ルフィ広域強盗事件


 2022年5月から2023年1月まで、「ルフィ」と名乗る男らが指示したとされる全国各地で発生した広域強盗事件について、事件の概要と、関わった被告人の判決についてまとめたものである。人物は、全て被告表記としている。
 重点8事件について、グループトップの渡辺優樹、幹部の今村磨人(きよと)、藤田聖也(としや)、小島智信被告の全員、もしくはいずれかが指示・関与したとして逮捕されている。8事件で逮捕された実行役らは44人。逮捕時の年齢は18~64歳、被害総額は約1億7,300万円である(朝日新聞2023年12月6日より)。
 ここに載っている被告人の中には、強盗事件以外に特殊詐欺事件などにも関わっている者もいるが、件数が多すぎるため記載していない。
 広域強盗事件に関与した者のうち、盗品等無償譲受罪、盗品等運搬罪などに関わった被告人についてはここに記載していない者もいる。
 関与した者が多すぎるため、また判決結果が記事になっていない者もいるため、全員を記載できているわけではない。

 2019年11月、日本の警察当局からの情報を得たフィリピン入管当局は日本人36人を不法滞在の疑いで拘束。特殊詐欺の電話をする「かけ子」だったとされ、警視庁は21年7月までに全員を日本に移送するなど、国内にいたメンバーを含めて計約70人を窃盗容疑などで逮捕した。
 警視庁は彼らより立場が上だった渡辺、今村、児島被告には2019年7月に、藤田被告には2021年2月に逮捕状を取得し、滞在先のフィリピン当局に送還を求め続けていたが、4人は虚偽の告訴などで強制送還を逃れ続けていた。
 一連の強盗事件で同一グループが関与した疑いが浮上。グループの指示役とみられる「ルフィ」を名乗る人物が実行役に電話した際、発信元の国番号がフィリピンを示す「63」だったことが分かった。警察当局が捜査を進めたところ、2019年に拠点が摘発された特殊詐欺事件で逮捕状が出ている4人フィリピンの首都マニラ郊外にある入国管理局のビクタン収容所に収容されていることが判明。4人がそこから日本にいる実行役に強盗事件の指示を、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を通じて出していた疑いが浮上した。  2023年1月31日、フィリピン警察はびく譚収容所を捜査、携帯電話やノートパソコン、タバコ、現金などを押収した。
 2月7日、今村磨人被告と藤田聖也被告がフィリピンから強制送還、警視庁は同日正午過ぎ、成田空港に向かう旅客機の機内で、特殊詐欺に関与したとする窃盗容疑で2人を逮捕した。
 2月9日、渡辺優樹被告と小島智信被告がフィリピンから強制送還。警視庁は同日午前2時25分ごろ、成田空港に向かう旅客機の機内で、特殊詐欺に関与したとする窃盗容疑で2人を逮捕した。  2月28日、警視庁は特殊詐欺事件に絡む窃盗容疑で今村被告、藤田被告を再逮捕。3月1日、窃盗容疑で渡辺被告、小島被告を再逮捕した。
 5月10日、警視庁は別の特殊詐欺事件に関与したとして、窃盗容疑で渡辺被告、今村被告、小島被告を再逮捕した。
 5月31日、警視庁は別の特殊詐欺事件に関与したとして、窃盗容疑で渡辺被告、今村被告、小島被告を再逮捕した。
 7月3日、警視庁は別の特殊詐欺事件に関与したとして、窃盗容疑で渡辺被告、小島被告を再逮捕した。
 2024年1月18日、警視庁は別の特殊詐欺事件に関与したとして、窃盗容疑で渡辺被告を逮捕した。
 2月21日、警視庁は別の特殊詐欺事件に関与したとして、詐欺と窃盗容疑で渡辺被告を逮捕した。
 3月7日、警視庁はタイを拠点にした特殊詐欺に関わったとして、詐欺と窃盗容疑で渡辺被告を逮捕した。
 各事件については、それらの項を参照。

