無期懲役判決リスト 2006年




 2006年に地裁、高裁、最高裁で無期懲役の判決(決定)が出た事件のリストです。目的は死刑判決との差を見るためです。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、ご連絡いただけると幸いです。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。




地裁判決(うち求刑死刑)
高裁判決(うち求刑死刑)
最高裁判決(うち求刑死刑)
98(8)
83(9)+6
33(7)+6

 司法統計年報によると、一審99件(控訴後取下げ4件)、控訴審98件(棄却87件。破棄自判11件(一審死刑2件、一審無期1件、一審有期8件)。上告後取下げ5件、上告66件)、上告審61件(うち、判決1件。別に差戻(光市事件)1件)。
 一審判決では、東京地裁で殺人or殺人未遂容疑で起訴された日本人被告1件が不明である(おそらく控訴)。
 検察統計年報によると、一審確定で32件、控訴取下げで確定4件、控訴棄却で確定29件、破棄自判で確定4件、上告取下げ5件、上告棄却で確定61件。ただし、一審確定のうち横浜地裁で3件、千葉地裁で3件、名古屋地裁で4件となっているが、報道の件数と一致せず、統計のミスと思われる。横浜地裁で1件、千葉地裁で1件、名古屋地裁で3件とすると、一審確定は27件となる。



【2006年の無期懲役判決】

氏 名
西浦和也(37)
逮 捕
 2005年5月21日(死体遺棄容疑で)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、監禁
事件概要
 香川県綾歌郡宇多津町の暴力団組員西浦被告は、知人の男性住職(当時25)から300万円の借金の返済を迫られたため、第三者を装って借用証書などを奪おうと計画。2005年5月16日午後9時半ごろ、坂出市のマンションの一室に男性を誘い込み、共謀した男二人(ともに監禁罪で懲役2年6月の実刑確定)に襲わせ、目や手足を粘着テープなどで縛って監禁した。さらに借用証書の入ったかばんなどを奪い、17日午前零時過ぎごろ、口封じのため男性の鼻や口に粘着テープを巻き付けて窒息死させた。
裁判所
 高松地裁丸亀支部 高橋正裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月11日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は論告で「極めて残忍で凶悪重大な犯罪。巧妙かつ周到な計画のもとに行われ、確定的殺意に基づくことは明白。動機に酌量の余地がなく、反省もみられない」などとした。
 弁護側は最終弁論で「西浦被告は当初から殺意があったわけではない」と主張した。
 高橋正裁判長は「借金を免れようとする自己中心的な動機に酌量の余地はない。非道な手口で被害者を殺害した犯行には人間性のかけらも見いだせない」などと指摘した。弁護側の主張に対しては、「殺害の状況からすると確定的殺意があったことは明白」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2006年8月24日、高松高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定と思われる。

氏 名
薛経章(32)
逮 捕
 2004年9月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死傷他
事件概要
 横浜市の無職薛経章(せつ・けいしょう)被告ら8人は2004年5月22日午前1時頃、四日市市に住む医師の男性(65)宅に侵入。就寝中の夫妻に暴行し、現金や貴金属など計約2000万円相当を奪った。顔に粘着テープを巻かれた男性の妻(当時58)は窒息死し、男性は肋骨を折るなどの重傷を負った。
裁判所
 津地裁四日市支部 村上久一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月13日 無期懲役
裁判焦点
 村上裁判長は「運転手役を誘うなど、事件に必要不可欠かつ重要な役割を果たした。比較しても得た利益は多額なのに、被害者に慰謝の措置をしていない」と指摘した。
備 考
 この事件では、実行犯の中国人7人のうち6人が逮捕、起訴された。
 被告側は控訴した。2006年6月26日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。被告側上告棄却、確定(日時不明)。

氏 名
山本剛(38)
逮 捕
 2003年7月31日
殺害人数
 0名(死者3名)
罪 状
 現住建造物等放火他
事件概要
 茨城県ひたちなか市の会社員山本剛被告は、上司に叱責された鬱憤を晴らすため放火を繰り返し(6件起訴)、2003年2月21日午前2時20分ごろ、東海村に住む私立校教諭の男性(当時53)方に火をつけ、木造平屋建て住宅約105平方メートルを全焼させ、男性と長男(当時14)、二女(当時8)の3人を焼死させた。
裁判所
 水戸地裁 林正彦裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2005年1月16日 無期懲役
裁判焦点
 弁護側は「被告は(事件当時)覚せい剤を使用し、心神耗弱で刑事責任能力は限定的だった」と主張し、精神鑑定を請求した。実施した精神科医は、妄想の程度が重いとまでは言えないうえ、隠ぺいや報復の感情があったことを根拠に挙げ、「覚せい剤使用により、物事を判断する能力は減退していたが、その程度は著しくはなかった」「完全責任能力に近い状態にあった」と証言した。
 林裁判長は判決理由で「仕事や私生活のうっぷんを解消するため、被害者の苦痛を顧慮することなく放火を繰り返した」「理不尽で身勝手な動機に酌量の余地はない」と指弾した。弁護側は「人が住んでいるという認識はなく、覚せい剤の使用により幻覚のような症状があった」などと主張したが、林裁判長は「人が住んでいることを認識しながらあえて放火した。覚せい剤を使用していたが現実を見失う状況ではなかった」と退けた。
備 考
 控訴せず、確定。

氏 名
桑島一夫(54)
逮 捕
 2004年12月4日(11月18日、別の窃盗未遂事件で逮捕済み)
殺害人数
 1名
罪 状
 住居侵入、強盗殺人、強盗強姦未遂、常習累犯窃盗
事件概要
 無職桑島一夫被告は、2004年11月15日午前9時ごろ、大阪市阿倍野区に住む看護師の女性(当時23)の部屋に侵入。寝ていた女性を暴行しようと室内にあった包丁を顔に突きつけて脅したが、抵抗されたため胸を刺して殺害。現金約34,000円の入った財布を奪うなどした。桑島被告は常習累犯窃盗罪などの服役を終え出所直後であった。
裁判所
 大阪高裁 片岡博裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月17日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 被告側は量刑不当を理由に控訴していた。
備 考
 2005年8月30日、大阪地裁で求刑通り一審無期懲役判決。上告せず確定と思われる。

氏 名
叶錦(38)
逮 捕
 2005年4月20日(強盗致傷罪などで高松地裁で公判中)
殺害人数
 1名
罪 状
 有印私文書偽造、同行使、旅券法違反、住居侵入、強盗、窃盗、建造物侵入、強盗致傷、強盗致死、強盗傷人
事件概要
 中国籍の無職叶錦被告は他の中国人や日本人8人と共謀。2004年5月11日、弘前市に住む会社社長の男性(当時63)方に押し入り、男性と妻の口や鼻を粘着テープでふさいで脅迫し、現金約260万円と、約650万円相当の貴金属を奪った。呼吸が出来なくなった男性は窒息死し、妻は負傷した。
 他に叶錦被告は中国人を中核とするグループの主犯格として、2003~2004年にかけて、兵庫県西宮市、香川県丸亀市、愛媛県伊予市などで、会社社長宅などを狙った強盗や窃盗など6件を繰り返し、弘前の事件を含め現金や貴金属など計約8,680万円相当を奪った。
裁判所
 青森地裁 高原章裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月20日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 叶被告は、弘前市と丸亀市の強盗では窃盗としての共同正犯を、他の5件では無罪を主張していた。
 弁護側は「別の中国人に誘われて男性宅に行ったが、足をけがしていたので中には入っていない」とし、中にいた実行犯から男性の様子がおかしいことを聞かされ、人工呼吸をするために男性宅に入ったとし、犯行には関与していないことを強調。関与も窃盗罪にとどまると主張してきた。これに対し、高原裁判長は「事件まで面識のなかった共犯者の供述の信用性は高く実行犯と認められる」「何の役割分担もせず、ただ一緒にいるだけの人間に分け前を与えたこと、足をくじいたのにわざわざ東京から弘前まで同行するのは不自然不合理で信用できない」と退けた。
備 考
 叶被告は当初、劉邦と名乗っていたが、公判中に本名が叶と分かった。
 この事件では9人が関わったとされ、うち4人が逮捕・起訴されている。残る実行犯5人のうち、逮捕状を取って指名手配しているのは2人で、事件後まもなく中国に出国した。あとの3人はあだ名が分かるだけで本名が不明とされ、特定が難航している。
 運転手・見張り役の日本人男性には一審懲役13年(求刑懲役15年)、情報・滞在場所提供の元暴力団組長に一審懲役15年(求刑通り)、情報提供者の元暴力団組長と実行犯の中国人グループを仲介した中国人女性には、一審懲役10年(求刑懲役13年)が言い渡されている。
 被告側は控訴した。2006年8月29日、仙台高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
堀野雅人(59)
逮 捕
 2004年11月?(初公判:2005年1月18日)
殺害人数
 0名
罪 状
 強姦致傷、強盗他
事件概要
 千葉県茂原市の廃品回収業堀野雅人被告は、2004年5月から10月、女性を暴行するのに使うため、トラックなどの自動車計5台を盗んだ。千葉市や印西市などで、道を聞くふりをして車に乗せた女性を襲ったほか、歩いていた女性を狙うなどの手口で計7人に性的暴行を加え、そのうち5人にけがを負わせた。また、現金を奪った。掘野被告は強盗など計9件で起訴されている。
裁判所
 千葉地裁 古田浩裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月20日 無期懲役
裁判焦点
 古田裁判長は量刑の理由を「常習性は明らかで再犯のおそれも高い。被害者は日常生活に支障をきたすほど深刻な精神的衝撃を受けている」と述べた。
備 考
 堀野被告は過去にも同様の連続強姦事件で2回、計約20年服役しており、2004年5月に仮出所したばかりだった。
 被告側は控訴した。2006年6月12日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
佐藤浩美(45)
逮 捕
 2004年8月25日(自首、現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反
事件概要
 無職佐藤浩美被告は2004年8月25日午後8時半ごろ、盛岡駅前のホテルで、客室に呼んだ知人で無店舗型風俗店アルバイトの女性(当時24)と口論になり、危険を感じて部屋から逃げようとした女性を追いかけ、持っていた果物ナイフ(刃渡り約10センチ)で腹や背中などを6回ほど刺し、殺害した。佐藤被告はホテルから110番通報し、駆けつけた警察官に逮捕された。佐藤被告は事件の直前、盛岡市のホームセンターで果物ナイフと粘着テープ、ひもを購入していた。
裁判所
 最高裁第三小法廷 浜田邦夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月23日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 殺人未遂、強姦致傷他の前科がある。
 2005年3月23日、盛岡地裁にて一審懲役20年判決。量刑不当や事実誤認などを理由に検察側、被告側が控訴していた。2005年9月22日、仙台高裁にて一審破棄、無期懲役判決。

氏 名
松村憲一(50)
逮 捕
 2005年1月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗他
事件概要
 無職松村憲一被告は、2005年1月14日午前5時頃、大阪市平野区のコンビニで開店準備中だった女性店員(当時44)に牛刀を突きつけ、金を奪おうとしたところ、女性から抵抗されたため背中や足を刺して殺害し、現金などが入ったバッグを奪った。松村被告は、被害者ともみ合った際、誤って自分の指の皮を切り落としていて、そこから出た指紋が逮捕の決め手となった。奪った現金約8万円は覚せい剤やパチンコに使った。
 松村被告は2004年12月から盗んだ車や拾った包丁で大阪府東大阪市などで強盗を繰り返し、6件の強盗で起訴されている。
裁判所
 大阪地裁 和田真裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月26日 無期懲役
裁判焦点
 検察は、「遊興費や覚せい剤の購入費ほしさにコンビニ強盗を繰り返し、必死で抵抗する被害者を多数回突き刺した犯行は、一方的かつあまりに執拗」として、無期懲役を求刑した。これに対し弁護側は、「最初から殺害を計画していたわけではなかった」と減軽を求めた。
 裁判長は「理性を失った冷酷かつ残忍な犯行は余りにも自己中心的で、身勝手な犯行動機にくむべき事情はない」と述べた。
備 考
 控訴せず確定と思われる。

氏 名
石川良(49)
逮 捕
 2004年8月12日(死体遺棄容疑 うその不動産登記を法務局に申請したとする事件で2005年7月24日、有印公文書偽造、同行使の疑いで逮捕・起訴済み)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、有印公文書偽造、同行使他
事件概要
 会社員石川良被告は、自分が勤めるホテルの客室の区分所有権取得を、世田谷区に住む会社社長の女性(当時57)に頼まれた。計約6,000万円の代金を受け取ったが遊興費などで使い込み、発覚を防ぐために偽造した登記済権利証を渡してごまかした。架空取引に気づいた女性は2005年2月4日、返済を迫るためにホテルに出向き、資金回収を石川被告に迫ったが、石川被告は女性の首を絞めて殺害。さらに娘婿(死体遺棄容疑で起訴)に手伝わせ、遺体を静岡県裾野市の山林に遺棄した。
 石川被告はかねてから女性に架空の不動産投資を持ちかけており、女性は2002年9月、自宅に投資会社を設立。親族2人のほか、知人の紹介で知り合ったばかりの石川被告も役員に就任した。石川被告はそのころから、品川区内のホテル客室を対象とした架空の不動産投資を女性に持ち掛けており、計約1億5千万円をだまし取っていた。
裁判所
 東京地裁 小坂敏幸裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月26日 無期懲役
裁判焦点
 石川被告は殺意や強盗目的を否定している。
 論告で検察側は「1億円余の債務を免れようとして殺害した動機は悪質極まりない」と指摘した。弁護側は最終弁論で「最初にハンマーで殴られた」と正当防衛を主張した。
 小坂裁判長は被害者がハンマーで被告の頭を殴ったことは認めたが、「被告は馬乗りになって首を3~5分間も絞め、積極的な加害の意思があった」と正当防衛を否定。「だまし取った金を愛人との派手な生活に使い、返済を逃れるために殺害した。動機は低劣かつ卑劣」と厳しく非難した。
備 考
 公判は東京地裁で初めて「期日間整理手続き」が適用され、2005年12月21日、22日ですべての証拠調べが終了した。3回の審理を経て結審してから1週間後のスピード裁判。言い渡しの際に小坂敏幸裁判長がプロジェクターを活用し、殺意の有無など整理された争点について、認定した事実と根拠の個条書きをスクリーンに映し、機械を操作しながら「体重を掛けて首を絞めていることなどから殺意は明らか」と、一つ一つ説明。
 判決後、東京地検の伊藤鉄男次席検事は「迅速な審理が行われたことを評価する」とのコメントを出したが、弁護人は、「時間制限が厳しく、言いたいことをすべて主張できる状況ではなかった」と述べた。
 被告側は控訴した。2006年8月31日、東京高裁で被告側控訴棄却。2006年12月19日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
薛行強(30)
逮 捕
 2004年9月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死傷他
事件概要
 横浜市に住む中国籍の無職薛行強(せつ・ぎょうきょう)被告ら8人は2004年5月22日未明、四日市市小古曽の医師の男性(65)宅に侵入。就寝中の夫妻に暴行し、現金や貴金属など計約2,000万円相当を奪った。顔に粘着テープを巻かれた男性の妻(当時58)は窒息死し、男性は肋骨を折るなどの重傷を負った。
裁判所
 津地裁四日市支部 村上久一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月27日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は、女性に粘着テープを巻いたことを「殺人行為と何らかわりない」と指摘。ほかにも同様の強盗事件など4件を起こしていて「職業的で、窃盗をするために来日したと言っても過言ではない」とした。
 村上裁判長は、「犯行は計画的で悪質、執よう。社会全体に与えた恐怖感も多大」とした。
備 考
 この事件では、実行犯の中国人7人のうち6人が逮捕、起訴された。陳玉興被告は2005年9月30日、一審無期懲役判決。
 被告側は控訴した。2006年7月11日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。被告側上告棄却、確定(日時不明)。

氏 名
ジョーラン・コロナション・デ・オバル(39)
逮 捕
 2004年6月24日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、窃盗
事件概要
 フィリピン国籍、住所不定無職のジョーラン・コロナション・デ・オバル被告(自称エリック・ロバート・バスコン)は、三重県鈴鹿市の飲食店従業員中野敬三被告らと共謀し、2004年5月3日午前4時ごろ、愛知県佐屋町(現・愛西市)に住む無職男性(当時52)方で、男性の首を刃物で刺して殺害し、キャッシュカードを奪ったうえ、遺体をビニール製の袋に詰め込み、男性方の押し入れに放置。奪ったキャッシュカードで現金1600万円を盗んだ。遺体は5月9日に発見された。
裁判所
 名古屋地裁 天野登喜治裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年1月27日 無期懲役
裁判焦点
 論告で検察側は、共犯者と役割分担した計画的犯行で、引き出した男性の預貯金から報酬500万円を受け取ったと指摘。「動機に酌量の余地はなく、刑事責任は極めて重大」と述べた。
 弁護側は主犯格の中野敬三被告の計画に従っただけとし「預貯金を引き出したとされる窃盗罪は無罪。強盗殺人罪はほう助にとどまる」と主張、寛大な刑を求めた。
 判決理由で天野裁判長は、被告は報酬として、盗んだ金のうち500万円を共犯者から受け取ったと指摘。「計画的で残虐な犯行。報酬目的の動機に酌量の余地はない」とした。
備 考
 被告側は控訴した。2006年9月6日、被告側控訴棄却。上告せず、確定。

氏 名
佐藤広志(28)
逮 捕
 2005年1月20日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 無職佐藤広志被告は無職梶原幸子被告と共謀し、2004年12月19日午後10時40分頃、牡鹿町鮎川浜の国定公園内で、石巻市に住む会社員の女性(当時23)を棒のようなもので殴って殺し、現金約1万8千円の入ったバッグを奪った。さらに2人は、女性のバッグからアパートの鍵を奪って部屋に侵入し、現金およそ8000円を奪った。2人は女性からあわせて3万数千円の借金があり、返済を迫られていた。奪った金は遊びに使った。遺体は1月20日に発見された。
裁判所
 仙台地裁 卯木誠裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月6日 無期懲役
裁判焦点
 佐藤被告は一貫して殺意を否認しているが、検察側は論告で▽事前に殺害計画を立てていた▽頭や顔を棒で20回以上殴打した、と指摘。「確定的殺意は明らか」と述べた。
 卯木裁判長は「殺意は確定的で強固。残忍、凄惨な犯行だ」と非難。「堕落した生活から生活・遊興費に困って犯行を主導し、責任は重い」と指摘した。
備 考
 梶原幸子被告は仙台地裁で2005年9月26日、求刑通り無期懲役判決、控訴中。被告側は控訴した。2006年7月4日、被告側控訴棄却。2006年11月21日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
岸政希(32)
逮 捕
 2005年2月27日
殺害人数
 0名
罪 状
 強盗強姦、住居侵入他
事件概要
 東京都狛江市の自称室内クロス洗浄業、岸政希(まさき)被告は、2004年11月から2005年2月にかけ、東京都世田谷区や港区などのマンションで、19~33歳の女性9人の部屋に侵入。カッターナイフを突き付け、「騒いだら殺すぞ」「お前の彼氏が作った借金を立て替えろ」と脅して乱暴し、キャッシュカードを奪って現金を引き出すなど計約225万円を奪った。
 岸被告はパイロットを志望しており、犯行の理由について「パイロットになるための訓練費や生活費が欲しかった」などと供述、妻と子供にも職業をパイロットと偽っていた。
裁判所
 東京地裁 村瀬均裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月6日 無期懲役
裁判焦点
 村瀬裁判長は「被害女性の人格を踏みにじり、卑劣極まりない。悪質非道というほかない」と指弾した。
備 考
 被告側は控訴した。2006年6月28日、被告側控訴棄却。

氏 名
田村好(65)
逮 捕
 2003年2月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 逮捕・監禁、営利目的等略取誘拐、殺人、死体遺棄
事件概要
 栃木県鹿沼市内の産業廃棄物運搬業者社長は、長年にわたり鹿沼市の最高幹部や所管管理職に取り入って様々な権益を享受していた。しかし市長の交代に伴い、鹿沼市環境対策部参事に就いた幹部が、一般廃棄物の許可や不法投棄の防止などについて厳正に対応。社長は他の市幹部を脅したり、幹部本人を恫喝したりしたが、意のままにならなかったことから仕事が停滞し、逆恨みして殺害を決意。社長は下請け業者のS被告に殺害を持ちかけた。S被告は知人である暴力団組員田村好被告に報酬と引き替えの上で殺害実行を依頼。田村被告は知人の元暴力団組員Y被告と舎弟分のT元被告を誘った。
 2001年10月31日午後5時45分頃、3被告は鹿沼市上殿町の路上で、帰宅途中の幹部(当時57)を乗用車内に押し込み、11月1日午前3時ころ、群馬県高崎市もしくはその周辺の山中、または同県榛名町もしくはその周辺の山中で、田村被告とY被告がロープでその頸部を絞め付け、T被告が、拳銃で弾丸1発を発射して幹部の身体に命中させて殺害。Y被告及びT元被告が、幹部の死体を道路脇の断崖からがけ下に遺棄した。幹部の遺体はまだ見つかっていない。
 2003年2月6日、栃木県警はS元被告(当時48)、田村好被告(当時62)、Y被告(当時60)、T元被告(当時52)を逮捕した。同日午前8時25分頃、逮捕状を取っていた産業廃棄物運搬業者社長(当時61)の遺体が、鹿沼市池ノ森の工場建設予定地に駐車されたダンプカー内で見つかった。自殺と見られる。
 2月11日、殺害された幹部の前任者である元参事(当時53)が市役所新館から飛び降り自殺した。
裁判所
 最高裁第三小法廷 藤田宙靖裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月8日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 田村被告は一・二審で殺人・死体遺棄を否認していた。
備 考
 Y被告は一懲役17年(求刑20年)が最高裁で確定。T元被告は一審懲役14年(求刑18年)判決の確定後、病死した。S元被告は一審懲役18年(求刑20年)判決。控訴後取下げ、確定。
 2004年7月15日、宇都宮地裁で一審無期懲役判決。2005年6月15日、東京高裁で被告側控訴棄却。
 被害者の遺族は、市や実行役3人と首謀者である産業廃棄物運搬業者社長の親族3人に計7000万円の損害賠償を求めた。2008年3月5日、宇都宮地裁(柴田秀裁判長)にて、遺族と市側の和解が成立した。和解条項は、市側が遺族に見舞金300万円を支払い、不適正な廃棄物処理行政が事件発生原因の一端だったことを認める内容。2008年3月5日、宇都宮地裁(柴田秀裁判長)は6人に対し、全額の支払いを命じた。柴田裁判長は「適正な行政執行に努めていたにもかかわらず逆恨みされて殺害された」と指摘した。

氏 名
高木正幸(25)/川上美香(23)
逮 捕
 2005年4月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗強姦、死体遺棄、窃盗
事件概要
 無職高木正幸被告、川上美香被告は、2005年4月1日午後10時頃から2日午前3時半の間、長野県塩尻市内の山林内で、会社員の男性にフィリピン国籍で衣料品点店員の女性(当時19)を強姦させた。さらに両被告は女性の首をベルトで絞めて殺害、遺体を現場周辺に遺棄。現金2500円とキャッシュカードの入った財布などを盗み、カードを使ってATMから11万9000円を引き出した。
 川上被告と女性は以前、2001年5月まで約4年間、松本市内の同じ福祉施設で暮らしていた。川上被告と高木被告は、女性の自宅に入り浸りの状態だったため、女性は2005年3月中旬、母親に宛てて携帯電話で「まだ帰らない」などのメールを送った。それを見た川上被告が、犯行を決意。元夫である高木被告に相談し、暴行殺人の計画を練った。高木被告と川上被告は元夫婦で、離婚後も同居していた。事件当時は車内で過ごすことが多かった。
 また女性は福祉施設で暮らしていた当時、川上被告と一緒に施設を訪れた高木被告に暴行されそうになった。施設側は両被告に注意し、川上被告は「職員に告げ口された」と、女性を逆恨みしていた。
裁判所
 長野地裁 土屋靖之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月15日 無期懲役
裁判焦点
 高木被告の弁護人は最終弁論で「(川上被告を敬遠する内容の)メールを見て腹を立てた川上被告から犯行を要求され、機嫌を取ろうと同被告に従った」と主張。仕事がなく車で寝泊まりしていた生活状況もあり、高木被告は冷静な判断を欠いた、と述べた。
 川上被告の弁護人は最終弁論で、川上被告は女性の顔を殴るなど実行行為の一部をしただけで、女性への暴行に執着していた高木被告が犯行の主導的立場にあった-と述べた。
 判決理由で、土屋裁判長は昨年3月中旬ごろ、女性が妹に送った携帯電話の電子メールに、川上被告を敬遠する内容があったことを同被告が知り、腹を立てたことが犯行の発端となったと説明。「若年の両被告が社会性に乏しく未成熟なため、自己の行為の規範的な意味合いや他者の人格ならび立場を十分顧みることができなかった」と指摘した。
 前回公判で、川上被告の弁護人が「主導的立場にあるのは高木被告。川上被告は従っただけ」とし、同被告の関与が部分的であった点から酌量減軽を求めたことについては「一連の経緯、行動などに照らせば、川上被告も各犯行遂行上、重要な役割を果たした」と退けた。
備 考
 地裁は論告求刑公判までに、弁護側が求めた両被告の情状鑑定を「必要性はない」として却下。これに対し、高木被告の弁護人はこの日の公判で「犯行の背景や心理を解明しないと社会防衛の策も見いだせない。被害者と遺族への説明すらも果たし得ない」と異議を申し立てたが、地裁はこれも棄却した。
 犯行に加わった会社員の男性は、集団強姦の罪で懲役7年の実刑が確定している。
 被告側は控訴した。2006年7月6日、被告側控訴棄却。高木被告は上告せず7月21日付で確定。川上被告は7月29日付で上告を取下げ、確定。
 被害者の母親と妹は加害者の高木受刑者、川上受刑者、懲役7年の刑が確定した男子受刑者の3人に総額1億3000万円の損害賠償を求めて提訴。2007年12月18日、長野地裁諏訪支部で片野正樹裁判官は「原告らが著しい損害をこうむったのは明白」として、3人に計8700万円余の支払いを命じた。判決理由で、片野裁判官は「(女性は)長時間にわたって激しい暴行を受け、一方的に生命を奪われた。被害者が受けた恐怖、苦痛、無念は筆舌に尽くしがたい」と事件の悪質性を指摘。原告側が請求していた遺失利益と葬儀費計4400万円余を認めた。遺族についても「悲惨かつ残酷な経過で突如として女性を奪われ、驚がく、苦痛の心情を抱いたことは推測できる」と認定。「加害者3人が服役中という酌むべき事情を考慮しても、3500万円の慰謝料を認めるのが相当」と結論付けた。加害者3人は答弁書などで、いずれも賠償金を支払う意思を示していた。
 訴訟は当初11月29日に口頭弁論が開かれる予定だったが、地裁諏訪支部の書記官が被告に期日を伝え忘れたため、同日まで裁判が延期されていた。

氏 名
有嶋博明(25)
逮 捕
 2004年11月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 無職有嶋博明被告とパチンコ店員S被告は、無職M被告(盗品等無償譲受罪で起訴)とともに通行人を殺し金などを奪おうと計画。2004年10月26日午前2時頃、大阪市北区の繁華街で歩いていた会社員の男性(当時28)に因縁を付けた上路地に連れ込み、有嶋被告とS被告は執拗に顔や頭を殴ったりけったりして51,000円の入った財布やバッグを奪った。男性は意識不明で救急搬送されたが、11月7日に死亡した。
裁判所
 大阪地裁 中川博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月16日 無期懲役
裁判焦点
 両被告側は公判で「殺すつもりはなく、強盗の意思もなかった」と、傷害致死と窃盗罪の成立にとどまると主張。被告人質問でも謝罪の態度を示さなかった。しかし、大阪地裁に提出された厳刑嘆願書を読んだ両被告は、改めて行われた被告人質問で「申し訳ない。刑に服して償うことしかできない」「毎朝毎晩、般若心経を唱えている。一生続ける」などと、初めて謝罪の気持ちを述べた。
 判決で中川博之裁判長は「頭を手加減せず何度も蹴りつけた。死ぬかもしれないと認識していたと考えるのが自然」と述べ、未必の故意を認定した。その上で「被害者に落ち度は全くない。許しを請う言葉を発したのに暴行を加え、残虐で卑劣極まる鬼畜の所業だ」と非難。「被害者との幸福な家庭生活を夢見ていた婚約者の悲しみは大きく、処罰感情が厳しいのも当然」と述べた。
備 考
 府警は3人組の似顔絵を公開するなどして捜査。男性の友人らがホームページで目撃情報の提供を呼び掛けるなどしていた。
 両被告に厳罰を求める被害者の友人や元同級生ら約20人の嘆願書が、大阪地裁に証拠採用された。
 S被告は求刑懲役15年に対し、懲役12年の判決が一審で確定。
 被告側は控訴した。2006年8月16日、被告側控訴棄却。2006年9月、上告取下げ、確定。

氏 名
倉山義輝(50)/国分信安(58)
逮 捕
 2004年4月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 倉山被告:強盗殺人他 国分被告:強盗致死他
事件概要
 無職倉山義輝被告、無職国分信安被告は漁業黒岩由美夫被告と共謀し、2003年12月29日夜、長崎県対馬市に住む金融業者の男性(当時82)方に強盗目的で侵入。妻(当時79)の頭を木製の棒で殴るなどし、脳挫傷などで死亡させた。
裁判所
 長崎地裁 林秀文裁判長
求 刑
 倉山被告:無期懲役 国分被告:懲役15年
判 決
 2006年2月17日 ともに無期懲役
裁判焦点
 公判で、倉山被告は起訴事実を認め、黒岩、国分両被告は殺意を否認している。
 検察側は、実行犯は倉山被告だが、準備は3被告で行い、黒岩被告は遺体を隠すなど、国分被告は現場付近で見張りをするなどの役割を担い、共犯にあたると指摘した。
 林裁判長は「被害者に落ち度はなく、客を装った犯行は残忍」とした。「国分被告は犯行計画から犯行後の証拠隠滅まで重要な役割を果たした。倉山被告の刑事責任と比較して、酌量すべきほど軽くはない」として、求刑よりも重い刑を選択した。
備 考
 強盗殺人容疑で逮捕され、処分保留となっていた厳原町の無職男性については「犯行に対する関与の程度が低い」として不起訴処分となっている。
 首謀者とされる黒岩由美夫被告は体調不良のため出廷せず、判決は3月3日に言い渡される。
 被告側は控訴した。2006年9月26日、倉山被告の控訴棄却。2006年10月19日、国分被告の控訴棄却。2007年6月25日、国分被告の上告棄却、確定。倉山被告はそれ以前に上告棄却されているものと思われる。

氏 名
山田勉(51)
逮 捕
 2005年1月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、窃盗
事件概要
 自営業山田被告は、住宅ローンや消費者金融からの多額の借金を抱えて返済に行き詰まった。山田被告は群馬県大泉町に住む妻の母(当時71)からも借金を重ねていたが返済に行き詰まり、義母を殺害して現金を奪おうと計画。2005年1月14日午後3時50分ごろ、大泉町内の空き地で義母と落ち合い、駐車中の義母の乗用車内で運転席の義母を後部座席からロープで絞殺し、現金約22000円などが入ったバッグを奪った。遺体の発見を遅らせるため同16日夕、邑楽町鶉新田の東武小泉線架道橋下の道路に遺体を乗せた車を遺棄した。被告は逮捕後離婚した。
裁判所
 東京高裁 植村立郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月17日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 一審は懲役25年の判決。前橋地裁の久我裁判長は量刑の理由について「強盗殺人罪に、最低でも実質三十数年に相当する無期懲役刑を宣告するのが常に合理性を持つとは考えにくく、反省の態度も示している」「経済的に困窮し、妻子の生活を維持するための犯行だった」と述べていた。判決を不服とした検察側が控訴していた。
 判決で東京高裁植村裁判長は、「動機は自己中心的で、確定的な殺意を持ち、無警戒の被害者を襲うなど犯行状況は悪質だ。一審判決は量刑の判断を誤っており、不当に軽い」などと述べた。
備 考
 複数の罪を犯した「併合罪」の有期刑の上限を20年から30年に引き上げた改正刑法(2005年1月施行)が適用された。最高裁によると、20年を超える有期懲役の判決は2005年6月まではなく、本件の地裁判決が初めてであった。
 2005年8月23日、前橋地裁で一審懲役25年判決。上告せず確定と思われる。

氏 名
工藤英二(43)
逮 捕
 2004年11月15日(詐欺罪で起訴済)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺、詐欺未遂
事件概要
 無職工藤英二被告は、NT元被告が働いていた青森県今別町の旅館に宿泊して一家と知り合い、2003年8月初旬ごろ、NT元被告の長男であるNM元被告に「老犬の養護施設をつくる」とうその商売話を持ちかけた。NM元被告らは話を信じ、用地確保の名目で1億7300万円の架空の借金を負った。また準備金として450万円を工藤被告に支払った。
 工藤被告は事業を進める気などなく、2004年1月に事業打ち切りを伝え、借金の返済を迫った。
 工藤被告は、NT元被告の夫を交通事故死に見せかけ、自動車保険金で返済するようNM元被告に迫り、NM元被告が両親に告げると、NT元被告は「やむを得ない」と承諾。夫は絶句した。
 2004年6~7月、夫はNM元被告に連れられ、県内各地で走行中の車へ飛び込むよう迫られたが果たせず、そのたびに工藤被告から殴る蹴るの暴行や脅迫を受ける。3被告が「何とか頼む」と迫ると、夫はうなずくだけだった。
 工藤被告は事故の保険金だけでは足りないと考え、夫を約8800万円の生命保険などに加入させた。9月下旬には秋田県で死ぬように指示するが失敗、再び暴行を加えた。「事故では夫を死なせられない」と考えて2004年10月1日、秋田県から帰宅途中だった夫とNM元被告を藤崎町の河川敷に呼び出し、夫を鉄パイプのようなものでめった打ちにした。自宅に連れ帰ったNM元被告は、NT元被告と共に放置した。夫は約5時間後、外傷性ショックで死亡した。
 工藤被告はその後、郵政公社分の保険金800万円をだまし取ろうとした。
 その他、工藤被告は東京都杉並区に住む知り合いの女性から3430万円をだまし取った。九州では老犬ハウス事業の事業設備資金名目に300万円をだまし取っている。
裁判所
 青森地裁 高原章裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月17日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 公判で検察側は、工藤被告の重要部分での証言が次々と変わることを指摘し、一貫性、信用性がないことを主張。
 その上で「男性一家に寄生し、自らの利得のみを目的に、何の非もない男性を犠牲にした。1億7300万円という架空の借金を返済させるように仕向け、一家崩壊に追い込むなど卑劣な手段で、人の所業とは考えられない」と糾弾。「自らは危険な目に遭うことなく徹頭徹尾、主犯格として二人を意のままに操った。責任を一身に背負う立場にある」とした。
 弁護側は、息子が「藤崎町の河川敷で、工藤被告が男性を鉄パイプのようなもので執拗に殴った」と証言していることについて、「医師の診断では、男性の四肢に骨折はなかった。本当に何度も殴られたのか」と述べ、検察側が保険金殺人立証の根拠としている息子の証言の信ぴょう性を否定し、無罪を強調した。ほかの事件についても無罪を主張したが、杉並区の女性から2000万円をだまし取ったことは認めた。
 工藤被告は閉廷前、「男性を殺したこと、郵便局や息子から金をだまし取ろうとしたことは絶対やっていないので信じて下さい」と改めて述べた。
 判決で高原裁判長は「言葉巧みにN一家を精神的に追いつめ、崩壊させており、冷酷で非人間的な犯行。救急車を求めながら死んでいった被害者の絶望感は、察するに余りある」と述べた。工藤被告の無罪主張については「信用できない」として退けた。
備 考
 2005年7月22日、青森地裁は男性の妻に懲役14年(求刑懲役16年)を、長男に同16年(同18年)を言い渡した。両被告は起訴事実を全面的に認めており、控訴せずに確定した。
 被告側は控訴した。2006年7月27日、被告側控訴棄却。2006年11月28日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
金沢清一(54)
逮 捕
 2004年11月2日
殺害人数
 2名
罪 状
 現住建造物等放火、殺人
事件概要
 埼玉県戸田市の無職金沢被告は、元妻(当時76)を介護しながら、以前交際していた女性(当時60)と3人で暮らしていた。2004年11月1日午後11時15分ごろ、女性から「元妻と私のどっちがいいの」などと言われて腹を立て、2人が死んでも構わないと考え、灯油をまいた布団に火をつけ、住んでいた木造2階建て同アパート全7室を全焼させた。やけどを負った元妻は11月10日に、女性は12月7日に死亡した。
裁判所
 東京高裁 仙波厚裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月21日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 被告側は、酒を飲んでいたことによる心神喪失、もしくは心神耗弱であると主張していたが、裁判所は退けた。
備 考
 2005年9月26日、さいたま地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年6月、被告側上告棄却、確定。

氏 名
中島長美(56)
逮 捕
 2003年11月16日(殺人容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺未遂
事件概要
 栃木県足利市に住む無職中島長美被告は、土地取引を通じて足利市に住む元郵便局員の男性(当時40)に近づき、障害者施設の建設費などのため保険金殺人を計画。男性に、2001年4月に7500万円の、一時帰国した5月29日に1億円の海外旅行傷害保険に加入させた。2つとも、第三者に殺害された場合は倍額が支払われる契約だった。掛け金は中島被告が支払った。
 中島被告は、当時フィリピンにいた埼玉県吉川市の廃品回収業大谷正三元被告と共謀。大谷元被告は、自身がミンダナオ島ダバオで店長を務めているカラオケパブの店員だったフィリピン人男性に殺害を依頼した。フィリピン人男性は2001年6月1日午前3時ごろ、マニラに渡航した男性を刺殺。大谷元被告は中島被告から報酬として140万円を受け取り、大谷元被告は約20万円をフィリピン人男性に手渡した。中島被告らは同8月に第三者による殺害を装い、保険金をだまし取ろうとした。契約の不備を理由とし、保険金は支払われていない。
裁判所
 宇都宮地裁 飯渕進裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月23日 無期懲役
裁判焦点
 中島被告は初公判で、共犯者とされる大谷正三元被告と殺害を計画し共謀した事実を認め、保険金をだまし取ろうとした保険金詐欺未遂事件についても「認めざるをえません」と述べていた。しかしその後の公判では全面否認に転じた。捜査当局の取り調べ段階で殺人容疑を大筋で認めた理由については、「検察官が、自白しなければ息子を逮捕するという態度だった。子供を守らなければならないと思った」「(自分の主張が)受け入れてもらえず、仕方ないという気持ちになった」などと説明した。また大谷元被告に渡した現金については、パブの運営資金であると主張した。
 検察側は論告求刑で「被告は事件の首謀者」「被告人は被害者殺害の計画から実行まで主導した。凶悪かつ利欲的性格という本質は強盗殺人と変わらない」などとした。
 弁護側は最終弁論で、中島被告は大谷正三元被告から殺害計画を持ち掛けられ、2001年4月26日の大谷元被告との電話で計画中止を求めたとして、殺意を否認した。
 飯渕裁判長は判決理由で「被告は殺害を立案、統括した首謀者」と指摘。「物欲を満たすための計画的、冷酷な犯行で、酌量の余地はない」と述べた。
備 考
 中島被告は2002年6月、交通事故で死亡した男性(当時54)の妻から、自賠責保険金1,496万円を着服したとして逮捕され、同年11月、懲役1年8月の実刑判決を受けた。栃木刑務所で服役し、事件当時は仮出所したばかりだった。
 大谷元被告は2004年11月9日、宇都宮地裁で一審無期懲役判決。控訴したが後に取下げ、確定している。
 被告側は控訴した。2006年9月14日、被告側控訴棄却。2007年1月23日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
小川博(44)
逮 捕
 2004年12月21日
殺害人数
 1名
罪 状
 事後強盗殺人
事件概要
 プロ野球・ロッテの元投手小川博被告は、2004年11月18日午後6時半頃、当時務めていた埼玉県上尾市の産業廃棄物処理会社会長宅を訪れ、一人で留守番をしていた住み込みの女性(当時67)に借金を申し込んだが断られたため、突き飛ばして失神させ、2階事務室から現金約175万円入りの封筒を奪った。女性を乗用車で連れ出して埼玉県桶川市の沼に投げ込み水死させた。
 小川被告は犯行時、複数の金融会社から計80万円の借金があり、利子3万円の返済期限が18日だった。
 小川被告は1984年のドラフト2位でロッテオリオンズに入団。1992年までプレーし、その後はコーチ、編成部門に携わったが、消費者金融などに1000万円以上の借金があったことから、2002年11月に解雇された。2003年4月に自己破産が決定した後、アルバイトを経て、2003年1月に産業廃棄物処理会社に入社。犯行時は営業部長だったが、12月20日に解雇された。
裁判所
 東京高裁 仙波厚裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月23日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 小川被告は量刑不当を理由として控訴していた。
 仙波裁判長は「引退後も浪費を重ねて金銭的困窮に陥ったのが動機で、酌量の余地はない」と述べた。
備 考
 2005年9月29日、さいたま地裁で一審無期懲役判決。上告せず確定と思われる。

