伸一郎裁判長
検察側控訴棄却(無罪
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 検察側の請求を受け、凶器とされる犬のひもなど計10点のDNA型鑑定を実施。被告と一致するDNA型は検出されず、別人男性の型が検出された。検察は被害者の遺体に付着していた多数の皮膚片などのDNA型を調べる独自の鑑定も行ったが、被告と一致するDNA型は検出されなかった。
 判決で裁判長は、唯一の物証とされた吸い殻が捨てられた経緯について、最高裁で示された疑問に検察側が反証できていないと指摘。過去に被告から携帯灰皿を譲り受けた被害者が中身を捨てた可能性を否定できず、「被告がマンションに立ち入ったと認められない」と述べた。さらに、被害者が玄関の鍵を開けていた点などを踏まえ、「犯人は被害者に近い人物で、被告しかいない」とした検察側の立証内容を批判。「仮説の域を出ず、刑事裁判で取り上げる価値がない」と切り捨てた。また、事件後の被告の言動が不自然だったなどとも主張に対し、「印象による犯罪事実の認定につながりかねない」と厳しく批判した。そして、「仮説を立て、犯人像に一致する人物にたどりついたとしても、確実な証拠が伴わなければ意味がない」と捜査に苦言も呈した。そして「被告は犯人と推認できない」と述べた。先のDNA鑑定で別人男性の型が検出されたことについて、判決では触れなかった。
上告せず、確定。
O・J(43)  松永太被告とO被告は福岡市小倉北区のマンションで、監禁被害女性の父(当時34)に通電虐待を繰り返して1996年2月に殺害。1998年1~6月には、O被告の母(当時58)と妹夫婦一家4人の計5人の首を絞めたり、虐待して殺害した。1997年12月には、O被告の父(当時61)を通電虐待により死亡させた。 殺人、傷害致死、監禁致傷、詐欺、強盗 2005年9月28日
福岡地裁
若宮利信裁判長
死刑
判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 O被告はO被告の父と監禁被害女性の父については傷害致死罪の適用を主張したが、その他については起訴事実を大筋で認めており、一連の犯行は松永被告の主導と主張。弁護側は「松永被告の支配下での犯行だった」と強調するとともに、事件の全容解明に貢献したとして情状面から死刑回避を求めていた。判決ではO被告の父についてのみ傷害致死を適用した。  松永太被告は無罪を主張したが、2011年12月12日に死刑が最高裁で確定。
2007年9月28日
大阪高裁
虎井寧夫裁判長
一審破棄・無期懲役
 O被告は「過酷な虐待で精神的に支配され、松永被告の『道具』として殺害行為を行った」と述べ、利用された側は罪に問われない「間接正犯」にあたるとして無罪を主張した。判決は、O被告は犯行当時、松永被告に暴力で支配されていたと指摘。「ドメスティックバイオレンスの被害者特有の心理状態に陥っていたことは否定できない。適法な行為を行う可能性は限定されていた」と述べ、殺害の実行行為の中心だったが立場は従属的だったと判断した。
2011年12月12日
最高裁第一小法廷
宮川光治裁判長
検察側上告棄却、確定
判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 最高裁は「共犯者から異常な暴行、虐待を繰り返し加えられ、正常な判断能力が低下していた」と判断した。宮川光治裁判長ら4人の多数意見による結論で、横田尤孝裁判官(検察官出身)は死刑が相当だとの反対意見を述べた。
K・S(38)  指定暴力団住吉会系元組幹部K被告はもう1名とともに2004年10月24日午後1時40分頃、東京都台東区のホテル1階の喫茶店で、対立する指定暴力団山口組系暴力団幹部と話し合い中に拳銃6発を発砲。幹部2人(当時55、41)を拳銃で射殺し、別の幹部2人(ともに当時38)も重軽傷を負った。 殺人、殺人未遂、銃刀法違反他 2005年10月3日
東京地裁
毛利晴光裁判長
無期懲役
 裁判長は「組織間の勢力争いを原因とした犯行で酌量の余地はないが、組織性がなく反省の態度も見られる。更生の可能性がないとは言い切れない」と述べた。  被告側は一審判決後(?)、被害者の遺族らに示談金約1,100万円を支払った。
2006年7月10日
東京高裁
原田国男裁判長
検察・被告側控訴棄却
 裁判長は犯行を非難するも、「市民の巻き添えをいとわずに発砲したとはいえない。結果は重大で責任は相当重いが、激情にかられた犯行で、計画性が高いとは言い難い。被告は被害者側に慰謝料を支払い、遺族らは減刑嘆願書を出している。一審の刑を見直すには至らない」と判決理由を述べた。
2006年11月27日
最高裁第一小法廷
泉徳治裁判長
被告側上告棄却、確定

O・S(37)  東京都のゲームセンター店員O被告は、パチスロなどにのめり込んで借金を重ね、返済のために1999年頃から空き巣を繰り返していた。2003年7月7日、茨城県水戸市に住む会社員の女性(40)方に侵入し、帰宅した女性に包丁で切り付け重傷を負わせ、何も取らずに逃げた。7月17日、茨城県那珂市に住む会社員の女性(当時37)の自宅アパートに侵入したが、在宅していた女性に見つかったため絞殺、キャッシュカードで現金166万円を引き出した。 強盗殺人、強盗殺人未遂、強盗強姦、窃盗他 2005年10月13日
水戸地裁
林正彦裁判長
無期懲役
 裁判長は凶器を準備していなかったことから、計画的な殺人ではないと判断した。
2006年6月22日
東京高裁
阿部文洋裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は判決理由で「盗みに入った留守宅で帰宅した女性2人を殺傷した凶悪な犯行。その悪らつさ、結果の重大性、遺族の処罰感情などから死刑も十分考慮に値する」と指摘。その上で「ただ殺傷などに計画性はない。一部反省がうかがえ、改善可能性がないとはいえず、前科がないことも考えると、極刑がやむを得ない場合に当たらない」と判断した。
上告せず確定。
K・S(32)/M・B(26)  中国人留学生K、M被告は同じ留学生4人と共謀。2002年12月4日午前6時20分頃、風俗店を経営する中国人女性(当時43)を乗用車で連れ去って約16時間監禁し、内縁の夫の中国人男性(当時43)に身代金8000万円を要求した。その後、840万円まで要求額は下がったが、6人は警察に察知されたと思い込んで身代金受け取りを断念し、同日夜、女性の首を絞めて旅行かばんに詰め込み、名古屋港で海に投げ込んで水死させた。 身代金拐取、拐取者身代金要求、逮捕監禁、殺人、住居侵入 2005年11月29日
名古屋地裁
伊藤新一郎裁判長
無期懲役
判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
 裁判長は争点だったK被告の殺意について「捜査段階での『殺そうと思った』との供述は信用出来る」と認定。しかし「殺害することも予想はしていたが、計画時点で共謀があったとは認められない」と殺人の計画性を否定した。その上で、K、M被告の量刑について「中心的な役割だが、他の共犯者を支配していたとまでは言えない」と指摘した。  他に起訴された4被告は求刑通り無期懲役が確定。
2007年2月21日
名古屋高裁
門野博裁判長
検察側控訴棄却
 裁判長は「誘拐前から殺害を決めていたとの事前共謀は成立せず、一審判決に事実誤認はない」「残虐極まりない犯行だが、事前に確定的な殺害計画があったとはいえず、死刑にはちゅうちょを覚えざるをえない」とした。
上告せず確定。


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