 他に2023年2~3月に今村磨人被告と接見した際、フィリピンに居る犯罪組織JPドラゴンの幹部と不正に電話で話をさせたとして、警視庁は2023年11月28日、広島弁護士会所属の加島康介弁護士の自宅と法律事務所を証拠隠滅容疑で捜査した。加島弁護士は国の新型コロナウイルス対策の持続化給付金を不正に受給した詐欺罪で起訴され、公判中で保釈されていた。加島弁護士は2023年6月に広島地裁で懲役3年6月判決、11月30日に広島高裁で被告側控訴棄却。
 2024年3月19日、広島弁護士会所属の加島康介弁護士を証拠隠滅容疑で書類送検した。の実刑判決を受けていて控訴中た。広島弁護士は鹿島弁護士を除名の懲戒処分とした。東京地検は3月28日で加島元弁護士について不起訴処分とした。


【ルフィ広域強盗事】 ※ 太字は重点8事件

  1. 〈大津市強盗未遂事件〉
     強盗の闇バイトに応募した20~30歳代の男性3人が2022年3月13日17時40分、質店の扉にコンクリートブロックを投げつけるも扉が割れず、失敗した。
     リーダーのIK29被告は借金苦のため2022年3月、Twitter(現:X)で強盗の闇バイトを見つけて応募。当初は「King」というアカウント名の人物とメッセージアプリ・テレグラムでやり取り。その後、相手が「ルフィ」に替わり、「ルフィ」が他に用意した2人を加えたグループのボスに指名され、ルフィの指示通りに動いた。
     3月14日、建造物侵入未遂事件で3人は逮捕された。起訴後の3月末に保釈された。IK29被告を除く2人のその後は不明。

  2. 〈京都市時計買取販売店強盗事件〉
     大津市の事件で保釈されたIK29被告に「ルフィ」が接触。新たな強盗の勧誘を受け、自らTwitter(現:X)で募集。NR20被告とIK45被告を誘った。
     2022年5月2日午後3時15分ごろ、IK29被告、NR20被告、IK45被告の男女3人が、京都市中京区の時計買取販売店を襲い、従業員にハンマーを振り上げるなどして脅迫し、ハンマーでたたき割ったショーケースから高級腕時計41点(計約6,920万円相当)を奪った。
     IK29被告はルフィに成功したことを報告すると、現金と交換するために吹田市内のサービスエリアへ向かって「サンジ」を名乗る人物に渡すように指示された。NR20被告が40点を持って指定場所へ向かったが、SAのトイレで何者かに奪われた。襲った人物の行方は不明である。そのことを報告すると「ルフィ」は驚くも、IK29被告に金を渡すと伝え、5月9日に計約65万円の報酬が振り込まれた。IK29被告は同日、NR20被告に19万円を送金した。IK45被告には報酬はなかった。
     奪われた時計は5月3日までに岐阜県内のコインロッカーへ移された。「ルフィ」から指示を受けた、資金提供や報酬分配役、運搬役のMY22被告が少なくとも24点を取り出して東京に向かい、うち少なくとも19点が換金役の男女6人の手に渡り、5月10日までに東京、埼玉、大阪の質屋など8店で計約1,351万円で売却された。40点のうち21点は売却に失敗して押収されたり、行方不明になったりしている。
     MY22被告は6人から売却代金などを回収。5月11~13日の3回にわたり、今村磨人被告名義の北海道の金融口座に計約103万円を送金した。ほぼ全額が、今村被告が当時いたフィリピンの収容所近くのATMから、被告名義のカードで引き出された。
     7月21日までに京都府警は、住所不定無職NR20被告、岐阜県多治見市の無職IK45被告、他男女2人を強盗容疑で逮捕。8月8日、IK29被告を強盗容疑で逮捕。
     8月10日、京都地検はNR20被告とIK45被告を強盗罪で起訴した。同日、男性1人を不起訴とした。女性1人を盗品運搬罪で起訴した。8月26日、女性1人の強盗容疑は不起訴とした。
     2022年11月~2023年1月、京都府警は盗まれた腕時計を売却したとして、20~30代の男女4人を逮捕した。
     2月7日、MY22被告を強盗、盗品等処分あっせん容疑で逮捕。京都地検は2月28日、MY22被告を盗品運搬罪で起訴、強盗容疑については不起訴処分(嫌疑不十分)とした。警視庁は6月16日、今村磨人被告の口座に売却金約100万円を送金したとして、MY22被告を組織犯罪処罰法違反(隠匿)容疑で逮捕した。
     本事件では強盗役、盗品運搬役、換金役、送金役で少なくとも13人が関わっており、IK29被告を除く12人がSNSの闇バイトに応募している。13人のうち、11人が起訴された。報酬を受け取ったのはIK29被告、NR20被告、MY22被告だけだった。
     警視庁は6月29日、「ルフィ」を名乗って強盗を指示したとして今村磨人被告を逮捕した。