氏 名
菅谷章(58)
逮 捕
 2003年10月9日
殺害人数
 0名
罪 状
 略取、逮捕監禁致傷、監禁、強盗、強姦他
事件概要
 無職菅谷被告は無収入で自暴自棄となり、刑務所に入る前にやりたいことをやろうと2003年9月11日午前7時40分頃、福島県須賀川市の路上で小学6年女児(当時)に声を掛けて手足を縛るなどの暴行を加えて顔や腹などに軽傷を負わせてワゴン車に押し込み「静かにしないと殺すぞ」と脅迫。会津方面などに連れ回し、約33時間にわたって監禁した。
 2003年9月23日夜、茨城県東海村のスーパー駐車場で、女性店員(当時22)の軽乗用車に乗り込み、首にナイフを突きつけて両手を縛り、目を粘着テープでふさぎ車内に監禁。現金約1000円やバッグを奪った疑い。女性は直後に逃げ、けがはなかった。
 その他、茨城県ひたちなか市や栃木県矢板市などでも、10代から20代の女性3人を車内に監禁し、同年8月には同県那須郡で小学5年男児(当時)を女児と間違えて監禁しようとし、頭などにけがを負わせた。
裁判所
 仙台高裁 田中亮一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月23日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 菅谷被告は一審同様、茨城県ひたちなか市の女性監禁事件は相手が承諾していたと、起訴事実の一部を否認した上で、量刑不当を訴えていた。
 田中亮一裁判長は「須賀川市の事件のほか、茨城、栃木両県で女性を監禁するなどの犯行を立て続けに5回繰り返し、極めて悪質で反社会的。地裁判決が重すぎるとは言えない」と、弁護側の量刑不当の主張を退けた。起訴事実の一部否認については、「被害者が合意していたとは認められない」と判断した。
備 考
 菅谷被告は少年時代に強姦未遂事件で中等少年院に送致されている。1972年には少女に対する強姦致傷で懲役17年の判決を受け、その後も同様の犯行を繰り返していた。
 仙台高裁で判決理由の朗読中、「一部の監禁罪などは被害者との合意の上だった」などとする自らの主張が退けられた菅谷被告が「でたらめだ」と声を上げ、裁判長から「静かに聞いていなさい」とたしなめられる場面があった。
 2005年5月6日、福島地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年7月4日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
林家泉(32)
逮 捕
 2004年9月30日(別の窃盗罪で9月6日に逮捕済)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、強盗致傷他
事件概要
 無職林家泉(りん・かせん)被告ら5人は2004年5月22日午前1時頃、四日市市に住む医師の男性(65)宅に侵入。就寝中の夫妻に暴行し、現金や貴金属など計約2000万円相当を奪った。顔に粘着テープを巻かれた男性の妻(当時58)は窒息死し、男性は肋骨を折るなどの重傷を負った。
裁判所
 津地裁四日市支部 村上久一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月24日 無期懲役
裁判焦点
 判決理由で村上裁判長は「窓ガラスをガスバーナーで焼き破り、抵抗する妻を足でけるなど、犯行の重要な役割を担った」と述べた。
備 考
 林被告は2004年9月6日、愛知県江南市の民家に侵入、現金や貴金属など約110万円相当を盗んだとして、県警江南署に住居侵入と窃盗の疑いで緊急逮捕されていた。
 この事件では、実行犯の中国人7人のうち6人が逮捕、起訴された。被告側は控訴した。2006年8月2日、被告側控訴棄却。2006年中に被告側上告棄却、確定。

氏 名
伊田和世(41)
逮 捕
 2003年9月17日(別の窃盗事件で逮捕済)
殺害人数
 1名
罪 状
 窃盗、強盗殺人未遂、殺人、強盗(予備的訴因、事後強盗)
事件概要
 名古屋市守山区の無職伊田和世被告は10数年前から仕事に就かず、岐阜県内に住む父親らから月40数万円の仕送りを受けていた。だが、父親は70歳と高齢のため将来的に不安があり、蓄える金が欲しかったため強盗を計画。
 2003年3月30日夜、伊田容疑者は名古屋市北区で赤色系の自転車に乗りながら近くに住む看護士(当時22)と友人の女性に近づき、包丁で看護士の腹を指した後、友人が路上に落としたバッグを拾って逃走。バッグには現金約,6000円や化粧道具、キーホルダーなどがあった。看護士は2日後に死亡した。
 2003年4月1日午後0時20分頃、名古屋市千種区の路上で、歩いて出勤途中だった女性店員(当時23)の左胸を刃渡り約20センチの包丁で刺して重傷を負わせたうえ、現金4万円入りのバッグを奪って自転車で逃走した。
 他、6月30日に守山区内で婦人用自転車を盗んだ。8月28日、守山区の民家物置で食器を盗んだとして、窃盗の現行犯で逮捕された。
裁判所
 名古屋地裁 伊藤新一郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月24日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 伊田被告は犯行当時、医師から睡眠薬を処方されていたとされるが、簡易鑑定の結果、地検は刑事責任能力はあると判断した。
 伊田被告は罪状認否で「殺す気はなかった」と2人に対する殺意を否認した。また、殺害された女性と一緒にいた友人に包丁を突き付けかばんを奪ったとされる強盗の起訴事実について「相手が投げつけてきたのを拾っただけ」と述べ、強盗の趣旨を否認した。
 伊田被告は公判中の精神鑑定で「反社会性人格障害、軽度の精神障害があり、事件当時、不安や憤怒などを呈する社会的不適応状態にあった」として、人格的なゆがみを認められた。しかし、「物事の是非をわきまえ、衝動を抑える能力はあり、責任能力に問題はない」と結論付け、証人として出廷した鑑定医は「返り血を隠すために赤いカッパを着て、変装用のめがねをかけるなど用意周到で、責任能力に問題はない」と述べた。
 論告で検察側は「理不尽な動機による冷酷非道な犯行。何の落ち度もないのに、将来を奪われた被害者、遺族の無念は筆舌に尽くしがたい」と指弾した。看護士殺害における殺意を伊田被告が否認している点について検察側は、(1)刃渡り約21センチの包丁で腹部を刺した(2)捜査段階で「相手が死んでも構わない」と供述した――点などから殺意は明白と指摘。責任能力についても「事件後、包丁の血痕を洗剤で洗い流すなど合理的な行動をとっている」などとし、問題はないと主張した。さらに「看護師を刺した際、『刺した心地がしない』との理由で、別の人をもう一度刺そうと思うなど動機に酌量の余地はない」と強調。「『か弱いお年寄りや子供ではなく、将来のある若い女性を狙った』と供述するなど、欲望のおもむくままに行動しており、再犯の恐れもある」などとした。
 弁護側は、被告が反社会性人格障害などと診断されたとし「(人を刺したいという)強い欲望を抑えられなかった」と指摘。最初に人を刺した後、「手応えがなかったことから、2日後に2人目を刺した」と述べた。
 動機については、家族関係に恵まれず、ペットの犬や猫を家族と考えて生活するうち「将来への不安を感じ、イライラを募らせた」と説明。殺人に関するビデオを見ていた影響もあり「お嬢さんを刺せば気持ちがすっきりするかもしれないと考えた」と指摘した。その上で「犯行当時、責任能力がなかったか、著しく弱まっていた」と主張、慎重な判断を求めた。
 伊藤裁判長は判決で、「連続して若い女性を狙った事件として社会に与えた衝撃は大きい」と指摘。「反省の態度を示していることをしん酌しても、無期懲役に処して罪の重大さを認識させるべきだ」と述べた。
 責任能力について、判決は「変装したり、奪った品物を捨てる際に広告などで包んで見えないようにするなど、事件前後の行動は合理的」などと認定した。一部の事件で伊田被告が当初、殺意を否認したことについては「傷の深さなどから殺意を持っていたと認定できる」とした。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
中村英雄(31)
逮 捕
 2002年9月26日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人
事件概要
 会社員中村被告は2002年9月26日午前0時45分ごろ、借金返済に絡むトラブルから、徳島市の歩道付近で、近くの元金融会社男性社員(当時31)と口論になった。中村被告は持っていたフィッシングナイフで男性と、男性の知人の女性(当時27)の腹部などを何度も刺して失血死させた。中村被告は現場から車で逃走したが、パトカーが追跡。車は約500メートル離れた道路脇の鉄柱に衝突し、中村被告は全身打撲の重傷を負った。
 中村被告は「男性らから呼び出されて借金を取り立てられ、口論になって刺した」と逮捕当時供述している。
裁判所
 高松高裁 湯川哲嗣裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年2月28日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 判決理由で湯川裁判長は「ナイフでめった刺しにしており、執拗で残忍。殺意も固く、刑事責任は重い。被告がナイフを持参して犯行に及んだ」と認定。一審同様、正当防衛を訴えた弁護側の主張を退けた。
備 考
 2004年6月17日、徳島地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年9月4日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
黒岩由美夫(46)
逮 捕
 2004年1月7日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 漁業黒岩由美夫被告は無職倉山義輝被告、無職国分信安被告と共謀し、2003年12月29日夜、長崎県対馬市に住む金融業者の男性(当時82)方に強盗目的で侵入。妻(当時79)の頭を木製の棒で殴るなどし、脳挫傷などで死亡させた。
裁判所
 長崎地裁 林秀文裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月3日 無期懲役
裁判焦点
 公判で、倉山被告は起訴事実を認め、黒岩、国分両被告は殺意を否認している。
 黒岩被告は強盗の謀議を認める一方、殺害の共謀を否認していたが、判決は「被告の供述には信ぴょう性がない。被告は重要な役割を果たしており、刑事責任は三人の中で最も重い」として弁護側の主張を退けた。さらに林裁判長は、被告が犯行の計画段階から中心的な立場にあったことを指摘。「多額の借金を抱え、金に困っていたという身勝手な動機。反省の態度も見られない」と述べた。
備 考
 強盗殺人容疑で逮捕され、処分保留となっていた厳原町の無職男性については「犯行に対する関与の程度が低い」として不起訴処分となっている。
 倉山義輝被告、国分信安被告は一審無期懲役判決を受け、控訴中。被告側は控訴した。2006年9月28日、被告側控訴棄却。2007年6月25日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
菊地圭一(23)
逮 捕
 2004年6月5日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 無職菊池被告は金を奪う目的で、2004年5月25日午後9時頃、仙台市にて男性(当時48)が運転するタクシーに乗り込んだ。9時40分頃、名取市の農道で男性の右胸などを包丁で数ヶ所刺して殺害、売上金27000円と財布、タクシーを奪った。菊池被告には当時、複数の消費者金融から計190万円の借金があったが、奪った金はほとんどを遊行費に充てていた。
裁判所
 仙台高裁 田中亮一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月7日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 菊地被告は殺意を否認していたが、田中裁判長は、3ヶ所の刺し傷がいずれも深さ10センチ以上であることなどから、「被害者に防御のいとまも与えないほど連続的に刺した」として、一審と同様に未必的な殺意を認定した。
備 考
 2005年8月18日、仙台地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。

氏 名
張安(26)
逮 捕
 2003年1月16日
殺害人数
 1名
罪 状
 住居侵入、強盗殺人、銃刀法違反、強盗殺人未遂、窃盗未遂、現住建造物等放火、建造物侵入、窃盗
事件概要
 中国から留学生として来た京都の短大生張安被告は、短大の学費の支払いに窮して人を殺してでも金を奪おうと企て、2003年1月15日未明、伏見区に住むアルバイトの女性(59)方に侵入。物色中に女性に見つかり、包丁で女性の頭や胸などを刺して殺害、現金約25,000円などを奪った。
 さらに同日午後、約2km離れた伏見区に住む女性(当時86)方に侵入し、女性の頭を陶器鉢や岩で殴って重傷を負わせ、現金約95000円を奪った。
 張安被告は16日未明、京都府向日市内で起きた民家侵入事件の直後、近くで、ドライバーを持っていたため軽犯罪法違反の現行犯で逮捕された。同日、強盗殺人事件を自供した。
裁判所
 大阪高裁 片岡博裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年3月9日 無期懲役(検察側控訴棄却)
裁判焦点
 判決理由で片岡博裁判長は「人間性のかけらもない残虐な犯行だが、反省し更生が不可能とは言えない」と述べた。
備 考
 2004年9月24日、京都地裁で一審無期懲役判決。検察側は上告した。2008年11月4日、検察側上告棄却、確定。

氏 名
水越清一(57)
逮 捕
 2004年12月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、死体遺棄、逮捕監禁他
事件概要
 会社社長水越清一被告は知り合いの会社経営の男性(当時61)に貸していた700~800万円を回収するため、無職柏木信幸被告に殺害を依頼。柏木被告は宮田好信被告ら3人を犯行に誘い、2004年9月24日夜に東京都江東区の路上で帰宅途中の男性を拉致して乗用車の中に連れ込み、走行中の車内で現金50万円などを強奪。宮田被告は翌29日午前8時過ぎ、神奈川県綾瀬市の自宅に連行した男性の首を絞めて殺害し、遺体を八王子市の山林に埋めた。
裁判所
 東京地裁 栃木力裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月9日 無期懲役
裁判焦点
 栃木裁判長は「多額の報酬を提示して犯行を依頼し、被害者の監禁場所を提案するなど積極的に関与した」「被害者の所持金だけでなくほかに保有する金員も強奪しようと企てた計画的で組織的な犯行。利欲的かつ短絡的な動機に酌むべき余地はない」「殺害は共犯者が衝動的に行ったことだが、拉致を依頼した被告も、結果に対して重い責任を負うべきだ」と指摘した。
備 考
 宮田好信被告、柏木信幸被告は一審無期懲役、控訴中。被告側は控訴した。2006年7月13日、被告側控訴棄却。上告せず確定。

氏 名
武藤陽一(34)
逮 捕
 2005年6月15日(4月10日の強盗致傷容疑。他の強盗致傷事件で公判中)
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗致死、強盗致傷、窃盗他
事件概要
 群馬県沼田市の無職武藤陽一被告は2005年4月9日午前2時15分ごろ、市道を歩いていた無職の男性(当時53)の後をつけ、人けのない道路脇の側溝に突き落として頭などを踏みつけ、現金500円とキャッシュカード入りの財布を奪い、約6時間後に死亡させた。
 さらに10日午後7時35分ごろには、同市の駐車場で無職の男性(当時67)を暴行して金品を奪い、約3ヶ月後に死亡させるなど、3月下旬から4月中旬で同市内で強盗6件を繰り返し、2人を死なせ、3人にけがを負わせた。
 武藤被告は車上狙いの窃盗などの罪で服役していた刑務所を2004年12月に仮出所し、沼田市内にあるフィリピンパブに月に数回通うようになった。2005年3月上旬ごろには所持金が尽きたため、フィリピンパブでの飲食代欲しさに同月中旬ごろから犯行を繰り返した。
 その他の起訴事実は以下。
 3月18日:男性(当時53)から現金35,000円などを強奪。
 3月27日:男性(当時61)に重傷を負わせ、現金23,000円などを強奪。
 4月12日:男性(当時50)に重傷を負わせ、現金1,000円などを強奪。
 4月16日:男性(当時43)から現金17,000円などを強奪。
 4月17日:男性(当時61)に軽傷を負わせ、デジタルカメラを強奪。
裁判所
 前橋地裁 久我泰博裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月9日 無期懲役
裁判焦点
 論告で検察側は「消防無線を傍受し、被害者の男性が仮死状態で病院に運ばれたのを知ったわずか37時間後に、再び別の男性を激しく暴行し死なせた」と武藤被告を厳しく非難。動機については「フィリピンパブに通う遊興費を得るため」と指摘した。弁護側は最終弁論で「犯行に凶器を使っていない。反省もしている」とし、寛容な処分を求めた。武藤被告は最後に「亡くなった方々には申し訳ない。毎日手を合わすつもりでいる」と陳述した。
 久我裁判長は「野蛮で卑劣な犯行で、突如として命を奪われた被害者らの無念は察するに余りある」として求刑通り無期懲役を言い渡した。
備 考
 被告側は控訴した。2006年8月23日、被告側控訴棄却。上告せず確定と思われる。

氏 名
細山田年郎(27)
逮 捕
 2005年9月14日(9月9日、フィリピンの大使館に自首)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 愛知県半田市のフィリピンパブ店従業員細山田年郎被告は、従業員中村剛司受刑者、無職大島谷悠受刑者、型枠大工竹内崇晴受刑者と共謀し、2004年5月31日午前4時ごろ、中村被告が働くパブ店内で、パブ店経営者(当時36)の頭や背中を木刀やハンマーで十数回殴って殺害、現金400万円や財布、カードなどを奪った。さらに男性の遺体を毛布で巻いてテープで縛り、6月1日午前10時ごろ、乗用車で伊勢市の雑木林に遺棄した。中村被告は、細山田容疑者に持ち掛けられ、2人で男性殺害を計画、パブの客だった大島谷被告、竹内被告に奪った金の分け前を渡す約束で殺害を依頼した。
 細山田被告は6月3日、韓国経由でフィリピンへ逃亡。2005年9月9日、マニラ首都圏パサイ市の大使館を訪れ、出頭したいので同管理局に連絡を取ってほしいと要請。大使館の連絡で駆け付けた管理局当局者が同日、身柄を拘束した。
裁判所
 津地裁 山本哲一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月10日 無期懲役
裁判焦点
 弁護側は「有期刑が相当」と主張した。
 山本裁判長は「犯行は冷酷かつ非人間的」などと述べた。
備 考
 名古屋高裁管内では初めて公判前整理手続きが行われており、2月27日の初公判から連日開廷の集中審理で証拠調べや被告人質問が進められ、審理3日目で結審した。
 共犯3名は全員無期懲役が確定している。控訴せず、確定。

氏 名
石井誠(69)
逮 捕
 2005年3月23日(現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、現住建造物等放火未遂他
事件概要
 千葉県柏市に住む無職石井誠被告は、消費者金融から借りた約180万円の返済に困り、犯行を計画。2005年3月23日午前11時半頃、柏市に住む知り合いの女性宅に押し入り、応対した家政婦の女性(当時61)の首を絞めて殺害。午後1時半頃、帰宅した女性(当時76)の首を絞めて重傷を負わせた。女性からの通報で警察官が駆けつけたところ、石井被告は「入ってくれば、 灯油をかぶって火をつける」と叫んだ後、居間から階段にかけて、灯油をまいて火をつけた。
裁判所
 千葉地裁松戸支部 伊藤正高裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月13日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は「借金を断った知人を逆恨みした身勝手で卑劣な犯行。計画的で極めて悪質」などとした。
 伊藤裁判長は「石井被告はギャンブルで借金があった。女性に借金を申し入れたが、断られたことを逆恨みして、恩義を受けてきた女性らを殺害して金品を奪おうとしたもので、身勝手極まりない。2人組みの強盗の仕業に見せかけるため、事前に綿密な計画を立てるなど、刑事責任は極めて重い」「計画的で卑劣かつ周到な犯行であり、手口も冷酷非道」と指摘した。
備 考
 被告側は控訴した。2006年6月27日、東京高裁で被告側控訴棄却。2006年10月31日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
小村美奈子(48)
逮 捕
 2004年4月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体遺棄、業務上横領、現住建造物等放火、現住建造物等放火未遂他
事件概要
 神奈川県三浦市の機械部品製造会社に勤めていた小村被告は、2000年から2004年3月まで約1,515万円を横領していたが、2004年3月に会社をリストラされた。小村被告は解雇を不満とし、事務所に押し掛けるなどのトラブルを起こした。横領発覚を恐れた小村被告は、4月5日と9日に横須賀市にある同社久里浜工場を放火し、11日と17日には会社社長の住む三浦市の自宅周辺で放火未遂事件を起こした。
 小村被告は4月19日午後5時ごろ、三浦市三崎の同社工場の事務室で、会社社長(当時80)の頭部などを社内に置いてあった鉄板で複数回殴ったうえ、両手で首を絞めて窒息死させた。さらに遺体を乗用車後部座席に積み込んで松田町まで運び、午後9時45分ごろ、がけ下に捨てた。
 小村被告は横領した金を元に、ペットショップを経営していた。
裁判所
 横浜地裁横須賀支部 福島節男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月13日 無期懲役
裁判焦点
 小村被告は捜査段階で死体遺棄と放火を認めたが、「社長が階段から落ち倒れているのを見たが、あとは記憶にない」と殺人罪を否認した。
 検察側は論告で「20年余り経理担当として勤めていた被告は、不況で工場が合理化され、業務上横領が発覚するのを恐れた。社長宅など計4回放火した後、社長を殺害した。『記憶にない』は弁明に過ぎず、恩人の社長の死に対し反省がない」と指弾した。
 弁護側は「長期の取り調べで自白調書は信用性がない。業務上横領も無罪」と主張。最後に小村被告が「殺人は覚えていない」と小声で証言し、結審した。
 福島節男裁判長は「派手な生活による負債を返済するための身勝手な犯行。弁解に終始し、反省の情も感じられない」「身勝手で短絡的かつ安易な動機に酌量の余地は全くない」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2006年10月31日、被告側控訴棄却。2007年12月3日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
吽野優(35)
逮 捕
 2003年10月15日
殺害人数
 0名
罪 状
 住居侵入、強盗強姦、強盗強姦未遂、窃盗
事件概要
 東京豊島区にある人気ラーメン店店長を務めていた(事件後解雇)吽野(うんの)優被告は、2002年11月、東京都豊島区内の女性宅に侵入、女性を脅して暴行したうえに現金6000円を奪った。2003年5月26日夜、板橋区内のマンションに帰宅した女子大生が玄関ドアを開けた際、刃物を突き付け「騒ぐと殺す」と脅迫し、室内で乱暴した。7月28日にも東京都豊島区のマンションで女性宅に押し入って乱暴し、現金約1000円を奪った。
 その他、1999年から2003年7月まで、名古屋市や東京都立川市などで計7人の女性を暴行するなどして現金を奪った。暴行の際に写真撮影し、口止めしていた。
裁判所
 最高裁第二小法廷 古田佑紀裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月13日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 量刑不当を訴えたか?
備 考
 2004年12月7日、東京地裁で一審無期懲役判決。2005年8月9日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
笠原友子(47)
逮 捕
 2003年2月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人
事件概要
 会社役員笠原被告は結婚後も工務店経営の父親から経済援助を受けてきたが、家を継いで老後の面倒を見てもらいたいとの願いを断った。父親は親族を養子に入れ、自分への相続を少なくしようとしたことを笠原被告は逆恨みし、心酔し相談相手だった占い師集団「グループ向日葵(ひまわり)」代表・YT被告らに殺害を依頼。これを受けたグループ幹部YY被告は、韓国籍で元暴力団組員のK被告に殺人を依頼。K被告は2001年6月9日夜、実行グループ3人を率いて、東京都板橋区に住む笠原被告の父親(当時70)を自宅玄関で射殺した。
 笠原被告は事件前から高価な水晶玉や曼陀羅の代金として約1,000万円を超える金額をYT被告側に渡したほか、「殺害の報酬として1億円を払う」と約束していた。
裁判所
 東京地裁 村瀬均裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月14日 無期懲役
裁判焦点
 論告で検察側は「笠原被告は父親を殺害し、相続人としての資格もないのに、何食わぬ顔で1億3,700万円の財産を相続し、母の相続分も事実上管理して6億円近い莫大な財産を手にした」と指摘。「結婚に際しては3,000万円の持参金を整えてくれるなど、普通は考えられないくらい両親から恩恵を受けながら、利欲目的で実父を殺害した動機に酌量の余地はない」「遺産目当てで卑劣極まりない」「犯行を主導し責任は最も重い」と非難した。YT被告らも「報酬目当てに実行役を手配するなど酌量の余地はない」とした。
 笠原被告は捜査段階で否認。公判で起訴事実は認めたが、「占い師のマインドコントロールにかかっていた」と、犯行は従属的と主張している。
 村瀬裁判長は判決理由で「4人は金で実行犯グループを雇っており、卑劣、悪質で社会的にも到底許せない」と指摘。笠原被告に対し「遺産目的の動機に酌量の余地は皆無。報酬を約束し殺害を依頼した上、多額の財産を相続しており責任は最も重い」と述べた。
備 考
 K被告は2005年1月12日、懲役18年(求刑懲役20年)が言い渡され確定している。実行犯グループ3人も、懲役12~15年の判決が確定している。
 殺人、銃刀法違反などの罪で起訴されたYT(68)、YY(50)両被告には求刑通り懲役20年が言い渡された。グループ幹部T(51)被告には懲役12年(求刑懲役15年)が言い渡された。
 被告側は控訴した。2007年3月27日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
宮丸博史(34)
逮 捕
 2005年9月1日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 無職宮丸被告は京都府舞鶴市に住む幼なじみのアルバイト店員の男性(当時33)に借金を申し入れたが断られたため、2005年8月26日午後9時ごろ、福知山市のパチンコ店駐車場に止めた男性の軽乗用車内で、ネクタイで首を絞めて殺害。現金約3万円を奪い、同午後10時50分頃、宮津市の山中に遺体を遺棄した。宮丸被告はパチンコなどの遊興費で、サラ金などに350万円を超える借金があり、以前には、男性名義でサラ金に120万円を借りてもらっていた。
裁判所
 京都地裁舞鶴支部 新井慶有裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月14日 無期懲役
裁判焦点
 論告求刑公判の冒頭で被害者の母親が意見陳述し「同じ集落の幼なじみに殺害され大変悲しい。私の宝物だった息子の顔が見たい、声が聞きたい。極刑を望みます」と語った。
 論告求刑で検察側は「無計画に借金を重ねたあげく、金を手に入れるため幼なじみを殺害した身勝手な犯行」と述べた。弁護側は「被告人は罪を認めて反省しており、寛大な措置を求める」と意見を述べた。
 新井裁判長は判決理由で「犯行前日に呼び出した被害者の対応から、借金を頼んでも断られると感じ、殺して金を奪うことが最も手っ取り早いと考えた」と動機について指摘。「山中に死体を遺棄した後、失踪を装うため、被害者の車に(偽の)遺書を残すなど犯情は悪質」「パチンコや飲酒などに興じて自らの生活を破たんさせ、目先の経済的苦境を解決しようと幼なじみの被害者の生命を奪った安易で自分勝手な犯行。酌量の余地はない」とした。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
前田卓則(22)
逮 捕
 2005年9月6日(バイクを盗んだ窃盗容疑。14日に強盗殺人で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入他
事件概要
 愛知県出身の無職前田卓則被告は2005年8月29日午前4時頃、神奈川県相模原市のアパートに住む会社員の女性(当時22)宅に盗み目的でベランダから侵入。室内を物色中に女性に気付かれ、首を絞めて殺害。現金約2,500円と、携帯電話など(計約6,000円相当)を奪った。その後、アパート駐車場からバイクとヘルメット(計54,000円相当)を盗んだ。さらに30日には相模原市内のビデオ店で成人向けDVDを購入し、女性方に戻って鑑賞。たばこを吸ったりして過ごした。また、家族や知人らに生存を装うために殺害直後の29日から事件発覚直前の9月1日朝まで、盗んだ携帯電話から「会社休みます」などとメールを計約20通送っていた。
裁判所
 横浜地裁 小倉正三裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月17日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は「被告人の享楽的な生活に端を発した重大な犯行」と指弾し、無期懲役を求刑した。
 小倉裁判長は「執行猶予期間中にもかかわらず、パチンコやパチスロなどにのめりこむ自堕落な生活を続け身を持ち崩し、金銭を奪うために殺害したあまりにも自己中心的で身勝手な犯行」と指摘した。同被告が犯行後に何度も女性宅に戻り、DVDを見た行為について「人間としての情が感じられず、非道」と述べた。
備 考
 求刑に先立ち、検察側証人として長野県岡谷市に住む被害女性の母親が出廷。「なぜ娘は殺されないといけなかったのか。親元を離れ一生懸命生きてきたのに。被告にはもう絶対に世の中に出てきてほしくない」と涙ながらに訴えた。
 前田被告はひったくり事件で2005年2月に有罪判決を受け、執行猶予中だった。
 2006年中に控訴取下げ、確定。

氏 名
安田守男(67)
逮 捕
 2001年10月13日(呉服販売業の男性に対する死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体遺棄他
事件概要
 牛乳販売業安田守男被告は、無職渡辺実被告(求刑死刑)、無職田代タツヱ被告(一審無期懲役、控訴中)、無職U被告(一審懲役13年)、左官業T被告(一審懲役6年)と共謀し、交通事故を偽装して保険金を奪おうと計画。2001年6月24日夜、福島県いわき市平薄磯の県道で、観光目的で連れ出した栃木県藤原町の女性(当時77)をワゴン車で轢いて殺害した。安田被告はワゴンを運転していたとされる。
 2001年9月21日、渡辺被告とY被告(一審懲役15年、控訴中)が殺害した呉服販売業の男性(当時63)の遺体を、渡辺被告とともに田村市の山中に遺棄。翌22日、男性から奪ったキャッシュカードで、白河市の金融機関から現金68万円を引き出した。
裁判所
 福島地裁郡山支部 田中聖浩裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月20日 無期懲役
裁判焦点
 安田被告は女性殺害事件での保険金詐取について共謀を否認したが、検察側は「女性殺害の実行犯であり、報酬を執拗に要求するなど共謀は明白だ」と指摘。男性殺害事件の死体遺棄についても、「殺害に加わらなかったが、事件の発覚を困難にした責任は重い」と述べた。
 判決理由で田中裁判長は「被告と共犯者の間に保険金詐欺の事前共謀があったと認められる」とした。
備 考
 当初は3月6日に判決言い渡しの予定だったが、田中裁判長は職権で審理を再開し、証拠の整理、確認を行い、改めて結審した。
 控訴せず、確定。

氏 名
植村勇太郎(48)
逮 捕
 1999年4月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 器物損壊、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反、建造物侵入、窃盗、道路交通法違反、住居侵入、殺人、火薬類取締法違反
事件概要
 元山口組系暴力団組員、植村勇太郎被告は以下の事件を起こした。
  1. 植村勇太郎被告は1999年3月27日午後11時10分ごろ、大阪市の整備工場に侵入し、乗用車1台(時価約30万円相当)を盗んだ。さらに運転免許を持たず運転した。
  2. 植村勇太郎被告は1999年3月28日午前0時30分ごろ、大阪市此花区内のクリーニング店の玄関ドアガラス1枚(時価6,500円相当)を割った。さらに同店店主(当時58)に殺意を持って拳銃を2発撃ち、全治1か月の重傷を負わせた。
  3. 植村勇太郎被告は1999年3月28日午後11時5分ごろ、神戸市内の市営住宅3階エレベータ前通路でクレーン運転手(当時41)を拳銃を3発撃ち、射殺した。
  4. 植村勇太郎被告は1999年4月12日午後6時50分ごろ、大阪市の時計宝石店で店主の男性(当時57)を殺害しようと拳銃で3発撃ったが、男性がとっさに身をかわしたため、命中しなかった。
  5. 植村勇太郎被告は1999年4月14日午後8時5分ごろ、大阪市の理容店に侵入し、経営者男性(当時36)を殺害しようと拳銃で3発発射し、うち1発が左肩に当たり、全治1か月の重傷を負わせた。
  6. 植村勇太郎被告は1999年4月15日ごろ、回転断層式けん銃1丁、実弾16発、電気雷管9個、雷管を工業用に改造した雷管3個を保有した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 裁判長名不明
求 刑
 死刑
判 決
 2006年3月20日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 植村被告は一・二審で無罪を主張している。
備 考
 2002年5月8日、大坂地裁で求刑死刑に対し一審無期懲役判決。2003年7月15日、大阪高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
高塩正裕(52)
逮 捕
 2005年1月12日(逮捕当時51歳)
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗殺人、窃盗
事件概要
 福島県いわき市の塗装工、高塩正裕被告は車のローンやパチンコなどの遊興費による借金から強盗を計画。2004年3月18日昼頃、いわき市に住む無職男性(当時87)方にナイフを持って押し入ったが、男性の妻(当時83)に正体を見破られたため、妻と二女(当時55)の胸や首などを刃物で刺し、殺害した。室内を物色し、バッグの中から現金5万円を奪った。高塩被告は5、6年前に、仕事を通じて女性らと知り合い、女性方に出入りしていた。男性は当時入院中だった。
 高塩被告は2005年1月12日に逮捕された。
 高塩被告は2002年8月に、以前務めていた飲食店に侵入し、現金約164万円を盗んでいる。
裁判所
 福島地裁いわき支部 村山浩昭裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年3月22日 無期懲役
裁判焦点
 高塩被告はこれまでの公判で「極刑を望む」と語る一方、殺意については「初めから殺そうと思っていたわけではない」などと主張していた。
 検察側は「犯行は残虐極まりなく、資産家を狙い周到に計画された」として、死刑を求刑した。
 弁護側は「強盗する計画の中に殺人は含まれておらず、抵抗されて無我夢中で殺害した」などと主張、殺人そのものは偶発的な犯行だったとして減軽を求めた。また、高塩被告は「被害者、遺族におわびのしようがなく、毎日手を合わせることしかできません」と述べた。
 村山裁判長は「ナイフは強盗の手段として脅すために用意したにすぎず、殺害は冷静さを失った被告がとっさに決意し実行したもの」と被告の計画性を否定。「無残に殺害された2人の無念さは筆舌に尽くし難いが、犯行は場当たり的で、殺害に計画性は認められない」「反省の態度を示し、更生の可能性がないとはいえない」として死刑を回避した。
備 考
 検察側は控訴した。2006年12月5日、一審破棄、死刑判決。上告せず確定。

氏 名
守大助(34)
逮 捕
 2001年1月6日(殺人未遂容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂
事件概要
 仙台市の北陵クリニックの職員で准看護師守(もり)大助被告は、点滴に筋弛緩剤を混入して患者1人を殺害し、4人を殺そうとした。概要は以下。
<起訴事実>
(1)2000年11月24日、無職女性(当時89)に筋弛緩剤「マスキュラックス」を混入した点滴をし、窒息死させた。(殺人)
(2)同年2月2日、女児(当時1)=快復=に同剤の溶液を点滴の管から注射器で注入し、窒息死させようとした。(殺人未遂) (3)同年10月31日、女児(当時11)=意識不明=に同剤を混入した点滴をし、窒息死させようとした。(殺人未遂)
(4)同年11月13日、看護師を通じて男児(当時5)=快復=に同剤を混入した点滴をし、窒息死させようとした。(殺人未遂)
(5)同月24日、同様に団体職員の男性(当時45)=快復=に同剤を混入した点滴をし、窒息死させようとした(殺人未遂)
裁判所
 仙台高裁 田中亮一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月22日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 守被告は逮捕直後こそ容疑を認めたが、3日後に否認。公判では一貫して無罪を主張していた。
 弁護側は控訴審で、守被告側は「事件はでっち上げ。犯人だと示す物的証拠はなく、鑑定の信用性にも疑問が残る」と無罪を主張。一審判決を支えた鑑定結果の証拠能力を崩すため、控訴審で外国論文などを新たに提出し「データに相違があり、信用性に問題がある」と反論。裁判所による独自鑑定や、点滴混入時の薬効を調べるコンピューター解析などを請求。しかし、田中裁判長は「必要性がない」と請求をことごとく却下。弁護側は「公平な審理とは言えない」と反発し2005年10月の第4回公判で、抗議の途中退席をした。これに対し田中裁判長は審理を打ち切り、弁護人不在のまま判決期日を宣告する異例の事態に発展した。
 判決で田中裁判長は、鑑定の信用性について「鑑定の方法及び結果は合理的で妥当なものであり、弁護人提出の外国論文などを踏まえて検討しても、その信用性は左右されない」と判断。容体急変についても「(筋弛緩剤が原因とする)一審判決の認定は手堅い」と述べた。
備 考
 北陵クリニックは事件後、来院者数が激減し、2002年3月に廃止された。
 控訴審判決で開廷とともに、弁護団は弁論の再開を申し立てたが、裁判長は「第4回公判の際に弁護団が退廷したのは弁論する意思を放棄したこと」として却下。弁護団はこれに抗議し、傍聴席にいた守被告の支援者からも「ばかげている」「おかしい」などといった声が上がるなど、一時騒然となった。田中裁判長は不規則発言を繰り返した弁護人4人に退廷を命じ、主文言い渡しを後に回して判決理由の朗読から始めた。さらに、「ちゃんと調べてくださいよ」と突然、大声を上げた守被告に対し、裁判長は「やめないと退廷させますよ」と制止したが抗議をやめなかった守被告本人も退廷させ、被告のいない法廷での異例の言い渡しとなった。
 2004年3月30日、仙台地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2008年2月25日、最高裁で被告側上告棄却、確定。

氏 名
梅田嘉栄(31)
逮 捕
 2004年4月29日(恐喝未遂容疑。5月21日、強盗殺人容疑他で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、逮捕監禁、恐喝未遂他
事件概要
 愛知県岡崎市の暴力団組員で人材派遣業梅田嘉栄(うめだ・かえい)被告は、とび職安達受刑者(無期懲役が確定)と社員の少年(19 一審懲役5年以上8年以下が確定)と共謀して、2004年3月9日夜、市内の路上で元愛知県職員の男性(当時71)を拉致し、車のトランクに監禁して現金約3万円と預金通帳などを奪った。3月11日未明、男性を後ろ手にして手錠をかけ、手足にそれぞれ鉄アレイを針金で結びつけ、同県半田市の岸壁から海に投げ込み殺害した。
 男性は2003年8月、梅田被告夫婦が乗っていた車との接触事故を起こし、梅田被告に治療費など60万円余りを支払った。しかし、梅田被告は安達被告らと共謀して、休業補償などの名目で現金250万円を脅し取ろうと、男性の自宅に押し掛けたりしていた。
裁判所
 名古屋地裁岡崎支部 堀毅彦裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月22日 無期懲役
裁判焦点
 梅田被告は初公判で、「拉致には加わったが、それ以外は知らない」と起訴事実を一部否認した。
 検察側は論告で「被告は被害者の金品をむしり取る金の亡者と化し、すべての犯行を主導した」と指摘。「命ごいをする被害者を、生きたまま海の中に投げ込んで殺害、人間としての尊厳を踏みにじった」と述べた。
 弁護側は首謀者は安達受刑者であり、拉致以外は無実だとして執行猶予を求めた。
 堀裁判長は「動機や経緯に酌量の余地は全くない。終始一貫して主導的、中心的な役割で、真摯な反省態度は皆無」と指摘した。また弁護側の主張に対しては「被告人の供述は信用できない」などとして退け「罪の重大性、凶悪性、共犯の安達受刑者との刑の均衡などの事情から、仮出獄制度には慎重かつ適切な運用が望まれる」と付け加えた。
備 考
 被告側は控訴した。2006年12月14日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。2007年4月10日、最高裁で被告側上告棄却、確定。

氏 名
阪口郁哉(39)
逮 捕
 2004年1月5日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗致傷、窃盗他
事件概要
 無職阪口郁哉被告、N容疑者(46)、土木作業員M被告(45)は2003年8月、兵庫県猪名川町で無職男性(当時59)の自宅で男性に暴行を加え殺害。キャッシュカードなどを奪った。また奪ったカードで92万円を引き出した。中川被告と男性はかつて仕事仲間だった。
 阪口被告、N被告、M被告は2003年8月2日、大阪府下京区の元開業医の男性(当時81)宅に水道点検業者を装って侵入、妻(当時76)の全身をガムテープで縛り、男性にナイフを突きつけ「殺すぞ」と脅して金庫を開けさせ、現金約140万円を奪った。
 2003年9月、阪口被告は土佐くろしお鉄道奈半利駅の駅員の女性と無職男性に狂言強盗を依頼され、N被告と共謀。9月28日午後6時ごろ、同駅駅務室の金庫から売上金など現金78万円を奪った。阪口被告は女性の手足をガムテープで縛った上、強盗に見せかけるため硬貨をばらまくなどした。阪口被告は半分の約32万円を男性の口座に振り込んだ。
 阪口被告、N被告、M被告、NH被告(54)ともう1名は2004年6月20日未明、京都市北区の特別養護老人ホームに侵入し、現金28万円などが入った金庫を盗んだ。
 上記を含め、2002~2003年にかけて、京都市や大阪府などで被害総額約2400万円に上る窃盗や強盗を繰り返した。
裁判所
 神戸地裁 笹野明義裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月23日 無期懲役
裁判焦点
 阪口被告は殺意を否認。検察側は冒頭陳述で、「阪口被告は、被害者がカードの暗証番号を教えなかったことに憤慨し、殺意を持って首を絞めた」と指摘した。
 論告で検察側は「女性や高齢者など非力な相手ばかりを狙った職業的な犯行で、再犯の恐れが極めて大きい」と述べた。
 弁護側は猪名川事件について「被害者への緊縛や首の骨折は死亡に至るものではなく、殺人の実行行為と認定することはできない。また実行犯を特定する客観的根拠はない」と起訴事実を一部否認する最終弁論をした。
 笹野裁判長は、「激しい暴行を加えて放置すれば、生命の危険があることは十分認識できた」として、未必の殺意を認定した。
備 考
 阪口被告は17歳の時、老女を殺害して金を奪った強盗殺人罪で懲役12年に処せられている。また30歳で恐喝事件を起こし、31~33歳まで服役していた。
 被告側は控訴した。2006年中で被告側控訴棄却、上告中。

氏 名
竹内藤吉(54)
逮 捕
 2005年7月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入他
事件概要
 無職竹内藤吉被告は2005年2月22日、北海道赤平市の市営住宅に住む女性(当時59)方に押し入り物色していたところ、女性が帰宅したため包丁で首を刺し、現金14,000円とキャッシュカード2枚を盗んで逃走した。女性は意識不明の重体となり、5月19日に死亡した。
 赤歌署は竹内被告の逮捕状を取り、行方を追っていたが、6月24日に富良野市内の空き家に侵入したとして、富良野署が住居侵入の疑いで現行犯逮捕。処分保留で釈放された7月6日、赤歌署が逮捕した。
裁判所
 札幌地裁岩見沢支部 岡部豪裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月23日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は論告で「楽をして遊興費を得ようとした短絡的で自己中心的な犯行。あらかじめ凶器を準備するなど計画的で殺意があった」と主張。弁護側は最終弁論で「殺意はなかった」と反論、強盗致死罪の適用を主張した。
 判決で岡部裁判長は「顔を見られたことで殺意を抱いた」と殺意を認め、弁護側の主張を退けた。そして「犯行は冷酷非情で、結果は極めて重大だ。酌量すべき事情もない」と指摘した。
備 考
 被告側は控訴した。2006年9月21日、被告側控訴棄却。上告せず、確定。

