M・T(53) | 兵庫県稲美町の無職M・Tは2021年11月19日午後11時35~50分ごろ、妹夫婦ら4人と同居していた木造2階建て住宅で、1階の階段下の押し入れの布団に混合ガソリンをまいて放火した。午後11時47分に、近隣住民が民家から火が出ているのに気付き、消防に通報したが、住宅約220平方メートルを全焼。夫婦の子供で小学6年の長男(当時12)と、1年の二男(当時7)を急性一酸化炭素中毒で殺害した。M・Tの妹である母親(当時48)は近所のスーパーマーケットに仕事に出ており、父親(当時58)は仕事を終えた母親を迎えに午後11時30分ごろに外出していた。 | 殺人、現住建造物等放火 | 2024年2月15日 神戸地裁姫路支部 佐藤洋幸裁判長 懲役30年 【判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい) |
裁判員裁判。起訴内容に争いはなく、量刑が争点となった。 判決で裁判長は裁判長は「犯行は残虐だ」と指摘する一方、被告が妹夫婦とのトラブルで精神的に追い詰められていた事情を考慮。計画性も高いとは言えず、被告が抱える軽度の知的障害も一定程度は事件に影響したとし、有期刑の上限の選択が妥当だと結論付けた。 |
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検察側控訴中。 | |||||
袴田 巌(88) | 清水市の味噌製造会社に務める工員・袴田巌(はかまた いわお)さんは、1966年6月30日午前1時過ぎ、従業員寮からくり小刀を持って味噌工場にある専務方に侵入し物色していたが、専務の男性(当時42)に見つかったため、数回刺して殺害し、。さらに物音で起きた妻(当時39)、長男(当時14)、次女(当時17)も次々に刺して殺害したとされる。さらに専務が保管していた売上金204,915円と小切手5枚(額面合計63,970円)、領収書を奪った。さらに工場内にあった混合油を持ち出して遺体に振りかけて放火し、木造平家住宅1棟(332.78m2)を焼毀したとされた。長女(当時19)は祖父母の家に泊まっていたため、無事だった。 死刑判決が確定したが、第二次再審請求が認められ、再審公判が開かれた。 |
強盗殺人、現住建造物等放火、住居侵入 | 2024年9月26日 静岡地裁 国井恒志裁判長 無罪 |
裁判長は判決理由で、検察を含めた捜査機関による三つの証拠捏造があったと認め、証拠から排除。その他の証拠では「袴田さんを犯人と認めることはできない」と結論づけた。 三つの証拠捏造は(1)確定判決が唯一任意性を認めた検察官作成の「自白調書」(2)事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかったシャツやズボンなど血染めの「5点の衣類」(3)袴田さんの実家から「発見」されたズボンの共布。5点の衣類は共布の存在と結びつき、これまでの裁判では袴田さんを有罪とする中心的な証拠と位置づけられてきた。 判決理由で国井裁判長は(1)について、検察官が清水署で警察官と代わる代わる虚偽を交えて追及的な取り調べを繰り返していたと指摘。連携によって非人道的に獲得されたとして「実質的な捏造」と判示した。最大の争点だった(2)は、弁護団をはじめとする各種みそ漬け実験や、長期間みそに漬けた血痕の赤みが黒褐色化することを示した化学鑑定や法医学者らの証言を踏まえ「発見の近い時期に捜査機関によって血痕をつけるなどの加工がされ、タンク内に隠された」と判断した。(3)については、押収経緯にも検察官の立証活動にも「看過できない不合理」があると指摘。捜索前に捜査機関が持ち込んだと考えるしか説明できず「捏造と認めるのが相当」とした。 一方、弁護団が無罪を証明するとしたDNA型鑑定の証拠価値を否定。袴田さんの自白に「無知の暴露」があると分析した心理学鑑定も「論理の飛躍がある」として退けた。怨恨による、みそ会社外部の複数人の犯行との主張を巡っては「怨恨目的との合理的な疑いは生じず、犯行は単独で遂行可能だったと認められる」と述べた。 |
袴田巌さんのこれまでの裁判内容については、【袴田事件】を参照。 |
控訴せず確定。 | |||||