  3. 〈稲城市強盗致傷事件〉
     2022年10月20日午後4時ごろ、「ルフィ」の指示を受けたKT25被告、IK37被告、HM24被告、SY24被告、MR23被告、TK33被告の6人は、東京都稲城市に住む40歳代の男性宅に宅配業者を装って訪問。応対した男性の妻である30代女性にハサミを振り上げながら室内に押し入り、床に投げつけて女性の口をふさいで首を絞め上げるなどの暴行を加え、同居の子ども2人の手首や口に粘着テープを巻き付けた上で現金約3,500万円や金塊など約140点(計約860万円相当)が入った金庫2個を奪った。女性は10日間のけがを負った。
     MK31被告は奪った金塊を盗品と知りながら、都内の買取店で処分した。
     2023年1月26日に警視庁捜査一課は、強盗傷人容疑で実行犯6人を、盗品等有償処分あっせん容疑でMK31被告を逮捕した。
     警視庁は12月5日、強盗致傷容疑などで「シュガー」と名乗った渡辺優樹被告、「ルフィ」「ミツハシ」と名乗った今村磨人被告、「キム」と名乗った藤田聖也被告、実行犯を集めるリクルータ役だった小島智信被告を逮捕した。東京地検は12月26日、強盗致傷罪などで渡辺被告、今村被告、藤田被告を起訴した。さらに小島被告を強盗致傷ほう助罪で起訴した。

  4. 〈岩国市強盗未遂事件〉
     2022年11月7日午前1時ごろ、「ルフィ」の指示を受けたKT25被告、IK37被告、HM24被告、WT26被告の4人が山口県岩国市でに住む60歳代の会社役員の男性宅に侵入。2階で娘を結束バンドで縛り、WT26被告に見張りをさせていたが、男性が男性が身を守るために日本刀を持ちだして抵抗してきた、3人は何も奪わずに車に戻り、運転手役のUH23被告とともに逃走した。置き去りにされたWT26被告は、駆け付けた警官によって現行犯逮捕された。
     UH23被告は中国自動車を走行中、中央分離帯に接触する事故を起こした。駆け付けた交通機動隊の警官にUH23被告は、強盗未遂の帰りだと話してしまい、4人はそのまま逮捕された。
     彼ら5人とTR31被告は前日の6日にも同じ民家で強盗を試みていたが、1階の窓が割れなくて断念していた(住居侵入未遂)。TR31被告の逮捕日は不明。
     警視庁は2023年11月14日、フィリピンの収容所から指示を送っていたとして、渡辺優樹、藤田聖也、今村磨人被告を強盗未遂と住居侵入容疑で逮捕した。東京地検は12月5日、3人を強盗未遂罪などで起訴した。警視庁は12月5日、小島智信被告を強盗傷人容疑で逮捕した。東京地検は12月26日、小島被告を強盗致傷ほう助罪で起訴した。