氏 名
片岡清(74)
逮 捕
 2004年12月24日(岡山の事件にて。14日、広島県内で無免許運転の現行犯で逮捕済。広島の事件では2005年2月2日に再逮捕)
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗殺人、強盗致死、住居侵入他
事件概要
 無職片岡清被告は2003年9月28日夜、広島県東城町に住む一人暮らしの女性(当時91)宅の物置部屋の窓を、ドライバーなどでこじ開けて侵入。寝室にいた女性が驚いて逃げようとしたため、首を手で絞めて殺害した。室内を物色したが、何も見つからず逃走した。片岡被告は「裕福なお年寄りがいる」という情報を得たため、殺害して現金を奪うことを計画したが、名前を忘れたため、お年寄りが住んでいた東城町で人違いをして女性を殺害していた。
 また片岡被告(事件当時72歳)は、岡山県井原市のそば店店主の男性(当時76)方で2004年12月10日深夜、男性の頭部などをバールで殴って殺害し、現金約5万円などを奪った。
裁判所
 岡山地裁 松野勉裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年3月24日 無期懲役
裁判焦点
 論告で検察側は、広島の事件について「口封じのための殺害で、確定的殺意をもって首を絞めたのは明らか」と指摘。「岡山の事件は広島の事件の逃走資金欲しさによるもので、極めて反社会性が強い」と非難。「人命軽視の傾向が強く、矯正は不可能」と述べ、死刑を求刑した。
 弁護側は最終弁論で、広島事件の殺意を否認した上で、極刑回避を求めた。
 松野裁判長は広島での事件について「被害者を一時的に気絶させるつもりだった」などとして殺意を否定し、強盗致死罪を適用。「金銭目当ての自己中心的な動機で二人の命を奪い、広島、岡山両県の高齢者を不安に陥れるなど社会的影響も大きい」としながらも「責任は極めて重大で死刑の求刑にも相当な根拠があるが、被害者の遺族に謝罪の手紙を送るなど、参酌すべき事情もある。矯正措置が全く不可能とまでは言えない」と理由を述べた。
備 考
 2003年9月の広島の殺人事件で、広島県警は当時片岡被告を二度にわたって事情聴取したが、自供を得られず、証拠も無かったため立件を見送っていた。
 検察側は控訴した。2008年2月27日、広島高裁岡山支部で一審破棄、死刑判決。2011年3月24日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
山本常夫(41)
逮 捕
 2004年10月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体遺棄、業務上横領
事件概要
 運送会社東京営業所社員山本被告は住み込みで働き、経理を担当。2003年1月以降、クラブでの遊興費などに充てるため会社から計約5500万円を横領した。山本被告は使い込みを同営業所所長の男性(当時72)のせいにして、男性が失跡したように見せかけようと企て、2004年9月30日、同営業所で男性の首を両手で絞めて殺害し、10月5日に遺体を福島県内の山林に捨てた。
裁判所
 東京高裁 安廣文夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月30日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 量刑不当を理由に控訴した。
備 考
 2005年9月29日、東京地裁で一審無期懲役判決。上告せず、確定。

氏 名
村山実(38)
逮 捕
 2004年5月19日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 鹿児島市の住宅リフォーム会社社長村山実被告と部下のI被告は2004年5月6日夜、自社を含むグループの実質的なオーナーで、福岡市にある住宅リフォーム会社社長の男性(当時33)を鹿児島市で絞殺。村山被告は男性の財布から約38万円を強奪し、I被告はうち20万円を受け取った。二人は社長の遺体を宮崎県内の雑木林に遺棄し、村山被告は男性の会社の従業員に、「社長の承諾を得ている」などといって預金口座から6,000万円を自社口座に移し替えてだまし取った。うち4,000万円は社員の給料などに充て、残りは口座に残っていた。
 村山被告の会社の商法をめぐっては、埼玉県警が2004年5月11日、「シロアリで家が倒れてしまう」などとうそを言って換気扇を売りつけていたとして、埼玉営業所長ら3人を特定商取引法違反(不実告知など)容疑で逮捕している。
裁判所
 福岡地裁 林田宗一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年3月30日 無期懲役
裁判焦点
 両被告は初公判で事実関係を認めたが、村山被告の弁護人は強盗ではなく、窃盗、詐欺罪の適用を求め、I被告の弁護人は過剰防衛を主張した。
 検察側は論告で「村山被告は、被害者が多額の現金を所持していることを知っていた」と指摘。「自社の資金繰りに窮したため、金目的で恨みのあった被害者を殺害した」と述べた。
 林田裁判長は「被害者殺害の意思は非常に固く、犯行はしつようで残忍極まりない」と述べた。また「被害者を殺害すれば現金を得られると認識していた」と村山被告の強盗目的否認を退けた。
備 考
 I被告は求刑懲役16年に対し、自首が認められ懲役11年の判決がそのまま確定。
 被告側は控訴した。2006年11月2日、被告側控訴棄却。2007年3月6日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
梶原幸子(27)
逮 捕
 2005年1月20日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 無職梶原被告は無職佐藤広志被告(一審無期懲役 控訴中)と共謀し、2004年12月19日午後10時40分頃、牡鹿町鮎川浜の国定公園内で、石巻市に住む会社員の女性(当時23)を棒のようなもので殴って殺し、現金約1万8千円の入ったバッグを奪った。さらに2人は、女性のバッグからアパートの鍵を奪って部屋に侵入し、現金およそ8000円を奪った。2人は女性からあわせて3万数千円の借金があり、返済を迫られていた。奪った金は遊びに使った。遺体は1月20日に発見された。
 仙台市内の佐藤被告の祖母宅に侵入、祖母の頭を殴ったり包丁で脅したりして現金約3万円を奪うなどした。
裁判所
 仙台高裁 田中亮一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 量刑不当を理由に控訴していた。田中裁判長は「犯行場所の選定、金品の奪取など積極的な役割を果たしている」と退けた。
備 考
 2005年9月26日、仙台地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年9月4日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
熊谷徳久(65)
逮 捕
 2004年6月26日(自首)
事件当時年齢
 64歳
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗殺人未遂、銃刀法違反、現住建造物等放火
事件概要
 熊谷徳久(くまがい・とくひさ)被告は2004年4月に窃盗罪で服役していた刑務所を出所すると、ディスコの開店資金を得るために強盗を計画。
 2004年5月6日、無職熊谷徳久被告(当時64)は東京駅のキヨスク集金所を拳銃で襲撃するつもりだったが、目的の集金所を見つけることができず、腹いせのため午後5時頃、東京駅地下3階の機械室に灯油をまいてライターで放火。廃棄するため置いてあったエアコンやペンキ缶などを焼いた。この火事で、東京駅地下5階にある総武快速・横須賀線ホームに白煙が立ちこめ、乗客約300人が避難する騒ぎになった。
 熊谷被告は2004年5月29日深夜、横浜中華街の中華レストラン経営者(当時77)を横浜市中区の自宅前で待ち伏せし、頭を拳銃で撃ち殺害。経営者が持っていた売上金約44万円入りのバックを奪った。
 2004年6月23日朝、熊谷被告は東京メトロ渋谷駅構内で駅員(当時32)の腹を拳銃で撃ち重傷を負わせ、持っていた洗面用具などの入った紙袋を奪って逃走した。
 熊谷被告は6月26日、渋谷駅銃撃事件について警視庁に出頭。その後、横浜市の強盗殺人事件で家の周辺に残された指紋が一致したこと、銃弾に残された線条痕が酷似していることから神奈川県警が追求、犯行を自供した。出頭当時、所持金は数百円だった。

裁判所
 東京地裁 毛利晴光裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年4月17日 無期懲役
裁判焦点
 弁護側は最終弁論で事実関係を認めた上で、「反省して自首しており、更生する可能性もある」と述べた。
 毛利裁判長は判決で、「刑務所出所後わずか1ヶ月半余りの間に立て続けに犯行に及んでおり、金に対する執着と、人の命を奪うことすら構わない危険な考えがみてとれる」と熊谷被告を断罪。「起訴事実を認めているが、金に執着して人命を奪うことも構わない危険な考え方が見られる。不遇な成育環境に対する恨みや性格の偏りがあり、更生意欲もない。被害者が死刑を望むのももっともだ」と指摘。「更生の可能性は低く、同様の犯行に及ぶことが大いに懸念される」と述べた。
 その一方、殺害された被害者が一人だったことや、殺人など重大事件の前科がない、自首をした、被害者の家族らに謝罪の手紙を送っていることなどを考慮し、「死刑はいささか躊躇を感じざるを得ない」と判断した。ただ、「仮出獄については、犯行に照らして慎重な運用がなされるべきだ」と付言した。
備 考
 熊谷被告は1996年1月、横浜市中区で銀行嘱託社員を工具で襲い、小切手を奪った強盗傷害事件で実刑判決を受け、2004年4月に出所したばかりだった。
 殺害された経営者の妻は検察官に、長男は公判でいずれも被告を死刑にしてほしいと求めた。また。駅員は心身に深い傷を負い、現在も通院を続けている。家に引きこもったままで、家族は検察官に「体は元に戻らない。死刑にしてほしい」「同じ苦痛を味わわせたい」と訴えた。
 検察側は控訴した。2007年4月25日、一審破棄、死刑判決。2011年3月1日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
南雲浩二(30)
逮 捕
 2003年10月9日
殺害人数
 0名
罪 状
 強盗強姦、監禁致傷、わいせつ目的略取他
事件概要
 無職南雲浩二被告と仲前門直哉受刑囚は2003年8~10月、埼玉、千葉、東京、神奈川の4都県で、深夜に1人で帰宅途中の20~40代の女性8人を車に押し込むなどの手口で乱暴。キャッシュカードを奪って現金を引き出すなど、計約100万円を盗んだり奪ったりした。南雲被告らは同じ勤務先の元同僚。一緒に転職したが勤め口が見つからず、テレビで犯行手口を知った南雲被告が犯行を持ち掛けた。
裁判所
 東京高裁 裁判長不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月17日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 雨宮裁判長は「犯行態様の際立った悪質性や、何ら落ち度のない被害者の人格をじゅうりんする犯行を繰り返した刑事責任は極めて重い。被害者のうち7人に見舞金(各10万円)を送金するなど酌むべき事情を考慮しても、無期懲役刑をもって臨むほかない」と指弾した。弁護側は被害額など一部の事実関係を争っていたが、裁判所は「理由がない」と退けた。
備 考
 2005年8月31日、さいたま地裁川越支部で無期懲役判決。仲前門直哉被告は控訴せず確定。

氏 名
安永(31)
逮 捕
 2002年10月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、銃刀法違反他
事件概要
 中国籍の日本語学校生、安永被告は2002年9月27日午後7時頃、中国人グループのメンバーと共謀し、新宿区歌舞伎町の喫茶店で暴力団幹部2名を拳銃で撃ち、1人(当時34)を死亡させ、1人に大怪我を負わせた。
 黒竜江省出身の金石容疑者らを中心として、パチンコ店での窃盗や強盗事件などに関与する十人前後のマフィアグループと、死傷した幹部二人が関係する暴力団の組員らが、事件直前に別の飲食店でトラブルになっていた。両グループが現場の喫茶店で話し合いをしようとした矢先に、金容疑者らが計画的に発砲した。
裁判所
 東京高裁 裁判長名不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月19日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 安永被告は逮捕時、「現場には行ったが撃っていない」と供述している。
備 考
 国際手配されていた主犯格の金石容疑者は2003年3月末に中国で拘束。日中間には身柄引き渡し協定がなく、中国は、自国の法律に基づき、国外犯として男を代理処罰するとみられる。
 本事件では他に8人の中国人が逮捕されていて、連曙光被告、蘇旭東被告は一審無期懲役判決、控訴中である。
 2005年6月29日、東京地裁で一審無期懲役判決。

氏 名
佐々木彰(74)/中村謙二(43)
逮 捕
 2005年6月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、強盗、窃盗他
事件概要
 埼玉県草加市の飲食業伊藤萬寿男被告、東京都荒川区の無職佐々木彰被告、住所不定無職城後健一被告、住所不定無職中村謙二被告、群馬県藤岡市の無職I被告、アルゼンチン国籍で群馬県伊勢崎市の無職ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ブラジル国籍で群馬県県太田市のレンタルビデオ店手伝いド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告は共謀し、強盗殺人を計画。
 2004年12月7日午前4時頃、主犯格の伊藤被告と佐々木被告、城後被告、アンドレス被告、アキラ被告の5人が、群馬県作詞の無職女性宅に押し入り、同居していた会社員の男性(当時49)の首を絞めて殺害。キャッシュカードや現金5000円、指輪など貴金属計20数点(時価合計48万円相当)を奪った。
 伊藤、佐々木の両被告と、中村、城後、アキラ、ミウラの4被告は、それぞれ別の窃盗グループを構成。群馬県前橋市に住む女性は中村被告の知人、I被告は中村被告と仕事で知り合った仲という。今回の事件は、伊藤被告と中村被告が知り合って8人がグループになり、I被告が中村被告に情報を提供、計画した。
 また2004年8月から2005年6月にかけて、佐々木被告は関東4県での窃盗や強盗計4事件、中村被告は関東など4県での窃盗、強盗、詐欺など計8事件で起訴されている。
裁判所
 長野地裁 土屋靖之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月19日 無期懲役
裁判焦点
 佐々木、中村両被告は初公判で起訴事実を認めた。
 検察側は「執ようかつ残酷。職業的、専門的強窃盗集団による犯行で、極めて悪質」などとした。
 佐々木被告について土屋裁判長は「犯行において中心的、重要な役割を果たした。主犯格を制止できる立場にあった」と指摘。中村被告については「役割は実行犯と比べ、そん色ない」と述べた。
備 考
 7人と一緒に逮捕された群馬県の女性は処分保留で釈放。佐久署捜査本部が、別の事件でだまし取ったと知りながら貴金属を質店に売ったとして、盗品等処分あっせんの疑いで再逮捕した。
 両被告は控訴した。2006年9月13日、被告側控訴棄却。 2007年1月?、被告側上告棄却、確定。

氏 名
斎藤年男(23)
逮 捕
 2004年12月2日(女子高校生への傷害容疑)
殺害人数
 0名
罪 状
 強盗強姦、強盗強姦未遂、強姦未遂
事件概要
 塗装工斎藤年男被告は2002年1月から2004年10月まで、埼玉県上尾市の自宅周辺などで帰宅途中の女子中高生ら13~23歳の女性合計15人を刃物で脅し、暴行して現金を奪うなどした。
 斎藤被告は浮気した妻への恨みや性欲を解消しようと犯行に手を染め、勤務先の給料遅配などで金に困るようになった2002年8月ごろ、強姦した上に金品も奪うようになった。以降、交際相手とけんかをしたり、職場などでストレスがたまると、うっぷんを晴らし、性欲を解消するために犯行を繰り返していた。
裁判所
 さいたま地裁 下山保男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月20日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は「自己の欲望を満たすため、抵抗できない若い女性を狙った卑劣な犯行」と指摘。「被害者の精神的、肉体的被害は甚大」と述べた。
 下山裁判長は「余罪が多数あり、1日に2件連続した犯行もある。常習性が明らかで、再犯の恐れが大きい。犯行は粗暴かつ卑劣と言うべきで、終生をもって償わせることはやむを得ない」と述べた。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
伊藤博(52)
逮 捕
 2004年11月5日(窃盗容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 無職伊藤被告は、いとこで愛知県岩倉市に住む男性(当時45)が土地を売って金を得たという話を聞き、宇治橋啓次被告(一審無期懲役判決が確定)に殺害して金を奪うことを持ちかけ共謀。2004年10月26日、男性を誘い出し、一宮市内の車の中で、金づちで殴ったり包丁で刺すなどして殺害。定期貯金証書7通(額面計約2500万円)などを奪い、遺体を弥富町のコンテナに隠した。男性は約2年前に死亡した母親の遺産を相続し、一人暮らしだった。
裁判所
 名古屋高裁 前原捷一郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月20日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 伊藤被告は刺し身包丁で被害者を刺したという起訴事実を否認して事実誤認などを主張していたが、判決は「共犯との共謀に基づいた殺害で実行の共同正犯は明らか。刺していないとの供述はあいまいで信用できない」とした。
備 考
 2005年9月6日、名古屋地裁で求刑通り一審無期懲役判決。上告せず確定と思われる。

氏 名
織田佳克(23)
逮 捕
 2005年4月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 北海道由仁町の会社員織田佳克は2005年4月24日午前、同居している祖母(当時66)に小遣いを要求したが断られたため、祖母の首を絞めたり、頭などを殴ったりしたうえ、消火器の噴射口を口に当てて噴射させ、粉末をのどに詰まらせて窒息死させた。遺体を一階台所の床下収納庫に遺棄した後、祖母名義の郵便貯金口座から現金500万円を引き出し、一部を数百万円ある消費者金融の借金返済に充て、一部は高級ブランド品の購入に充てた。
裁判所
 札幌地裁岩見沢支部 岡部豪裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月20日 無期懲役
裁判焦点
 弁護側は最終弁論で「確定的犯意はなかった、強盗目的ではない」と主張した。
 岡部裁判長は判決で殺害後に血の跡を清掃し、ただちに部屋を物色するなどしていることから、「金品強取目的の殺害と容易に推察できる」と認定。「殺害方法はほかに類を見ない冷酷で残忍なもので、戦慄を禁じ得ない。犯行の重大性や自己責任を認識しようとせず遺憾」と述べた。
備 考
 織田佳克被告は自ら多重人格などと供述したため、札幌地検岩見沢支部は織田被告を精神鑑定するための鑑定留置を2005年5月17日に請求、札幌地裁岩見沢支部は許可した。鑑定期間は16日から3ヶ月間。
 被告側は控訴した。2006年11月30日、札幌高裁で被告側控訴棄却。2007年3月13日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
少年(19)/少年(20)/少年(20)
逮 捕
 2005年6月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、強盗致傷他
事件概要
 福島県飯舘村に住む会社員の少年(当時19)、無職の少年2被告(ともに当時19)は会社員のS被告(公判中)と共謀。2005年6月19日未明、出会い系サイトで福島県飯館村の少女(当時17 公判中)に呼び出させた福島市の男性会社員(当時21)をバールや木刀などで暴行、現金約4000円や乗用車などを奪って死亡させた。
 事件前の6月7日に少年たちは、S被告を同様の手口で誘い出した後、車で連れ回しながら暴行、全治5週間のけがを負わせたうえ、現金91万円を奪った。S被告はこの事件後、暴行を受けたり脅されたりして、少年たちの犯行に加わっていた。
 他にもう1件、強盗致傷で起訴されており、被害金額は総計で250万円以上になる。
裁判所
 福島地裁 大沢広裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月21日 無期懲役
裁判焦点
 3人は起訴事実を全面的に認めている。
 検察側は論告で「凶器を用意するなど周到な準備をした計画的な犯行」と指摘、「異常なまで残忍かつ執拗で、人間の尊厳をじゅうりんし尽くした。人が苦しむのを見て楽しむなど非道この上ない」と述べた。検察側は少年らが「援交狩り」と称して出会い系サイトで男性を呼び出し暴行を加えた手口について「おやじ狩りに出会い系サイトを組み合わせ進化させた形態で、模倣性が高く、厳正な処罰が必要」と主張した。
 判決理由で大沢裁判長は「金銭的欲望を満たすため、被害者から多額の金品を奪い、身体や生命をもてあそぶかのような残忍な暴行を執拗に繰り返した刑事責任は計り知れないほど重い」と指摘した。3人の刑事責任の軽重について大沢裁判長は、出会い系サイトを利用した犯行を発案した無職少年の暴行が比較的激しかったことは認めたものの、ほかの2人も重要な役割を担ったとして「3人の役割、刑事責任にはさしたる隔たりはない」と述べた。
備 考
 強盗致死に問われたS被告は無罪を主張したが、2006年7月20日、仙台地裁は懲役8年(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。山内昭善裁判長は「同じ手口で仲間に金を取られ、その穴埋めをしたいという動機は、私利私欲や身勝手な思考に基づくもの」と述べた。
 傷害致死で逮捕された少女は弁護側が家裁への移送を求めており、公判が分離されている。懲役13年が求刑されたが、2006年9月22日、福島地裁(大沢広裁判長)は、無職少女(19 犯行時17)について「相当長期間少年院に収容し、改善更生を図ることがより相当」として、福島家裁に移送する決定を下した。
 3被告とも控訴した。2006年10月13日、仙台高裁で被告側控訴棄却。2007年2月19日、被告側上告棄却、確定。
 被害者の母親は、被告5人および事件当時未成年だった4人の親を相手取り、約6,500万円の支払いを求めた損害賠償請求を訴えた。2006年12月7日の第1回口頭弁論で、被告側はいずれも事実関係を認め、和解の方向で協議が進められる。訴状によると、母親は男性の生涯賃金や慰謝料などを合わせて約1億800万円と主張。保険会社から受け取った保険金4,300万円との差額を求めている。

氏 名
古川順也(49)
逮 捕
 2005年7月15日(2005年1月の窃盗容疑で6月20日に逮捕、起訴済)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗他
事件概要
 元タクシー運転手古川順也被告は2005年5月7日午前4時頃、静岡県焼津市のビル5階にあるパブの更衣室兼倉庫で、店長の男性(当時59)の頭を用意した果物ナイフで刺し、ネクタイで首を絞めて殺害。現金約22,500円が入った財布や携帯電話、手提げバッグなどを奪って逃げた。
 古川被告はパブの常連であり、パブの外国人女性従業員を気に入って店に通い詰めていたが、女性が帰国することになり、被告が女性から借りていた金の返済を求められたことから、まとまった金が必要になっていた。古川被告は事件の数日前、店の更衣室に勝手に侵入して寝ているところを男性に2度見つかった。最初はトラブルは起きなかったが、2度目には、もみ合いになったという。
 その後、古川被告は逃走生活を続け、6月20日に逮捕されるまでの間、生活資金を得るため5月13日と28日、静岡市清水区内でタクシー強盗事件2件を起こした。また2005年1月に静岡市清水区の知人女性方から現金約16万円を盗んだとして、清水署に指名手配されていた。
裁判所
 静岡地裁 竹花俊徳裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月24日 無期懲役
裁判焦点
 被告は起訴事実を大筋で認めている。
 検察側は論告求刑で「交際相手の外国人女性の帰国費用を得るため強盗しようとしたという動機に酌量の余地はなく、その場を発見した被害者を殺害した行為は身勝手極まりない。遺族の処罰感情も強く厳罰が相当」「強盗殺人の後も逃走生活を続け、タクシー強盗や窃盗を繰り返すなど、犯行後の情状も悪質」と指摘した。
 判決理由で竹花裁判長は、「強盗目的で忍び込んでいるところを被害者に見つかり、警察に通報すると言われると、ちゅうちょなくナイフで襲った」などと犯行の冷酷さを指摘。わずか6日後には、タクシー強盗をはたらいていることを指し、「自らの手で人命を奪い去ったことに対する反省や後悔の念はうかがえない」とした。
備 考
 控訴せず確定と思われる。

氏 名
ジョエル・メンドーサ・フランシスコ(23)
逮 捕
 2004年1月8日(別の窃盗罪で逮捕済み)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 フィリピン国籍の無職エンジレット・フエンテス・ガルシア受刑囚、ジョエル・メンドーサ・フランシスコ被告は、共謀して2003年10月1日午前10時半頃、客を装って愛知県豊川市の質店に入り、ガルシア受刑囚が質店店主の女性(当時76)を包丁で刺して殺害。現金約20万円と指輪など貴金属220点(合計約857万円相当)を奪った。
 2人は愛知県内の民家から貴金属類を盗み、質店に質入れしていたとして2003年12月上旬、窃盗容疑で逮捕されていた。
裁判所
 名古屋高裁 門野博裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月24日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 フランシスコ被告は「殺意はなかった」などと事実誤認や量刑不当を主張していたが、門野裁判長は「殺害の共謀は成立し、動機や経緯に酌量の余地はない」と述べた。
備 考
 2005年9月20日、名古屋地裁で一審無期懲役判決。ガルシア被告は控訴せず確定していた。上告せず確定と思われる。

氏 名
柏木信幸(53)
逮 捕
 2004年12月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 柏木被告:強盗致死他
事件概要
 無職宮田好信被告、柏木信幸被告、K被告は、2004年9月24日夜に東京都江東区の路上で帰宅途中の会社経営者の男性(当時61)を拉致して乗用車の中に連れ込み、走行中の車内で現金50万円などを強奪。宮田被告は翌29日午前8時過ぎ、神奈川県綾瀬市の自宅に連行した男性の首を絞めて殺害し、遺体を八王子市の山林に埋めた。
 宮田被告らは、会社社長水越清一被告から依頼を受けていた。水越被告は男性に700~800万円を貸しており、貸金を回収するために宮田被告らに男性の顔写真と約110万円の準備資金を渡していた。
裁判所
 東京高裁 裁判長不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月24日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 量刑不当を訴えたか?
備 考
 2005年12月2日、東京地裁で一審無期懲役判決。宮田被告も控訴中。被告側は上告した。2006年中に最高裁で被告側上告棄却、確定。

氏 名
大倉昌広(62)
逮 捕
 2005年10月31日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 サウナ店従業員大倉昌広被告は2005年10月10日午前、勤めていた東京都板橋区のサウナ店に侵入。同店店長(当時57)の胸などを、刺身包丁で20数ヶ所刺すなどして殺害。店の売上金約24万円を奪った。
 大倉被告は翌日から逃亡。24日に指名手配され、31日に逮捕された。
裁判所
 東京地裁 合田悦三裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月26日 無期懲役
裁判焦点
 合田悦三裁判長は「売上金が多い日で、被害者が1人になる時間を選んで犯行に及んだ。極めて計画的な上、ためらいもなく何度も胸などを突き刺すなど悪質だ。刑事責任は重い」と判決理由を述べた。
備 考
 控訴せず確定と思われる。

氏 名
森野修治(51)
逮 捕
 2004年10月1日(死体遺棄容疑 業務上横領で逮捕済)
殺害人数
 1名
罪 状
 業務上横領、強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 札幌市の不動産会社支店長森野修治被告は、札幌市にある不動産会社社長の男性から6億円の融資元の仲介を請け負い、2003年3月、男性から預かった保証金2500万円を横領。返済を免れるため、同年8月16日夜、自宅マンションの会社事務所に呼び出した男性(当時45)の頭部を灰皿で殴って殺害。さらに翌17日、元妻(死体遺棄で猶予刑確定)と共謀して遺体を車で芦別市内の国有林へ運び、埋めた。
裁判所
 札幌地裁 吉村正裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月26日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 森野被告は起訴事実を全面的に認めている。所有する土地・建物を全て売却し、賠償に当てるとしている。
 最終弁論で弁護人は減軽を求めたが、被告は極刑を求めた。
 判決理由で吉村裁判長は「被害者の命を奪うという最悪の手段で、着服した保証金の返済を免れようとしたもので、酌量の余地は全くない」と述べた。
備 考
 弁護人によると、森野被告は控訴しない方針。

氏 名
西山信昭(32)
逮 捕
 2005年4月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、殺人未遂、保護責任者遺棄、未成年者略取他
事件概要
 京都府舞鶴市の無職西山被告は、同市に住む店員の女性(当時25)と交際し多額の金品を贈っていたが、借金が840万円に達して金に困るようになると離れていったため、自分は利用されているだけと考え、殺害して逃走資金を奪おうと企てた。2005年3月28日午後10時15分ごろ、女性方に侵入。逃げようとした女性の首を背後からひもなどで絞めて殺害し、現金7万円やキャッシュカード、バッグなどを奪い、兵庫県篠山市の山に遺体を捨てた。また、自宅にいた子ども2人を連れ出し、同29日未明、気温も低く放置すれば衰弱して死亡する危険性を認識しながら、就寝中の女児(当時2)を福知山市内の山中で川のそばに投げ落とし、31日夜には、男児(当時4)を高知県内の国道に放置した。長女は3月29日に、長男は1日、警察に無事保護された。
裁判所
 大阪高裁 島敏男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月26日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 西山被告は、「強盗目的ではない」「量刑が重すぎる」と訴えた。島裁判長は判決理由で「殺害を計画した際、金品を奪うことも決意したと認められる。身勝手な動機から犯行に及び、非難は免れない」と退けた。
備 考
 2005年10月18日、京都地裁舞鶴支部で一審無期懲役判決。

氏 名
平林勝(47)
逮 捕
 2004年11月28日(自首)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反
事件概要
 東京都足立区の無職平林勝被告は、2004年11月28日午後6時10分頃、山梨県鳴沢村にあるコンビニの駐車場で、アルバイトを終えて帰宅しようとした女性(当時19)の胸や首などを果物ナイフで数回刺し、殺害した。
 平林被告は約20分後に現場から約3キロ離れた河口湖消防署西部出張所に現れて「人を刺してきた」などと話し、逮捕された。
 平林被告は、借金苦から逃れようと車で山梨県内に来て自殺を考えたが、死にきれず、「刑務所に入って生きていくしかない」と思い、偶然見かけた女性を殺害した。
裁判所
 甲府地裁 川島利夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月27日 無期懲役
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裁判焦点
 公判では弁護側が精神鑑定を求めていたが、初公判の冒頭で「責任能力が著しく減じていたとは認められない」との医師の鑑定結果が川島裁判長から報告され、双方とも合意した。
 検察側は論告で、平林被告が殺害直前までタクシー運転手として働いており、殺害直後の取り調べに具体的で矛盾のない供述をしていることから、責任能力を問えると主張した。
 一方、弁護側は被告の善悪の判断能力は著しく減退しており、責任能力には限界があると主張。自首したことと合わせて、寛大な判決を求めた。
 川島裁判長は「被害者を待ち伏せするなど、冷静な行動を取っており、完全責任能力はあった」と述べた。
備 考
 控訴せず、確定。

氏 名
平野義幸(41)
逮 捕
 2003年7月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、現住建造物放火
事件概要
 俳優平野義幸被告は2003年1月16日午後2時頃、当時住んでいた京都市下京区の民家2階で同居していた女性(当時47)の手足を電気コードなどで縛り、ガムテープで口をふさいで、室内に灯油をまいて放火。女性に全身やけどを負わせて殺害し、24平方メートルを焼いた。
 平野被告は火事後の事情聴取中に覚せい剤使用が発覚。同取締法違反の疑いで逮捕され、2003年4月に懲役1年2月の実刑判決を受け、服役中だった。
 平野被告は大地義行の芸名で「新・仁義なき戦い」(2000年)、「新・仁義の墓場」(2002年)、「荒ぶる魂たち」(2002年)の映画に出演したほか、バンドメンバーとして音楽活動も行っていた。
裁判所
 大阪高裁 陶山博生裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月28日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 平野被告は女性を縛ったことは認めたが、放火・殺人について否認し、無罪を主張している。
 陶山博生裁判長は「生きている被害者を焼き殺した冷酷かつ残虐な犯行で、一審判決の量刑は軽きに失する」と述べた。
備 考
 2005年3月25日、京都地裁で懲役15年判決。検察・被告側が控訴していた。被告側は上告した。2006年10月31日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
岩知道吉隆(54)
逮 捕
 2005年2月4日
殺害人数
 1名(死者計2名)
罪 状
 強盗殺人、業務上過失致死他
事件概要
 京都市左京区の飲食店経営、岩知道(いわちどう)被告は、知人だった税理士事務書院の女性(当時49)を殺害してでも金銭を奪おうと計画。2005年1月3日午前2時ごろ、ベランダの窓ガラスにガスバーナーの火で穴をあけて侵入。ベッドに寝ていた女性に千枚通しを突き付けたところ、抵抗されたため、首を包丁で数回突き刺して殺害。手提げ金庫を奪って逃げた。金庫に現金はほとんど入っていなかった。
 岩知道被告は女性の元夫から勧められたマルチ商法などに参加したが、約1000万円の借金を作り、元夫と女性に憎しみを抱くようになっていた。
 岩知道被告は1月21日未明、同市内の名神高速道路で乗用車を分離帯に衝突させ、助手席の母親(当時91)を死亡させたとして業務上過失致死の罪でも起訴されている。
裁判所
 大阪高裁 裁判長名不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年4月 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 一審では殺意を否認している。
備 考
 2005年9月12日、京都地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年9月15日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
村松茂(38)
逮 捕
 2005年9月8日(死体遺棄容疑。窃盗容疑で逮捕済)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体損壊、死体遺棄他
事件概要
 群馬県前橋市の会社員村松茂被告は、パチンコなどで借金が100万円近くあった。消費者金融から借金した際に家族に知られ、新たな借金をしにくい状況になっていた。消費者金融への5万円の返済期限が迫っていたことから、強盗を計画。2005年7月31日夜、包丁を持って、前橋市の証券会社に勤めていたころの顧客だった女性(当時78)宅を訪問。玄関先で包丁を突きつけたが、抵抗され、包丁の柄で頭などを殴った上、エプロンのひもで首を絞めて殺害。キャッシュカードなどを奪った。さらに翌日午前2~3時頃、栃木県足尾町の山林に穴を掘り、死体を埋めた。
 村松被告は女性のキャッシュカードで100万円を引き出した窃盗の容疑で8月に逮捕。8月29日に犯行を自供、遺体が発見された。
裁判所
 前橋地裁 久我泰博裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月2日 無期懲役
裁判焦点
 論告で検察側は、村松被告が、借金返済や不倫相手との交際費のために金を奪おうと、かつて勤務していた証券会社時代の顧客で、一人暮らしの被害者を襲うことを思い立ったと指摘。凶器や犯行発覚を防ぐためのマスク、帽子、エンジンオイルなどを事前に購入しており、用意周到で計画的だなどとした。
 争点になった殺意の発生時期について、「犯行の発覚を阻止しようと、当初から、被害者の殺害や、遺体の損壊を念頭に置いていたことは明らかだ」とした。
 弁護側は最終弁論で、「殺人は、被害者の発言に激高した偶発的なものだ」などと、あらためて主張し、寛大な判決を求めた。
 久我裁判長は「当初から殺害を計画していたと認定するには、合理的な疑いが残る」としたが、「偶発的な犯行であることなどを最大限考慮しても、酌量減軽すべき情状があるとは言えない」「逮捕を免れようと、抵抗力の弱い一人暮らしの高齢者を対象とした計画は狡猾で卑劣」と述べた。
備 考
 村松被告は判決前に弁護人に「いかなる判決も受けるつもり」と述べていた。被告側は控訴した。

氏 名
重富秀高(30)
逮 捕
 2005年12月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗殺人未遂
事件概要
 重富秀高被告は2005年12月17日午後8時半ごろ、鹿児島県徳之島町の母間新港に停車させたタクシー車内で運転手の男性(当時69)の首をタオルで絞めて殺害、売上金など約18,500円を奪った。また、翌18日午後8時半頃、隣の伊仙町で別のタクシー運転手の男性(当時69)の首を絞めて殺害しようとし、顔などにけがを負わせたうえ、売上金14,000円を奪った。
裁判所
 鹿児島地裁 谷敏行裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月11日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 検察側は「自分勝手で卑劣な犯行」などと指摘した。被告側は起訴事実を全面的に認めた。被告は遺族に謝罪している。また被告の父親は見舞金を持って謝罪した。
 谷敏行裁判長は「極めて自己中心的かつ短絡的で、人命軽視も甚だしい。非情かつ冷酷な犯行」などとした。
備 考
 公判前整理手続きが鹿児島県で初めて適用された。今回の裁判では裁判官、検察官、弁護士、被告人が鹿児島地裁に2回集まり、起訴事実の認否のほか、検察側が提出した証拠などを整理。重富被告が起訴事実を認め、争点が被告の情状に限定されたため、初公判の2006年4月26日で結審した。
 控訴せず、確定。

氏 名
小野義貞(43)
逮 捕
 2004年6月28日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 古美術店店員金元明被告とアルバイト作業員小野義貞被告は2004年1月10日、大阪府高石市の金融業者(当時42)の事務所で、金融業者の頭部を鈍器で殴って殺害。現金約10万円や鞄などを奪った上、遺体を寝袋に包んで大阪府柏原市の山中に棄てた。両被告は事件当時、金融業者が経営していた金融会社の従業員で、「奴隷のように使われ、恨んでいた」などと供述した。
裁判所
 大阪高裁 若原正樹裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月11日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 若原裁判長は「被害者を追いかけ回して金づちで殴打したうえ、首を絞めるなど残忍な犯行で刑事責任は極めて重い」とした。
備 考
 金元明被告は一審無期懲役判決、控訴中。
 2005年5月24日、大阪地裁で求刑通り一審無期懲役判決。

氏 名
中村数年(59)
逮 捕
 2002年6月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反他
事件概要
 指定暴力団組長F被告、暴力団組長中村数年被告、組幹部N被告は、1998年2月18日夜、北九州市小倉北区で、若松区の元漁協組合長の男性(当時70)に銃弾4発を命中させて死亡させたとして起訴された。公判で検察側は中村、N両被告を殺害の実行役、F被告を犯行用の車の調達役及び見届け役と指摘した。
 殺害された男性は、地元・響灘の白島石油備蓄基地建設に伴う地元漁協への漁業補償金18億円を不正に配分した「白島事件」で1983年、漁協に1億6,900万円の損害を与えたとして背任罪などで起訴され、1995年に懲役2年が確定した。漁業補償などに強い発言力があったとされ、白島基地をめぐり政治工作資金などが取りざたされた一連の“白島疑惑”の中心人物とされた。
 1997年9月には男性の実弟宅などに銃弾が撃ち込まれる事件も起きている。
 判決では、中村、F両被告は氏名不詳者と共謀し、小倉北区古船場の路上で男性の頭や胸に銃弾4発を撃ち射殺したと認定された。
裁判所
 福岡地裁小倉支部 野島秀夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月12日 無期懲役
裁判焦点
 3被告はいずれも犯行を否認している。
 検察側は論告求刑で「元組合長らに、公共工事に介入することを断られたため、組織ぐるみで報復した悪質な犯行」とした。
 弁護側は最終弁論で「警察による見込み捜査であり、三人が事件に関与した証拠はない」と述べた。
 野島裁判長は中村、F両被告については検察側の主張を全面的に認めた上で「響灘ハブポート(ひびきコンテナターミナル)構想への利権介入をもくろむ複数の工藤会系幹部が被害者らに利権確保を拒絶されたことから、報復して組織の威勢を誇示し、(利権確保の)目的を遂げようとした」と述べた。
 中村被告について(1)犯行前日に自宅で暴発した拳銃の銃弾と、犯行に使われた銃弾の線条痕が一致する(2)犯行直前、現場から約700メートル離れた喫茶店で、知人に「用事を済ませてくる」と言って店を出た―ことなどから「中村被告が事件の実行犯であることが強く推認できる」と判断。F被告についても(1)犯行で使われた車両を調達した(2)「事件後、古口被告本人から事件の見届け役になったことを聞いた」とする知人男性の供述は信用できる―などとし関与を認定した。
 しかしN被告を実行犯とする供述については「証拠能力」がないとあらためて指摘。事件後、N被告が組織内で昇格した、などの状況証拠についても「実行役を果たしたとまで推認することはできない」と検察側の主張を退けた。
備 考
 一緒に殺人容疑で逮捕された暴力団組長は「共謀関係を立証する証拠が足りない」として処分保留とされた。
 野島裁判長は「F被告から『N被告がとどめを撃った』と聞いた」とする検察側証人の証言は伝聞証拠に当たるとして、証拠採用を却下していた。弁護側は2005年9月12日にN被告の保釈を申請し、13日に保釈された。
 3被告に無期懲役が求刑されたが、N被告は無罪判決、F被告は懲役20年の判決。N被告はそのまま確定した。

 被告側は控訴した。2007年10月5日、福岡高裁にて被告側控訴棄却。2008年8月20日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
安藤好美(56)
逮 捕
 2005年2月5日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入
事件概要
 神奈川県大磯町の無職安藤好美被告は借金の返済に行き詰まり、2005年2月4日午後4時頃、同町に住む知人女性(当時55)方に侵入。たんすなどを物色中に女性の帰宅に気づき逃走したが、連れ戻された。「逮捕されれば家庭が崩壊する」と殺害を決意。午後5時頃、練習用ゴルフクラブと菜切り包丁、パン切り包丁、アイロンで206箇所以上、女性を殴ったり、切りつけたりして殺害した。
 午後5時20分頃、帰宅した女性の夫(当時56)に見つかり、「中で奥さんが大変なことになっている」と言い残して、立ち去ったが、夫が約300メートル追いかけて連れ戻した。安藤被告は当初、大磯署員に「居間にいたら、二人組の外国人の男が『マネー、マネー』と押し入って来て、棒で頭を殴られた。自分は逃げ出し近くの畑に隠れた」などと被害者を装っていたが、女性宅に男らの足跡がなかったことや、服や靴に血液が付着していたことなどを追及され、自供した。
 安藤被告にパチンコ代や下着の訪問販売活動費などで約1,250万円の借金があった。
裁判所
 横浜地裁小田原支部 青木正良裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月12日 無期懲役
裁判焦点
 安藤被告は殺意を否認し、弁護側は住居侵入と窃盗未遂、傷害致死を主張した。
 青木裁判長は「酌量の余地はまったくない」と指弾した。
備 考
 被告側は控訴した。2006年11月9日、被告側控訴棄却。上告せず確定。

氏 名
狩野明男(50)
逮 捕
 2003年10月9日(窃盗・窃盗未遂容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、窃盗他
事件概要
 京都市山科区音羽の住宅リフォーム会社社長、狩野明男被告は、2002年10月31日午後8時から翌朝までの間に、宇治市の自宅にいた会社員の男性(当時52)を殺害、キャッシュカードや現金10数万円を奪った。さらに預金口座から現金約300万円を引きだした。
 遺体は見つかっておらず、殺害方法も特定されていない。
裁判所
 京都地裁 上垣猛裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月12日 無期懲役
裁判焦点
 狩野被告は、別の男性の家での住居侵入と窃盗罪は認めたが、強盗殺人について「覚えがない」と否認し、公判では黙秘している。
 検察側は論告求刑公判で、大津市内で発見された男性の軽乗用車内から焼けた骨片と筋肉片が見つかり、付着していた血痕のDNAが男性と一致。さらに骨片は肋骨の一部で、これを切られた人物は確実に死亡している。勤務状況などから病死や自殺の可能性はない……として、男性が何者かに殺害されたと断定。
 殺害直後の同1日午前11時ごろに男性のキャッシュカードで預金312万円を引き出した人物が、顔を隠しているものの、防犯カメラに映った身体・姿勢とダウンベスト、腕時計の特徴が、狩野被告のものと一致している。男性の室内と車内で見つかった獣毛と、狩野被告の飼い犬の毛がDNA鑑定で一致した。狩野被告は1998年7月に18日間、男性方のリフォーム工事を請け負って生活状況を知り、狩野被告が認めている別の窃盗事件の被害者方もかつての工事先だった。以上のことから、狩野被告が犯人である状況証拠は十分であるとした。
 さらに、狩野被告は事件直後に借金を返済していること、警察の内偵捜査が始まって間もなく、その返済データを改ざんしたこと、アリバイが成立しないこと、所有する倉庫から550メートルの距離で、かつて自らが車を不法投棄した場所に男性の車も遺棄されたなどと指摘した。
 最終弁論で弁護側は、いまだに遺体が発見されていないことから「死因も殺害方法も不明なうえ、被告以外の者に犯行の機会がなかったことも立証されていない」「事件性そのものに疑問がある。殺害の実行行為や殺意の証明が不可能で、強盗殺人罪は成立しない」と主張。骨片については「DNA鑑定の手法に理論化された実績がなく、信頼性はない」とした。「被害者のキャッシュカードを使って現金を引き出した人物が、被告と一致する」とする検察側の主張に対し、「防犯ビデオの人物と被告が同一人物とは断定できない」「現金を引き出した人物と強盗殺人の犯人が同じだという証明がない」「被告の写真と比べる時に、角度の修正がなされておらず、信用できない」と指摘した。
 上垣裁判長は「狩野被告と犯行との結びつきを示唆する間接事実が積み重なっている」とした。判決理由で上垣裁判長は、車内の肋骨の一部について、「DNA鑑定は骨片に付着した血液を調べたもので、骨片が被害者の体の一部とは断定できない」とする弁護側の主張を退け、被害者の骨と断定。その上で「この骨片が切り取られると死に至る。発見状況から何者かが殺害の故意を有していたと強く推認できる」と判断した。飼い犬の毛とDNA型が一致した点について、弁護側は1998年に狩野被告が被害者方のリフォーム工事を行った事実を示し、「犯行以外の機会に犬の毛が落ちる可能性も排除できない」と反論していたが、上垣裁判長は「相応の意味がある」と述べた。DNA型の一致のほか、被害者の預金口座から現金を引き出した防犯ビデオの人物と狩野被告との類似性や、事件直後に同被告が借金145万円を返済している点など、犯行との結びつきを示唆する間接事実を挙げ、「もはや単なる偶然にすぎないということはできない」と判断。そのうえで「具体的な殺害方法は判然としないが、遺体を運搬した上で焼損、投棄しており極めて残忍な犯行」と指弾した。
備 考
 遺体が見つからなかったため、窃盗罪で起訴。強盗殺人の審理は2004年2月6日より行われている。検察側は論告で、画像投影機を使用して説明した。
 被告側は控訴した。2007年3月28日、大阪高裁で被告側控訴棄却。2008年4月15日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
平野孝明(26)
逮 捕
 2005年8月23日(窃盗容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 名古屋市の無職平野孝明被告、弟で無職H被告、アルバイト店員W被告は、2005年7月30日未明、徒歩で帰宅中だった名古屋市に住む飲食店員の女性(当時67)を自宅近くの路上で襲い、乗用車に乗せて拉致した上で現金42,000円とキャッシュカードを強奪、暗証番号を聞き出した。その後、車で岐阜の山中まで連れて行き、バットで頭を殴って殺害し、遺体を沢に捨てた。その後、女性の自宅から約60万円を奪い、キャッシュカードで現金166万円を引き出した。
 三人は二年ほど前に同県尾張地方の運送会社で同僚だった。W被告が8月20日、「怖くなった」と県警に自首した。
裁判所
 名古屋地裁 天野登喜治裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月12日 無期懲役
裁判焦点
 論告で検察側は「以前にひったくりをした4人を調査し、1人暮らしの被害者に絞り込み、綿密な計画を立て、周到な準備をするなど、態様は残忍で冷酷」と指摘。「奪った金で(3人で)温泉で遊ぶなど被害者への哀れみや後悔の念は全くみられない」と述べた。
 天野裁判長は「用意周到な計画に基づいた冷酷かつ残忍極まりない犯行で、尊い人命が理不尽に奪われた。刑事責任は極めて重大だ」とした。
備 考
 H被告(22)は求刑懲役30年に対し懲役26年の判決。W被告(21)は求刑懲役28年に対し懲役26年の判決。

 控訴せず確定と思われる。

氏 名
元少年(24 犯行当時19)
逮 捕
 2001年5月8日(4月18日に大麻取締法違反(所持)で逮捕済)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗傷人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、強盗致傷、大麻取締法違反(所持)
事件概要
 当時19歳の無職の男は2001年2月1日午後7時50分ごろ、東京都江戸川区の都営アパートの階段踊り場付近で、部屋から出てきた耳の不自由な女性(当時64)に「金を出せ」と脅し、女性に所持金がなかったため、持っていたナイフで刺した。女性は近くの知人宅に助けを求め、手話で被害を伝えた後に意識を失って死亡した。
 この事件の他、別の強盗致傷や大麻取締法違反の罪にも問われた。
 被告は逮捕後、東京家裁の少年審判で「刑事処分が相当」との決定を受けて東京地検に逆送致され、6月に起訴された。
裁判所
 東京高裁 池田修裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月16日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 殺意を否認したか?
 池田裁判長は「宿泊代ほしさの身勝手な動機で、被害者を何度も刺すなど犯行も凶悪で残忍。刑事責任は重い」と判決理由を述べた。
備 考
 2004年6月25日、東京地裁で一審無期懲役判決。

氏 名
宇都宮健介(30)
逮 捕
 2005年1月4日(自首)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、銃刀法違反
事件概要
 愛媛県西伊予市の無職宇都宮健介被告(当時29)は2005年1月4日午後8時半頃、停車させた乗用車内で妻(当時23)の首を絞めて失神させた。さらに午後8時50分頃、包丁(刃渡り約14cm)で首を刺し殺害。長男(当時5ヶ月)も首を切りつけて殺害した。
 午後9時半頃、自ら110番に通報。駆けつけた宇和署員が宇都宮被告を逮捕した。宇都宮被告は「家庭内でトラブルがあり、かっとなってやった」と供述している。
 宇都宮被告は妻にたびたび暴力を振るっていたため、妻は2004年11月下旬に宇和署へ暴力を訴えていた。さらに相談の2日後には両太ももを打撲し1週間から10日間のけがを負ったとする医師の診断書を持参し、傷害容疑で被害届を提出。しかしさらに2日後には「夫とよりを戻した」として届を取下げていた。
裁判所
 松山地裁 前田昌宏裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年5月16日 無期懲役
裁判焦点
 論告で検察側は「2人の尊い生命が奪われており、被害結果は重大」と強調。包丁を事前に用意し、妻子の首に突き刺した行為を重視し「周到な計画性が認められ、残忍、執よう、極めて強固な殺害意思に裏打ちされている」と指摘した。
 また、過去にも強盗傷害事件で矯正教育を受けていたことに言及。「被告の危険な性格は改善されず、むしろ凶悪化している。今後、さらなる教育を施しても改善は不可能」と断罪した。
 弁護側は「死刑は重すぎる。時間をかけても更生させるべき」として、無期懲役か有期刑の判決を求めた。
 前田裁判長は判決理由で「家庭内暴力が原因で離婚を切り出されたのに、妻だけ(夫婦の)借金を逃れようとしていると責任転嫁し恨んだ。生まれたばかりのわが子の人格も無視するなど、動機は自己中心的で独り善がり」と指摘。その上で「情状を少しでも良くしようと自己保身のため自首した」と検察側が減軽要素として評価しなかった被告の自首行為について「そこまで冷徹な計算があったとまでは考え難い」「捜査を容易にした面は明らか」と一定評価した。また検察側が長男の殺害を「身勝手な犯行」と断罪する一方、刺殺する際「顔を見ることができなかった」などとためらった行動を挙げ、確固たる殺意のあった妻への感情とは異なるとした。
備 考
 検察側は控訴した。2007年2月13日、高松高裁で検察側控訴棄却。上告せず確定。

氏 名
丸林寿人(66)
逮 捕
 2004年11月8日(現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗殺人未遂他
事件概要
 無職丸林寿人(まるばやしひさと 当時63)被告は、2003年11月5日午後11時25分ごろ、東京都荒川区にある居酒屋で飲食代7000円の支払いを免れようと、調理場にいた店長の男性(当時53)を殺害。現金約7000円が入っていた手提げ金庫を奪った。丸林被告は、店内に最後まで客として残っていた。
 丸林被告は事件直後の11月8日未明、京都市の飲食店で代金を支払わず店を出て、追い掛けた男性従業員2人の腹を刃物で刺して重傷を負わせたとして、殺人未遂の現行犯で京都府警に逮捕された。強盗殺人の疑いでは、2004年5月11日に逮捕された。
 また丸林被告は、2003年10月、名古屋市中区にあるスナックに客を装って入店し、女性経営者(当時42)を包丁で脅して、現金約8万円や預金通帳が入った財布を奪った。丸林被告はその後、「預金通帳に数百万円の残高があり、女性からこんなにもとってはいけないと考えた」と考え、現金以外の財布類を宅配便で女性に返送し、強盗容疑で2004年1月26日に逮捕された。
 丸林被告は2003年2月頃から、飲食先の店の外で携帯電話をかけるふりをしてそのまま逃走する手口を用い、全国各地で無銭飲食を繰り返していた。
裁判所
 東京地裁 栗原正史裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年5月16日 無期懲役
裁判焦点
 丸林被告は事実関係を認めているが、殺意を否認している。
 検察側は論告で「無銭飲食のために人の命を奪うなど冷酷、残虐で、人間性のかけらも見られない」と指摘。「少年時から刃物による犯行で服役を繰り返すなど犯罪性向は根深く、極刑はやむを得ない」と述べた。
 栗原裁判長は「生命を奪うことへのためらいや憐憫の情などをまったく感じさせず、極めて悪質な犯行」と非難。「強盗事件などで人生の大半を施設で過ごしたのに、出所後約8カ月で一連の事件を起こした。矯正可能性は見いだし難い」と指摘した。一方、死刑としなかった理由について、「極刑にすべきだという検察官の意見には十分な理由があるが、被告の一連の犯罪で殺害されたのは1人で、刺された他の2人については未遂にとどまっている。計画的とも認められない。死刑選択にはちゅうちょを感じる。無期懲役に処せられれば、再び社会に復帰して凶行に及ぶ恐れはほとんどない」と述べた。
備 考
 検察・被告側は控訴した。2006年12月20日、検察・被告側控訴棄却。2007年1月、上告取下げ、確定。

氏 名
堤美由紀(46)
逮 捕
 2002年4月28日((3)事件の容疑。(1)の事件で逮捕済?)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、詐欺
事件概要
 同じ看護学校出身である元看護師吉田純子被告、治験コーディネーター堤美由紀被告、看護師池上和子被告、元看護師IH被告は共謀して、以下の事件を起こした。
  1. 堤被告の同僚の看護師が点滴を誤って投与したことを知った吉田被告は1997年3月20日、堤被告を介してその看護師を呼び出し、患者に異常がなかったことを知りつつ患者の家族と交渉すると偽って数日後に500万円を騙し取った。さらに1か月後、患者が亡くなった(点滴ミスとは無関係)ことに付け込み、さらに500万円を騙し取った。そして誓約書を書かせ、毎月4万円を20年間払わせようとしたが、不信に思った看護師が弁護士に相談し、これは失敗した。しかし弁護士からの返済要求について吉田被告は激しい剣幕で反論し、結局有耶無耶となった。(詐欺罪)
  2. 吉田被告から金を巻き上げられつつも心酔していた池上被告は、吉田被告から夫(当時39)について「愛人がいる」「保険金目的で(池上被告を)殺そうとしている」などと虚偽の事実を告げられて殺害を決意。吉田、堤、池上被告は1998年1月22日0時過ぎ、池上被告の夫に睡眠剤入りのビールを飲ませ、静脈にカリウムや空気を注射して殺害しようとしたが失敗。24日0時過ぎ、再び睡眠薬入りのビールを飲ませさらに睡眠剤入りのアンプルを注射して眠らせ、池上被告と堤被告が順に空気を静脈に注射して殺害。保険金約3,498万円を詐取した。吉田被告は池上被告をだまし、3450万円を手にした。(殺人、詐欺罪)。他にも吉田被告は、池上被告の夫の弟をだまして1,000万円を手に入れ、夫の会社から池上被告に毎月支給される遺族年金15万円も取り上げた。
  3. 夫の浮気癖と借金に悩み別居していたIH被告に目を付けた吉田被告はIH被告をだまし、殺害を決意させた。吉田、堤、池上、IH被告は1999年3月27日、IH被告の夫(当時44)に洋酒や睡眠薬を飲ませ、鼻からチューブで大量の洋酒を注入し、さらに空気を静脈に注射して殺害。保険金約3,250万円を詐取した。保険金のすべては吉田被告にわたっている。また、堤被告の報酬300万円は保険金と別口でIH被告に払わせ、吉田被告が受け取った。(殺人、詐欺罪)
  4. 吉田、池上、IH被告は柳川に住む堤被告の母(当時82)が持っている預金に目を付け、2000年5月29日、母親の家に入って殺害しようとしたが、抵抗されて失敗した。(強盗殺人未遂、住居侵入罪)。吉田被告は襲撃失敗に対する制裁金として、IH被告から300万円を奪い取っている。
  5. IH被告の実家の土地に吉田被告が目を付けたことを恐れたIH被告は2001年、夫殺害などを警察に相談しようとした。そのことに腹を立てた吉田被告は池上被告とともにIH被告に脅迫状を送るなど、自首を思いとどまるように脅した。(脅迫罪)
裁判所
 福岡高裁 浜崎裕裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年5月18日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 検察側は、吉田被告とともに事件を主導したとして、死刑を求めていた。
 堤被告は「保険金を取ろうとは思っておらず、吉田被告の巧みなうそや執拗な働きかけで犯行に加わらざるを得なかった」と量刑不当を主張していた。
 浜崎裁判長は、「吉田被告の巧妙なうそや働きかけで犯行に引きずり込まれており、犯行時は吉田と対等の関係ではなかった」としたうえで、「2人の殺害を保険金目当てと知った上で行っていた」と述べた。また「医療知識を悪用して殺害を実行した責任は極めて重大」「吉田被告の虚言を信じ込まされ、操られたという面はあるが、虚言は容易に作り話と分かる稚拙な内容だった。被告の果たした役割は大きい」とした上で、「現在では反省、後悔の念を深めている。死刑とするにはちゅうちょせざるを得ない」と述べた。
備 考
 2004年8月2日、福岡地裁で一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
川原崎康広(44)
逮 捕
 2000年5月31日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺、公正証書原本不実記載・同行使他
事件概要
 金融ブローカー川原崎被告は、5000万円の保険金を得ようと不動産ブローカー石川真澄被告(2002年5月9日、一審無期懲役判決、確定)と共謀。多額の報酬を約束して他の3人(実行犯が懲役16年、その他は8年が確定)を仲間に引きずり込んだ。東京都江東区に住む元飲食店店員(当時29)を飲食店店員の女性(公正証書原本不実記載・同行使で起訴)と偽装結婚させたうえ、2000年4月11日未明、男性を東富士五湖道路に連れ出し、交通事故を装って乗用車ではねて殺した。保険金の請求は行われなかった。石川被告は偽造した宅地権利証を使って1999年12月、横浜市内の金融業者から約4000万円をだまし取ったとして詐欺容疑でも指名手配されており、この返済が動機になった。
裁判所
 最高裁第一小法廷 横尾和子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月22日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 不 明(殺意の存在を否定か?)
備 考
 2002年12月5日、甲府地裁(山本武久裁判長)にて一審無期懲役判決。2004年9月14日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
アンドレ・ルイス・アキラ・ド・アラマル(34)/ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス(32)
逮 捕
 2005年6月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗他
事件概要
 埼玉県草加市の飲食業伊藤萬壽男被告、東京都荒川区の無職佐々木彰被告、住所不定無職城後健一被告、住所不定無職中村謙二被告、群馬県藤岡市の無職I被告、アルゼンチン国籍で群馬県伊勢崎市の無職ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ブラジル国籍で群馬県太田市のレンタルビデオ店手伝いド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告は共謀し、強盗殺人を計画。
 2004年12月7日午前4時頃、主犯格の伊藤被告と佐々木被告、城後被告、アンドレス被告、アキラ被告の5人が、群馬県作詞の無職女性宅に押し入り、同居していた会社員の男性(当時49)の首を絞めて殺害。キャッシュカードや現金5,000円、指輪など貴金属計20数点(時価合計48万円相当)を奪った。
 伊藤、佐々木の両被告と、中村、城後、アキラ、ミウラの4被告は、それぞれ別の窃盗グループを構成。群馬県前橋市に住む女性は中村被告の知人、I被告は中村被告と仕事で知り合った仲という。今回の事件は、伊藤被告と中村被告が知り合って8人がグループになり、I被告が中村被告に情報を提供、計画した。
 その他、県外での強盗など7件の罪で起訴されている。
裁判所
 長野地裁 土屋靖之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月24日 無期懲役
裁判焦点
 土屋裁判長は伊藤萬寿男被告が男性の首を絞めている間、アラマル、アンドレス両被告は抵抗できないように体を押さえたと指摘。「犯行で重要な役割を果たし、刑事責任は重大」と述べた。また、弁護人は確定的殺意はなかったなどと主張していたが、アラマル被告の捜査段階での供述や、被害者の証言などの信ぴょう性は高いとして退けた。
備 考
 7人と一緒に逮捕された群馬県の女性は処分保留で釈放。佐久署捜査本部が、別の事件でだまし取ったと知りながら貴金属を質店に売ったとして、盗品等処分あっせんの疑いで再逮捕した。
 I被告は2006年2月9日、求刑無期懲役に対し懲役15年判決。佐々木彰被告、中村謙二被告は2006年4月19日、求刑通り無期懲役判決。
 両被告は即日控訴した。2006年10月11日、アラマル被告の控訴棄却。2006年10月18日、アンドレス被告の控訴棄却。2007年1月?、アラマル被告、アンドレ被告の上告棄却、確定。

氏 名
安納三久(50)
逮 捕
 2005年6月15日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 栃木県に住む無職安納被告は、2005年4月19日午前、横浜市保土ヶ谷区に住む主婦(当時56)宅に強盗目的で侵入し、女性の首などを刃物で刺して殺害し、財布を奪った。安納被告と女性は10年前からの知り合いで、安納被告は「女性に千数百万円貸していた」と供述。しかし、同被告は消費者金融などに計約1600万円の借金があり、女性宅からも同被告の60万円の借用書が見つかった。女性は長女(当時27)に「私に何かあったら安納(被告)だから」と話していた。
裁判所
 横浜地裁 鈴木秀行裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月24日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は論告で、安納被告が、知人に「いざとなったら殺してでも(金を)取ってくる」と言っていたと指摘し、「金のために人の命を奪う残忍な犯行だ」とした。一方、弁護側は、「強盗目的ではなく殺意もなかった」として強盗殺人罪は成立しないと主張するとともに、主婦が先に安納被告の足を包丁で刺したとして、殺害は正当防衛だと主張している。
 鈴木裁判長は「被告は長男の大学授業料の納付期限を翌日に控え、金に困っており、主婦宅に刃物を3本持って侵入し、入念に物色している」として同罪を認定。「身勝手で自己中心的な犯行」と指摘した。
備 考
 被告側は控訴した。2006年10月5日、被告側控訴棄却。2006年12月6日、上告取下げ、確定。

氏 名
伊藤萬壽男(67)
逮 捕
 2005年6月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗他
事件概要
 埼玉県草加市の飲食業伊藤萬壽男被告、東京都荒川区の無職佐々木彰被告、住所不定無職城後健一被告、住所不定無職中村謙二被告、群馬県藤岡市の無職I被告、アルゼンチン国籍で群馬県伊勢崎市の無職ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ブラジル国籍で群馬県県太田市のレンタルビデオ店手伝いド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告は共謀し、強盗殺人を計画。
 2004年12月7日午前4時頃、主犯格の伊藤被告と佐々木被告、城後被告、アンドレス被告、アキラ被告の5人が、群馬県作詞の無職女性宅に押し入り、同居していた会社員の男性(当時49)の首を絞めて殺害。キャッシュカードや現金5,000円、指輪など貴金属計20数点(時価合計48万円相当)を奪った。
 伊藤、佐々木の両被告と、中村、城後、アキラ、ミウラの4被告は、それぞれ別の窃盗グループを構成。群馬県前橋市に住む女性は中村被告の知人、I被告は中村被告と仕事で知り合った仲という。今回の事件は、伊藤被告と中村被告が知り合って8人がグループになり、I被告が中村被告に情報を提供、計画した。
 その他、県外での強盗など7件(現金計680万円や物品計約1,000万円相当)の罪で起訴されている。
裁判所
 長野地裁 土屋靖之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月25日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は論告で「被告は強窃盗集団のリーダーで、いずれの犯行でも実行犯として重要な役割を果たした」と指摘。伊藤被告ら7人が起訴された佐久市の事件については「共犯者が押さえ付けた男性を腕や衣類で絞め上げた執拗かつ残酷な犯行」とした。
 最終弁論で弁護側は「被告は幼いときに両親を亡くし非合法の世界で生き、多額の借金も抱えた。殺害行為では前もって凶器を準備したわけではない」とした。伊藤被告は「大罪を犯した。肝臓がんで余命は長くなく、刑期を全うできない。極刑を申し渡してほしい」と述べた。
 土屋裁判長は「多額の借金の返済などに困り、手っ取り早くまとまった金を得るため各犯行に関与し、首謀者として重要な役割を果たした」と認定。「(佐久市の事件では)確定的殺意を持って男性の殺害行為を直接行っており、責任は共犯者の中で最も重い。反省の態度や年齢、健康状態などを考慮しても無期懲役は免れない」と述べた。
備 考
 7人と一緒に逮捕された群馬県の女性は処分保留で釈放。佐久署捜査本部が、別の事件でだまし取ったと知りながら貴金属を質店に売ったとして、盗品等処分あっせんの疑いで再逮捕した。
 I被告は2006年2月9日、求刑無期懲役に対し懲役15年判決(控訴)。佐々木彰被告、中村謙二被告は2006年4月19日、求刑通り無期懲役判決(控訴)。アンドレ・ルイス・アキラ・ド・アラマル被告、ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告は2006年5月24日、求刑通り無期懲役判決(控訴)。
 伊藤被告は係官3人に付き添われ、車いすで入廷。判決を聞き、うなずいた。弁護人は公判後、「被告は起訴事実を認め、判決を覚悟していた。病気も患っており、控訴はしないと思うが、相談して決めたい」と話した。
 被告側は控訴した。2006年12月4日、被告側控訴棄却。2007年4月9日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
浅田和弘(30)
逮 捕
 2004年5月4日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、銃刀法違反
事件概要
 焼肉店従業員浅田和弘被告は2003年11月26日午前4時25分ごろ、浅田被告が働く焼肉店経営の男性(当時28)の自宅前路上で、営業を終えて帰宅した男性の背後から拳銃2発を発射して殺害し、現金50万円などが入ったバッグを奪った。浅田被告は男性から預かった約500万円を紛失し、返済を迫られていた。
裁判所
 大阪地裁 和田真裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年5月25日 無期懲役
裁判焦点
 浅田被告は捜査、公判を通じ無罪を主張した。凶器とされる拳銃は見つかっていない。
 検察側は論告で、「犯行前後の言動などからも、浅田被告の犯行は明らか」「至近距離から連続発射するなど残忍で、冷酷な犯行。刑事責任は極めて重大で、生涯をかけて矯正施設内で償いの日々を送らせることが必要不可欠」と強調した。
 和田裁判長は「一方的に恨みを募らせた身勝手で短絡的な犯行。同情の余地はない」と述べた。浅田被告は無罪を主張していたが、和田裁判長は両被告を仲介した知人男性2人の供述は信用性が高いと判断。浅田被告について「アリバイ工作をするなど周到で悪質だ」と述べた。
備 考
 浅田被告に拳銃を渡した男性は同日、懲役4年6月(求刑懲役6年)が言い渡された。2007年4月20日、大阪高裁は男性に対して無罪を言い渡した。また、別の交通事故での業務上過失傷害罪で禁固1年を言い渡した。控訴審で、男性が受け渡し日に神戸市内の中古車オークション会場にいたことが判明。陶山博生裁判長は「拳銃の受け渡し日時のアリバイがほぼ成立している」と述べた。
 被告側は控訴した。2007年6月15日、大阪高裁で一審破棄、差戻し判決。陶山博生裁判長は「拳銃入手の経緯などの審理が不十分で被告を犯人とする立証が尽くされていない」と述べた。検察・被告側上告。2008年11月10日、最高裁で二審判決破棄、大阪高裁差戻し。2010年1月21日、大阪高裁で一審判決の被告側控訴棄却。2011年4月25日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
金沢清一(54)
逮 捕
 2004年11月2日
殺害人数
 2名
罪 状
 現住建造物等放火、殺人
事件概要
 埼玉県戸田市の無職金沢被告は、元妻(当時76)を介護しながら、以前交際していた女性(当時60)と3人で暮らしていた。2004年11月1日午後11時15分ごろ、女性から「元妻と私のどっちがいいの」などと言われて腹を立て、2人が死んでも構わないと考え、灯油をまいた布団に火をつけ、住んでいた木造2階建て同アパート全7室を全焼させた。やけどを負った元妻は11月10日に、女性は12月7日に死亡した。
裁判所
 最高裁 裁判長不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月?日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で被告側は酒を飲んでいたことによる心神喪失、もしくは心神耗弱であると主張していた。
備 考
 2005年9月26日、さいたま地裁で一審無期懲役判決。2006年2月21日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
ウィリアム・リース(22)
逮 捕
 2006年1月7日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 米空母「キティホーク」乗組員で一等航空兵、ウイリアム・オリバー・リース被告は、2006年1月3日午前6時半頃、横須賀市米が浜通の雑居ビル入り口で、遊ぶ金ほしさに通勤中で同市に住む派遣社員の女性(当時56)に道を尋ねるふりをして声をかけ、バッグを手で奪い取ろうとした。しかし抵抗されたため近くの雑居ビルに引きずり込み、腹や顔を殴るけるなどして殺害、財布から現金約15,000円を奪った。
 リース被告は2日夜から事件直前まで近くの飲食店で酒を飲んでいた。また、事件後も米軍に身柄拘束されるまで、通常通り勤務し、横浜市内の知人女性宅に遊びに行くなどしていた。
 今回の事件では、米軍からの情報提供を受け、県警が6日夕から米海軍横須賀基地内での事情聴取を開始。7日午後2時すぎに同容疑で逮捕状を取った。その後、わずか3時間で日本政府と米国が引き渡しに合意、県警が逮捕に踏み切った。過去に起訴前の引き渡しが実現した3例では、要請から逮捕まで数日かかったケースもあり、異例の早期引き渡しとなった。6日には在日米海軍司令部のケリー司令官が、松沢成文知事や同市の蒲谷亮一市長を訪問、謝罪している。
裁判所
 横浜地裁 小倉正三裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月2日 無期懲役
裁判焦点
 リース被告は初公判の罪状認否で「殺意があったわけではないが、女性を殺してしまった」と述べたが、弁護人は「確定的故意はないと理解しているが、未必の故意は否認しない。起訴事実は争わない」とした。
 検察側は論告で「浪費を重ねた末の遊興費欲しさの身勝手な犯行。非力な被害者に一方的で執拗な攻撃を加え、残虐で冷酷極まりない。惨殺された被害者の無念は筆舌に尽くし難い」と述べた。
 弁護側は起訴事実を認めたが、「強盗目的は当初なく、殺意はなかった」「否定しても供述調書で認めてもらえなかった」と一部を否認した。
 その上で「本人は罪深さを認識している」「激高しての犯行で計画的ではない」「基地の司令官らが葬儀に参列するなど、米国も重く受け止めている。補償手続きも進行中だ」として情状酌量を求めた。
 小倉正三裁判長は「被害者が身動きしない状態になるまで約10分間暴行を続けた残忍極まりなく、冷酷非道な犯行」と非難。その上で、「現役米軍兵士の凶悪犯罪として、基地のある地域住民に多大の不安を与え、社会的影響も大きく、刑事責任は非常に重大」と述べた。また被告が殺意を否認したことについて小倉裁判長は「不自然、不合理な弁解をしており、供述態度から真摯に反省しているとはうかがわれない」と指摘した。さらに「被害者は道を尋ねられ善意で応じ、いきなり襲われた。非常な恐怖と想像を絶する苦痛の中で絶命し、再婚予定の人生の将来を奪われた」とも述べた。
備 考
 1995年の日米地位協定の運用改善以来、起訴前の強盗殺人容疑での身柄引き渡しは初めて。
 判決言い渡しの後、被害者の弟(56)は「殺害された姉の顔は、弟の私でも分からないほどぐちゃぐちゃだった。極刑をもって償ってほしいと思っていたので残念だ。でも、一番残念なのは姉だと思う」と話した。
 控訴せず、確定。
 被害女性の遺族が2006年10月20日、無期懲役刑が確定したウィリアム・リース受刑者と日本政府を相手取り、総額約2億500万円の損害賠償を求めて横浜地裁に提訴した。事件時は公務時間外だったが、遺族側は「当時は米兵による事件が連続発生していて、犯罪の発生が予測できたのに飲酒の規制など必要な措置を怠った」などと米軍側の監督義務違反を指摘。「在日米軍の構成員による公務上の不法行為は、日本政府が損害賠償責任を負う」と定めた日米地位協定に伴う民事特別法に基づき、日本政府も被告とした。
 2009年、横浜地裁は米兵に約6,500万円の賠償を命じた。後に確定。しかし支払い能力は無いため、被害者の遺族は2017年11月17日、「見舞金」として米政府が約2,800万円を支払う内容の示談を受け入れた。日米間の合意で、差額は日本政府が支払う形になる。米側は、元米兵を「永久に免責する」ことも示談の条件として求めていたため、交渉が長引いた。

氏 名
中筋賢(30)
逮 捕
 2005年3月16日(6月2日の事件について 3月2日、銃刀法違反で起訴済)
殺害人数
 0名
罪 状
 殺人未遂、銃刀法違反他
事件概要
 福岡市小倉南区の暴力団幹部中筋賢(なかすじ・けん)被告はほかの組員と共謀し、元暴力団組員の殺害を計画。2004年6月2日早朝、小倉北区のアパートに住んでいた会社員の男性(当時27)を元組員と勘違いし、会社員の胸や腹をナイフで刺し、約3週間のけがをさせた。人は刺した後で人違いに気づき、「間違えた。すまんやったのう」と言い残して逃げたが、再び戻り、警察に通報するなと脅した。
 6月11日夜、組関係者の男性被告(控訴中)とともに小倉南区の路上で、知人男性(当時21)にシンナーを浴びせ、ライターで服に火をつけた。男性は全身やけどを負い現在も意識不明の重体。
 6月22日未明、ほかの組員と共謀し、小倉南区の建設会社事務所の出入り口に向け、拳銃2発を発射した。
 6月27日未明には、小倉北区の建設会社営業所のシャッターに拳銃3発を発射した。
 中筋被告は計6事件で起訴された。
裁判所
 福岡地裁小倉支部 野島秀夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月2日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は「短期間で連続的に凶悪犯罪を起こしており、今後も犯罪に手を染める可能性が高い」とした。
 弁護側は一件の殺人未遂について「被告は関与していない」と無罪を主張した。
 野島秀夫裁判長は「人間の生命を軽視する暴力団特有の理不尽な考えに基づくものであって犯行動機に酌量の余地は皆無である」とした。
備 考
 被告側は控訴した。2007年2月2日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
八巻健二(35)
逮 捕
 2003年11月13日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人
事件概要
 千葉県成東町の運送業八巻(やまき)健二被告は、従業員の男性(当時25)の保険金殺人を計画。男性の元妻の母親(39 一審懲役9年が確定)、元妻のいとこの男性(26 一審懲役13年が確定)と共謀。男性に、元妻との間に生まれた長男を受取人とする3000万円の生命保険に加入させた上、殺害して保険金を入手しようと計画。「3人で1000万円ずつ山分けしよう」と相談した。2004年9月15日午前0時頃、千葉県市原市内の山林で、八巻被告が男性の胸や腹を刃物で刺し、殺害した。保険金は支払われていない。
裁判所
 最高裁第一小法廷 泉徳治裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月5日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 上告理由は不明。一・二審では殺害の実行行為はしていないと主張。
備 考
 2005年5月19日、千葉地裁で求刑通り一審無期懲役判決。2005年12月1日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
竹島信二(53)
逮 捕
 2003年9月12日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人他
事件概要
 暴力団員竹島信二被告は2003年8月31日夜、石川県金沢市のレストランで、同じ組の暴力団員4人(2人は二審懲役20年判決)と共謀。別の暴力団幹部ら2名を日本刀や包丁などで殺害した。竹島被告が所属する暴力団と、殺害された組員の暴力団との間には、金銭トラブルが生じていた。
裁判所
 最高裁第二小法廷 今井功裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月5日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2005年3月25日、金沢地裁で求刑通り一審無期懲役判決。2005年9月29日、名古屋高裁金沢支部で被告側控訴棄却。

氏 名
城後健一(30)
逮 捕
 2005年6月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗他
事件概要
 埼玉県草加市の飲食業伊藤萬壽男被告、東京都荒川区の無職佐々木彰被告、住所不定無職城後健一被告、住所不定無職中村謙二被告、群馬県藤岡市の無職I被告、アルゼンチン国籍で群馬県伊勢崎市の無職ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ブラジル国籍で群馬県県太田市のレンタルビデオ店手伝いド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告は共謀し、強盗殺人を計画。
 2004年12月7日午前4時頃、主犯格の伊藤被告と佐々木被告、城後被告、アンドレス被告、アキラ被告の5人が、群馬県作詞の無職女性宅に押し入り、同居していた会社員の男性(当時49)の首を絞めて殺害。キャッシュカードや現金5000円、指輪など貴金属計20数点(時価合計48万円相当)を奪った。
 伊藤、佐々木の両被告と、中村、城後、アキラ、ミウラの4被告は、それぞれ別の窃盗グループを構成。群馬県前橋市に住む女性は中村被告の知人、I被告は中村被告と仕事で知り合った仲という。今回の事件は、伊藤被告と中村被告が知り合って8人がグループになり、I被告が中村被告に情報を提供、計画した。
 その他、県外での強盗など7件(現金計680万円や物品計約1000万円相当)の罪で起訴されている。
裁判所
 長野地裁 土屋靖之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月8日 無期懲役
裁判焦点
 城後被告は初公判で「殺意はありませんでした」と起訴事実の一部を否認し、弁護側も、強盗殺人罪でなく強盗致死罪を適用すべきと主張した。
 土屋裁判長は「被害者の体を押さえつけて殴るなど、犯行で重要な役割をした」とした。
備 考
 7人と一緒に逮捕された群馬県の女性は処分保留で釈放。佐久署捜査本部が、別の事件でだまし取ったと知りながら貴金属を質店に売ったとして、盗品等処分あっせんの疑いで再逮捕した。
 I被告は2006年2月9日、求刑無期懲役に対し懲役15年判決(控訴)。佐々木彰被告、中村謙二被告は2006年4月19日、求刑通り無期懲役判決(控訴)。アンドレ・ルイス・アキラ・ド・アラマル被告、ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告は2006年5月24日、求刑通り無期懲役判決(控訴)。伊藤萬壽男被告は2006年5月25日、求刑通り無期懲役判決(控訴)。
 被告側は控訴した。2006年11月27日、被告側控訴棄却。2007年2月?、被告側上告棄却、確定。

氏 名
辰力正雄(57)
逮 捕
 2003年9月1日(2002年8月24日、詐欺容疑で逮捕、起訴。2003年7月14日、放火未遂容疑で逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反他
事件概要
 指定暴力団住吉会系組長辰力被告は上部団体の会長矢野治被告(殺人罪などで公判中)らと共謀。2002年2月25日午前、東京都文京区の日本医科大学付属病院の集中治療室で同会系の組長(当時54)の頭部などに拳銃5発を発射し、殺害した。また、同年3月1日、前橋市内の指定暴力団稲川会系元総長宅を襲撃するなどした。
 組長は前日、東京都内の路上で銃撃され、同病院に搬送されたていた。
 都内で2001年8月、同会幹部が指定暴力団稲川会系組員に射殺され、辰力被告らは報復を計画したが、組長が抜けようとしたとされる。
 一連の抗争は、市民3人が巻き添えとなった2003年の前橋市のスナック乱射事件につながった。
裁判所
 東京地裁 飯田喜信裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月9日 無期懲役
裁判焦点
 辰力被告は起訴事実を否認していた。
 飯田裁判長は「医師らが巻き添えになる可能性があった。犯行の悪質性は際立っている」「裏切り者は殺すという暴力団に特有な論理に基づく動機に、許容の余地はみじんもない」と指弾した。
 無罪主張について飯田裁判長は関係者の証言から、同被告が矢野治被告の指示で射殺を実行したと認定。事件の背景について、「対立する組幹部の襲撃に失敗した組長の制裁と口封じが目的と推認できる」とした。
備 考
 被告側は控訴した。2006年11月1日、控訴取下げ、確定。

氏 名
高橋義政(26)
逮 捕
 2005年1月30日(公務執行妨害容疑)
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗殺人、殺人、住居侵入、銃刀法違反他
事件概要
 静岡大生高橋義政被告(事件当時24)は、末期ガンだった知人女性が2003年1月に静岡市内のクリニックで死亡したため、クリニックの医師に殺意を抱いた。2005年1月28日午後5時頃、クリニックに行ったが院長夫妻が不在であったため、クリニックの2階にあり、クリニックの医師の妻が経営している健康商品販売店に侵入。顔を見られたと思いこんで従業員の女性2名(当時60、当時57)の首を刃物で切りつけて殺害、売上金約6万6000円を奪った。
 2005年1月29日に静岡中央署の捜査本部は高橋被告から任意で事情聴取。30日未明、高橋被告が聴取中に捜査員に暴力をふるったとして現行犯で逮捕した。起訴後、静岡中央署は高橋被告が販売店近くで理由なくナイフ1本を携帯した銃刀法違反(携帯違反)の疑いで、2月18日に再逮捕。そして強盗殺人容疑で3月18日に逮捕した。
 直接証拠はなく、高橋被告は逮捕時に犯行を否認した後は黙秘。弁護側も無罪と捜査の違法性を訴える予定であったが、6月23日、静岡地裁の初公判で高橋被告は殺人を認めた。
裁判所
 静岡地裁 竹花俊徳裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年6月12日 無期懲役
裁判焦点
 高橋被告は、初公判で、強盗目的について否認している。
 検察は「医院と店の関係者を殺して金を奪おうとした極めて計画的な犯行で、たまたま勤務していた2人の命を奪った身勝手な動機に酌量の余地はない」として死刑を求刑した。
 弁護側は最終弁論で、任意の事情聴取時の公務執行妨害と傷害罪について「警察官の違法行為に対する正当防衛だ」などとして罪の一部を争った。また「金を取ったのは偽装で強盗目的はなかった」「高橋被告が子ども時代に父親から虐待を受け、母親もそれを放置したことが、事件に影響している」と主張。懲役20年が適当と反論した。
 判決で竹花裁判長は「医師が(被告が慕った)知人女性を殺したわけでもないのに、復讐のために抹殺を考えたのは、あまりにも独善的」とし「復讐の対象ではない2人の首を切り裂いて殺害し、現金を奪った冷酷、残忍な犯行で、遺族の処罰感情も峻烈」と述べた。しかし、生い立ちに触れて「実父の虐待と愛情欠如の下で成長し、いじめを受け続けたという劣悪な成育環境が人格形成に悪影響を及ぼした」と指摘。前科前歴がない点や遺族への謝罪なども有利な情状に挙げ、「矯正可能性がないとは言えない」とした。
 強盗殺人の成否については、女性(当時57)殺害後、行きずりの強盗の犯行に見せ掛けるため、もう1人の女性(当時60)から現金保管場所を聞いた上で殺害、金を奪ったとして、殺人罪と強盗殺人罪が成立するとした。ただし、「現金を奪ったのは物取りの犯行に見せかけるため」とする弁護側主張を認め、物色した跡のある現場に多額の現金が残っていたことから「典型的強盗殺人事件とは趣を異にしている」とした。
 参考人聴取の際に暴れ、警察官にけがを負わせたとして起訴された公務執行妨害などの罪については、判決は「行為は違法な警察官の行為に対するもの」とし、正当防衛が成立するとして無罪とした。
備 考
 高橋被告は「取り調べは長時間にわたり、自白を強要するもので違法」と、国と県を相手に損害賠償を求める訴訟を起こしたが、2006年5月に棄却された。
 検察・被告側は控訴した。2007年6月14日、東京高裁で一審破棄のうえ、無期懲役判決。2008年9月29日、検察・被告側上告棄却、確定。

氏 名
堀野雅人(60)
逮 捕
 2004年11月?(初公判:2005年1月18日)
殺害人数
 0名
罪 状
 強姦致傷、強盗他
事件概要
 千葉県茂原市の廃品回収業堀野雅人被告は、2004年5月から10月、女性を暴行するのに使うため、トラックなどの自動車計5台を盗んだ。千葉市や印西市などで、道を聞くふりをして車に乗せた女性を襲ったほか、歩いていた女性を狙うなどの手口で計7人に性的暴行を加え、そのうち5人にけがを負わせた。また、現金を奪った。掘野被告は強盗など計9件で起訴されている。
裁判所
 東京高裁 田中康郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月12日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 田中裁判長は「被害者の人格を無視した犯行は巧妙、卑劣で刑事責任は重大。地域社会に対する影響も見過ごせない」と判断した。
備 考
 堀野被告は過去にも同様の連続強姦事件で2回、計約20年服役しており、2004年5月に仮出所したばかりだった。
 2006年1月20日、千葉地裁で求刑通り一審無期懲役判決。

氏 名
陳玉興(31)
逮 捕
 2004年10月7日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、強盗致傷他
事件概要
 横浜市の無職陳玉興(ちん・ぎょくこう)被告ら8人は2004年5月22日未明、四日市市小古曽の医師の男性(65)宅に侵入。就寝中の夫妻に暴行し、現金や貴金属など計約2000万円相当を奪った。顔に粘着テープを巻かれた男性の妻(当時58)は窒息死し、男性は肋骨を折るなどの重傷を負った。
裁判所
 名古屋高裁 前原捷一郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 一審で被告側は、従属的な立場だと主張していた。
 前原裁判長は「犯行の重要な役割を担っており、(一審で同じく無期懲役を言い渡された)他の実行犯より刑を軽くする理由はない」とした。
備 考
 この事件では、実行犯の中国人7人のうち6人が逮捕、起訴された。薛経章被告は2006年1月13日、一審無期懲役判決。薛行強被告は2006年1月27日、一審無期懲役判決。林家泉被告は2006年2月24日、一審無期懲役判決。いずれも控訴中。他2被告は津地裁四日市支部で公判が続いている。
 2005年9月30日、津地裁四日市支部で一審無期懲役判決。被告側は上告した。被告側上告棄却、確定(日時不明)。