  5. 〈秦野市窃盗事件〉
     2022年11月14日、秦野市の会社経営者の男性(59)宅に永田陸人被告、MK31被告、WM34被告、もう1名が侵入し、腕時計など64点(878万4,000円相当)を盗んだ。男性は当時、自宅にいなかった。
     永田被告は盗んだ時計のうち2本を自らの懐に入れた。共犯者1人が1本くすねた。永田被告はくすねた時計を当時住んでいた石川県内で売却。80万と90万、合わせて170万になったという。
     神奈川県警は2023年9月28日までに、永田陸人被告、MK31被告、WM34被告、他1人を逮捕した。

  6. 〈目黒区強盗事件〉
     2022年12月2日午前4時ごろ、東京都目黒区内のマンションで、俳優・モデルの男性(29)が帰ってきたところをの指示を受けたYM22被告が襲い、催涙スプレーをかけた。さらにKI26被告が駆け寄ろうとしたが、男性はYM22被告を押しのけて部屋に入り鍵をかけたため、2人はその場を離れ、外に居た運転役のOK33被告、RR27被告の車に乗って逃走した。男性は角膜に軽傷を負った。
     2023年3月8日、警視庁はYM22被告、OK33被告を逮捕。7月21日、KI26被告、フィリピン国籍のRR27被告を逮捕した。

  7. 〈中野区強盗傷害事件〉
     2022年12月5日午前10時50分ごろ、「キム」から指示を受けた東京都中野区の3階建て住宅の男性(49)宅に永田陸人被告、WM34被告が宅配業者を装って押し入り、WM34被告が男性の顔面を殴り、さらに永田被告も飛び蹴りをするなど全治14日間の怪我を負わせた。さらにYM22被告、HS26被告、FY24被告、NY22被告等が押し入った。永田被告らは男性から現金のありかを聞き出し、約3,200万円を奪った。FY24被告、YM22被告は途中で逃げ出した。
     永田被告、NY22被告、HS26被告は、レンタカー運転役のMK31被告が運転する車で逃走。WM34被告も乗り込んだが、車から急発進したはずみで転落。現場から約40m先の路上で警察官に取り押さえられ、強盗傷人容疑で緊急逮捕された。この時、被害金のうち約1,000万円が路上に散乱し、回収された。永田被告とNY22被告は5分後に現場統括役のOK33被告の車に乗り換えて逃走した。
     2023年1月21日、警視庁は強盗傷人容疑で永田陸人被告を逮捕。24日、YM22被告とHS26被告を強盗傷人容疑で逮捕。26日、OK33被告を逮捕。2月1日、MK31被告を強盗傷人容疑で逮捕。同日、事件後に現金運搬でフィリピンに出国していたNY22が成田被告に帰国したところを強盗傷人容疑で逮捕。2月11日、FY24被告を強盗傷人容疑で逮捕。
     警視庁は10月24日、フィリピンからスマートフォンなどで指示していた渡辺優樹、今村磨人、藤田聖也被告を強盗傷人、住居侵入容疑で逮捕した。東京地検は24日、3人を強盗致傷、住居侵入などで起訴した。警視庁は12月5日、小島智信被告を強盗傷人容疑で逮捕した。東京地検は12月26日、小島被告を強盗致傷ほう助罪で起訴した。

  8. 〈横浜市強盗事件〉
     2022年12月13日夜、「ルフィ」等の指示で横浜市旭区の空き家にNY22被告、OK33被告、YM22被告ら4人が侵入し、皿の入った箱1個を盗んだ。4人は宅配業者に成りすましてインターフォンを押したが反応がなく、3時間後に再度推すも反応がなかったため、キムに指示を仰ぎ侵入した。4人は空き家とは知らなかった。皿はYM22被告が受け取ったが、そのまま捨てている。
     空き家の窓ガラスが割られているのに気付いた近隣住民が110番。2023年8月22日までに神奈川県警はNY22被告、OK33被告、YM22被告ら4人を邸宅侵入と窃盗容疑で逮捕した。