氏 名
片山直哉(36)
逮 捕
 2006年1月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人予備他
事件概要
 茨城県土浦市の派遣社員片山直哉被告は、長野県松本市に住む男性(当時76)の長男である野本富貴被告ならびに孫(いずれも殺人罪で公判中)からインターネットを通じて殺人依頼を受け、2005年12月30日午後1時頃、男性宅に侵入。ハンマーで頭などを殴り、男性を殺害し、現金200万円を受け取った。片山被告は二人と面識はなかった。
 野本富貴被告、孫は男性と同居していたが、働かないことを男性から責められ、出て行くように言われたほか、老後のためにと孫に渡していた約900万円を返すよう言われたことなどから、殺害を計画した。片山被告が2005年12月24日、インターネットの掲示板に「悩みごとを何でも引き受けます」と書き込み、見つけた野本富貴被告がメールを十数回やりとりして報酬200万円で殺害を依頼。片山被告は借金が100万円ほどあったことなどから引き受け、やりとり開始から6日後に実行した。
 また、2005年12月にも東京都の無職女性(殺人予備罪で一審懲役10月。2007年3月5日、被告側上告棄却、確定)から、インターネットを通じて弟を殺害するよう依頼された。都内にある弟の住む施設に行き、弟を呼び出そうとするなど殺害を試みたが、失敗した。
裁判所
 長野地裁 土屋靖之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月14日 無期懲役
裁判焦点
 公判では「公判前整理手続き」によって、争点は動機面に絞られた。検察側は「殺害の理由を尋ねておらず、前金を要求した。被告には多額の借金があり、金目当てであることは明らか」と主張。これに対し弁護人は「生活の困窮も切迫してはいなかった。困っている人を助けたいという気持ちもあった」と反論。片山被告に殺害を依頼した野本富貴被告との関係について触れる中で「できれば殺人をしたくなかったが、依頼人が悩んでいるので実行した」と述べた。殺人予備の事件について弁護側は「女性にも『関西で1人暮らしをすれば弟に会わずに済む』と別の解決法を提案している」と述べた。そして最後に「公正な判決を求める」とした。また、片山被告は「命を重く考え、一生重荷を背負って反省したい」などと述べた。
 判決で土屋裁判長は、片山被告が依頼者側から計220万円を受け取った事実を認定し「報酬目的で非人間的な犯行」と批判。「匿名性のあるネットの特質を最大限に悪用し、模倣性が高く責任は重大」とした。
 動機について片山被告は「小さいころいじめられ、助けてもらえなかった。今の自分なら誰かを助けられると思った」と人助けと信じて殺人計画に加担したと主張していたが、土屋裁判長は「依頼理由を問いたださず、根拠もなく受けた経緯に照らすと、人助けというのは不自然、不合理で信用できない」と退け、報酬目的と断定した。
備 考
 被告側は控訴した。2006年8月10日、控訴取下げ、確定。

氏 名
多田央(45)
逮 捕
 2004年7月5日
殺害人数
 0名
罪 状
 強盗強姦、強盗致傷、強盗強姦未遂他
事件概要
 大阪府羽曳野市トラック運転手多田央(なかば)被告は2002年12月~2004年5月、大阪市中央区や西区のマンションで、帰宅した10~30歳代の女性宅に押し入り、「殺すぞ」と脅して現金計約38万円を奪った、4件の強姦をした。他の3件は、女性が叫び声を上げるなどしたため逃げた。
裁判所
 大阪高裁 島敏男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月21日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 島敏男裁判長は「被告の犯罪傾向の強固さを考えると、一審の量刑は相当」とした。
備 考
 多田被告は1992年、5件の強盗強姦罪に問われ、佐賀地裁で懲役9年の判決を受けている。2000年2月に出所していた。
 2005年12月20日、大阪地裁で一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
落合茂(37)
逮 捕
 2004年10月26日(窃盗容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗殺人未遂、強盗強姦、窃盗他
事件概要
 東京都のゲームセンター店員落合被告は、パチスロなどにのめり込んで借金を重ね、返済のために1999年頃から空き巣を繰り返していた。2003年7月7日、茨城県水戸市に住む会社員の女性(40)方に侵入し、帰宅した女性に包丁で切り付け重傷を負わせ、何も取らずに逃げた。
 2003年7月17日、茨城県那珂市に住む会社員の女性(当時37)の自宅アパートに侵入したが、在宅していた女性に見つかったため絞殺。現金85000円とキャッシュカードを奪い、で現金166万円を引き出した。
裁判所
 東京高裁 阿部文洋裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年6月23日 無期懲役(検察側控訴棄却)
裁判焦点
 検察側は量刑不当を理由に控訴。
 阿部文洋裁判長は判決理由で「遺体を押し入れに隠すなど隠ぺい工作もしており、非常に悪質」「盗みに入った留守宅で帰宅した女性2人を殺傷した凶悪な犯行。その悪らつさ、結果の重大性、遺族の処罰感情などから死刑も十分考慮に値する」と指摘。
 その上で「殺人に計画性はなく、ためらいも感じていた」「一部反省がうかがえ、改善可能性がないとはいえず、前科がないことも考えると、極刑がやむを得ない場合に当たらない」と判断した。
備 考
 2005年10月13日、水戸地裁で一審無期懲役判決。上告せず、確定。

氏 名
満生日出男(56)
逮 捕
 2001年10月19日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人他
事件概要
 元トラック運転手満生日出男(みついき・ひでお)被告は、保険金目当てで福岡県大野城市に住む設計事務所経営者の男性(当時58)の殺害を計画。満生被告は元トラック運転手K被告に殺害を依頼。K被告はトラック運転手の2被告(いずれも逮捕監禁で起訴)と共謀し、2001年11月11日午後9時頃、福岡県春日市の事務所を出て帰宅しようとした男性を車の後部座席に押し込み、「知人から連れてくるように言われた」と言って顔を殴り、両手を縛るなどして拉致した。K被告は2被告を春日市内で降ろした後、福岡県宇美町で男性を絞殺した。
 満生被告は男性の妻と交際しており、数百万円を貸していた。そのため、満生被告が男性に生命保険を掛けるよう男性の妻に持ち掛け、満生被告が保険料を支払っていた。殺害後、妻は保険金1100万円を受け取り、一部を借金の返済に充てていた。満生被告はK被告に報酬として450万円を渡した。
裁判所
 福岡高裁 虎井寧夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月23日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 一審判決で事件の首謀者とされた満生被告は、主犯ではないと、量刑不当を理由に控訴。殺害の実行者とされたK被告は一審同様「殺害したのは第三者で、殺人については無罪」と主張していた。
 虎井裁判長は「両被告の捜査段階の自白は信用できる」と述べた。
備 考
 K被告は求刑通り懲役20年判決。2006年6月23日、被告側控訴棄却。11月16日、最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)で被告側上告棄却、確定。
 殺害された男性の妻は殺人の罪で起訴、懲役18年を求刑されたが、2004年5月27日、一審福岡地裁、谷敏行裁判長は「満生被告が殺人計画の詳細を知らせていない」などとして、2人の共謀関係を否定。しかし、「殺害の意図に気付きながら保険に加入し、殺害を心理的に促進した」として、殺人ほう助の罪を適用し、懲役4年の判決を言い渡した。
 しかし2005年4月7日、福岡高裁虎井寧夫裁判長は、「保険の加入手続きをした時点で、共犯が夫を殺害してもやむを得ないと考えたことが推認できる。犯行に不可欠な手続きを自らしたことにより実行役と刑事責任に差はない」として殺人罪を適用。一審判決を破棄し、懲役12年を言い渡した。2005年9月12日付けで最高裁第一小法廷(横尾和子裁判長)は被告側の上告を棄却、刑が確定した。
 2005年10月5日、福岡地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年1月22日、被告側上告棄却、確定。
氏 名
薛経章(33)
逮 捕
 2004年9月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死傷他
事件概要
 横浜市の無職薛経章(せつ・けいしょう)被告ら8人は2004年5月22日午前1時頃、四日市市に住む医師の男性(65)宅に侵入。就寝中の夫妻に暴行し、現金や貴金属など計約2000万円相当を奪った。顔に粘着テープを巻かれた男性の妻(当時58)は窒息死し、男性は肋骨を折るなどの重傷を負った。
裁判所
 名古屋高裁 門野博裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月26日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 村上裁判長は「運転手役を誘うなど、事件に必要不可欠かつ重要な役割を果たした。比較しても得た利益は多額なのに、被害者に慰謝の措置をしていない」と指摘した。
備 考
 この事件では、実行犯の中国人7人のうち6人が逮捕、起訴された。陳玉興被告は2006年6月13日、名古屋高裁で一審無期懲役判決の被告側控訴棄却。薛行強被告は2006年1月27日、一審無期懲役判決。林家泉被告は2006年2月24日、一審無期懲役判決。いずれも控訴中。他2被告は津地裁四日市支部で公判が続いている。
 2006年1月13日、津地裁四日市支部で一審無期懲役判決。被告側は上告した。被告側上告棄却、確定(日時不明)。

氏 名
安藤義雄(59)
逮 捕
 1999年9月9日
殺害人数
 3名
罪 状
 殺人、死体遺棄、殺人未遂、覚せい剤取締法違反
事件概要
 東京江戸川区でホームレスだった安藤義雄被告は、1999年9月8日未明に覚醒剤を使用。8日午前7時30分頃、江戸川区内の荒川河川敷で、水くみを命じて文句を言われたホームレス仲間のKさん(当時60)の胸などをナイフで刺し殺害、さらに自分を馬鹿にしていると疑って仲間のHさん(当時57)、Sさん(当時61)も続けて刺殺し、翌日早朝、三人の遺体を荒川に投げ捨てた。さらに8日午後10時頃、路上で男性(当時36)にナイフで切り付けた。
裁判所
 東京高裁 須田※(※=賢の又を忠)裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年6月27日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 一審同様、犯行前に覚せい剤を使用した被告の精神状態が争点となった。
 被告の「殺害を指示する幻聴があった」との供述について、高裁は「自己に都合のいいように内容を誇張させているだけとはいえない」と指摘。被告の精神状態が正常でなかったとする鑑定を重視し、心神耗弱だったと結論づけた。殺害後の死体遺棄については、完全責任能力を認めた。
 責任能力が焦点となったが、須田裁判長は判決理由で「法秩序を全く無視した理不尽極まりない犯行で、当時完全責任能力があれば死刑を選択せざるを得ない」と指摘。その上で、覚せい剤使用の影響で当時心神耗弱の状態だったと認定し、刑法に従い刑を減軽した。
備 考
 2003年6月10日、東京地裁で求刑通り死刑判決。被告側は公判で「覚醒剤の影響で幻聴に支配されており、心神喪失状態だった」と主張したが、中谷雄二郎裁判長は「捜査段階初期の動機の供述には高い信用性がある」、さらに精神鑑定の結果などから「善悪を認識し、行動を制御することが著しく困難な状況ではなかった」と責任能力を認めた。
 上告せず、確定。

氏 名
石井誠(69)
逮 捕
 2005年3月23日(現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、現住建造物等放火未遂他
事件概要
 千葉県柏市に住む無職石井誠被告は、消費者金融から借りた約180万円の返済に困り、犯行を計画。2005年3月23日午前11時半頃、柏市に住む知り合いの女性宅に押し入り、応対した家政婦の女性(当時61)の首を絞めて殺害。午後1時半頃、帰宅した女性(当時76)の首を絞めて重傷を負わせた。女性からの通報で警察官が駆けつけたところ、石井被告は「入ってくれば、 灯油をかぶって火をつける」と叫んだ後、居間から階段にかけて、灯油をまいて火をつけた。
裁判所
 東京高裁 裁判長不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月27日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 控訴理由は不明。
備 考
 2006年3月13日、千葉地裁松戸支部で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年10月31日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
本田忠勝(55)
逮 捕
 2003年2月20日(会社社長殺人未遂容疑 3月13日、殺人、放火容疑で再逮捕)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火、殺人未遂他
事件概要
 福岡市西区に住む無職本田被告は2003年2月20日未明、隣の次兄宅にガソリンと灯油をまいて放火し、全焼させた。次兄の妻(当時54)と長女(当時27)は一酸化炭素中毒で死亡、二女は重傷を負った。火災直後に佐賀県浜玉町に住む長兄宅に火炎瓶で放火し、殺害しようとした。
 2月19日午後7時頃、以前勤務していた福岡市西区にある会社の事務所に押し掛け、社長の男性(当時63)の頭を金づちで数回殴り、頭蓋骨骨折の重傷を負わせた。
 本田被告は、不動産の遺産相続で不平等な扱いを受けたと兄弟などを逆恨みしていた。
裁判所
 福岡高裁 虎井寧夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月28日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 本田被告は逮捕当時、放火は認めたが殺意を否認した。初公判では起訴事実を全面否認している。
 検察側は「遺産相続を巡り、自分が損をしていると勝手に思いこみ、放火を計画した」と指摘。「犯行発覚に備え、警察への応戦用に火炎瓶を用意するなど用意周到な犯行。公判での傍若無人な態度は目に余り、更生の余地はない」「法廷で、遺族に暴言を吐き続け、反省の態度も全くない」と述べた。
 虎井裁判長は「犯行を否認する被告の供述には合理性がない」と述べた。
備 考
 本田被告は、一審判決で暴言を吐き、退廷させられていたが、今回の判決でも本田被告は入廷直後から独り言を繰り返し、判決言い渡しが始まると、裁判官に大声で「あなたは死刑になる」などと叫び、冒頭の十分足らずで退廷を命じられた。
 2005年10月13日、福岡地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年11月6日、被告側上告棄却、確定。
 遺族は本田忠勝被告を相手取り、総額1億円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こした。本田被告は傍聴席の遺族に対しても暴言を吐き続けた。「被告は何の反省もしていない。自分の犯した罪の大きさを感じてほしい」。遺族は、理不尽に命を奪われ、悲しさ、つらさ、悔しさを語ることができない2人の気持ちを代弁するため、提訴に踏み切った。本田被告は答弁書で請求棄却を求めている。

氏 名
岸政希(32)
逮 捕
 2005年2月27日
殺害人数
 0名
罪 状
 強盗強姦、住居侵入他
事件概要
 東京都狛江市の自称室内クロス洗浄業、岸政希(まさき)被告は、2004年11月から2005年2月にかけ、東京都世田谷区や港区などのマンションで、19~33歳の女性9人の部屋に侵入。カッターナイフを突き付け、「騒いだら殺すぞ」「お前の彼氏が作った借金を立て替えろ」と脅して乱暴し、キャッシュカードを奪って現金を引き出すなど計約225万円を奪った。
 岸被告はパイロットを志望しており、犯行の理由について「パイロットになるための訓練費や生活費が欲しかった」などと供述、妻と子供にも職業をパイロットと偽っていた。
裁判所
 東京高裁 裁判長不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年6月28日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 控訴理由は不明。
備 考
 2006年2月6日、東京地裁で一審無期懲役判決。

氏 名
ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ(34)
逮 捕
 2005年11月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体遺棄、強制わいせつ致死、出入国管理及び難民認定法違反(不法入国、不法在留)
事件概要
 ペルー国籍で広島市安芸区に住む無職ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(当時33)は、2005年11月22日、小学1年女児(当時7)を部屋に無理矢理連れ込みわいせつ行為をした後、午後0時50分~1時40分頃までの間、首を手で締めるなどをして殺害。段ボール箱に入れてテープで封じ、自転車で近くにある広島市安芸区の空き地に運んで遺棄した。
 遺体は22日午後3時頃に見つかった。警察は30日未明、近くのアパートに住むトレス被告を三重県内の親類宅で逮捕した。
 トレス被告は日系三世ペルー人、ピサロ・ヤギ・フアン・カルロスの偽名を用いて2004年4月18日に来日した。2005年8月からは隣町の自動車部品工場で働いていたが、無断欠勤や同僚との喧嘩が多いこともあり、10月中旬に人材派遣会社の登録を抹消され、11月1日にアパートに引っ越してきたばかりだった。
裁判所
 広島地裁 岩倉広修裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年7月4日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 トレス被告は逮捕当初犯行を否認。その後犯行を認めたが、殺意は否認した。「悪魔が自分の中に入り、体を動かした」などと供述している。初公判でも、殺害や遺棄、わいせつ行為など一連の行為を認め、「ご両親に許しを請いたい」と謝罪した上で「殺す意思を抱いたことはない」と殺意を否認した。
 地裁、検察、弁護側の3者による公判前整理手続きで、争点は(1)殺意の有無(2)犯行時の刑事責任能力(3)わいせつ目的とされる動機(4)殺害場所(5)殺害方法-の5点に絞られた。
 検察側は論告で「当初からわいせつ行為の対象となる女児を探し、殺してでも自らの欲望を満足させようとした」と犯行の計画性を指摘。「女児の抵抗を意に介さず首を絞め続けるなど、犯行態様は残虐極まりない」などと断じた。
 さらに、「悪魔がやった」などとしたトレス被告の供述を「罪を軽くするためのうそで、到底信用できない」と厳しく批判した。その上で、「弁解に終始して反省の態度がみられず、矯正の可能性はない」と判断。厳しい刑を望む遺族感情や、全国で児童を狙った凶悪犯罪が後を絶たない社会状況なども踏まえ、死刑求刑の理由を述べた。
 弁護側は、「殺意や殺害動機はなかった」と主張し、わいせつ目的や殺意を改めて否定。「屋外での犯行で計画性はなく、心神喪失か耗弱の状態にあった」と主張し、殺人と強制わいせつ致死については無罪を主張した。また、「公判で謝罪の意を表している」として刑の減軽を求めた。
 判決は、女児の首に手で絞めたような内出血があることなどから被告に確定的殺意があったと認定し、殺意を否認した被告側の主張を退けた。また、殺害する前後に下半身を指で傷付け、自慰行為をした事実も認め、わいせつ目的の犯行だったと判断した。
 被告側の「悪魔の声に支配され、善悪を判断できない状態だった」という主張については、「犯行を極めて詳細に供述し、精神障害をうかがわせる言動もない」として責任能力を認めた。
 量刑判断の中で判決は、女児が両親の愛情を一身に受けて育ったことや、幼い弟や家族思いのやさしい子だったことなどを詳細に記述。突然女児を奪われた遺族の悲しみにも理解を示し、「死刑の適用基準を満たしていると考えてもあながち不当ではない」と述べた。
 一方で、83年の最高裁判決が指摘した死刑選択の基準に触れながら、被害者の数や犯行の態様、前科の有無について検討。「被害者は1人にとどまっているほか、犯行が計画的でなく衝動的で、前科も認められない」と指摘し、「矯正不可能な程度までの反社会性、犯罪性があると裏づけられたとまではいえない」と述べて、死刑選択には疑念が残ると結論づけた。
備 考
 トレス・ヤギ被告は1992年、ペルーで女児(当時9)暴行の容疑で逮捕されたが、起訴猶予となっている。また1993年にはペルーで女児(当時8)を暴行して逮捕されたが、仮釈放後ペルーを出国したため、裁判は行われていない。検察側は被告がペルーでも幼女に性的暴行をしたとの資料を証拠として出そうとしたが、公判前に争点を絞る手続きに間に合わず公判でも申請を却下された。
 トレス被告の不法入国を手助けしたとして、入管難民法違反の罪に問われた姉は、2006年9月1日、懲役1年、執行猶予3年が言い渡された。飯畑正一郎裁判官は「動機は生活に困った家族を思う気持ちだった」と執行猶予の理由を述べた。
 検察・被告側は控訴した。2008年12月9日、広島高裁で一審判決破棄、差戻し。2009年10月16日、最高裁で二審判決破棄、高裁差戻し。2010年7月28日、広島高裁で検察・被告側控訴棄却。上告せず確定。

氏 名
佐藤広志(29)
逮 捕
 2005年1月20日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 無職佐藤広志被告は無職梶原幸子被告と共謀し、2004年12月19日午後10時40分頃、牡鹿町鮎川浜の国定公園内で、石巻市に住む会社員の女性(当時23)を棒のようなもので殴って殺し、現金約1万8千円の入ったバッグを奪った。さらに2人は、女性のバッグからアパートの鍵を奪って部屋に侵入し、現金およそ8000円を奪った。2人は女性からあわせて3万数千円の借金があり、返済を迫られていた。奪った金は遊びに使った。遺体は1月20日に発見された。
裁判所
 仙台高裁 田中亮一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月4日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 判決は「被害者の顔面や頭部を多数回強打しており、殺意は認められる」などと指摘。「殺意はなかった」などとする被告側の主張を退けた。
備 考
 梶原幸子被告は一・二審無期懲役判決、上告中。2006年2月6日、仙台地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年11月21日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
菅谷章(58)
逮 捕
 2003年10月9日
殺害人数
 0名
罪 状
 略取、逮捕監禁致傷、監禁、強盗、強姦他
事件概要
 無職菅谷被告は無収入で自暴自棄となり、刑務所に入る前にやりたいことをやろうと2003年9月11日午前7時40分頃、福島県須賀川市の路上で小学6年女児(当時)に声を掛けて手足を縛るなどの暴行を加えて顔や腹などに軽傷を負わせてワゴン車に押し込み「静かにしないと殺すぞ」と脅迫。会津方面などに連れ回し、約33時間にわたって監禁した。
 2003年9月23日夜、茨城県東海村のスーパー駐車場で、女性店員(当時22)の軽乗用車に乗り込み、首にナイフを突きつけて両手を縛り、目を粘着テープでふさぎ車内に監禁。現金約1000円やバッグを奪った疑い。女性は直後に逃げ、けがはなかった。
 その他、茨城県ひたちなか市や栃木県矢板市などでも、10代から20代の女性3人を車内に監禁し、同年8月には同県那須郡で小学5年男児(当時)を女児と間違えて監禁しようとし、頭などにけがを負わせた。
裁判所
 最高裁第一小法廷 泉徳治裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月4日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審では、女性監禁事件は相手が承諾していたなど、起訴事実の一部を否認している。また二審では量刑不当を訴えていた。
備 考
 菅谷被告は少年時代に強姦未遂事件で中等少年院に送致されている。1972年には少女に対する強姦致傷で懲役17年の判決を受け、その後も同様の犯行を繰り返していた。
 2005年5月6日、福島地裁で一審無期懲役判決。2006年2月23日、仙台高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
乾信子(58)
逮 捕
 2006年1月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、窃盗、住居侵入他
事件概要
 高知県安芸市の無職乾信子被告は金に困り、2005年12月27日午後8時20分頃、同市の無職女性(当時62)方に侵入。女性の顔を殴り、首を絞めて殺害。現金約48,000円を奪うなどした。乾被告は病院で女性と知り合い、2005年夏ごろまでボランティアと称して家事を手伝うなどしていた。このとき、乾被告は女性が治療費として引きだした40万円を盗んでいる。女性が独り暮らしで、足が不自由なため車いす生活ということを知り、犯行に及んだ。
 また乾被告は2005年12月9日、同市内の事務所から現金約8万円などを盗んだ。
裁判所
 高知地裁 永渕健一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月5日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は「手袋やガムテープを持って行くなど計画的で、助けを呼ぶ女性の口にタオルを押し込めて殺害した。その後もためらうことなく現金を奪い、台所や仏壇を物色するなど残酷で悪質極まりない」と指摘。その上で、「自己の金銭欲のために(足が不自由な)障害者を標的としたもので、障害者の命を虫けら同然に奪った結果は重大だ。遺族も厳しい処罰感情を述べている」「交際男性をつなぎ留めたいという欲望と遊興のため安易に殺害を企て、障害者を狙った計画的犯行で、身勝手の極みだ」と論告した。
 弁護側は「幼いころからいじめや虐待を受け、愛情を知らないまま過ごした被告人が、交際男性と別れたくないため、男性からの金の要求を断れなくなり犯行に及んだ。被告人の不幸な境遇を考慮してほしい」と寛大な判決を求めた。
 永渕裁判長は判決理由で「他人の財産のみならず命まで犠牲にして、交際男性との関係を優先させた。1年足らずの間に窃盗を繰り返すなどし強盗殺人にまで至った」「残虐かつ非道な犯行で、酌量減軽が相当とは認め難い」とした。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
高木正幸(26)/川上美香(23)
逮 捕
 2005年4月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗強姦、死体遺棄、窃盗
事件概要
 無職高木正幸被告、川上美香被告は、2005年4月1日午後10時頃から2日午前3時半の間、長野県塩尻市内の山林内で、会社員の男性にフィリピン国籍で衣料品点店員の女性(当時19)を強姦させた。さらに両被告は女性の首をベルトで絞めて殺害、遺体を現場周辺に遺棄。現金2,500円とキャッシュカードの入った財布などを盗み、カードを使ってATMから11万9,000円を引き出した。
 川上被告と女性は以前、2001年5月まで約4年間、松本市内の同じ福祉施設で暮らしていた。川上被告と高木被告は、女性の自宅に入り浸りの状態だったため、女性は2005年3月中旬、母親に宛てて携帯電話で「まだ帰らない」などのメールを送った。それを見た川上被告が、犯行を決意。元夫である高木被告に相談し、暴行殺人の計画を練った。高木被告と川上被告は元夫婦で、離婚後も同居していた。事件当時は車内で過ごすことが多かった。
 また女性は福祉施設で暮らしていた当時、川上被告と一緒に施設を訪れた高木被告に暴行されそうになった。施設側は両被告に注意し、川上被告は「職員に告げ口された」と、女性を逆恨みしていた。
裁判所
 東京高裁 仙波厚裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月6日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「無期懲役は重すぎる」と主張していた。
 仙波裁判長は「動機に酌量の余地はない。命ごいを無視して殺害するなど冷酷残忍で責任は極めて重く、無期懲役はやむを得ない」と判決理由を述べた。
備 考
 犯行に加わった会社員の男性は、集団強姦の罪で懲役7年の実刑が確定している。
 2006年2月15日、長野地裁で求刑通り一審無期懲役判決。川上被告は上告した。高木被告は上告せず7月21日付で確定。川上被告は7月29日付で上告を取下げ、確定。

氏 名
少年(19)
逮 捕
 2005年10月2日(6月2日の事件について 3月2日、銃刀法違反で起訴済)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 大阪府枚方市の無職少年(当時19)は、2005年10月2日午前0時頃、過去にアルバイトとして雇われたことがある富田林市の薬店に侵入。経営者の男性(当時40)の胸をナイフで刺して、現金約44万円を奪った。男性は110番通報し病院に運ばれたが、2時間30分後に死亡した。富田林署が緊急配備して捜査していたところ、同日午前1時40分ごろ、羽曳野市内の交通事故現場で、ミニバイクを運転していた少年が事故車に接触して転倒。少年が居合わせた羽曳野署員に対し、男性を刺してレジなどから現金を奪ったことを認めたため、殺人未遂と強盗の疑いで緊急逮捕した。
 少年は2004年10月ごろからバイクの修理費や女性との交際費欲しさから店の売上金を横領(合計約123万円)するようになり、気付いた男性から親や警察に報告すると言われたため、殺害を決意した。1日の夜、少年は男性と店で会う約束をしていた。
裁判所
 大阪地裁 和田真裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月6日 無期懲役
裁判焦点
 少年は起訴事実を認めた。
 検察側は「極めて自己中心的で人間性のかけらもない犯行で、矯正は困難」「逃げようとする被害者を追い詰めて胸や背中を何度も刺すなど犯行は冷酷で残忍」と指摘した。弁護側は最終弁論で寛刑を求めた。
 判決理由で和田裁判長は「被害者が被告の将来を心配し、不正に持ち出した売上金を弁済すれば他言しないと約束してくれたのに、自己保身のみを考えて犯行に及び、身勝手極まりない」「殺害方法をインターネットで検索、犯行前にアリバイ工作をするなど、ちゅうちょなく淡々と犯行に及んでおり冷酷。恩をあだで返された被害者の恐怖と苦痛は筆舌に尽くし難い」と指摘。同時に「少年は改善不可能とは言えない。遺族が極刑を望むことは理解できるが、死刑を選択すべき事案とまでは言い難い」と述べた。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
清水久美子(41)
逮 捕
 2005年3月9日(自ら出頭)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、銃刀法違反
事件概要
 無職清水久美子被告は元同僚である金融業者手伝い小田義輝被告、会社員杉原正康被告と共謀。2005年3月7日午後5時ごろ、神戸市のマンションの一室で、金融業者の男性(当時32)の腹部を包丁で数回刺して殺害し、現金300万円などが入ったセカンドバッグを奪った。清水被告は、男性が自己を人間扱いしてくれず、恨んでいた。
裁判所
 神戸地裁 的場純男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月10日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 弁護側は、強盗をするつもりはなかったので、強盗殺人ではなく、殺人と窃盗が成立すると主張した。
 的場裁判長は「自己中心的で利欲的な犯行と言わざるをえない」と述べた。また、自首については当初被告が共犯者の存在を隠していたことから、成立しないと述べた。
備 考
 小田義輝被告、杉原正康被告は分離公判中。
 被告側は控訴した。大阪高裁で被告側控訴棄却、日時不明。2007年6月、最高裁で被告側上告棄却、確定。

氏 名
片桐俊(39)
逮 捕
 2004年10月24日(現行犯逮捕)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、殺人未遂、銃刀法違反他
事件概要
 指定暴力団住吉会系元組幹部・片桐俊(すぐる)被告はK被告(公判中?)とともに2004年10月24日午後1時40分頃、東京都台東区のホテル1階の喫茶店で、対立する指定暴力団山口組系暴力団幹部と話し合い中に拳銃6発を発砲。幹部2人(当時55、41)を拳銃で射殺し、別の幹部2人(ともに当時38)も重軽傷を負った。女性従業員と女性客計3人がいたが無事だった。
 同日正午前、ホテル近くにある片桐容疑者が所属する住吉会系の組事務所に、山口組系の組員が押し掛けてトラブルになった。その後110番通報で駆けつけた浅草署員がいったん解散させたが、組同士が喫茶店で話し合いをしていたところ事件が発生した。
裁判所
 東京高裁 原田国男裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年7月10日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 検察側が死刑を求めて控訴。弁護側は控訴審で被害者の遺族らに示談金約1100万円を支払ったことを明らかにし、情状酌量を求めた。
 原田裁判長は「犯行の危険性、結果の重大性などから、刑事責任は相当重い」と非難。一方、「市民の巻き添えをいとわずに発砲したとはいえない」「結果は重大で責任は相当重いが、激情にかられた犯行で、計画性が高いとは言い難い。被告は被害者側に慰謝料を支払い、遺族らは減軽嘆願書を出している。一審の刑を見直すには至らない」と判決理由を述べた。
備 考
 2005年10月3日、東京地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年11月27日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
陳明金(35)
逮 捕
 2004年11月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死傷他
事件概要
 中国籍の無職陳明金(チェンミンジン)被告ら8人は2004年5月22日午前1時頃、四日市市に住む医師の男性(65)宅に侵入。就寝中の夫妻に暴行し、現金や貴金属など計約2000万円相当を奪った。顔に粘着テープを巻かれた男性の妻(当時58)は窒息死し、男性は肋骨を折るなどの重傷を負った。
 陳被告ら7人(うち3人は四日市市の事件にも関与)は2004年10月10日午後10時頃、さいたま市の無職男性(当時87)方に侵入。男性を粘着テープで縛った上、現金33000円と腕時計2個(1万円相当)を奪った。他にもさいたま市でおきた強盗事件に関与している。
裁判所
 津地裁四日市支部 堀毅彦裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月11日 無期懲役
裁判焦点
 検察側は「周到かつ計画的な犯行で、実行犯として重要な役割を果たした」などとした。
 堀裁判長は「被告は積極的かつ重要な役割を果たしており、得た利益も大きく、刑事責任は極めて重大」と述べた。
備 考
 この事件では、実行犯の中国人7人のうち6人が逮捕、起訴された。薛行強被告は2006年1月27日、一審無期懲役判決。林家泉被告は2006年2月24日、一審無期懲役判決。いずれも控訴中。陳玉興被告は2006年6月13日、二審無期懲役判決、上告中。薛経章被告は2006年6月26日、二審無期懲役判決、上告中。他1被告は津地裁四日市支部で公判が続いている。
 被告側は控訴した。被告側控訴棄却、被告側上告棄却、確定(いずれも日時不明)。

氏 名
薛行強(30)
逮 捕
 2004年9月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死傷他
事件概要
 横浜市に住む中国籍の無職薛行強(せつ・ぎょうきょう)被告ら8人は2004年5月22日未明、四日市市小古曽の医師の男性(65)宅に侵入。就寝中の夫妻に暴行し、現金や貴金属など計約2000万円相当を奪った。顔に粘着テープを巻かれた男性の妻(当時58)は窒息死し、男性は肋骨を折るなどの重傷を負った。
裁判所
 名古屋高裁 前原捷一郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月11日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 前原裁判長は「妻の死亡原因となった行為はしていないが、一連の犯行の実行に関わり、多額の分け前も得ていた」と述べた。
備 考
 この事件では、実行犯の中国人7人のうち6人が逮捕、起訴された。
 陳明金被告は2006年7月11日、一審無期懲役判決、控訴中。陳玉興被告は2006年6月13日、二審無期懲役判決、上告中。薛経章被告は2006年6月26日、二審無期懲役判決、上告中。林家泉被告は2006年8月2日、二審無期懲役判決、上告中。他1被告は津地裁四日市支部で公判が続いている。  2006年1月27日、津地裁四日市支部で一審無期懲役判決。被告側は上告した。被告側上告棄却、確定。

氏 名
橋本譜康(30)/関沢朋枝(39)
逮 捕
 2005年6月4日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 福島県郡山市に同居する無職関沢朋枝被告と無職橋本譜康(つぐやす)被告は金に困り、関沢被告の元夫が手にしていた三春ダム建設に伴う補償金を奪おうと計画。橋本譜康被告の母被告と、好子被告の友人であるK被告と共謀。2005年4月18日、関沢被告が男性を呼びだし、深夜から19日早朝にかけ、橋本被告が中心となってK被告方など3ヶ所で暴行し、所持金11000円とバッグなど計12点(約3000円相当)を奪った。K被告の自宅に放置された男性は、20日ごろ呼吸不全で死亡した。さらに、24日午前3時半ごろ、三春町柴原の町道脇駐車場に男性の遺体を遺棄した。
 関沢被告は男性と1989年に結婚したが、1年で離婚していた。K被告は橋本被告の母の知人で、かつて同居していた。
 また2004年12月には、知り合いの女性に暴行し、女性の父親を脅して現金20万円を奪った。
裁判所
 福島地裁 大沢広裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月13日 無期懲役
裁判焦点
 二人は初公判で、殺意を否認している。
 検察側は論告で「一獲千金をもくろみ、口封じのために男性を殺害した」と指摘した。
 大沢裁判長は「暴行の態様はせい惨の一言につきる。他人の痛みを省みない、身勝手極まりない犯行」と断じた。大沢裁判長は、橋本被告について、男性を殺害することを最初に提案し、暴行のほぼすべてを実行しているとして「刑事責任が最も重大であることは明らか」と判断した。関沢被告については、暴行の一部に加わったに過ぎないとしつつも、被害者を呼び出して金を奪う提案をしたうえで、「死体を運搬するなど欠くことのできない役割を果たしている」と認定した。さらに両被告とも、公判で殺意の発生時期について争う趣旨の供述をしたことを挙げ、「反省の程度にも疑問が残る」として無期懲役が相当と判断した。
備 考
 K被告は2006年5月26日、求刑無期懲役に対し、一審懲役20年判決、控訴中。橋本被告の母被告は公判中。2被告は控訴した。2007年1月18日、被告側控訴棄却。橋本被告は上告せず、確定。関沢被告は上告したが、2月22日に取下げ、確定。

氏 名
水越清一(57)
逮 捕
 2004年12月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、死体遺棄、逮捕監禁他
事件概要
 会社社長水越清一被告は知り合いの会社経営の男性(当時61)に貸していた700~800万円を回収するため、無職柏木信幸被告に殺害を依頼。柏木被告は宮田好信被告ら3人を犯行に誘い、2004年9月24日夜に東京都江東区の路上で帰宅途中の男性を拉致して乗用車の中に連れ込み、走行中の車内で現金50万円などを強奪。宮田被告は翌29日午前8時過ぎ、神奈川県綾瀬市の自宅に連行した男性の首を絞めて殺害し、遺体を八王子市の山林に埋めた。
裁判所
 東京高裁 裁判長名不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 控訴・判決理由は不明。
備 考
 宮田好信被告、柏木信幸被告は一審無期懲役、控訴中。2006年3月9日、東京地裁で一審無期懲役判決。上告せず、確定。

氏 名
石井喜吉(65)
逮 捕
 2001年6月22日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火
事件概要
 石井喜吉被告は、1994年3月に産業廃棄物の収集・運搬業の許可を取得し、福島市内に事務所を構えた。1995年に福島県石川町の農業を営む男性と知り合い、男性方の裏の土地を借りて、産業廃棄物の焼却を行うようになった。しかし、石井被告は産業廃棄物処分の許可は受けておらず、1999年4月には県の指導を受けていた。
 石井被告は夜間に廃家電や古タイヤの焼却を行い男性から苦情を受けていたほか、男性の親せきとも土地の権利を巡るトラブルがあった。男性は2000年6月4日、「警察に被害届を出す」などと言ったことから、石井被告と口論になった。
 石井被告は2000年6月6日午後9時50分ごろ、男性方の居間に放火し、鉄骨平屋建て住宅約80平方メートルを全焼させ、男性(当時74)と妻(当時69)を焼死させた。
 石井被告は犯行時に全身に大やけどを負ったため運転ができなくなり、途中で自分の車での逃走を断念。知人を現場付近に呼び出し、自分の車を放置してこの知人の車で福島市の自宅まで送ってもらった。翌7日早朝、事務所前で、わらを燃やそうとしたところ、衣服に燃え移ったとして119番通報、県立医大に入院していた。
 石川署捜査本部は犯行時間帯に石井被告が現場近くにいたとの目撃情報などから石井被告の犯行と見て、火災10日後に石井被告の事務所兼自宅を家宅捜索。石井被告は2000年12月の退院後も通院治療が必要な状態だったが、2001年6月に入って体力が回復してきたと判断、逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 古田佑紀裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年7月18日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 石井被告は逮捕段階から一貫して無実を主張していた。
備 考
 2004年4月23日、福島地裁(大沢広裁判長)で求刑通り死刑判決。2005年9月1日、仙台高裁(田中亮一裁判長)で一審破棄、無期懲役判決。被告側のみ上告していた。

氏 名
本木正昭(41)
逮 捕
 2003年12月7日(現行犯逮捕)
殺害人数
 0名
罪 状
 わいせつ目的未成年者略取、同未遂、監禁、強姦致傷他
事件概要
 無職本木正昭被告は2003年12月4日、栃木県足利市内の路上で、自転車で登校途中の女子高校生(当時16)を転倒させ、乗用車に乗せて連れ去り、3日にわたって監禁した。11月には新潟県内の民家で女性(当時25)を暴行して現金を奪ったほか、同県内で女子中学生2人をわいせつ目的で連れ去ろうとした。また同時期に石川、福井両県で、小学女児(当時10)と女子中学生(当時13)を車で連れ去り暴行した。本木被告は事務所荒らしを重ね、盗難車で全国を移動していた。
 本木被告は2003年11月15日に大阪府豊中市で自転車を盗み、逮捕されるまでの22日間に、未遂も含め未成年者に対する5件の略取、22件の窃盗など計30件の犯行を重ね、新潟地裁で併合審理されていた。
裁判所
 東京高裁 中川武隆裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月19日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 被告は刑が重すぎると控訴した。
 中川裁判長は「欲望を満たすため、小中学生らを無差別に狙った卑劣で悪質な犯行。被害者の負った心身の痛みも大きく、一審の刑が重くて不当とはいえない」と判決理由を述べた。
備 考
 2005年9月27日、新潟地裁で一審無期懲役判決。

氏 名
久島孝雄(49)
逮 捕
 2005年7月28日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 無職久島孝雄被告と無職N被告は、2005年7月5日午後9時10分ごろ、那須塩原市の自宅にいた知人男性(当時76)の首をビニールひもで絞めて窒息死させ、現金約32万円や貴金属、預金通帳などを奪ったうえ、翌6日午前1時半ごろ、男性の遺体にコンクリートの塊を結び付け、那須塩原市蟇沼の貯水槽に遺棄した。
 N被告は別の男性に付き添われて出頭。久島被告は福島方面へ逃亡していたが、福島県内で単独交通事故を起こし、搬送先の病院で逮捕された。
裁判所
 宇都宮地裁 池本寿美子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月24日 無期懲役
裁判焦点
 池本裁判長は久島被告が一連の犯行で中心的役割を果たしたと認定。「大金欲しさの計画的な犯行。完全犯罪を狙い死体を遺棄するなど、非人間性が顕著だ」と二人を断罪した。その上で、久島被告が犯行前に男性方に複数回侵入し、窃盗していたことなどから「犯罪性向は著しく深化しており、刑事責任は極めて重大。情状酌量の余地はない」と糾弾した。そして「他人の尊い生命を奪うことによって利得を得ようという、身勝手極まりない非人間的態度は、最大限に厳しく非難されなければならない」と指摘。N被告については「知人の説得もあって逃げ切れないと考えて自ら決意して自首したもので、強盗殺人と死体遺棄の犯行について明確に事実を申告し、悔悟の情を示して自首したことが認められる」と認定した。
備 考
 N被告は求刑無期懲役に対し、自首が認められ懲役30年判決。控訴せず、確定。

氏 名
川戸義雄(69)
逮 捕
 2002年11月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 無職川戸被告は2002年7月1日午前11時35分前後、三重県亀山市にある不動産業者の女性(当時70)の自宅兼不動産事務所で、女性の左胸を刃渡り17センチ以上の刃物で刺して殺害。手提げかばんの中にあった現金200万円を奪った。
裁判所
 名古屋高裁 門野博裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月24日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 凶器の刃物や血痕、指紋など物証は見つかっていない。検察側は間接証拠の積み重ねで起訴に踏み切った。
 被告は一審同様無罪を主張した。
 判決理由で門野裁判長は、川戸被告を犯行時間帯に現場で目撃したとの証言を中心に、事件以降多額の借金を返済している点や、知人へのアリバイ工作などの状況証拠を総合して川戸被告を犯人と認定した一審判決の判断を「正当」と指摘。凶器や血痕などの物証が存在しないことについて「1審の判断を左右するものではない」と述べた。
 被告の無罪主張に対しては、「知人らに口裏合わせを依頼し、アリバイ工作をするなど、供述は不自然で到底信用できない」と退けた。
備 考
 この事件で津地検は2002年11月、公判維持は困難として川戸被告をいったん処分保留で釈放。だが、目撃証言の裏付け捜査を重ね、「十分に立証できる」として約10カ月後の2003年9月25日、起訴に踏み切った。
 2005年3月23日、津地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年12月4日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
村田芳彦(47)
逮 捕
 2004年4月6日(覚せい剤取締法違反の罪で起訴済)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 福岡県の元暴力団員池田昭雄被告とスナック経営村田芳彦被告はともに1000万円を超える借金があったため、池田被告が村田被告に相談。村田被告が、福岡市南区で不動産事務所を経営する知人の男性(当時64)に架空の土地建物売買の話を持ちかけて現金を用意させ、その報告を受けた池田被告が男性を殺害して現金を奪うことを決意。2004年2月10日午前11時半頃、男性の不動産事務所で、池田被告が男性を殺害。現金800万円などを奪って遺体を車で運び出し、翌日、宮崎県小林市の雑木林に埋めた。
裁判所
 福岡高裁 正木勝彦裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月26日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 村田被告は一審同様、殺人の共謀などを否定していた。
 正木裁判長は「犯行に重要な役割を果たしているうえ、責任逃れに終始して真摯な反省もしていない」と述べた。
備 考
 池田昭雄被告は求刑通り無期懲役判決が二審で確定。2005年11月7日、福岡地裁で一審無期懲役。上告せず、確定。

氏 名
田代タツエ(77)
逮 捕
 2001年11月24日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人
事件概要
 栃木県藤原町の無職、田代タツエ被告は渡辺実被告、安田守男元被告、U元被告、他男性元被告の4人と共謀。2001年6月24日夜、福島県いわき市平薄磯の県道で、観光目的で連れ出した栃木県藤原町の女性(当時77)をワゴン車で轢いて殺害した。田代被告はワゴン運転手の男性と連絡を取り合い、ワゴンに向けて女性の背中を押したとされる。
 田代被告は被害者の女性と約30年間にわたり同居していた。被害者を殺害後、合わせて349万円の保険金を受け取り、仲間に一部を渡したり、家電製品の購入などに使い、いっさい弁済はしていない。
裁判所
 仙台高裁 田中亮一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月27日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 田代被告は従属的立場であったことを主張したが、田中裁判長は、渡辺実被告が主犯であると認定した上で「(殺害の)実行役を務めるなど積極的な役割を果たしている。詐欺においては主犯で、共犯者の中でも重要な立場にある」として、主張を退けた。
備 考
 渡辺実被告は求刑通り一審死刑判決、控訴中。安田守男被告は一審無期懲役判決がそのまま確定。U被告は求刑懲役15年に対し、一審懲役13年判決が確定。他男性被告は求刑懲役7年に対し、一審懲役6年判決が確定。
 2005年12月1日、福島地裁郡山支部で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年11月20日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
工藤英二(44)
逮 捕
 2004年11月15日(工藤被告は詐欺罪で起訴済)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺、詐欺未遂
事件概要
 無職工藤英二被告は、NT元被告が働いていた青森県今別町の旅館に宿泊して一家と知り合い、2003年8月初旬ごろ、NT元被告の長男であるNM元被告に「老犬の養護施設をつくる」とうその商売話を持ちかけた。NM元被告らは話を信じ、用地確保の名目で1億7300万円の架空の借金を負った。また準備金として450万円を工藤被告に支払った。
 工藤被告は事業を進める気などなく、2004年1月に事業打ち切りを伝え、借金の返済を迫った。
 工藤被告は、NT元被告の夫を交通事故死に見せかけ、自動車保険金で返済するようNM元被告に迫り、NM元被告が両親に告げると、NT元被告は「やむを得ない」と承諾。夫は絶句した。
 2004年6~7月、夫はNM元被告に連れられ、県内各地で走行中の車へ飛び込むよう迫られたが果たせず、そのたびに工藤被告から殴る蹴るの暴行や脅迫を受ける。3被告が「何とか頼む」と迫ると、夫はうなずくだけだった。
 工藤被告は事故の保険金だけでは足りないと考え、夫を約8800万円の生命保険などに加入させた。9月下旬には秋田県で死ぬように指示するが失敗、再び暴行を加えた。「事故では夫を死なせられない」と考えて2004年10月1日、秋田県から帰宅途中だった夫とNM元被告を藤崎町の河川敷に呼び出し、夫を鉄パイプのようなものでめった打ちにした。自宅に連れ帰ったNM元被告は、NT元被告と共に放置した。夫は約5時間後、外傷性ショックで死亡した。
 工藤被告はその後、郵政公社分の保険金800万円をだまし取ろうとした。
 その他、工藤被告は東京都杉並区に住む知り合いの女性から3430万円をだまし取った。九州では老犬ハウス事業の事業設備資金名目に300万円をだまし取っている。
裁判所
 仙台高裁 田中亮一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月27日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「工藤被告には男性を殺害する動機がなく、“工藤被告が男性を殺害した”という共犯者の証言は不自然で信用できない」として、無罪を主張した。
 しかし、判決理由で田中裁判長は「共犯者の供述は証拠などと合致しており、具体的な裏付けがある。一方で、被告人の供述には共犯者の証言が不自然であることを証明できるものはない」などとして退けた。
備 考
 2005年7月22日、青森地裁はNT被告に懲役14年(求刑懲役16年)を、NM被告に同16年(同18年)を言い渡した。両被告は起訴事実を全面的に認めており、控訴せずに確定した。
 2006年2月17日、青森地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年11月28日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
甲斐日出己(58)
逮 捕
 2004年12月13日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、銃刀法違反、殺人未遂他
事件概要
 千葉県の(当時)暴力団組長甲斐日出己被告は2004年9月30日、東京都港区の設計事務所内で、同事務所に対する債権回収を巡ってトラブルとなった無職男性(当時49)の顔に拳銃1発を発射して殺害。2003年6月8日には千葉市にある自宅兼組事務所前の路上で、暴力団組員に拳銃2発を発射して殺害しようとした。
裁判所
 東京地裁 川口政明裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年7月31日 無期懲役
裁判焦点
 川口裁判長は「白昼に拳銃を使用して尊い命を奪い、近隣住民や一般社会に与えた恐怖感は計り知れない」と指摘した。
備 考
 被告側は控訴した。

氏 名
林家泉(32)
逮 捕
 2004年9月30日(別の窃盗罪で9月6日に逮捕済)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、強盗致傷他
事件概要
 無職林家泉(りん・かせん)被告ら5人は2004年5月22日午前1時頃、四日市市に住む医師の男性(65)宅に侵入。就寝中の夫妻に暴行し、現金や貴金属など計約2000万円相当を奪った。顔に粘着テープを巻かれた男性の妻(当時58)は窒息死し、男性は肋骨を折るなどの重傷を負った。
裁判所
 名古屋高裁 門野博裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月2日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 控訴理由、判決理由は不明。
備 考
 林被告は2004年9月6日、愛知県江南市の民家に侵入、現金や貴金属など約110万円相当を盗んだとして、県警江南署に住居侵入と窃盗の疑いで緊急逮捕されていた。
 この事件では、実行犯の中国人7人のうち6人が逮捕、起訴された。陳明金被告は2006年7月11日、一審無期懲役判決、控訴中。陳玉興被告は2006年6月13日、二審無期懲役判決、上告中。薛経章被告は2006年6月26日、二審無期懲役判決、上告中。薛行強被告は2006年7月11日、二審無期懲役判決、上告中。他1被告は津地裁四日市支部で公判が続いている。
 2006年2月24日、津地裁四日市支部で一審無期懲役判決。被告側は上告した。被告側上告棄却、確定(日時不明)。

氏 名
松田文彦(34)
逮 捕
 2004年6月8日(強盗致傷容疑。詐欺罪で起訴済。殺人容疑で2004年12月1日再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体遺棄、強盗、強盗致傷他
事件概要
 指定暴力団住吉会系組員、無職作田文彦(結婚して松田に改姓)被告は刑務所服役中に知り合ったH組員(当時41)と共謀。2004年3月27日、栃木県上三川町の路上でH組員と対立する暴力団幹部(当時59)をH組員が射殺した際、指示を受けて現場近くに待機したり、遺体を埋めるスコップを準備するなどした。遺体は日光市(旧栗山村)の山林に埋めた。
 また、H組員とともに同年1月から5月にかけ、県内や茨城県で強盗や盗みを繰り返し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の2人を含む10人にけがを負わせた。被害額は現金約3,048万円、物品418点(計約1,915万円相当)にのぼった。
 起訴件数は、殺人のほか強盗7件、強盗致傷5件、窃盗7件、建造物損壊1件など計11の罪種にのぼる。
 H組員は2004年5月20日のマンション立てこもり事件で自殺した。
裁判所
 宇都宮地裁 池本寿美子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月8日 無期懲役
裁判焦点
 松田被告は公判途中で殺人罪のみ否認に転じた。
 論告で検察側は、殺人罪について「終始一貫して、殺害の強固な意志を持っていた」などと述べ、H組員との共謀が最後まで成立していたと指摘した。
 弁護側は「殺害の計画には一時的に加担しただけ。実行段階ではH組員が主導しており、被告は見張りなどをしただけ」として殺人ほう助にあたると反論した。
 判決理由で池本裁判長は「被害者を知らないのに、兄貴分と慕っていた人に頼まれたから殺害に加わる、という発想自体が反社会的」と述べた。また、H組員が幹部を殺害することを知った同被告が、幹部の自宅で動向を監視するなどの計画に加担したとし、共犯と認定した。
備 考
 被告側は控訴した。2006年9月5日、控訴取下げ、確定。

氏 名
孫栄教(55)
逮 捕
 2005年5月1日
殺害人数
 1名
罪 状
 住居侵入、強盗致死、強盗、強盗致傷
事件概要
 韓国籍の孫栄教(ソン・ヨンギヨ)被告は他被告と共謀し、1998年3月から1999年11月までに、大阪府、兵庫県で資産家を次々に襲い、家人を縛り上げ「カネ、カネ、キンコ」などと片言の日本語で脅し、金品を奪う事件が約30件(被害総額約2億4,000万円相当)発生した連続緊縛強盗(K号)事件のうち、9件の強盗事件で死者1名・負傷者11名、被害総額は合計約8,600万円相当に上る。概要は以下。
 1998年11月19日午前3時頃、神戸市の住居に侵入。家にいた3名に粘着テープなどで両手両足を緊縛するなどの暴行を加えて2~4週間の怪我を負わせた上、現金約3,380万円及び指輪等67点(時価合計約1,275万円)を奪った。
 1998年12月14日午前4時過ぎころ、大阪府八尾市の住居に侵入。家にいた3人に暴行を加えて軽傷を負わせた上、「カネ、カネ、キンコ」などと片言の日本語で脅し、現金約330万円及び腕時計など14点(時価合計約350万円)を奪った。
 1998年12月24日午前3時20分頃、神戸市の住居に侵入。家にいた3名に暴行を加えて重傷を負わせた上、現金約11万円を奪った。
 1999年1月9日午前2時30分頃、兵庫県明石市の住居に侵入。家にいた2名を縛って軽傷を負わせた上、現金約250万円及び指輪等35点(時価合計約1,200万円)を奪った。
 1999年1月26日午前4時頃、大阪市の住居に侵入。家にいた5名を縛った上、「カネ、カネ、キンコ」などと片言の日本語で脅し、現金約530万円を奪った。
 1999年3月23日午前3時頃、大阪府交野市の住居に侵入。家にいた2名を縛った上、「カネ、カネ、キンコ」などと片言の日本語で脅し、現金約30万円と日本刀等(時価合計約900万円)を奪った。
 1999年3月24日午前3時頃、大阪府寝屋川市の住居に侵入。家にいた2名を縛って軽傷を負わせた上、「カネ、ドコ」「キンコ、ドコ」などと片言の日本語で脅し、現金約24万円を奪った。
 1999年4月23日午前1時40分頃、大阪市の住居に侵入。家にいた2名を縛った上、「カネ、カネ、キンコ」などと片言の日本語で脅し、現金約115万円及び腕時計等(時価合計約140万円)を奪った。
 1999年5月13日午前2時頃、大阪府豊中市の住居に侵入。家政婦(当時66)の両手両足を縛り猿ぐつわを噛ませてきつく締め上げるなどの暴行を加えて窒息死させた上、現金約25,000円を奪った。
 孫被告は犯行後、韓国に逃亡したが、2005年4月初旬に身柄を拘束。日韓犯罪人引き渡し条約に基づき、日本に移送、逮捕された。
裁判所
 大阪地裁 並木正男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月15日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 判決理由で並木裁判長は、孫被告が被害者の女性の口に巻いたさるぐつわをきつく締め直した点を指摘。「被害者の窒息死に直接かかわっており、共犯者の中でも責任はとりわけ重い」「金品のために危険な行為を辞さない悪質な犯行で、酌量の余地はない」と指弾した。
備 考
 主犯の李龍煕(イ・ヨンヒ)容疑者は2000年に韓国内で、民家に侵入し、駆けつけた警察官にけがを負わせたとして強盗致傷罪で服役。日韓両国間の犯罪人引き渡し条約に基づき、2005年3月中に日本国内に移送し、逮捕する手続きを進めていたが、刑期満了日の3月13日早朝に自殺した。
 襲撃先の選定・運転主役の李※洙(※=火へんに亢 イハンス)被告は求刑通り無期懲役判決が、2005年3月31日に最高裁で確定。実行役の一人である梁淳吉被告は2004年2月25日、大阪地裁で求刑通り無期懲役判決(控訴せず確定?)。運転手役のI被告は一審懲役12年判決(確定?)。

 被告側は控訴した。

氏 名
有嶋博明(25)
逮 捕
 2004年11月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 無職有嶋博明被告とパチンコ店員S被告は、無職M被告(盗品等無償譲受罪で起訴)とともに通行人を殺し金などを奪おうと計画。2004年10月26日午前2時頃、大阪市北区の繁華街で歩いていた会社員の男性(当時28)に因縁を付けた上路地に連れ込み、有嶋被告とS被告は執拗に顔や頭を殴ったり蹴ったりして51,000円の入った財布やバッグを奪った。男性は意識不明で救急搬送されたが、11月7日に死亡した。
裁判所
 大阪高裁 島敏男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月16日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 島裁判長は判決理由で、一審判決と同様に被告の未必の殺意を認定。「発端は偶発的ではあるが、一方的に暴行を加え続けた凶悪な犯行で、遺族らも強い処罰感情を抱いている」「刑事責任は重大で減軽の余地はない」とした。
備 考
 府警は3人組の似顔絵を公開するなどして捜査。男性の友人らがホームページで目撃情報の提供を呼び掛けるなどしていた。
 両被告に厳罰を求める被害者の友人や元同級生ら約20人の嘆願書が、大阪地裁に証拠採用された。
 S被告は求刑懲役15年に対し、懲役12年の判決が一審で確定。
 2006年2月16日、大阪地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年9月、上告取下げ、確定。

氏 名
武藤陽一(34)
逮 捕
 2005年6月15日(4月10日の強盗致傷容疑。他の強盗致傷事件で公判中)
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗致死、強盗致傷、窃盗他
事件概要
 群馬県沼田市の無職武藤陽一被告は2005年4月9日午前2時15分ごろ、市道を歩いていた無職の男性(当時53)の後をつけ、人けのない道路脇の側溝に突き落として頭などを踏みつけ、現金500円とキャッシュカード入りの財布を奪い、約6時間後に死亡させた。
 さらに10日午後7時35分ごろには、同市の駐車場で無職の男性(当時67)を暴行して金品を奪い、約3ヶ月後に死亡させるなど、3月下旬から4月中旬で同市内で強盗6件を繰り返し、2人を死なせ、3人にけがを負わせた。
 武藤被告は車上狙いの窃盗などの罪で服役していた刑務所を2004年12月に仮出所し、沼田市内にあるフィリピンパブに月に数回通うようになった。2005年3月上旬ごろには所持金が尽きたため、フィリピンパブでの飲食代欲しさに同月中旬ごろから犯行を繰り返した。
 その他の起訴事実は以下。
 3月18日:男性(当時53)から現金35,000円などを強奪。
 3月27日:男性(当時61)に重傷を負わせ、現金23,000円などを強奪。
 4月12日:男性(当時50)に重傷を負わせ、現金1,000円などを強奪。
 4月16日:男性(当時43)から現金17,000円などを強奪。
 4月17日:男性(当時61)に軽傷を負わせ、デジタルカメラを強奪。
裁判所
 東京高裁 白木勇裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月23日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 量刑不当を訴えた様子。
 白木裁判長は「悪質極まりなく、言語道断と言わざるを得ない。犯行はフィリピンパブに行くためで、動機に同情の余地はない」とした。
備 考
 2006年3月9日、前橋地裁で一審無期懲役判決。上告せず確定と思われる。

氏 名
西浦和也(37)
逮 捕
 2005年5月21日(死体遺棄容疑で)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、監禁
事件概要
 香川県綾歌郡宇多津町の暴力団組員西浦被告は、知人の男性住職(当時25)から300万円の借金の返済を迫られたため、第三者を装って借用証書などを奪おうと計画。2005年5月16日午後9時半ごろ、坂出市のマンションの一室に男性を誘い込み、共謀した男二人(ともに監禁罪で懲役2年6月の実刑確定)に襲わせ、目や手足を粘着テープなどで縛って監禁した。さらに借用証書の入ったかばんなどを奪い、17日午前零時過ぎごろ、口封じのため男性の鼻や口に粘着テープを巻き付けて窒息死させた。
裁判所
 高松高裁 湯川哲嗣裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月24日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「無期懲役は重い」などと主張したが、湯川裁判長は「借金の支払いを免れる目的で被害者を殺害した経緯、動機に酌むべきものはない」などと退けた。
備 考
 2006年1月11日、高松地裁丸亀支部で一審無期懲役判決。上告せず確定と思われる。

氏 名
畠山敬(56)
逮 捕
 2004年2月22日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 静岡県富士市の会社員畠山敬(はたけやま・たかし)被告は、近所の女性(当時76)から借りていた12万円の返済期限だった2004年2月17日までに5万円しか用意できず、返済の猶予を頼んだが、女性に「家族に話す」などと言われたため、殺害を決意。2004年2月18日朝午前7時ごろ、自宅にいた女性の頭を用意した金属製ハンマーで数回殴るなどして転倒させ、さらに背後から頭などを数十回殴って殺害し、7万円の返済を免れた上、現金約13000円などを奪った。
裁判所
 東京高裁 池田修裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年8月24日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 検察側は死刑を求め、被告側は刑が重すぎることを理由に控訴していた。
 池田裁判長は判決理由で「動機は身勝手で酌むべき事情はなく、頭をハンマーで数十回強打した残虐極まりない犯行。1978年にも強盗殺人未遂事件を起こすなど悪質性は顕著で、死刑を求める検察官の主張にも理由がある」と指摘。
 その上で「周到な計画性はなく、前の事件の仮釈放後、16年余りは家庭を持ってまじめに働いていた。また遺族に謝罪の手紙を書き、反省の態度も示している。極刑選択には、躊躇を覚える」と述べた。
備 考
 畠山被告は1978年にも強盗殺人未遂事件を起こし、懲役9年が確定している。
 2005年6月2日、静岡地裁沼津支部で求刑死刑に対し、一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
宮田好信(56)
逮 捕
 2005年1月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 無職宮田好信被告、柏木信幸被告、K被告は、2004年9月24日夜に東京都江東区の路上で帰宅途中の会社経営者の男性(当時61)を拉致して乗用車の中に連れ込み、走行中の車内で現金50万円などを強奪。宮田被告は翌29日午前8時過ぎ、神奈川県綾瀬市の自宅に連行した男性の首を絞めて殺害し、遺体を八王子市の山林に埋めた。
 宮田被告らは、会社社長水越清一被告から依頼を受けていた。水越被告は男性に700~800万円を貸しており、貸金を回収するために宮田被告らに男性の顔写真と約110万円の準備資金を渡していた。
裁判所
 東京高裁 池田修裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月29日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 宮田被告は強盗殺人、死体遺棄については自首を主張。また、業務上過失傷害、道路交通法違反について無罪を主張した。
 判決で、自首は認められなかったが、一審では有罪であった業務上過失傷害、道路交通法違反については無罪が認められたため、一審判決を破棄し改めて無期懲役の判決が言い渡された。
備 考
 柏木信幸被告は2005年12月2日、一審無期懲役判決。2006年4月24日、被告側控訴棄却。上告中?
 水越清一被告は2006年3月9日、一審無期懲役判決。2006年7月13日、被告側控訴棄却。上告せず、確定。
 K被告は求刑無期懲役に対し、従属的立場が認められ、2006年5月18日、懲役15年判決。
 2005年12月2日、東京地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年12月18日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
穂積一(28)
逮 捕
 2003年11月5日(9月6日に自首)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人他
事件概要
 穂積被告は2000年8月頃、中学時代の同級生だった会社員の女性(当時22)を偶然見かけ、一方的に好意を持って待ち伏せするようになった。10月16日午後8時50分ごろ、徒歩で通りかかった女性を乱暴する目的で車で低速ではね、道路脇の畑地に運び、持参した洋包丁で首を刺して殺害した。
裁判所
 東京高裁 仙波厚裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月29日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 穂積被告は自首したものの、拘留中から黙秘に転じ、初公判で無罪を主張。両親が昨夏、自立させるため、引っ越し先の福島県から以前住んでいた同区の自宅へ連れて行き、1人で生活させようとしたが、穂積被告は「大きな騒ぎを起こせば両親が迎えに来ると考え、テレビで未解決事件として特集されていたこの事件の犯人であるとの虚偽の自白をした」と主張した。
 二審でも一審同様、無罪を主張した。
 仙波裁判長は判決理由で「殺害前に車ではねたことなど、出頭時点で捜査当局がつかんでいなかった犯行の核心部分を述べており信用できる」と判断し、一審同様に被告側の主張を退けた。
備 考
 女性の家族は検察側が一審で無期懲役を求刑した後、「家族の意見、思いが十分反映された判決を」と訴える署名活動を始めた。
 被害者の女性の母(当時53)は、2006年8月1日、横浜市にある踏切にて普通電車にはねられて死亡した。遺書はなかったが、踏切に靴がそろえて置かれていたことなどから、県警は自殺とみている。穂積被告は一審判決の法廷で無期懲役の判決言い渡しを受け退廷する際、「お前ら(家族)が駅に迎えに行かなかったから娘は死んだんだよ」と家族に暴言を浴びせた。その内容を苦にしたものと思われる。
 事件後、母親は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、毎月カウンセリングを受けていたという。控訴審で、「子どもを殺された親ほど辛く悲しいものはない。苦しさに耐えきれず何度も自殺を考え、箱根の山中を車で一晩中さまよった。自傷行為を止めることができなくなり、手首には20本以上の傷が残っています」とする意見陳述書を提出していた。
 2005年3月28日、横浜地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年6月12日、被告側上告棄却、確定。
 被害者の父は、穂積一被告を相手取り、約5,510万円の損害賠償を求める訴えを2006年12月22日、横浜地裁に起こした。損害賠償の中には、自殺した被害者の母の相続分を含んでいる。

氏 名
叶錦(38)
逮 捕
 2005年4月20日(強盗致傷罪などで高松地裁で公判中)
殺害人数
 1名
罪 状
 有印私文書偽造、同行使、旅券法違反、住居侵入、強盗、窃盗、建造物侵入、強盗致傷、強盗致死、強盗傷人
事件概要
 中国籍の無職叶錦(イエチン)被告は他の中国人や日本人8人と共謀。2004年5月11日、弘前市に住む会社社長の男性(当時63)方に押し入り、男性と妻の口や鼻を粘着テープでふさいで脅迫し、現金約260万円と、約650万円相当の貴金属を奪った。呼吸が出来なくなった男性は窒息死し、妻は負傷した。
 他に叶錦被告は中国人を中核とするグループの主犯格として、2003~2004年にかけて、兵庫県西宮市、香川県丸亀市、愛媛県伊予市などで、会社社長宅などを狙った強盗や窃盗など6件を繰り返し、弘前の事件を含め現金や貴金属など計約8680万円相当を奪った。
裁判所
 仙台高裁 田中亮一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月29日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 被告側は「量刑は重すぎる」などと主張したが、田中裁判長は「犯行は危険かつ凶悪で、責任は重大」などと退けた。
 また被告側は強盗事件については無罪を主張したが、田中裁判長は「各事件にほぼ主導的に関与していたと認められる」と述べた。
備 考
 叶被告は当初、劉邦と名乗っていたが、公判中に本名が叶と分かった。
 この事件では9人が関わったとされ、うち4人が逮捕・起訴されている。残る実行犯5人のうち、逮捕状を取って指名手配しているのは2人で、事件後まもなく中国に出国した。あとの3人はあだ名が分かるだけで本名が不明とされ、特定が難航している。
 運転手・見張り役の日本人男性には一審懲役13年(求刑懲役15年)、情報・滞在場所提供の元暴力団組長に一審懲役15年(求刑通り)、情報提供者の元暴力団組長と実行犯の中国人グループを仲介した中国人女性には、一審懲役10年(求刑懲役13年)が言い渡されている。
 2006年1月20日、青森地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。

氏 名
下田宗仙(35)
逮 捕
 2003年3月30日(3月16日の事件について)
殺害人数
 0名
罪 状
 わいせつ略取、強盗強姦、強盗強姦未遂、窃盗、道路運送車両法違反、強姦未遂、強姦、わいせつ略取誘拐
事件概要
 愛知県江南市の建設作業員下田宗仙(むねのり)被告は、以下の事件を起こした。
 2002年8月22日、木曽川町内のショッピングセンター駐車場で乳児を連れた女性の車に押し入り、カッターナイフで脅して女性の腕を粘着テープで縛り、約2時間連れ回し現金2,000円を奪った。
 2003年3月16日午前零時ごろ、愛知県県岩倉市の路上で信号待ちしていた女性店員(当時25)の軽自動車にわざと追突。車から降りた女性に示談を装って近づくと、いきなり羽交い締めにして車に乗せ、粘着テープで縛り移動し、車内で現金約15,000円を奪った。
 上記を含め、2002年8月から2003年3月までの間に、一宮市や江南市などで当時18歳から32歳の女性計8人に対し、相手の車に無理やり乗り込みカッターナイフを突き付けるなどして、現金やキャッシュカードを奪い乱暴するなどした。
 また、下田被告が事件発覚を免れるため、犯行に使用した車に、盗んだナンバープレートを装着していた点を重視し、道路運送車両法違反の罪でも起訴している。
裁判所
 最高裁第二小法廷 藤田宙靖裁判長
求 刑
 無期懲役、罰金15万円
判 決
 2006年8月31日 無期懲役、罰金15万円(検察側上告棄却、確定)
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 一・二審とも、未決拘置日数30日を1日5000円で換算して罰金刑に算入しており、名古屋高検は「罰金を支払う必要が事実上なくなるため、算入は不当だ」と主張、最高裁判例に違反するとして上告した。下田被告は、事実上、罰金を支払う必要がなくなり、検察側は「無期懲役刑とした強盗強姦などの罪で生じた未決拘置日数を、別の道路運送車両法の罰金刑に算入するのは納得できない」としている。
 最高裁判所は事案を異にする判例を引用するもので適切ではないと判断。そして職権で判断した結果、刑法は併合罪関係にある数罪を併合審理して刑を言い渡す場合、その数罪を包括的に評価して、それに対し1個の主文による刑を言い渡すべきものとしているから、勾留事実に係る罪を含む併合罪関係にある数罪についての刑に未決勾留日数を算入する限り、上記原則に従ったものであるとし、本件に関しても違法性はないと、検察側の主張を退けた。
備 考
 量刑の見直しは求めていないが、求刑通りの判決が言い渡された事件で検察側が上告するのは極めて異例。
 2004年11月17日、名古屋地裁一宮支部で一審無期懲役判決。2005年9月12日、名古屋高裁で被告・検察側控訴棄却。

氏 名
石川良(49)
逮 捕
 2004年8月12日(死体遺棄容疑 うその不動産登記を法務局に申請したとする事件で2005年7月24日、有印公文書偽造、同行使の疑いで逮捕・起訴済み)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、有印公文書偽造、同行使他
事件概要
 会社員石川被告は、自分が勤めるホテルの客室の区分所有権取得を、世田谷区に住む会社社長の女性(当時57)に頼まれた。計約6000万円の代金を受け取ったが遊興費などで使い込み、発覚を防ぐために偽造した登記済権利証を渡してごまかした。架空取引に気づいた女性は2005年2月4日、返済を迫るためにホテルに出向き、資金回収を石川被告に迫ったが、石川被告は女性の首を絞めて殺害。さらに娘婿(死体遺棄容疑で起訴)に手伝わせ、遺体を静岡県裾野市の山林に遺棄した。
 石川被告はかねてから女性に架空の不動産投資を持ちかけており、女性は2002年9月、自宅に投資会社を設立。親族2人のほか、知人の紹介で知り合ったばかりの石川被告も役員に就任した。石川被告はそのころから、品川区内のホテル客室を対象とした架空の不動産投資を女性に持ち掛けており、計約1億5千万円をだまし取っていた。
裁判所
 東京高裁 仙波厚裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年8月31日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 一審で石川被告は殺意や強盗目的を否定している。
 判決理由等は不明。
備 考
 2006年1月26日、東京地裁で一審無期懲役判決。東京地裁で初めて「期日間整理手続き」が適用された。
 被告側は上告した。2006年12月19日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
中村昇(39)
逮 捕
 1995年7月9日
殺害人数
 9名
罪 状
 殺人、殺人損壊、殺人未遂、逮捕監禁致死、殺人予備
事件概要
 オウム真理教元幹部中村昇被告は以下の4つの事件で起訴された。
 (1)1993年11月からのサリン生成プラント建設。(2)1994年6月27日、長野県松本市でサリンを撒布し住民7人を殺害、被告は実行現場の警備役を担当。(3)1994年7月10日、信者の逃亡を手助けしようとした元信者の首をロープで絞めて殺害、遺体を焼却。(4)1995年2月28日、逃亡した女性信者の所在を聞き出すために信者の実兄である目黒公証役場事務長を逮捕監禁、死亡させ、遺体を焼却。
裁判所
 最高裁第二小法廷 古田佑紀裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年9月4日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で中村被告は目黒公証役場事務長監禁死亡事件で逮捕監禁罪の成立を認めた以外は、殺意を否認するなどして無罪を主張していた。
 最高裁で弁護側は「無期懲役は重すぎる」と主張したが、最高裁は「上告理由に当たらない」とした。
備 考
 2001年5月30日、東京地裁で求刑死刑に対し、一審無期懲役判決。2003年9月25日、東京高裁で検察、被告側控訴棄却。被告側のみ上告していた。

氏 名
中村英雄(31)
逮 捕
 2002年9月26日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人
事件概要
 会社員中村被告は2002年9月26日午前0時45分ごろ、借金返済に絡むトラブルから、徳島市の歩道付近で、近くの元金融会社男性社員(当時31)と口論になった。中村被告は持っていたフィッシングナイフで男性と、男性の知人の女性(当時27)の腹部などを何度も刺して失血死させた。中村被告は現場から車で逃走したが、パトカーが追跡。車は約500メートル離れた道路脇の鉄柱に衝突し、中村被告は全身打撲の重傷を負った。
 中村被告は「男性らから呼び出されて借金を取り立てられ、口論になって刺した」と逮捕当時供述している。
裁判所
 最高裁第二小法廷 古田佑紀裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月4日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で弁護側は、相手が先にナイフを突きつけてきた、正当防衛であると主張している。
 上告理由、判決理由は不明。
備 考
 2004年6月17日、徳島地裁で一審無期懲役判決。2006年2月28日、高松高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
梶原幸子(27)
逮 捕
 2005年1月20日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 無職梶原被告は無職佐藤広志被告(一・二審無期懲役 上告中)と共謀し、2004年12月19日午後10時40分頃、牡鹿町鮎川浜の国定公園内で、石巻市に住む会社員の女性(当時23)を棒のようなもので殴って殺し、現金約1万8千円の入ったバッグを奪った。さらに2人は、女性のバッグからアパートの鍵を奪って部屋に侵入し、現金およそ8,000円を奪った。2人は女性からあわせて3万数千円の借金があり、返済を迫られていた。奪った金は遊びに使った。遺体は1月20日に発見された。
 仙台市内の佐藤被告の祖母宅に侵入、祖母の頭を殴ったり包丁で脅したりして現金約3万円を奪うなどした。
裁判所
 最高裁第二小法廷 古田佑紀裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月4日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 上告理由は不明。
備 考
 2005年9月26日、仙台地裁で求刑通り一審無期懲役判決。2006年4月13日、仙台高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
小松武史(40)
逮 捕
 1999年12月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、名誉毀損他
事件概要
 元消防士の小松被告は、弟(事件後に自殺)と付き合っていた女子大生(当時21)が別れ話を持ち出したことに腹を立て、仕返しをしてやろうと決意。弟や他の3人(懲役15~18年が確定)とともに1999年7~8月、女子大生を中傷するビラを自宅周辺などにまいた。さらに、小松被告は3人へ指示を出し、10月26日昼、JR桶川駅前で女子大生を刺殺させた。
裁判所
 最高裁第二小法廷 津野修裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月5日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 上告理由、判決理由は不明。
備 考
 女子大生は、中傷ビラの配布などに絡み、名誉棄損容疑で上尾署に告訴し、助けを求めていたが、署員3人=懲戒免職、虚偽有印公文書作成罪などで有罪確定=が告訴調書を改ざんするなどして捜査を放置し、この間に殺人事件が起きた。事件はストーカー被害を見直す契機となり、2000年11月に「ストーカー規制法」が施行された。
 2003年12月25日、さいたま地裁で無期懲役判決。2005年12月20日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
ジョーラン・コロナション・デ・オバル(39)
逮 捕
 2004年6月24日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、窃盗
事件概要
 フィリピン国籍、住所不定無職のジョーラン・コロナション・デ・オバル被告は、三重県鈴鹿市の飲食店従業員中野敬三(公訴中)被告らと共謀し、2004年5月3日午前4時ごろ、愛知県佐屋町(現・愛西市)に住む無職男性(当時52)方で、男性の首を刃物で刺して殺害し、キャッシュカードを奪ったうえ、遺体をビニール製の袋に詰め込み、男性方の押し入れに放置。奪ったキャッシュカードで現金1600万円を盗んだ。遺体は5月9日に発見された。
裁判所
 名古屋高裁 門野博裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月6日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 一審で弁護側は主犯格の中野敬三被告の計画に従っただけとし「預貯金を引き出したとされる窃盗罪は無罪。強盗殺人罪はほう助にとどまる」と主張、寛大な刑を求めたが退けられている。
 控訴理由、判決理由は不明。
備 考
 2005年1月27日、名古屋地裁で一審無期懲役判決。上告せず、確定。

氏 名
チネン・ソリス・ケンジ・ロベルト(24)
逮 捕
 2006年4月18日(詐欺容疑 5月10日に強盗殺人で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、非現住建造物等放火、詐欺
事件概要
 ペルー国籍で日系3世のチネン・ソリス・ケンジ・ロベルト被告(日本名知念健二)は、2006年3月16日午後10時半ごろから翌17日午前1時ごろにかけ、自らが働いていた男性向けホスト派遣型風俗店の経営者で、豊島区に住む男性(当時41)のマンションにて、鈍器で男性を殴ったり、包丁で首や右手首などを切り付けたりして殺害、室内に放火し、現金約10万円や腕時計など計13点(約14万円相当)を奪った。さらに奪ったクレジットカードで数10万円の商品を購入し、直後に三分の一の値段で換金していた。
 ロベルト被告は消費者金融などから借金をしていたため、男性のもとへ借金を申し込んだが断られたため、犯行に及んだ。
裁判所
 東京地裁 福崎伸一郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月8日 無期懲役
裁判焦点
 被告は犯行を認めている。
 福崎裁判長は「借金を申し込んだが断られたため殺害しており、短絡的、自己中心的な動機に酌量の余地はない」と述べた。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
小田嶋透(49)
逮 捕
 1996年11月14日(有印私文書偽造容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、窃盗、有印私文書偽造他
事件概要
 自称デザイナー小田嶋被告は、派手な生活を維持するため、証券会社の課長代理に顧客から金を集めさせ、これを奪うことを計画。1995年9月ごろ、架空の出資計画を作り上げ、課長代理に持ち掛けた。
 出資計画を信じた課長代理が顧客に説明し、出資金4億1900円を集めた。小田嶋被告は1996年1月に横浜市内でナンバープレートを盗んだほか、山梨県小淵沢町内の貸別荘を借り、遺体を埋める場所を下見するなど犯行を準備。1996年2月5日、小田嶋被告は「小淵沢でミーティングをする」とだまして課長代理を連れ出し、午後10時すぎに山梨県内の中央自動車道小淵沢インターチェンジ近くに止めた自分の車の中で、課長代理(当時33)の首をロープで絞めて殺害、現金を奪い、遺体を長野県富士見町の山林に埋めた。
 警視庁は、失跡した課長代理を詐欺容疑で指名手配するとともに、最後に接触していた小田嶋被告から任意で事情を聴くなどして調べていたが、小田嶋被告はその最中の1996年9月25日より、狂言誘拐事件を起こした。11月には自分で指を切って自宅に送るなどの工作も行っている。11月13日、警視庁は自作自演と断定、14日逮捕した。
 その後、小田嶋被告が犯行の下見に同行させたとされる女性の証言に基づき捜索したところ、貸別荘近くから課長代理の遺体が見つかり、警視庁は12月6日に小田嶋被告を強盗殺人、死体遺棄容疑で再逮捕した。小田嶋被告は1996年8月、北海道に住むこの女性に約2億8000万円の現金が入ったスーツケースを送っていたことが判明している。
裁判所
 最高裁第三小法廷 上田豊三裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年9月12日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 上告理由、判決理由は不明。
備 考
 2002年5月8日、東京地裁で一審無期懲役判決。判決理由で岡田雄一裁判長は「完全犯罪を企て、周到な準備に基づき実行した計画的な犯行。労せずして一挙に多額の現金を得ようとした動機に酌量の余地はなく、非道の極み」と指摘したが「更生が全く期待できないわけではなく、極刑がやむを得ないと断じるには躊躇を感じる」と述べた。「被害者からマネーロンダリング(資金の洗浄)を頼まれ、自分の金と被害者の金を交換したが、別れた後は一度も会っていない」とする小田島被告の公判での供述については「話の内容自体が不合理で弁解は信用できない」と退けた。死刑を求刑した検察側と、無罪を主張する被告側がともに控訴していた。
 捜査本部は1990年のサントリー株事件の実行役で現金4億5000万円を持ったまま行方不明になっている投資顧問業者(詐欺罪で指名手配)の失跡にも関与した疑いがあるとみて関連を調べていたが、起訴されなかった。
 2004年9月9日、東京高裁で検察・被告側控訴棄却。被告側のみ上告していた。
 2005年5月11日、元証券会社社員を使って持ち掛けた架空の投資話で現金をだまし取られたとして、東京都内のコンピューターソフト制作会社が小田嶋被告に9000万円の返還を求めた訴訟で、東京地裁は全額の支払いを命じた。
 被害者の両親は小田嶋被告に2300万円の損害賠償を求めた。2007年6月22日、東京地裁は1,700万円余りの支払いを命じた。三代川三千代裁判長は「両親に多大な精神的苦痛を与えた。小田島受刑者は犯行を否認し、10年以上が経過しても慰謝を図っていない」と述べた。

氏 名
小田川育英(51)
逮 捕
 2004年11月22日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺
事件概要
 埼玉県上尾市の小田川育英(いくえ)被告は知人の女性と共謀して2003年7月27日未明、自宅から約700メートル離れた伊奈町の路上で、睡眠薬で眠らせた会社員の夫(当時41)を車に乗せて座席に火を付け、一酸化炭素中毒で殺害。夫に掛けられた保険金約4,500万円をだまし取った。
 小田川被告は2000年と2001年、上尾市内に相次いで飲食店を開店し、金のことで夫と言い争うようになった。夫が死亡した時には、開店資金などで約600万円の借金を抱えていた。小田川被告は、保険金が支払われた後、借金を返済し、2004年11月、さいたま市で新たにホストクラブを開店していた。女性は小田川被告がかつて経営していた飲食店の元従業員だった。
裁判所
 東京高裁 池田修裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月12日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 量刑不当を理由に、検察・被告双方が控訴していた。
 一審判決では「保険金をだまし取ることが主な目的ではなかった」などとしていたが、池田裁判長は「子どもを手元に置いておきたいという考え自体、身勝手極まりない。保険金が重要な動機になっていることは明らか」と判断した。その上で、「犯行は理不尽なもので殺害方法は残忍。懲役20年にした一審判決は著しく軽くて不当」と述べた。
備 考
 知人の女性は、殺人ほう助罪で懲役4年の刑が確定した。
 2006年3月8日、さいたま地裁で懲役20年判決。