  9. 〈広島市強盗致傷事件〉
     2022年12月21日午後7時半ごろ、実行役である永田陸人被告、加藤臣吾被告、MK31被告、NY22被告、KK27被告、UT21被告、KK18被告の6人は、広島市の時計販売買い取り専門店の店舗兼住宅に、宅配業者を装って侵入。加藤被告ら2人が宅配業者に変装し、ドアを開けた住人男性の母親(75)を倒して押さえつけ、残り4人が次々と押し入った。二階にいた住人男性(49)が激しく抵抗したため、実行役リーダーである永田被告がモンキーレンチで頭を殴るなどの暴行を加え、他の実行役も男性の父親(81)の顔を殴った。永田被告らは、1階の金庫に入っていた現金250万円や、ショーケースにあった高級腕時計など137点(2,439万円相当)を奪った。
     住人男性は高次脳機能障害等の後遺症が見込まれる加療日数不明の意識障害を伴う脳挫傷・外傷性脳内血腫・急性硬膜下血腫等のケガを負い、一時意識不明の重体となった。父親と母親はともに全治2週間のけがを負った。男性は意識を回復するも重度の意識障害と体に麻痺が残り、24時間介護が必要な車椅子生活を送っている。
     実行役は現場統括兼運転手役のOK33被告に奪った現金や腕時計などを渡し、報酬をもらって逃走した。
     NK23被告は奪った腕時計など74点(時価総額1,529万6,020円)を東京都内2つの買取店舗で、9回にわたって1,132万3,200円で売却した。
     広島県警は2023年2月3日、加藤臣吾被告、KK27被告、UT21被告、KK18被告を強盗傷人、住居侵入容疑で逮捕した。
     広島地検は2月24日、加藤臣吾被告、KK27被告、UT21被告、強盗傷人、住居侵入容疑で起訴。KK18被告を同じ非行内容で広島家裁へ送致した。地検は殺意を認定しなかった。KK18被告はさらに横浜家裁へ移送され、3月22日、横浜家裁はKK18被告を広島地検に逆送した。
     広島県警は3月29日、MK31被告、NY22被告を強盗殺人未遂と住居侵入容疑で逮捕した。
     広島地検は3月31日、KK18被告を強盗傷人罪と住居侵入罪で起訴し、実名を公表した。
     広島地検は4月19日、MK31被告、NY22被告を強盗傷人罪と住居侵入罪で起訴した。地検は殺意を認定しなかった。
     広島県警は5月24日、強盗殺人未遂と住居侵入容疑でOK33被告を逮捕した。広島地検は6月14日、強盗傷人罪と住居侵入罪で起訴した。地検は殺意を認定しなかった。
     広島県警は8月9日、永田陸人被告を強盗殺人未遂・強盗傷人・住居侵入容疑で逮捕した。広島地検は8月20日、永田陸人被告を強盗殺人未遂・強盗傷人・住居侵入罪で起訴した。他の実行役と異なり、モンキーレンチを使って暴行に直関与したことで「殺意が認められた」として、実行役で唯一強盗殺人未遂を適用した。
     広島県警は2023年9月20日、盗品等処分あっせん容疑でNK23被告を逮捕した。広島地検は10月11日、盗品等処分あっせん罪で起訴した。
     警視庁は2023年10月3日、フィリピンの収容所から指示を送っていたとして、渡辺優樹、藤田聖也、今村磨人被告を強盗殺人未遂と住居侵入容疑で逮捕した。東京地検は24日、3人を強盗傷人罪などで起訴した。