氏 名
和泉フヂヲ(58)
逮 捕
 2005年12月21日
殺害人数
 1名
罪 状
 強制わいせつ致死、殺人
事件概要
 無職和泉フヂヲ被告(当時57)は2005年12月9日午後11時ごろから翌日午前1時ごろにかけ、高知市のアパート自室で同市で居酒屋を経営する女性(当時70)にわいせつな行為をした上、首を絞めて殺害した。
 被害者の女性は和泉被告を子どものころから知っており、仕事を紹介したり、金に困ったときは数万円を貸すなど親切に接しており、和泉被告はかねてから女性に好意を抱いていた。和泉被告は当日、女性が経営する居酒屋で飲んだ後、二人で別のスナックに移動。和泉被告は言葉巧みに自宅に連れ込んでいた。
 和泉被告は犯行後北海道まで逃走。高知南署は12日、殺人容疑で指名手配。21日朝、青森県内で逮捕された。
裁判所
 高知地裁 永淵健一裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年9月13日 無期懲役
裁判焦点
 和泉被告は供述で「どうやって殺したかは言いたくない。墓場まで持っていく」「恩をあだで返した」「死刑になっても仕方ない」などと話している。
 弁護側は初公判で「強制わいせつ致死は争わないが、殺人罪の殺意の存在に疑問がある」とし、「被告は犯行当時、飲酒による病的酩酊で心神喪失状態だった」と主張。後に精神鑑定を請求したが却下されている。
 検察側は求刑論告で「わが子のように被告人に恩恵を与えていた被害者を言葉巧みに自宅に連れ込み、必死に抵抗するのを顧みず、10―15分もの間、執拗に何度も首を締め殺害した。犯行後は遺体を自宅に放置したまま北海道まで逃亡し、逮捕後は『酒に酔っていて覚えていない』と弁解して刑事責任の減免を図るなどした」と指摘。
 こうした犯行状況を踏まえ「女性の人権を一顧だにしない自己中心的な犯行で、被告人がこれまでに犯した前科の性犯罪と手口が著しく類似している。反省の情や、被害者や遺族の心情を酌もうとする人間性のかけらも全く認められない」と悪質性を厳しく非難した。
 その上で「被告人は殺人を含む同種の性犯罪3件で計約20年間も服役しながら、出所後わずか約2年で前科と似た手口の犯行を起こした。矯正教育の効果は全く認められず、社会に放せば再犯は必定だ。刑法改正による殺人罪の厳罰化や自然な市民感情を考慮すれば、極刑しかない」と死刑求刑の理由を述べた。
 弁護側は最終弁論で「確定的な殺意はなく、年齢的にも再犯はあり得ない。無期懲役が相当」と述べた。
 判決で永淵裁判長は争点の殺意について、「繰り返し首を絞めたと推認され、強固な攻撃意思があり、女性に性的行為を強いる際に絞首行為が伴う行動様式もあった」とする一方、「首を一気に絞め上げていないなど、確定的殺意には合理的な疑いが残る」と検察側の主張を否定。「未必の殺意にとどまる」と認定した。
 弁護側は「酩酊による心神喪失または耗弱状態だった」と主張したが、同裁判長は「計画的に被害女性を自宅に連れ込むなど合理的な行動を取った。殺害後も女性に布団をかぶせている」などと、責任能力を明確に認めた。
 その上で、同被告が1978年-1997年の間、わいせつ行為を伴う女性殺害や婦女暴行致傷を3回起こして計約20年も服役し、2003年11月に仮出所後も今回の殺人事件のほかに女性2人を乱暴するなど同種犯罪を繰り返している点を強調。
 「改善、更生の可能性は著しく低い。犯行後は遺体を放置して10日余り逃亡し、捜査、公判を通して『犯行時の記憶がない』と不合理な供述をするなど反省もない。死刑選択も十分考えられる」と厳しく指摘した。
 その一方で、「殺害を事前に計画しておらず、強固な殺意も認め難い。被告人の年齢を考えると、無期懲役を選択しても再犯防止に相応の効果が期待できる」と述べ、最後に「再犯防止の観点からも仮釈放の運用には慎重な配慮が必要だ」と付け加えた。
備 考
 和泉被告は1973年に高知市内で顔見知りのホステスに「接客対応が悪い」と因縁をつけて顔を殴った傷害の現行犯で逮捕された。さらに1978年10月には高知市内の自宅を訪れた女性(当時39)の首を閉めるなどした強姦致傷事件を起こし、服役した。仮出所してわずか1ヶ月後の1981年5月、高知市内で知り合ったホステスの女性(当時40)を自宅に連れ込んで暴行した上、首を絞めて殺害。懲役12年の刑を受けて服役した。出所後の1997年、高知市内で女性を暴行、首を絞めて怪我を負わす事件を起こし懲役6年の実刑判決を受け、2003年11月に出所していた。服役歴は合計で20年になる。
 他にも数回暴行事件を起こし、いずれも示談で済ませている。
 検察・被告側は控訴した。2007年4月17日、高松高裁で検察、被告側控訴棄却。2008年4月21日、検察、被告側上告棄却、確定。

氏 名
小岩数夫(67)
逮 捕
 2002年9月12日(詐欺容疑。知人女性への住居侵入、逮捕監禁致傷で2002年6月14日、起訴済。10月2日、強盗殺人で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、詐欺、有印私文書偽造、同行使、住居侵入、逮捕監禁致傷
事件概要
 無職小岩数夫被告は、2002年5月17日頃、青森市の無職女性(当時81)方で女性の首を手で絞め、口を手でふさぐなどして、女性を窒息死させた。そして遺体が発見される同月20日ごろまでの間に、現金数万円と預金通帳1冊、印鑑1個を奪った。さらに青森市内の銀行から現金363万円を引き出したとされた。小岩被告は女性の姪の元夫だった。
 さらに知人女性に対する住居侵入、逮捕監禁致傷罪がある。
裁判所
 最高裁第一小法廷 泉徳治裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月13日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2004年4月21日、青森地裁は懲役3年6月の判決。強盗殺人については無罪、住居侵入と逮捕監禁致傷のみ有罪とした。検察側が控訴。2005年4月19日、仙台高裁で一審破棄、無期懲役判決。

氏 名
佐々木彰(74)/中村謙二(43)
逮 捕
 2005年6月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、窃盗、強盗他
事件概要
 埼玉県草加市の飲食業伊藤萬寿男被告、東京都荒川区の無職佐々木彰被告、住所不定無職城後健一被告、住所不定無職中村謙二被告、群馬県藤岡市の無職I被告、アルゼンチン国籍で群馬県伊勢崎市の無職ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ブラジル国籍で群馬県県太田市のレンタルビデオ店手伝いド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告は共謀し、強盗殺人を計画。
 2004年12月7日午前4時頃、主犯格の伊藤被告と佐々木被告、城後被告、アンドレス被告、アキラ被告の5人が、群馬県作詞の無職女性宅に押し入り、同居していた会社員の男性(当時49)の首を絞めて殺害。キャッシュカードや現金5000円、指輪など貴金属計20数点(時価合計48万円相当)を奪った。
 伊藤、佐々木の両被告と、中村、城後、アキラ、ミウラの4被告は、それぞれ別の窃盗グループを構成。群馬県前橋市に住む女性は中村被告の知人、I被告は中村被告と仕事で知り合った仲という。今回の事件は、伊藤被告と中村被告が知り合って8人がグループになり、I被告が中村被告に情報を提供、計画した。
 また2004年8月から2005年6月にかけて、佐々木被告は関東4県での窃盗や強盗計4事件、中村被告は関東など4県での窃盗、強盗、詐欺など計8事件で起訴されている。
裁判所
 東京高裁 原田国男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 原田裁判長は「規範意識が乏しく、人の死も顧みない。刑事責任は重大で酌量すべき事情を見いだせない」と判決理由を述べた。
備 考
 7人と一緒に逮捕された群馬県の女性は処分保留で釈放。佐久署捜査本部が、別の事件でだまし取ったと知りながら貴金属を質店に売ったとして、盗品等処分あっせんの疑いで再逮捕した。
 伊藤萬寿男被告、城後健一被告、ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告はいずれも求刑通り一審無期懲役判決。控訴中。I被告は一・二審懲役15年判決。
 2006年4月19日、長野地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年1月中?、被告側上告棄却、確定。

氏 名
少年(19)
逮 捕
 2006年4月8日(死体遺棄容疑で)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 トラック運転手の少年(事件当時19)は2006年1月26日午後9時ごろ、静岡県河津町の畑で、高校の同級生だった調理師見習(当時19)の頭部をスコップで殴り、手で口をふさぐなどして殺害し、約4万円などを奪って遺体を畑に埋めた。
 被告の少年は知人からベンツを譲り受けたが代金を支払えずキャンセル料を求められたため、月々の支払い分3万円を支払うため被害者の少年に借金を申し込んだが、断られたため殺害した。
裁判所
 静岡地裁沼津支部 姉川博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月14日 無期懲役
裁判焦点
 被告は容疑を認めている。
 検察側は論告で、少年は車の購入代金の支払いに困っており、3万円の借金を断られたため元同級生を殺害したと指摘、「極めて非人間的で悪質な犯行」と述べた。
 弁護側は最終弁論で「被告は元暴力団員である知人から『今度やったら埋めるぞ』などと計108万円の恐喝を受けたためで、殺されるとの強い恐怖心にとらわれていた」と主張した。
 姉川裁判長は「動機は自己中心的かつ短絡的。内省も不十分」「今後も安易な理由で他者に危害を加える可能性を否定できない」と指摘。少年であることや素直に事実を認めていることなどを考慮しても、刑事責任は重いと判断した。
備 考
 静岡地裁沼津支部で初めて公判前整理手続きが適用された。8月29日に初公判、31日に結審した。
 控訴せず、確定。

氏 名
中島長美(57)
逮 捕
 2003年11月16日(殺人容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺未遂
事件概要
 栃木県足利市に住む無職中島長美被告は、土地取引を通じて足利市に住む元郵便局員の男性(当時40)に近づき、障害者施設の建設費などのため保険金殺人を計画。男性に、2001年4月に7500万円の、一時帰国した5月29日に1億円の海外旅行傷害保険に加入させた。2つとも、第三者に殺害された場合は倍額が支払われる契約だった。掛け金は中島被告が支払った。
 中島被告は、当時フィリピンにいた埼玉県吉川市の廃品回収業大谷正三元被告と共謀。大谷元被告は、自身がミンダナオ島ダバオで店長をつとめているカラオケパブの店員だったフィリピン人男性に殺害を依頼した。フィリピン人男性は2001年6月1日午前3時ごろ、マニラに渡航した男性を刺殺。大谷元被告は中島被告から報酬として140万円を受け取り、大谷元被告は約20万円をフィリピン人男性に手渡した。中島被告らは同8月に第三者による殺害を装い、保険金をだまし取ろうとした。契約の不備を理由とし、保険金は支払われていない。
裁判所
 東京高裁 安広文夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月14日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2006年8月22日の控訴審初公判で、弁護側は「一審判決は首謀者と認定したが、殺害を持ち掛けたのは大谷受刑囚で、中島被告は事件前に中止を求め、共謀は解消していた」として無罪を主張。検察側は控訴棄却を求めた。
 安広裁判長は、大谷受刑囚の供述内容について「具体的かつ詳細で客観的事実などとも符合している。自身の判決確定までほぼ一貫しており、中島被告に責任転嫁しているとは考えられない」などと認めた。そして「中島被告が保険金殺人の計画を立て、実行した首謀者であり、一審判決に誤認があったとはいえない」と指摘した。
備 考
 中島被告は2002年6月、交通事故で死亡した男性(当時54)の妻から、自賠責保険金1496万円を着服したとして逮捕され、同年11月、懲役1年8月の実刑判決を受けた。栃木刑務所で服役し、事件当時は仮出所したばかりだった。
 大谷元被告は2004年11月9日、宇都宮地裁で一審無期懲役判決。控訴したが後に取下げ、確定している。
 2006年2月23日、宇都宮地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年1月23日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
中村卓也(35)
逮 捕
 2005年11月8日(現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 道路交通法違反、公務執行妨害、殺人、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反
事件概要
 千葉県八千代市の無職中村卓也被告は2005年11月8日午後2時25分ごろ、成田空港の検問所で警備員から免許証の提示を求められた。所持していなかったため警備員らが成田空港署に通報したが、署員の職務質問を受けた直後に車に飛び乗り、ゲートを突破。空港内を暴走して、東関東自動車道に入った。佐倉インターチェンジで降りた際には、追跡のパトカーにバックでぶつかるなどして現場まで約15キロ逃げ続けた。同日午後3時10分ごろ、佐倉市の市道で追跡して職務質問をしてきた成田空港署の警部補(当時48 殉職後、警視へ二階級特進)を持っていたナイフ(刃渡り約8センチ)で刺した。警部補は防じん服の隙間から右脇腹を刺され、午後9時45分頃死亡。緊急配備で現場に駆けつけた佐倉署の巡査部長(当時40)を刺し、約3週間のけがを負わせた。
 中村被告は趣味の写真撮影のため空港に行った際、無免許が発覚し、逮捕を恐れて逃走したとされる。
 中村被告は自宅の屋根瓦を投げつけたり、ゴミに火を付けるなどして、近くの住民が警察署に相談をしていた。
裁判所
 千葉地裁 山口雅高裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月14日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 弁護側は、被告が犯行時に心神喪失または心神耗弱の状態だったと主張しているが、検察側は「精神鑑定の結果などから、完全な責任能力を有していたことは明らか」と反論。また「犯行に至る経緯と動機ははなはだ身勝手。被告には攻撃的傾向があり、再犯の可能性も大きい」と指摘した。
 判決理由で山口裁判長は「精神鑑定でも精神状態は正常で、責任能力は完全に備えていた」と述べ、弁護側の「被告は数年前から異常な言動が目立ち、犯行時は心神耗弱か心神喪失状態だった」との主張を退けた。そして「長年自宅に引きこもり、自己本位な性格に安住してきた生活態度が招いた犯行」「犯行は常識では考えられない暴挙で、市民社会の平穏な秩序の維持に対する重大な挑戦だ」と指弾した。
備 考
 千葉地検は責任能力の有無を確認する鑑定留置を実施、完全に責任能力があると判断した。
 控訴せず確定。

氏 名
岩知道吉隆(55)
逮 捕
 2005年2月4日
殺害人数
 1名(死者計2名)
罪 状
 強盗殺人、業務上過失致死他
事件概要
 京都市左京区の飲食店経営、岩知道(いわちどう)被告は、知人だった税理士事務書院の女性(当時49)を殺害してでも金銭を奪おうと計画。2005年1月3日午前2時ごろ、ベランダの窓ガラスにガスバーナーの火で穴をあけて侵入。ベッドに寝ていた女性に千枚通しを突き付けたところ、抵抗されたため、首を包丁で数回突き刺して殺害。手提げ金庫を奪って逃げた。金庫に現金はほとんど入っていなかった。
 岩知道被告は女性の元夫から勧められたマルチ商法などに参加したが、約1000万円の借金を作り、元夫と女性に憎しみを抱くようになっていた。
 岩知道被告は1月21日未明、同市内の名神高速道路で乗用車を分離帯に衝突させ、助手席の母親(当時91)を死亡させたとして業務上過失致死の罪でも起訴されている。
裁判所
 最高裁第一小法廷 島田仁郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月15日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2005年9月12日、京都地裁で一審無期懲役判決。2006年4月、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
竹内藤吉(55)
逮 捕
 2005年7月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入他
事件概要
 無職竹内被告は2005年2月22日、北海道赤平市の市営住宅に住む女性(当時59)方に押し入り物色していたところ、女性が帰宅したため包丁で首を刺し、現金14000円とキャッシュカード2枚を盗んで逃走した。女性は意識不明の重体となり、5月19日に死亡した。
 赤歌署は竹内被告の逮捕状を取り、行方を追っていたが、6月24日に富良野市内の空き家に侵入したとして、富良野署が住居侵入の疑いで現行犯逮捕。処分保留で釈放された7月6日、赤歌署が逮捕した。
裁判所
 札幌高裁 長島孝太郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月21日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「被告に殺意はなかった」と一審と同様、強盗殺人罪より刑罰の軽い強盗致死罪の適用を主張したが、長島裁判長は「首を相当、強い力で刺したと認められ、偶然、刺さったとは考えられない」と退け、竹内被告の殺意を認定した。
備 考
 2006年3月23日、札幌地裁岩見沢支部で一審無期懲役判決。上告せず、確定。

氏 名
福島大三(82)
逮 捕
 2002年7月11日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火
事件概要
 埼玉県熊谷市の養鶏場従業員福島大三被告(当時65)は経営者の長井俊一元被告(当時49)に依頼され、生命保険金と火災保険金を得る目的で1989年4月5日午後9時20分ごろ、住み込み従業員のTさん(当時53)方に放火しプレハブ平屋住宅約20平方メートルを全焼させ、Tさんの妻H子さん(当時48)を焼死させ、Tさんにも4ヶ月のやけどを負わせた。
 長井元被告は福島被告の自宅建設の金を負担するなど、保険金で得た約2,800万円のうち約300万円が福島被告に流れている。
 事件当時、Tさんは事情聴取で「出火当時、従業員の男がいた」と話していたが、後に「覚えていない」と証言が揺れたため、警察では慎重に捜査を続けていたが、2002年にTさんが再度「男がいた」と証言したため、7月11日に福島被告を、続いて長井被告を逮捕した。
裁判所
 東京高裁 池田修裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年9月26日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 福島被告は捜査段階で「『家を建ててやって金もやる。一生めんどうをみる』と長井元被告に頼まれて火をつけた」と供述したが公判で翻し、実行行為への関与を否定して無罪を主張していた。
 一審では知的障害のあるTさんの証言の信用性が焦点となった。Tさんは事件直後「おじちゃん(福島被告)に火を付けられた」と県警などに話したが、その後「ガスの不始末」と翻し、再び「福島被告が室内に油をまいているのを見た」と証言した。さいたま地裁川上裁判長は、捜査段階での心理学者の意見書を根拠に「(Tさんは)境界線知能の水準だが、長期記憶の保持能力に劣るところはない」と信用性を認めた。
 また判決は福島被告が長井被告から報酬として、養鶏場の金銭出納帳に記載されていた現金300万円を受け取ったことなどを理由に、福島被告の実行行為への関与を認定した。
 そして「人の生命に対する畏敬の念はみじんもうかがわれず、利欲と打算に基づいた冷酷非道な犯行の動機に酌量の余地は一片もない」と述べた。

 二審でも弁護側は、福島被告が犯行に加担したと認める状況証拠がなく、捜査段階の自白には信用性がないなどと無罪を主張したが、池田裁判長は「自白には迫真性があり、客観的状況とも矛盾しない」と述べ、退けた。
 池田裁判長は「保険金目的で何の落ち度もない夫婦を殺傷した凶悪で冷酷な犯行」と非難。その上で、首謀者の元養鶏場経営者長井俊一元被告の無期懲役刑確定を挙げ、「長井受刑者は仮出所中の被告を雇った立場を利用し、恩を着せて殺害を依頼した。無期懲役とは歴然とした差異のある極刑は、共犯者間の刑の均衡を失する懸念をぬぐい難い」「経営者に利用され、巻き込まれた面があるのは否定できない。年齢などを考えると極刑はいささか躊躇を覚えざるをえない」「と述べた。
備 考
 福島被告は借金を重ねて不仲になった女性との別れ話がこじれて1968年1月16日に殺害し、死体とともに女性宅を焼損。1969年8月1日に懲役20年の判決を受けて服役。1984年6月に仮出所し、事件当時は仮出獄中だった。

 被害者の元従業員男性は、長井俊一被告、福島大三被告らを相手に、妻を殺害された慰謝料や着服された保険金、流用された障害基礎年金など計約7,480万円の損害賠償を求めていたが、2005年7月1日、東京地裁(水野邦夫裁判長)で和解した。和解の内容は長井被告と同被告の妻が今月末に計500万円を支払い、支払われた段階で男性側が提訴を取下げるというもの。福島被告については賠償能力がないため、金銭を求めず取下げることにした。男性の代理人は「男性が『本当はそんな額の金額ではないが、ごちゃごちゃするのはもう嫌だ』と話したため受け入れた。男性は高齢で少しでも生活の足しになるのならと早期解決を選んだ」としている。
 長井俊一元被告は求刑死刑に対し、一・二審無期懲役判決が2005年11月29日、最高裁で確定している。

 2003年7月1日、さいたま地裁(川上拓一裁判長)で求刑通り死刑判決。一審判決時78歳。被告側は上告した。2007年5月28日病死。82歳没。最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は6月19日付で、公訴棄却を決定した。

氏 名
小田勝(41)
逮 捕
 2006年3月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 無職小田勝被告は借金を返済するため、既に退社した派遣会社に未払い給料を要求したが逆に寮費などを請求され逆恨みし、給料配達係の男性(当時28)の殺害を計画。別の会社の派遣社員で知り合いだったT被告を誘い、2006年3月17日午前11時20分ごろ、電話で、男性を群馬県伊勢崎市境矢島のし尿処理施設駐車場に呼び出し、乗用車のドア越しに包丁で刺して殺し、未配達の給料約90万円を奪った。小田被告は2005年7月下旬から2006年3月まで、被害者が勤務していた人材派遣会社に登録し、被害者から給料を受け取っていた。
 T被告は計画段階から犯行に加担。殺害方法の指示や現場の見張り、車の運転を受け持ち、奪った現金のうち20万円を受け取った。奪った金は小田被告が家賃返済などに充てたほか、両被告が飲食店や風俗店で使った。
裁判所
 前橋地裁 久我泰博裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月26日 無期懲役
裁判焦点
 被告側は起訴事実を認めている。
 検察側は「金のためには他人の命を顧慮しない、身勝手で残忍極まりない犯行」「用意周到で、強固な殺意に基づく残忍極まりない非人間的な犯行。犯行後に偽装工作もしており悪質だ」と断じた。
 久我裁判長は「28歳という若い命を奪われた無念は計り知れない。両被告人は犯行後、強取した金で豪遊し、反省の情はみじんも感じられない」「冷酷、残忍な犯行。小田被告は終始一貫して主導的役割を果たした」と述べた。久我裁判長は、小田被告について「犯行を常に主導的に行い、直接の実行行為も自ら1人で行っている」として求刑通り、T被告については「刑事責任は極めて重大だが、その役割は従属的」として、有期刑最長の懲役刑を言い渡した。
備 考
 T被告は求刑無期懲役に対し、懲役30年が言い渡された。
 控訴せず、確定。

氏 名
倉山義輝(51)
逮 捕
 2004年4月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 無職倉山義輝被告は、無職国分信安被告、漁業黒岩由美夫被告と共謀し、2003年12月29日夜、長崎県対馬市に住む金融業者の男性(当時82)方に強盗目的で侵入。妻(当時79)の頭を木製の棒で殴るなどし、脳挫傷などで死亡させた。
裁判所
 福岡高裁 浜崎裕裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月26日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 倉山被告は「刑が重すぎる」などと主張していたが、浜崎裁判長は判決で「犯行に誘われると金目的の動機からさほどためらわず承諾し、殺害の具体的方法を提案して実際に殺害した」と指摘。「犯行は倉山被告なしには実行され得なかったと言え、その刑事責任は重大で一審の量刑はやむを得ない」とした。そして「金のために他人の命を奪うこともいとわない極めて身勝手で利欲的な動機に酌量の余地はない」と厳しく批判した。
備 考
 強盗殺人容疑で逮捕され、処分保留となっていた厳原町の無職男性については「犯行に対する関与の程度が低い」として不起訴処分となっている。
 国分信安被告は2006年2月17日、求刑懲役15年に対し一審無期懲役判決、控訴中。黒岩由美夫被告は2006年3月3日、求刑通り一審無期懲役判決、控訴中。
 2006年2月17日、長崎地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年6月頃、被告側上告棄却、確定。

氏 名
安藤博(66)
逮 捕
 2006年2月18日(死体遺棄容疑で)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、詐欺
事件概要
 元保険代理業安藤博被告は、保険の顧客であったさいたま市に住む女性が、家を火災で焼失して土地を売却したことなどにより多額の金を手にしたことを知り、2003年7月、虚偽の資金運用話を持ちかけて1900万円の小切手を受け取った。しかし、株式運用に失敗し金を返すことができなくなり、女性から返済を求められたことから、女性の殺害を決意。安藤被告が返済を約束した日である2004年12月28日正午ごろ、女性(当時77)のマンション駐車場に止めた自分の乗用車の中で女性の首をロープで絞めて殺害し、同月30日ごろ、遺体を同市浦和区内の雑木林に埋めた。
 女性の家族は2005年1月に家出人捜索願を出していた。安藤被告は株取引の失敗などで5000万円以上の借金があった。
裁判所
 さいたま地裁 飯田喜信裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月27日 無期懲役
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裁判焦点
 被告は初公判で、起訴事実を認めている。
 検察側は論告で「無謀な株式投資が招いた金銭的窮状から逃れるため、他人の生命を奪った残忍で卑劣な犯行」「落ち度のない被害者を殺害した極めて残忍な犯行」と指摘した。
 飯田裁判長は「被告人は一獲千金を狙い多額の資金を株式投資につぎ込んでいた。損失を重ねて資金繰りに苦慮したため、うそを言って被害者から資金を引き出し、返済を免れるために殺害した。自己保身にきゅうきゅうとするあまり極めて安直に犯行を決意した。ロープや遺体を埋めるシャベル、シートを購入するなど計画性は高く、強固な殺意に基づく執拗かつ残忍で非情な犯行」と理由を述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2006年12月19日、東京高裁で被告側控訴棄却。2007年3月26日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
黒岩由美夫(46)
逮 捕
 2004年1月7日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 漁業黒岩由美夫被告は無職倉山義輝被告、無職国分信安被告と共謀し、2003年12月29日夜、長崎県対馬市に住む金融業者の男性(当時82)方に強盗目的で侵入。妻(当時79)の頭を木製の棒で殴るなどし、脳挫傷などで死亡させた。
裁判所
 福岡高裁 浜崎裕裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年9月28日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 黒岩被告は一審同様「殺人の共謀はしていない」と強盗致死罪の適用を主張していた。しかし、浜崎裁判長は「被告の供述は不自然で信用できない。犯行の首謀者として最も重要な役割を果たしており、無期懲役が重すぎとは言えない」と結論づけた。
備 考
 強盗殺人容疑で逮捕され、処分保留となっていた厳原町の無職男性については「犯行に対する関与の程度が低い」として不起訴処分となっている。
 倉山義輝被告は2006年9月26日、一審無期懲役判決の被告側控訴棄却、上告中。国分信安被告は2006年2月17日、求刑懲役15年に対し一審無期懲役判決、控訴中。
 2006年3月3日、長崎地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年6月25日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
安納三久(51)
逮 捕
 2005年6月15日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 栃木県に住む無職安納三久被告は、2005年4月19日午前、横浜市保土ヶ谷区に住む主婦(当時56)宅に強盗目的で侵入し、女性の首などを刃物で刺して殺害し、財布を奪った。安納被告と女性は10年前からの知り合いで、安納被告は「女性に千数百万円貸していた」と供述。しかし、同被告は消費者金融などに計約1600万円の借金があり、女性宅からも同被告の60万円の借用書が見つかった。女性は長女(当時27)に「私に何かあったら安納(被告)だから」と話していた。
裁判所
 東京高裁 須田賢裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月5日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は殺意を否定したが、須田裁判長は「あらかじめ凶器となる複数の刃物を準備していた」として退け、「犯行は甚だ冷酷かつ残忍で、刑事責任は誠に重大」と述べた。
備 考
 2006年5月24日、横浜地裁で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年12月6日、上告取下げ、確定

氏 名
李正雨(53)
逮 捕
 2005年3月11日(別の強盗容疑で起訴済)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強盗傷害、窃盗、銃刀法違反他
事件概要
 韓国籍の無職李正雨被告と無職K被告は、埼玉県熊谷市の元ヤミ金融業者で無職S被告に頼まれ、2005年1月14日午後7時15分頃、群馬県旧箕郷町の自宅玄関付近にいた金融業の男性(当時54)に、ドア越しに拳銃を発射して殺害した。
 S被告は男性と金銭トラブルを抱えており、李被告に報酬300万円で依頼した。李被告は覚醒剤の購入資金ほしさなどから依頼を受けた。K被告は殺害目的を知りながら、銃の入手と運転手をした。
 ほかに、李被告は強盗傷害や多額窃盗などを13件、K被告は強盗傷害など4件の罪を問われている。
裁判所
 前橋地裁高崎支部 高野芳久裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月6日 無期懲役
裁判焦点
 弁護側は最終弁論で、李被告が家族ぐるみでつきあっていたS被告から何度も頼まれ断り切れなかったとして、情状酌量を訴えた。李被告は最後に、「どんな言葉で謝罪しても許されることではない。ただ一点だけ、金が欲しくてやったのではない」と話した。
 高野裁判長は「拳銃の試射や下見を入念にするなど、計画的で悪質な犯行」などと述べた。李被告には「殺人と強盗致傷など計二十件の犯行を繰り返し、規範意識の欠如が顕著」と指摘。動機について「覚せい剤購入資金に困り殺害を引き受けた。あまりに身勝手で自己中心的」とした。また「300万円の報酬で面識すらない被害者を射殺した安易で身勝手な犯行」と指摘した。
備 考
 K被告は求刑懲役20年に対し、懲役16年が言い渡された。S被告は犯行を否認して公判中。
 控訴せず、確定。

氏 名
アンドレ・ルイス・アキラ・ド・アラマル(34)
逮 捕
 2005年6月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗他
事件概要
 埼玉県草加市の飲食業伊藤萬壽男被告、東京都荒川区の無職佐々木彰被告、住所不定無職城後健一被告、住所不定無職中村謙二被告、群馬県藤岡市の無職I被告、アルゼンチン国籍で群馬県伊勢崎市の無職ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ブラジル国籍で群馬県太田市のレンタルビデオ店手伝いド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告は共謀し、強盗殺人を計画。
 2004年12月7日午前4時頃、主犯格の伊藤被告と佐々木被告、城後被告、アンドレス被告、アキラ被告の5人が、群馬県作詞の無職女性宅に押し入り、同居していた会社員の男性(当時49)の首を絞めて殺害。キャッシュカードや現金5000円、指輪など貴金属計20数点(時価合計48万円相当)を奪った。
 伊藤、佐々木の両被告と、中村、城後、アキラ、ミウラの4被告は、それぞれ別の窃盗グループを構成。群馬県前橋市に住む女性は中村被告の知人、I被告は中村被告と仕事で知り合った仲という。今回の事件は、伊藤被告と中村被告が知り合って8人がグループになり、I被告が中村被告に情報を提供、計画した。
 その他、県外での強盗など7件の罪で起訴されている。
裁判所
 東京高裁 田中康郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月11日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 殺意がなかったと訴えたか?
備 考
 7人と一緒に逮捕された群馬県の女性は処分保留で釈放。佐久署捜査本部が、別の事件でだまし取ったと知りながら貴金属を質店に売ったとして、盗品等処分あっせんの疑いで再逮捕した。
 I被告(二審懲役15年)を除き、いずれの被告も一審で求刑通り無期懲役判決を受けている。佐々木、中村被告はすでに控訴が棄却されている。
 2006年5月24日、長野地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年1月?、被告側上告棄却、確定。

氏 名
小松代啓史(29)
逮 捕
 2003年11月
殺害人数
 0名
罪 状
 住居侵入、強盗致傷、強制わいせつ、強盗強姦、強盗、窃盗、詐欺、窃盗未遂
事件概要
 無職小松代(こまつしろ)啓史被告は、無職S被告と共謀。2003年8~11月、東京、埼玉、千葉、栃木各都県で「配電盤の点検に来た」と嘘を言って、女性宅計10軒に侵入。殴ったり包丁で脅したりして金品を奪ったほか、5人を強姦するなどした。金品の被害は小松代被告の単独犯行分も含め、約500万円に上った。
裁判所
 東京高裁 高橋省吾裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月11日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 高橋省吾裁判長は「近隣住民に気付かれないよう言葉巧みに窓を閉めさせるなど犯行は巧妙で卑劣。刑事責任は誠に重大」と述べた。
備 考
 S被告は2005年11月2日、求刑通り一審懲役20年判決。2006年10月11日、被告側控訴棄却。
 2005年11月14日、東京地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年3月22日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
小瀬義人(22)
逮 捕
 2005年4月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、現住建造物等放火、死体損壊
事件概要
 飲食店アルバイト小瀬義人(こせ・よしと)被告は、2005年4月6日午前0時半頃、広島市安佐北区の飲食店アルバイトの女性(当時47)宅を訪れたが、交際していた女性の長女(当時26)の入院費用を巡るトラブルから口論となり、女性の胸などをナイフで刺して殺害。さらに小銭入れを奪った後、女性の遺体などに灯油をまいて、ライターで火をつけた。火は燃え広がり、木造2階建て延べ約50平方メートルを全焼させた。
 小瀬被告は2004年春から2005年2月まで、女性宅で同居していた。
裁判所
 広島高裁 楢崎康英裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月12日 無期懲役(一審破棄)
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裁判焦点
 一審で小瀬被告は、「被害者になじられカッとなって殺害に及んだ」と、強盗殺人等の起訴事実を否認。検察側は論告で「被害者を殺害して、ついでに金を奪おうという強盗殺人の意思があったのは明らか」とした。弁護側は強盗殺人ではなく、殺人と窃盗罪の適用を求めていた。地裁は強盗殺人を認めたが、「利欲目的が殺害の動機付けになっていない」と判断。「典型的な強盗殺人とは趣を異にする」点などを考慮し、刑を減軽していた。検察側が控訴していた。
 判決理由で楢崎裁判長は、一審判決が「金品を奪うことが殺害の動機づけになっていない」とした点について「被告は被害者方へ向かう途中で殺害する可能性が高いことは分かっており、被害者を殺害した後も室内を物色して小銭を奪うなどした」などと改めて強盗殺人罪を認定。計画性について「ある程度の計画性を否定できない」などとして、検察側の主張を認め、「典型的な強盗殺人事案とは著しく異にするという原判決の指摘は誤っている」とした。
備 考
 2006年1月27日、広島地裁で一審懲役25年判決。量刑不当を理由に検察側が控訴していた。
 被告側は上告した。2007年1月30日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
赤松忠司(38)
逮 捕
 2006年2月4日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 無職赤松忠司被告は2005年12月12日午後11時ごろ、松山市に住む愛媛大学の男性(当時21)のマンションで、トレーナーなどで男性の首を絞めて殺害し、現金1万円と室内にあったゲーム機1台、攻略本やゲームソフト52点(計24000円)を奪った。
 赤松被告と男性はゲーム仲間だった。赤松被告は逮捕時、「借りていた1万円を返せと言われ、かっとなって殺した」と容疑を認めている。
裁判所
 松山地裁 前田昌宏裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月12日 無期懲役
裁判焦点
 被告側は起訴事実を認めている。
 検察側は「生活費を調達しようとし、被害者の死を自殺であるかのように偽装したことは身勝手である」と指摘した。また弁護側の「被告は左腕で首を絞め上げた後、いったん犯意を放棄した。警察に言われたら捕まると思い口封じで殺害した」との殺意はなかったという主張に対し、「とどめを刺すためトレーナーを使うなど、左腕で絞めた時点から殺意があった」と反論した。
 弁護側は最終弁論で「殺意を一度放棄しており、『このまま放置すると警察に通報される』と思ってトレーナーで再度、首を絞めた」と改めて主張。「強固な犯意はなかった」とし、検察側が主張する犯行の一貫性や計画性を否定した。
 赤松被告は最後、「男性の夢も希望も奪ってしまい、本当に申し訳ありません」と謝罪の手記を述べた。
 前田裁判長は判決理由で「自らの自堕落な生活を省みることなく、金欲しさで凶悪な犯行に及んでおり、短絡的で身勝手な動機にしんしゃくすべき点は全く無い。殺害後、被害者が自殺したように見せ掛けようとしており、自責、悔悟の念もうかがわれず情状は極めて悪い」と述べた。
備 考
 控訴せず、確定。

氏 名
少年(20)/少年(20)/少年(21)
逮 捕
 2005年6月20日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、強盗致傷他
事件概要
 福島県飯舘村に住む会社員の少年(当時19)、無職の少年2被告(ともに当時19)は会社員のS被告(公判中)と共謀。2005年6月19日未明、出会い系サイトで福島県飯館村の少女(当時17 公判中)に呼び出させた福島市の男性会社員(当時21)をバールや木刀などで暴行、現金約4000円や乗用車などを奪って死亡させた。
 事件前の6月7日、少年たちはS被告を同様の手口で誘い出した後、車で連れ回しながら暴行、全治5週間のけがを負わせたうえ、現金91万円を奪った。S被告はこの事件後、暴行を受けたり脅されたりして、少年たちの犯行に加わっていた。
 他にもう1件、強盗致傷で起訴されており、被害金額は総計で250万円以上になる。
裁判所
 仙台高裁 田中亮一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 3被告とも量刑不当を主張。うち2被告は従属的立場を主張した。
 田中裁判長は、弁護側が従属的だったと主張していた無職の男2人について「(主犯格の男の)提案に賛同し、主体的に重要な役割を果たした」と退けた。そして「刑を酌量減軽するまでの事情は見いだし難い」とした。
備 考
 強盗致死に問われたS被告は無罪を主張したが、2006年7月20日、仙台地裁は懲役8年(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。山内昭善裁判長は「同じ手口で仲間に金を取られ、その穴埋めをしたいという動機は、私利私欲や身勝手な思考に基づくもの」と述べた。12月14日、仙台高裁は一審を破棄、懲役7年の判決を言い渡した。判決理由の中で田中亮一裁判長は、S被告自身が少年グループに暴行を受けて金品を奪われた強盗致傷事件の被害者であったこと、少年グループの一人が暴力団構成員であったと思い込み、家族や職場に迷惑が掛かるのではないかと心配して犯行に従属的に加わったことを認めつつも、何の落ち度もない男性を死亡させた責任を指摘した。判決言い渡しの後、裁判長は被告に「なにをすべきなのかを自分で考え、それを実行する勇気を持って下さい」と語りかけた。被告は上告した。
 傷害致死で逮捕された少女は弁護側が家裁への移送を求めており、公判が分離されている。懲役13年が求刑されたが、2006年9月22日、福島地裁(大沢広裁判長)は、無職少女(19 犯行時17)について「相当長期間少年院に収容し、改善更生を図ることがより相当」として、福島家裁に移送する決定を下した。
 2006年4月21日、福島地裁で一審無期懲役判決。3被告とも上告した。2006年10月13日、仙台高裁で被告側控訴棄却。2007年2月19日、被告側上告棄却、確定。
 被害者の母親は、被告5人および事件当時未成年だった4人の親6人を相手取り、約6,500万円の支払いを求めた損害賠償請求を訴えた。2006年12月7日の第1回口頭弁論で、被告側はいずれも事実関係を認め、和解の方向で協議が進められる。訴状によると、母親は男性の生涯賃金や慰謝料などを合わせて約1億800万円と主張。保険会社から受け取った保険金4,300万円との差額を求めている。
 うち、無職の元少年被告2人の親3人について、2007年1月9日、和解協議が成立した。1月11日、被告5人に対し、福島地裁は原告の訴え通り6,500万円を支払うよう命じた。和解していない元少年と無職少女の親3人も2月末には和解する見通しで、和解が成立すれば、被告11人で解決金を含め計約6,500万円を原告に支払うことになる。

氏 名
村田幹夫(48)
逮 捕
 2005年7月13日(入院中)
殺害人数
 6名
罪 状
 殺人、嘱託殺人
事件概要
 愛知県知多市の鉄工会社経営村田幹夫被告は弟(当時44)と共謀し、2005年4月2日午前7時20分~8時までの間、父(当時74)方で、母(当時74)、父、妻(当時38)、長男(当時9)、長女(当時11)の順に、首にビニール製のロープを巻き付け殺害。村田被告と弟はこの後、ともに包丁で刺し合って弟は死亡した。村田被告は同月4日午後9時5分頃に110番通報した。
 村田被告は自宅近くに鉄工所を経営しており、以前は工場を持っていたが、ここ数年は受注が減るなどして資金繰りに窮し、2、3月に不渡り手形を出して数千万円の借金を出し、休眠状態になっていた。
裁判所
 名古屋地裁 伊藤新一郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月16日 無期懲役
裁判焦点
 被告側は殺人について認めているが、弟の共謀を否定している。
 検察側は論告で、被告は放漫な経営で鉄工会社の経営を悪化させ、融資詐欺などで多額の借金を抱えたと指摘。家族の将来を悲観して心中を決意したと述べた。「動機は信じ難いほど独善的で言語道断。育ててくれた両親や苦労を共にした妻らをためらいなく殺害した」と断罪したが「自己の利益目的ではなく、改悛の情も認められる」「6人の命を奪った結果が重大で、極刑も考えられるが、(無理心中との)不幸な事件という面も否定出来ず、罪一等を減ずる」と説明した。
 弁護側は最終弁論で被告は借金などで精神的に追い詰められ心神耗弱だった上、犯行後は警察に通報し自首が成立するとして刑を減軽すべきだと主張した。
 判決で伊藤裁判長は「被害者の数や生命の大切さの無思慮を考慮すると、借金の返済に追い詰められた事情などを最大限考慮しても、無期懲役に処する必要がある」と述べた。伊藤裁判長は動機について「他人の生死を一方的な思い込みから決定する独善的なものであり、幼子2人を含む尊い命が奪われた結果は余りにも重大」と指摘。「死にたくないと訴える母親、妻、幼い子供を次々と容赦なく殺害しており、残虐で悪質。結果はあまりにも重大」と述べた。一方「後に残す家族の身の上について誤った思いやりから事件に及んだ側面も認められる」とも述べた。弁護側の心神耗弱状態であったという主張に対しては、村田被告が凶器のロープを4重にして強度を高めていたことなどから「是非を判断する能力が著しく減退していたとは認められない」と退けた。
備 考
 弟は殺人容疑で書類送検されている。控訴せず、確定。

氏 名
柳町左伊(38)
逮 捕
 2005年3月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体遺棄
事件概要
 横浜市の柳町左伊(さい)被告は、9社13件計1億5,890万円の保険金を得るために会社員である夫の殺害を計画。2005年3月6日、知人である元人材派遣会社員の男性と共謀し、夫に睡眠薬を飲ませた後、男性に首を絞めさせたが、夫が目を覚まして抵抗したため、左伊被告がハンマーで頭を数回殴った。ベルトで窒息死させた後、中国籍で鍵製造販売業の男と一緒に遺体を乗用車に乗せ、7日午後11時ごろ、北杜市白州町花水の市道脇に遺棄した。
裁判所
 甲府地裁 川島利夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月18日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 検察側は、会社員に約1億6000万円の生命保険がかけられ、左伊被告と共謀した男2人が、「報酬をもらう約束で殺害や遺体の遺棄を左伊被告から依頼された」と供述したことを挙げ、「保険金目的で殺害し、犯行で主導的な役割を果たしていたことは明らか」と指摘した。
 左伊被告は2005年7月13日の初公判で、「夫を殺していないし、無職の男が殺害するところも遺体を遺棄しているところも見たことはない」と起訴事実を全面否認したが、その後の公判で弁護側が「(左伊被告は)男2人と一緒に遺体の遺棄について相談した」と述べ、死体遺棄罪については共謀したことを認めた。遺棄の実行行為への関与は否認。また、左伊被告は、「無職の男が夫の頭をハンマーで殴り首を絞めているのを見たことを思い出した」と証言の一部を変更した。
 最終弁論で弁護人は、夫が、左伊被告との夫婦げんかの仲裁に入った左伊被告の知人で、元人材派遣会社員の男性を殴ったため、男性が逆上し、殺害したと主張。「偶発的で、男性の単独犯行」とした。死体遺棄は共謀を認めたが、猶予付き判決を求めた。
 左伊被告も殺人への関与を否定。最終陳述で「男性がひょう変したのを初めて見て体が固まってしまった。今思えば自首させればよかった」と述べた。
 川島裁判長は「金銭欲に目がくらんだ、計画性の高い執ようで残忍な犯行」と指摘した。左伊被告の無罪主張については、「被告の弁解は矛盾が多く信用できない」として退けた。
備 考
 殺人と死体遺棄の罪に問われた男性は、求刑懲役20年に対し、懲役15年の判決が一審で確定している。中国人の男性は死体遺棄罪で懲役10月・執行猶予2年が確定している。
 被告側は控訴した。2007年4月5日、東京高裁で被告側控訴棄却。2007年9月3日、最高裁で被告側上告棄却、確定。