  10. 〈大網白里市強盗致傷事件〉
     2023年1月12日午後7時半ごろ、「ミツハシ」から指示を受けた永田陸人被告、SR25被告が千葉県大網白里市のリサイクルショップに押し入り、店内にいた男性店長(76)の顔を殴った。店長は金を要求されたが抵抗。犯人は「金庫はどこだ」などと言って殴る蹴るなどし、店長は顔面を3カ所骨折するなど全治約2週間のけがをした。 男は男性の手を粘着テープで縛ろうとしたが、抵抗されたため逃走。その後、2人は何もとらず、表で待機していた運転手役のNK23被告の車に乗って逃走した。
     千葉県警は1月13日、県内でNK23被告を強盗傷人容疑で逮捕。NK23被告のスマホを解析した結果、狛江事件の被害者の住所や、強盗に入るという趣旨の記載が見つかった。
     千葉県警東金署は2月11日、SR25被告を強盗致傷、建造物侵入容疑で逮捕。千葉地検は3月3日、強盗傷人罪などでSR25被告を起訴した。
     千葉県警は4月12日、NK23被告に犯行資金を提供したとして、HM64被告を強盗致傷と建造物侵入容疑で逮捕した。
     千葉県警は6月14日、永田被告を強盗致傷、建造物侵入容疑で逮捕した。
     警視庁は7月20日、「ミツハシ」を名乗っていたとされる今村磨人被告を強盗致傷容疑で逮捕した。12月5日、渡辺優樹、藤田聖也被告を強盗致傷容疑で逮捕した。

  11. 〈狛江市強盗致死事件〉
     2023年1月19日午前11時半ごろ、実行役の永田陸人被告、加藤臣吾被告、野村広之被告、NK19被告の4人は共謀。宅配業者役のNK19被告、野村被告が段ボール箱を持って東京都狛江市の住宅のインターフォンを鳴らし、応対のために玄関ドアを開けた住人である女性(90)を野村被告がいきなり抱きかかえ、そのまま中へ突入。3人もそれに続きに突入した。野村被告とNK19被告はを地下室に連れていき、両手を結束バンドで縛った。そして永田被告の指示で野村被告がバールで複数回殴り、多発肋骨骨折等の傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させた。加藤被告は2階にあった腕時計3点、時価合計約58万円相当を奪った。起訴内容には指輪も含まれていたが、判決では被害品から除外されている。
     この住宅には息子夫婦、2人の孫が住んでいたが、全員が外出していた。
     このとき加藤被告は、実行役のリーダーである永田被告だけに腕時計を奪ったことを話し、他の実行役や指示役を出し抜いて、多くの利益を得ようとしていた。
     収穫が少なかったことから永田被告は「キム」(指示役)と相談し、NK19被告を見張として家の前に降ろし、もう一度突入しようとした。しかし野村被告は逃走。さらにNK19被告が、近くに業者がいると嘘をついたため再突入は断念した。
     NS34被告は「ミツハシ」の指示で、事件前にレンタカー2台を借りた。
     犯人たちは当初1月13日に実行する計画だったが、運転手役のNK23被告が同日逮捕されたため、延期。18日にも集合して現場に向かったが、人通りが多かったため取りやめた。
     大網白里市で起きた強盗傷人事件の捜査の過程で午後2時46分、千葉県警から警視庁調布署に「この家が強盗に狙われている」という情報提供がもたらされた。およそ2時間半後の午後5時12分、警視庁調布警察署の警察官が住宅に到着した。その3分後の午後5時15分に家族の1人が帰宅したため、警察官は、この家族とともに玄関から住宅の中に入り、女性が住宅の地下1階で死亡しているのを発見した。
     捜査本部は2023年2月22日午前、実行犯の野村広之被告を強盗殺人と住居侵入容疑で、レンタカーを用意したNS34被告を強盗殺人ほう助容疑で逮捕。同日、午後、実行犯の永田陸人被告、NK19被告を逮捕。28日、強盗殺人と住居侵入容疑で加藤臣吾被告を逮捕。
     東京地検立川支部は3月16日、野村被告と永田被告を強盗致死と住居侵入罪で起訴、NK19被告を同非行内容で家裁送致した。NS34被告は処分保留で釈放した。22日、強盗致死、住居侵入罪で加藤臣吾被告を起訴した。4月12日、東京家裁立川支部はNK19被告を逆送した。21日、東京地検立川支部はNK19被告を強盗致死罪などで起訴し、名前を公表した。
     警視庁滝野川署は4月26日、NS34被告を窃盗容疑で逮捕した。NS34被告は2022年7月16日夕、仲間と共謀し、北区の70代男性宅に「カードが不正に使われているので交換する必要がある」と滝野川署員を装って電話。家を訪れてカード2枚をだまし取り、現金計100万円を引き出して福島容疑者らが管理する別の口座に同額を振り込んだ。
     警視庁は9月12日、強盗殺人容疑などで「シュガー」を名乗った渡辺優樹被告、「ミツハシ」を名乗った今村磨人被告、「キム」を名乗った藤田聖也被告、小島智信被告を逮捕した。小島被告は闇バイトで実行役を募るリクルート役だった。東京地検は10月3日、殺意は認められなかったとして渡辺被告、今村被告、藤田被告を強盗致死罪他で起訴した。小島被告は処分保留とした。東京地検は12月27日までに小島被告を不起訴処分とした。

  12. 〈足立区強盗予備事件〉
     2023年1月19日の狛江事件で多額の金銭を強奪できなかったことから、「キム」の指示で強盗を計画。その日の夜、永田被告、加藤被告、NK19被告が夜に下見へ行ったが、住人の男性は不在。彼らは住人を脅して金の在処を聞き出すため、刑罰が重くなるにもかかわらず(もしくは刑罰が重くなることを知らず)、「空き巣」ではなく「強盗」を狙っていたため、その日の夜の犯行は断念した。
     1月20日の朝、改めて男性宅へ行ったものの不在。「キム」と永田は相談の結果、別の案件に行ったものの目の前に幼稚園があって人眼が多いことから断念。空き巣に入るため、男性宅に戻った。午後1時ごろ、実行役の加藤被告、NK19被告、TM32被告の3人が男性の不在を確認し、バールで窓を割って侵入。室内を物色していた。
     「楽をしたかった」永田被告は外で見張り役をしていたが、警察からの職務質問を受け、その場で任意同行を求められた。直前に、常時指示役とつながれたテレグラム通話でその旨連絡。同じく常時接続状態のテレグラム通話で指示役から実行犯らに「永田が職務質問を受けている」と連絡が入ったことから、実行犯3人は男性宅を出て逃走した。
     永田被告に職務質問がかかったのはこの日の午後1時30分、竹ノ塚署に「足立区内に不審車両が徘徊している」という情報が寄せられたからであった。警察官が車両を捜索すると、10分後に路上でプリウスを発見。近くにいた永田に職務質問をしたのだった。車内を確認したところリュックがあり、中からフランクミュラー、ブルガリなどの時計が発見された。狛江事件の被害品とシリアルナンバーや色などが一致した。
     永田被告は〈中野区強盗傷人事件〉に関与したとして、翌日に逮捕された。
     事件当時、男性が不在だったのは、直前に「アポ電」がかかってきていたためだった。1月19日の17時ごろ、自宅にいると固定電話に『竹ノ塚署のタケナカカオリ』を名乗る電話があり、特殊詐欺グループの犯人を捕まえた、あなたの家の写真があったなどと話してきた。しかし家の特徴は違い、さらにタンス預金があるかどうか聞いてきたため、本当に警察なのかと確認すると突然切れた。男性はすぐに竹ノ塚署に確認、タケナカがいないことがわかった。さらにアポ電強盗が増えているので批難した方がいいとアドバイス。午後6時に警察官が自宅に到着し、アポ電強盗の説明。21時ごろ、警察官と一緒に貴重品を持ち出し、22時には戸締りをして避難していた。
     警視庁は永田被告、加藤被告、NK19被告、愛知県の別の窃盗事件で逮捕・起訴されているTM32被告を強盗予備容疑で逮捕した。
     警視庁は8月22日、指示役で「キム」を名乗っていた渡辺優樹被告、「ルフィ」を名乗っていた今村磨人被告、アポ電を指示した藤田聖也被告を強盗予備容疑で逮捕。さらに事件前日に被害者宅へ「アポ電」をしたかけこ役のYR23被告を逮捕した。


【関与被告人判決】
 主に一審判決の順に記している。
 無期懲役判決を受けた被告人の判決の詳細については、該当する日付の無期懲役判決リスト等を参照のこと。



【参考資料】
 新聞記事各種



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