氏 名
ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス(33)
逮 捕
 2005年6月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗他
事件概要
 埼玉県草加市の飲食業伊藤萬壽男被告、東京都荒川区の無職佐々木彰被告、住所不定無職城後健一被告、住所不定無職中村謙二被告、群馬県藤岡市の無職I被告、アルゼンチン国籍で群馬県伊勢崎市の無職ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ブラジル国籍で群馬県太田市のレンタルビデオ店手伝いド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告は共謀し、強盗殺人を計画。
 2004年12月7日午前4時頃、主犯格の伊藤被告と佐々木被告、城後被告、アンドレス被告、アキラ被告の5人が、群馬県作詞の無職女性宅に押し入り、同居していた会社員の男性(当時49)の首を絞めて殺害。キャッシュカードや現金5000円、指輪など貴金属計20数点(時価合計48万円相当)を奪った。
 伊藤、佐々木の両被告と、中村、城後、アキラ、ミウラの4被告は、それぞれ別の窃盗グループを構成。群馬県前橋市に住む女性は中村被告の知人、I被告は中村被告と仕事で知り合った仲という。今回の事件は、伊藤被告と中村被告が知り合って8人がグループになり、I被告が中村被告に情報を提供、計画した。
 その他、県外での強盗など7件の罪で起訴されている。
裁判所
 東京高裁 田中康郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月18日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 殺意の有無を訴えたか?
備 考
 7人と一緒に逮捕された群馬県の女性は処分保留で釈放。佐久署捜査本部が、別の事件でだまし取ったと知りながら貴金属を質店に売ったとして、盗品等処分あっせんの疑いで再逮捕した。
 I被告(二審懲役15年)を除き、いずれの被告も一審で求刑通り無期懲役判決を受けている。佐々木、中村、アラマル被告はすでに控訴が棄却されている。
 2006年5月24日、長野地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年1月中?、被告側上告棄却、確定。

氏 名
国分信安(58)
逮 捕
 2004年4月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 無職国分信安被告は、無職倉山義輝被告、漁業黒岩由美夫被告と共謀し、2003年12月29日夜、長崎県対馬市に住む金融業者の男性(当時82)方に強盗目的で侵入。妻(当時79)の頭を木製の棒で殴るなどし、脳挫傷などで死亡させた。
裁判所
 福岡高裁 浜崎裕裁判長
求 刑
 懲役15年
判 決
 2006年10月19日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 被告側は、倉山義輝被告とは強盗の共謀しかしておらず、強盗殺人の共謀はしていないため、強盗もしくは強盗致死にしか相当しない。自らの供述を認めず、倉山被告の供述を採用して強盗殺人の罪状で裁いた一審判決は間違っている。また、量刑不当であると訴えた。
 判決理由で、浜崎裁判長は「強盗殺人の謀議に加わったり、凶器を準備したりするなど犯行に深く関与した。無期懲役が重すぎるとは言えない」と述べた。
備 考
 強盗殺人容疑で逮捕され、処分保留となっていた厳原町の無職男性については「犯行に対する関与の程度が低い」として不起訴処分となっている。
 倉山義輝被告は2006年9月26日、一審無期懲役判決の被告側控訴棄却、上告中。黒岩由美夫被告は2006年9月28日、一審無期懲役判決の被告側控訴棄却、上告中。
 2006年2月17日、長崎地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年6月25日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
森本浩明(38)
逮 捕
 2005年1月27日
殺害人数
 0名
罪 状
 強姦、強姦致傷、住居侵入他
事件概要
 大阪市の婦人服卸業森本浩明被告は2004年3月~2005年1月、帰宅途中だった19~35歳の女性14人の後をつけ、女性が自宅マンションの部屋に入ろうとするところ押し入り、顔を殴ったり首を絞めたりして脅して、乱暴するなどした。その際、住民を装って女性と一緒にエレベーターに乗り込み、途中階で降りて安心させたうえで、女性宅の階まで非常階段を駆け上がるなどしていた。
裁判所
 大阪高裁 島敏男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月25日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 一審で角田裁判長は「無期懲役の求刑も理解できるが、事件をいずれも認めて反省しており、矯正の可能性が全くないとは断定できない」と述べていた。
 大阪高裁島裁判長は「矯正効果に期待して有期刑とした一審判決の量刑理由は理解できなくもないが、改正刑法が強姦致傷罪などの法定刑を引き上げており、無期懲役が相当だ」「この種の事案でも著しく悪質。無期懲役を避ける理由はなく、一審判決は軽きに失した」と述べた。
備 考
 2006年3月22日、大阪地裁で懲役30年判決。2005年1月の改正刑法施行後、有期刑最上限の懲役30年が言い渡されたのは初めてだった。

氏 名
鷹尾健一(34)
逮 捕
 2000年12月3日
殺害人数
 2名
罪 状
 覚せい剤取締法違反、死体遺棄、傷害、殺人、傷害致死
事件概要
 無職鷹尾健一被告と、無職S被告は1999年夏頃から同居。その頃からS被告の長男(当時6)、長女(当時4)を執拗に虐待。当時住んでいた広島市東区のアパートで1999年9月26日、長男をビニール袋に密封して窒息死させ、遺体を安芸区の山中に捨てた。10月12日には長女を殴って死亡させ、遺体を呉市の山中に捨てた。
 S被告は、殺害現場に居合わせながら鷹尾被告の虐待を止めず、救急車を呼ぶなどの措置を取らなかった。鷹尾被告は2000年11月28日、S被告に金を要求するなどした恐喝と覚醒剤取締法違反容疑で逮捕され、殺害を自供した。
裁判所
 広島地裁 岩倉広修裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月31日 無期懲役
裁判焦点
 2005年10月5日の差戻し初公判で、検察側は、共犯のS被告の「未必の殺意」を認定した高裁判決を証拠申請し、弁護側は「長男が衰弱しているとは気付かなかった」として改めて殺意を否認した。
 2006年5月2日の論告求刑で、検察側は「長男への未必の殺意が認められ、児童虐待事件のなかでもまれにみる凶悪事案」と断じた。
 7月15日の最終弁論で弁護側は「未必的殺意はなく、傷害致死罪が成立するにすぎない」などと主張、寛大な判決を求めた。
 岩倉広修裁判長は「児童虐待の最たる事件の1つで、社会への衝撃は大きい」と述べ、「未必の殺意」があったとして殺人罪を認定した。判決理由で岩倉裁判長は、争点の一つだった長男への殺意について、鷹尾被告が暴行で長男を衰弱させた上でバッグの中に閉じこめた行為などから「遅くとも(バッグを)密封した時点までには、未必的殺意があった」と判断した。
備 考
 2004年4月7日、広島地裁は長男の事件について、「男児を蘇生させるため救命措置を講じており、殺意は認められない」と傷害致死罪を適用。田辺直樹裁判長は懲役15年の判決を言い渡した。検察側が控訴した。
 2005年3月17日、広島高裁は一審判決を破棄、審理を広島地裁に差戻した。判決理由で大渕敏和裁判長は、男児の死亡について「虐待により極度に衰弱した男児をビニール袋に密閉した時点で死亡の危険性が高いことを認識しており、未必の殺意があったことは明白だ」と述べ、「一審判決が殺意を否定した根拠は相当ではなく、事実誤認がある」とした。殺意否定の根拠の一つになった人工呼吸などの救命措置について大渕裁判長は「一一九番もしておらず、真摯な救命行為ではない」と判断した。被告側は上告した。
 最高裁第三小法廷(浜田邦夫裁判長)は2005年7月8日までに、男児の死亡について殺意を認めず懲役15年とした一審判決を破棄して審理の差戻しを命じた二審判決を支持し、鷹尾被告の上告を棄却する決定をした。
 S被告は2004年4月7日、求刑懲役15年に対し、懲役8年の判決。殺人罪ではなく傷害致死罪が適用された。検察側は量刑不当を理由に控訴。S被告は、鷹尾被告からドメスティックバイオレンス(DV)を受け、心神耗弱だったとして刑の軽減を求め、控訴した。2005年4月19日、広島高裁(大渕敏和裁判長)で一審破棄、懲役12年判決。殺人罪の適用が妥当と判断された。2006年1月23日、最高裁第二小法廷(今井功裁判長)で上告棄却、確定した。

 被告側は控訴した。2007年9月11日、広島高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
小村美奈子(48)
逮 捕
 2004年4月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、死体遺棄、業務上横領、現住建造物等放火、現住建造物等放火未遂他
事件概要
 神奈川県三浦市の機械部品製造会社に勤めていた小村被告は、2000年から2004年3月まで約1515万円を横領していたが、2004年3月に会社をリストラされた。小村被告は解雇を不満とし、事務所に押し掛けるなどのトラブルを起こした。横領発覚を恐れた小村被告は、4月5日と9日に横須賀市にある同社久里浜工場を放火し、11日と17日には会社社長の住む三浦市の自宅周辺で放火未遂事件を起こした。
 小村被告は4月19日午後5時ごろ、三浦市三崎の同社工場の事務室で、会社社長(当時80)の頭部などを社内に置いてあった鉄板で複数回殴ったうえ、両手で首を絞めて窒息死させた。さらに遺体を乗用車後部座席に積み込んで松田町まで運び、午後9時45分ごろ、がけ下に捨てた。
 小村被告は横領した金を元に、ペットショップを経営していた。
裁判所
 東京高裁 大野市太郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月31日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 小村被告は捜査段階で死体遺棄と放火を認めたが、「社長が階段から落ち倒れているのを見たが、あとは記憶にない」と殺人罪を否認した。一審では横領、殺人いずれも無罪を主張した。
 二審でも無罪を主張。
 大野裁判長は「被害者の死亡時だけ覚えてないと言いながら、その前後の記憶はあるなど、弁解は不合理」「捜査段階の供述は合理的で信用性は高い。身勝手で短絡的な犯行で、酌量の余地はない」と判断した。
備 考
 2006年3月13日、横浜地裁横須賀支部で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年12月3日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
平野義幸(42)
逮 捕
 2003年7月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、現住建造物放火
事件概要
 俳優平野義幸被告は2003年1月16日午後2時頃、当時住んでいた京都市下京区の民家2階で同居していた女性(当時47)の手足を電気コードなどで縛り、ガムテープで口をふさいで、室内に灯油をまいて放火。女性に全身やけどを負わせて殺害し、24平方メートルを焼いた。
 平野被告は火事後の事情聴取中に覚せい剤使用が発覚。同取締法違反の疑いで逮捕され、2003年4月に懲役1年2月の実刑判決を受け、服役中だった。
 平野被告は大地義行の芸名で「新・仁義なき戦い」(2000年)、「新・仁義の墓場」(2002年)、「荒ぶる魂たち」(2002年)の映画に出演したほか、バンドメンバーとして音楽活動も行っていた。
裁判所
 最高裁第三小法廷 那須弘平裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月31日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 平野被告は女性を縛ったことは認めたが、放火・殺人について否認し、無罪を主張している。
備 考
 2005年3月25日、京都地裁で懲役15年判決。検察・被告側が控訴していた。2006年4月28日、大阪高裁で一審破棄、無期懲役判決。

氏 名
石井誠(70)
逮 捕
 2005年3月23日(現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、現住建造物等放火未遂他
事件概要
 千葉県柏市に住む無職石井誠被告は、消費者金融から借りた約180万円の返済に困り、犯行を計画。2005年3月23日午前11時半頃、柏市に住む知り合いの女性宅に押し入り、応対した家政婦の女性(当時61)の首を絞めて殺害。午後1時半頃、帰宅した女性(当時76)の首を絞めて重傷を負わせた。女性からの通報で警察官が駆けつけたところ、石井被告は「入ってくれば、 灯油をかぶって火をつける」と叫んだ後、居間から階段にかけて、灯油をまいて火をつけた。
裁判所
 最高裁第三小法廷 堀籠幸男裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月31日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 上告理由は不明。
備 考
 2006年3月13日、千葉地裁松戸支部で一審無期懲役判決。2006年6月27日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
豊田晶子(44)
逮 捕
 2001年1月31日(窃盗容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、窃盗他
事件概要
 無職豊田晶子被告は2000年3月1日夜から朝の間、川崎市で一人暮らしの母親(当時67)宅で、母親を刃物で刺すなどして殺害。母名義の預金証書などを奪い、現金約1542万円を引き出した。遺体は2001年1月28日に発見された。豊田被告は消費者金融に約2,000万円の借金があった。犯行直前、二人が激しく言い争い、警察官が仲裁に入っている。
裁判所
 最高裁第一小法廷 甲斐中辰夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年10月31日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 凶器などの物証は発見できず、検察側は状況証拠を積み重ねて有罪を立証した。
 豊田被告は一・二審で現金を引き出したことを認めたが、殺人は否定、無罪を主張していた。
備 考
 2004年5月19日、横浜地裁川崎支部で求刑通り一審無期懲役判決。2005年3月22日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
安藤勇(57)
逮 捕
 2002年2月2日(無職男性への死体遺棄容疑。別の傷害事件で逮捕済。2003年2月22日、幹部殺害の殺人容疑で再逮捕)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、死体遺棄、銃刀法違反、殺人未遂、恐喝未遂
事件概要
 岐阜県多治見市の暴力団幹部安藤勇被告は2000年5月22日頃、女性を巡るトラブルから知り合いの無職男性(当時52)を拉致し暴行。名古屋市に停車中の乗用車内で、衰弱状態の男性の首を刃物で突き刺して殺害。約1週間後、同じ暴力団幹部の男性M受刑囚、G被告、Y元被告と共謀し、遺体を愛知県日進市の空き地に埋めた。その後、発覚を恐れたG被告、Y元被告らが掘り出し、重機で粉砕、その後焼却していた。
 2000年8月26日、安藤被告はM受刑囚、G被告、T被告、K被告の4人と共謀し、岐阜県常滑市の山林で、金銭トラブルなどから同じ暴力団幹部の男性(当時50)の頭を拳銃で撃って殺害し、遺体を岐阜県東浦町の空き地に埋めた。
 他にも2000年7月26日未明、安藤勇被告は別の暴力団組員と名古屋市中区の路上で酒によって寝ていた名古屋市の会社員(当時37)を足蹴にした際、つばを吐かれたことに腹を立て、会社員の首をナイフで切りつけた。止めに入った同僚(当時27)の腹もナイフで刺した。
裁判所
 名古屋地裁 柴田秀樹裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月1日 無期懲役
裁判焦点
 2002年5月17日の初公判で、安藤被告は死体遺棄を認めたが、殺人は否定した。
 安藤被告は無職男性殺害について、逮捕時容疑を認めている。
 柴田裁判長は「人命を軽視したきわめて冷酷で残忍な犯行」とした。
備 考
 M受刑囚は2005年10月7日、名古屋地裁で懲役18年(求刑懲役20年)の判決が確定。G被告は2006年1月25日、名古屋地裁で懲役11年(求刑懲役13年)の判決。K被告、T被告は2005年1月27日、名古屋地裁で懲役9年(求刑懲役11年)、懲役7年(求刑懲役9年)の判決。Y元被告は2003年6月17日、名古屋懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)の判決が確定。
 被告側は控訴した。2008年1月30日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定と思われる。

氏 名
小野修(32)
逮 捕
 2005年10月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂、住居侵入
事件概要
 無職小野修被告は以前交際していた飲食店従業員女性(当時22)が別の男性と交際していることを知り、殺害を決意。2005年10月19日、大分県豊後大野市にある女性方に留守を見計らって侵入し、二階の押し入れで待ち構えた。午前11時50分頃、階段を上がってきた女性の長女(当時4)の胸を包丁で刺して失血死させたほか、女性の頭などに6ヶ月の重傷を負わせた。事件当時、女性方には祖母(当時75)らがいたが、逃げ出して無事だった。
 小野被告は自分の胸を刺して自殺を図り、入院したため、県警はけがの回復を待ち、27日に逮捕した。
 小野被告と女性は2004年に市内のスナックで知り合ったが、2005年6月頃に女性から別れ話を持ち出したため、小野被告は8月頃から自宅や飲食店前で待ち伏せし、頻繁に電話をかけたり、メールを送りつけるなどのストーカー行為を繰り返した。
 事件の約二週間前には、女性が働く飲食店の経営者が自宅に男を呼び、これらのストーカー行為を注意。男は「二度としない」と約束していた。また女性も同じ時期に豊後大野署に相談をしていたが、2回目の相談を受けた翌日の10月6日、女性は電話で「すぐに逮捕できないのなら、子どもに危害があるといけないので(警察は)男に会わないでほしい」と話していた。
裁判所
 大分地裁 宮本孝文裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月2日 無期懲役
裁判焦点
 小野被告は初公判で「殺意はなかった。包丁で刺したのではなく、包丁が刺さった。あとはよく覚えていない」と述べた。弁護側は「犯行時、うつ病と飲酒で心神喪失状態だった」と無罪を主張した。弁護側は精神鑑定を要求していたが、大分地裁は却下していた。
 論告求刑で検察側は「幼稚でゆがんだ独占欲から冷酷、残忍な行為に及んだ」「残忍で冷酷な犯行で、被告の責任は逃れ得ない」と断じた。
 最終弁論で弁護側は、「精神的に極めて不安定で、飲酒の影響もあった」などとして無罪を主張した。
 最終弁論で小野被告は宮本裁判長から「最後に言いたいことはありますか」と聞かれ「正直に話しても検事は聞く耳を持たなかった。なんだったら、死刑でも無期でも構わない」とはっきりと述べた。
 宮本裁判長は「元交際相手との復縁が困難と分かった後に殺害を計画するなど身勝手かつ自己中心的な動機。執ようで、残酷な犯行だ」と述べた。被告の殺意否認、弁護側の無罪主張については、「都合の悪い部分のみを記憶していないと言うなど、病的酩酊状態だったとは言い難い」「被害者の傷の程度などから、被告には殺意があったと認められるうえ、犯行当時の行動などから責任能力も認められる」と退けた。
備 考
 証人尋問と意見陳述で、殺された長女の祖父と祖母は、残された幼児らに深刻な精神的影響が出ていることを訴え、厳刑を求めた。証人尋問で、祖母は長女の殺害現場を見ていたいとこについて触れ「炊事場で包丁を見かけると『ばあば、怖いよ』と助けを求めてくる」と語った。また、大けがをした女性が刺される光景を見ていた長女の弟について祖父は「夜中に突然泣き出すし、(事件があった)2階にも上がれなくなった」と、家族に深い心の傷が残っている様子を話した。
 また遺族の代理人は弁論を聞いた後、「被告側弁護士の弁論は納得出来ない。(小野被告も)最後に(亡くなった)長女に対して一言も謝罪もないのが許せない」と遺族心情をコメントした。
 控訴せず、確定。

氏 名
村山実(38)
逮 捕
 2004年5月19日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 鹿児島市の住宅リフォーム会社社長村山実被告と部下のI被告は2004年5月6日夜、自社を含むグループの実質的なオーナーで、福岡市にある住宅リフォーム会社社長の男性(当時33)を鹿児島市で絞殺。村山被告は男性の財布から約38万円を強奪し、I被告はうち20万円を受け取った。二人は社長の遺体を宮崎県内の雑木林に遺棄し、村山被告は男性の会社の従業員に、「社長の承諾を得ている」などといって預金口座から6,000万円を自社口座に移し替えてだまし取った。うち4,000万円は社員の給料などに充て、残りは口座に残っていた。
 村山被告の会社の商法をめぐっては、埼玉県警が2004年5月11日、「シロアリで家が倒れてしまう」などとうそを言って換気扇を売りつけていたとして、埼玉営業所長ら3人を特定商取引法違反(不実告知など)容疑で逮捕している。
裁判所
 福岡高裁 浜崎裕裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月2日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 一審で村山被告は、強盗目的を否認している。
 浜崎裁判長は「計画的で悪質な犯行だ」と述べた。
備 考
 I被告は求刑懲役16年に対し、自首が認められ一審懲役11年の判決がそのまま確定。
 2006年3月30日、福岡地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2006年11月2日、被告側控訴棄却。2007年3月6日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
本田忠勝(55)
逮 捕
 2003年2月20日(会社社長殺人未遂容疑 3月13日、殺人、放火容疑で再逮捕)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火、殺人未遂他
事件概要
 福岡市西区に住む無職本田被告は2003年2月20日未明、隣の次兄宅にガソリンと灯油をまいて放火し、全焼させた。次兄の妻(当時54)と長女(当時27)は一酸化炭素中毒で死亡、二女は重傷を負った。火災直後に佐賀県浜玉町に住む長兄宅に火炎瓶で放火し、殺害しようとした。
 2月19日午後7時頃、以前勤務していた福岡市西区にある会社の事務所に押し掛け、社長の男性(当時63)の頭を金づちで数回殴り、頭蓋骨骨折の重傷を負わせた。
 本田被告は、不動産の遺産相続で不平等な扱いを受けたと兄弟などを逆恨みしていた。
裁判所
 最高裁第三小法廷 上田豊三裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月6日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 本田被告は逮捕当時、放火は認めたが殺意を否認した。初公判以降、起訴事実を全面否認している。
備 考
 2005年10月13日、福岡地裁で一審無期懲役判決。2006年6月28日、福岡高裁で被告側控訴棄却。
 遺族は本田忠勝被告を相手取り、総額1億円の損害賠償を求める訴訟を福岡地裁に起こした。本田被告は傍聴席の遺族に対しても暴言を吐き続けた。「被告は何の反省もしていない。自分の犯した罪の大きさを感じてほしい」。遺族は、理不尽に命を奪われ、悲しさ、つらさ、悔しさを語ることができない2人の気持ちを代弁するため、提訴に踏み切った。本田被告は答弁書で請求棄却を求めている。

氏 名
朴龍晧(40)
逮 捕
 1995年9月10日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火、詐欺未遂
事件概要
 韓国籍の朴龍晧(ぼく・たつひろ)被告は内縁の妻である青木惠子被告(一・二審無期懲役判決、上告中)と共謀。借金返済などのため青木被告の長女(当時11)を殺して死亡保険金を詐取しようと計画。朴被告は1995年7月22日夕、大阪市東住吉区にある自宅車庫内の車の下に、車のタンクから抜いたガソリンをまき、ライターで火をつけて自宅を全焼させ、入浴中の長女を殺害し、保険金1,500万円を請求した。
裁判所
 最高裁第三小法廷 上田豊三裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月7日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 弁護側は、「火災の原因は放火ではない」と無罪を主張した。また、「朴被告は消火活動をしていなかった」と一審で証言した近所の人が、消防署員の聞き込みには矛盾することを話したと主張。「聞き込み状況書」を証拠採用しなかった二審の判断は判例違反だと主張した。
 書面判決で上田豊三裁判長は、目撃者らの証言が信用できるかを争う証拠について、「証人本人が書いた書面か、本人の署名押印がある検察官調書といった供述録取書などで、供述と矛盾する内容が現れているものに限られる」との初判断を示した。高裁段階では幅広く証拠として認めるケースもあり、判断が分かれていた。そして新たに示した基準をもとに、弁護側が証拠請求した「聞き込み状況書には署名押印がない」と述べ、証拠採用を退けた二審の判断を支持した。そして「憲法違反などの上告理由はなく、二審判決を破棄しなければ著しく正義に反する事実誤認もない」とした。
備 考
 1999年3月30日、大阪地裁で求刑通り一審無期懲役判決。2004年12月20日、大阪高裁で被告側控訴棄却。
 再審決定。2016年8月10日、大阪地裁で一審無罪判決。大阪地検は同日、上訴権を放棄し、無罪は即日確定。

氏 名
安藤好美(57)
逮 捕
 2005年2月5日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入
事件概要
 神奈川県大磯町の無職安藤好美被告は借金の返済に行き詰まり、2005年2月4日午後4時頃、同町に住む知人女性(当時55)方に侵入。たんすなどを物色中に女性の帰宅に気づき逃走したが、連れ戻された。「逮捕されれば家庭が崩壊する」と殺害を決意。午後5時頃、練習用ゴルフクラブと菜切り包丁、パン切り包丁、アイロンで206箇所以上、女性を殴ったり、切りつけたりして殺害した。
 午後5時20分頃、帰宅した女性の夫(当時56)に見つかり、「中で奥さんが大変なことになっている」と言い残して、立ち去ったが、夫が約300メートル追いかけて連れ戻した。安藤被告は当初、大磯署員に「居間にいたら、二人組の外国人の男が『マネー、マネー』と押し入って来て、棒で頭を殴られた。自分は逃げ出し近くの畑に隠れた」などと被害者を装っていたが、女性宅に男らの足跡がなかったことや、服や靴に血液が付着していたことなどを追及され、自供した。
 安藤被告にパチンコ代や下着の訪問販売活動費などで約1250万円の借金があった。
裁判所
 東京高裁 大野市太郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月9日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「殺意はなく、傷害致死にとどまる」と主張したが、大野裁判長は「アイロンで繰り返し殴打するなどの行為は残虐非道で、殺意は優に認められる」と退けた。
備 考
 2006年5月12日、横浜地裁小田原支部で求刑通り一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
吉岡竜彦(28)/小野秀典(29)
逮 捕
 吉岡被告:2004年5月(平塚市の事件における強盗容疑)
 小野被告:2004年9月~12月の間
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、昏睡強盗他
事件概要
 無職吉岡竜彦被告と無職小野秀典被告は2003年6月~2004年3月、同性愛者向け出会い系サイトで、43歳から65歳の男性4人をホテルに誘いだし、睡眠薬を混入したお茶や栄養ドリンクを飲ませて眠らせ、現金合わせて約11万円やキャッシュカードを奪い、現金自動預け払い機からカードを使って計約906万円を引き出した。
 また2004年4月9日、同じく出会い系サイトで知り合った平塚市の男性(当時43)に、横浜市神奈川区のホテルで多量の睡眠薬を飲ませ、中毒死させた。
裁判所
 横浜地裁 鈴木秀行裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月13日 無期懲役
裁判焦点
 弁護側は、平塚市の男性の死亡と睡眠薬の過剰摂取には因果関係がないと主張していた。
 判決で鈴木裁判長は「飲ませた量は許容量の5倍。男性の死因は中毒死と認定できる」として主張を退けた。そして「計画的で狡猾な犯行で常習性も高い。睡眠薬で中毒死する危険性を被告は十分に認識していた」と断じた。
備 考
 被告側は控訴した。2007年5月21日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
佐野和幸(45)/佐野晋也(31)
逮 捕
 2000年5月16日
殺害人数
 4名
罪 状
 窃盗、現住建造物等放火、殺人、殺人未遂、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、暴力行為等処罰に関する法律違反
事件概要
 重機オペレータ佐野和幸被告と無職亀野晋也(旧姓)被告は暴力団員H容疑者(指名手配中)と共謀して、神戸市などで展開しているテレホンクラブチェーンの襲撃を計画。2000年3月2日午前5時5分頃、盗んだナンバープレートを付けた乗用車で神戸駅前店に乗りつけ、一升瓶で作った火炎瓶1本を店内に投げ込んで同店の一部を焼き、店員1人に軽傷を負わせた。10分後には東約1キロの元町店に2本を投げ込んでビル2、3階部分計約100平方メートルの同店を全焼させ、男性客4人を一酸化炭素中毒で殺し、店員ら3人に重軽傷を負わせた。
裁判所
 最高裁第一小法廷 甲斐中辰夫裁判長
求 刑
 佐野被告:死刑 亀野被告:無期懲役
判 決
 2006年11月14日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 両被告側は一・二審で殺意を否定していた。
備 考
 2003年11月27日、神戸地裁で一審無期懲役判決。2005年7月4日、大阪高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
野本富貴(50)
逮 捕
 2006年1月30日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人予備他
事件概要
 長野県松本市の無職野本富貴被告は、甥と共謀。インターネット掲示板で知り合った茨城県土浦市の派遣社員片山直哉元被告に、報酬200万円で父親である男性(当時76)の殺害を依頼した。片山元被告は2005年12月30日午後1時頃、男性宅に侵入。ハンマーで頭などを殴り、男性を殺害し、現金200万円を受け取った。
 野本富貴被告と甥は男性と同居していたが、働かないことを男性から責められ、出て行くように言われたほか、老後のためにと甥に渡していた約900万円を返すよう言われたことなどから、殺害を計画した。片山元被告が2005年12月24日、インターネットの掲示板に「悩みごとを何でも引き受けます」と書き込み、見つけた富貴被告がメールを十数回やりとりして報酬200万円で殺害を依頼。片山被告は借金が100万円ほどあったことなどから引き受け、やりとり開始から6日後に実行した。
裁判所
 東京高裁 池田修裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月16日 無期懲役(一審破棄)
裁判焦点
 野本富貴被告は殺意を否認し、「父親襲撃は依頼したが、片山受刑者が殺すとは思わなかった。傷害致死にとどまる」と主張。甥とともに「財産目当てでなく、父親の暴力などから自分の家族を守るため」と主張し、量刑不当で控訴した。富貴被告に無期懲役を求刑した長野地検も量刑不当で控訴していた。
 判決で池田裁判長は、富貴被告と片山受刑者とのメールのやり取りを「殺害が前提で殺害を避けることを求めていない」と指摘。「2人とも父親に経済的に依存し、父親が2人以外に財産を渡そうとしたため、生活が出来なくなると思って犯行に及んだ」と述べ、2被告の主張を退けた。
 さらに「富貴被告は首謀者として片山受刑者や甥を事件に巻き込んだ。甥は片山受刑者への報酬を提供するなど犯行に不可欠な関与をした」と断じた。「富貴被告の無期懲役は、無期懲役判決を受けた片山受刑者とも均衡が取れている。一審は酌むべき事情を過度に酌んだ。甥の懲役13年は不当とは言えない」などとした。
備 考
 片山直哉元被告は2006年6月14日、長野地裁で求刑通り一審無期懲役判決がそのまま確定。
 甥は求刑懲役17年に対し一審懲役13年判決。2006年11月16日、被告側控訴棄却。2007年7月10日、被告側上告棄却、確定。
 2006年6月14日、長野地裁で懲役20年判決。検察・被告側が量刑不当を理由に控訴していた。被告側は上告した。2007年7月10日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
小林秀樹(45)
逮 捕
 2006年5月16日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人
事件概要
 トラック運転手小林秀樹被告は2000年5月25日午前10時半ごろ、鹿児島県出水市の左官業を営む男性方に侵入。無職の長女(当時18)を強姦しようとしたが抵抗され、電話で助けを求められるなどしたため、女性の胸などを出刃包丁で20数ヶ所突き刺し、失血死させた。5人家族で、事件当時は長女1人が家にいた。
 長女は知り合いの男性と事件当日の午前10時頃まで外で会っており、別れて20~30分後に、男性の自宅に助けを求める電話があった。男性は聞き返すなどしたが、反応がなかったため、警察に通報した。
 小林被告は勤めていた運送会社の仕事で、事件直前に同市に隣接する旧宮之城町へ配送に来ていた。
 小林被告は2004年1月、福岡市東区内で無職の女性に車の中で暴行したとして強姦の疑いで逮捕。11月4日、福岡地裁で懲役7年の実刑判決を受け、2005年10月7日に確定。逮捕当時は福岡刑務所に服役中だった。
 鹿児島県警は2006年4月初旬から、遺留物の洗い直しに着手。採取していたDNA情報を、2004年12月に運用開始された警察庁のDNA型情報検索システムで照会したところ、小林被告が浮上。身辺調査を開始し、5月16日に逮捕した。
裁判所
 鹿児島地裁 谷敏行裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月17日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 小林被告は逮捕時から「(被害者と)会っているが、殺人は犯しておりません」と容疑を全面否認している。
 検察側は論告で、殺害現場の流し台についた指紋と、凶器の出刃包丁の柄とふきんに付着した血痕のDNA型が小林被告と一致したとする鑑定結果の信用性をあらためて強調。「被告と同じDNA型の別の犯人に殺害されたという偶然の一致は考えられない」と主張した。
 また、被害者の元交際相手の男性の証言から、被害者が自宅に1人でいた時間はわずか2分だったとして、「被告が被害者と会って別れた後、第三者が殺害することはあり得ない」と述べた。
 情状については、「首や左胸、背中、右脇下を長さ17センチの刃の根元まで刺した」と殺意の強固さを指摘。「被害者は最も安心できるはずの自宅で襲われ、めった刺しにされ絶命した。被告は犯行を否認しており、再犯は必至」「冷酷無比な犯行は“鬼畜の所業”の一言につきる。見え透いた嘘の弁解を繰り返し、矯正は到底不可能だ」とした。
 弁護側はふきんの血痕について、「指のけがの血をふいたとする被告の供述と付着状況が合致し、弁解は信用性が高い」と弁論。元交際相手の男性の証言については、「記憶の正確性が疑問」として、「被告が犯人とする検察側の立証は不十分」と反論した。
 小林被告は最終意見陳述で「殺害していない。(警察、検察は)私が犯人だと頭から決めつけた」と無罪を主張した。
 谷裁判長は、被害者が殺害直前まで一緒にいたという元交際相手の男性の証言を全面的に採用。被害者が男性と別れてすぐ帰宅し、その2、3分後に殺害されたとして、「小林被告が被害者と会った後、別の第三者が犯行を行うことは時間的に不可能」と述べた。
 現場に残されたふきんの血痕は小林被告のものと認定。凶器の出刃包丁に付いた血痕のDNA型が一部小林被告と一致したことなどと合わせ、「殺人の犯人であることに、合理的な疑いの余地はない」と判断した。
 一方、流し台の指紋は、個人の特定に必要な12の特徴点すべてが小林被告と一致したとする鑑定結果に対し、不鮮明で疑問が残ると採用を見送ったが、「第三者の犯行をうかがわせるものではない」とした。
 動機は、検察側の主張通り、性的欲求を充足するためと認め、「電話で助けを求められるなど意のままにならなかったことから、犯行に及んだ」と結論付けた。
 量刑については「不合理な弁解に終始し、遺族への謝罪、被害者の冥福を祈る言葉もない。更生は極めて困難で、社会復帰を許せば重大犯罪に及ぶことが強く危惧される」として無期を選択した。
備 考
 2006年10月12日に初公判。公判前整理手続きが適用され、小林被告のものとされる指紋と血液のDNA型の鑑定の信用性について4回審理があり、10月25日に結審した。
 論告に先立って被害者の両親らが「事件後、誰が、どうして、なぜの繰り返しだった。(小林被告は)いつまでも認めず、有り得ない言い逃れをする。怒りと悲しみがこみ上げた」「優しい娘は家族になくてはならない存在で事件後は泣いて暮らす日々が続いた。被告に反省の態度は見られず死刑を望みます」と述べた。
 被告側は控訴した。2008年1月24日、福岡高裁宮崎支部で被告側控訴棄却。2008年9月9日、最高裁で被告側上告棄却、確定。

氏 名
田代タツエ(78)
逮 捕
 2001年11月24日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人
事件概要
 栃木県藤原町の無職、田代タツエ被告は渡辺実被告、安田守男元被告、U元被告、他男性元被告の4人と共謀。2001年6月24日夜、福島県いわき市平薄磯の県道で、観光目的で連れ出した栃木県藤原町の女性(当時77)をワゴン車で轢いて殺害した。田代被告はワゴン運転手の男性と連絡を取り合い、ワゴンに向けて女性の背中を押したとされる。
 田代被告は被害者の女性と約30年間にわたり同居していた。被害者を殺害後、合わせて349万円の保険金を受け取り、仲間に一部を渡したり、家電製品の購入などに使い、いっさい弁済はしていない。
裁判所
 最高裁第二小法廷 中川了滋裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月20日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で田代被告は従属的立場であったことを主張したが、いずれも退けられている。
備 考
 渡辺実被告は求刑通り一審死刑判決、控訴中。安田守男被告は一審無期懲役判決がそのまま確定。U被告は求刑懲役15年に対し、一審懲役13年判決が確定。他男性被告は求刑懲役7年に対し、一審懲役6年判決が確定。
 2005年12月1日、福島地裁郡山支部で一審無期懲役判決。2006年7月27日、仙台高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
佐藤広志(29)
逮 捕
 2005年1月20日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 無職佐藤広志被告は無職梶原幸子被告と共謀し、2004年12月19日午後10時40分頃、牡鹿町鮎川浜の国定公園内で、石巻市に住む会社員の女性(当時23)を棒のようなもので殴って殺し、現金約1万8千円の入ったバッグを奪った。さらに2人は、女性のバッグからアパートの鍵を奪って部屋に侵入し、現金およそ8,000円を奪った。2人は女性からあわせて3万数千円の借金があり、返済を迫られていた。奪った金は遊びに使った。遺体は1月20日に発見された。
 21日には、仙台市内の佐藤被告の祖母宅に侵入。祖母の頭を殴ったり包丁で脅したりして現金約3万円を強奪するなどした。
裁判所
 最高裁第三小法廷 藤田宙靖裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月21日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で佐藤被告は殺意はなかったと主張したが、退けられた。
備 考
 梶原幸子被告は求刑通り無期懲役が最高裁で確定。
 2006年2月6日、仙台地裁で求刑通り一審無期懲役判決。2006年7月4日、仙台高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
城後健一(30)
逮 捕
 2005年6月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗他
事件概要
 埼玉県草加市の飲食業伊藤萬壽男被告、東京都荒川区の無職佐々木彰被告、住所不定無職城後健一被告、住所不定無職中村謙二被告、群馬県藤岡市の無職I被告、アルゼンチン国籍で群馬県伊勢崎市の無職ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ブラジル国籍で群馬県県太田市のレンタルビデオ店手伝いド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告は共謀し、強盗殺人を計画。
 2004年12月7日午前4時頃、主犯格の伊藤被告と佐々木被告、城後被告、アンドレス被告、アキラ被告の5人が、群馬県作詞の無職女性宅に押し入り、同居していた会社員の男性(当時49)の首を絞めて殺害。キャッシュカードや現金5000円、指輪など貴金属計20数点(時価合計48万円相当)を奪った。
 伊藤、佐々木の両被告と、中村、城後、アキラ、ミウラの4被告は、それぞれ別の窃盗グループを構成。群馬県前橋市に住む女性は中村被告の知人、I被告は中村被告と仕事で知り合った仲という。今回の事件は、伊藤被告と中村被告が知り合って8人がグループになり、I被告が中村被告に情報を提供、計画した。
 その他、県外での強盗など7件(現金計680万円や物品計約1000万円相当)の罪で起訴されている。
裁判所
 東京高裁 土屋靖之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月27日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 城後被告は初公判で「殺意はありませんでした」と起訴事実の一部を否認し、弁護側も、強盗殺人罪でなく強盗致死罪を適用すべきと主張した。
 土屋裁判長は「被害者の体を押さえつけて殴るなど、犯行で重要な役割をした」とした。
備 考
 7人と一緒に逮捕された群馬県の女性は処分保留で釈放。佐久署捜査本部が、別の事件でだまし取ったと知りながら貴金属を質店に売ったとして、盗品等処分あっせんの疑いで再逮捕した。
 I被告は求刑無期懲役に対し一・二審懲役15年判決。佐々木彰被告、中村謙二被告、アンドレ・ルイス・アキラ・ド・アラマル被告、ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告は求刑通り一・二審無期懲役判決(上告中)。伊藤萬壽男被告は求刑通り一審無期懲役判決(控訴中)。
 2006年6月8日、長野地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年2月?、被告側上告棄却、確定。

氏 名
片桐俊(40)
逮 捕
 2004年10月24日(現行犯逮捕)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、殺人未遂、銃刀法違反他
事件概要
 指定暴力団住吉会系元組幹部・片桐俊(すぐる)被告はK被告(公判中?)とともに2004年10月24日午後1時40分頃、東京都台東区のホテル1階の喫茶店で、対立する指定暴力団山口組系暴力団幹部と話し合い中に拳銃6発を発砲。幹部2人(当時55、41)を拳銃で射殺し、別の幹部2人(ともに当時38)も重軽傷を負った。女性従業員と女性客計3人がいたが無事だった。
 同日正午前、ホテル近くにある片桐容疑者が所属する住吉会系の組事務所に、山口組系の組員が押し掛けてトラブルになった。その後110番通報で駆けつけた浅草署員がいったん解散させたが、組同士が喫茶店で話し合いをしていたところ事件が発生した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 泉徳治裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年11月27日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 量刑不当を訴えたか?
備 考
 2005年10月3日、東京地裁で一審無期懲役判決。2006年7月10日、東京高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
工藤英二(45)
逮 捕
 2004年11月15日(工藤被告は詐欺罪で起訴済)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、詐欺、詐欺未遂
事件概要
 無職工藤英二被告は、NT元被告が働いていた青森県今別町の旅館に宿泊して一家と知り合い、2003年8月初旬ごろ、NT元被告の長男であるNM元被告に「老犬の養護施設をつくる」とうその商売話を持ちかけた。NM元被告らは話を信じ、用地確保の名目で1億7300万円の架空の借金を負った。また準備金として450万円を工藤被告に支払った。
 工藤被告は事業を進める気などなく、2004年1月に事業打ち切りを伝え、借金の返済を迫った。
 工藤被告は、NT元被告の夫を交通事故死に見せかけ、自動車保険金で返済するようNM元被告に迫り、NM元被告が両親に告げると、NT元被告は「やむを得ない」と承諾。夫は絶句した。
 2004年6~7月、夫はNM元被告に連れられ、県内各地で走行中の車へ飛び込むよう迫られたが果たせず、そのたびに工藤被告から殴る蹴るの暴行や脅迫を受ける。3被告が「何とか頼む」と迫ると、夫はうなずくだけだった。
 工藤被告は事故の保険金だけでは足りないと考え、夫を約8800万円の生命保険などに加入させた。9月下旬には秋田県で死ぬように指示するが失敗、再び暴行を加えた。「事故では夫を死なせられない」と考えて2004年10月1日、秋田県から帰宅途中だった夫とNM元被告を藤崎町の河川敷に呼び出し、夫を鉄パイプのようなものでめった打ちにした。自宅に連れ帰ったNM元被告は、NT元被告と共に放置した。夫は約5時間後、外傷性ショックで死亡した。
 工藤被告はその後、郵政公社分の保険金800万円をだまし取ろうとした。
 その他、工藤被告は東京都杉並区に住む知り合いの女性から3430万円をだまし取った。九州では老犬ハウス事業の事業設備資金名目に300万円をだまし取っている。
裁判所
 最高裁第二小法廷 古田佑紀裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月28日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一・二審で工藤英二被告は無罪を主張していた。
備 考
 2005年7月22日、青森地裁はNT被告に懲役14年(求刑懲役16年)を、NM被告に同16年(同18年)を言い渡した。両被告は起訴事実を全面的に認めており、控訴せずに確定した。
 2006年2月17日、青森地裁で一審無期懲役判決。2006年7月27日、仙台高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
織田佳克(23)
逮 捕
 2005年4月27日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄他
事件概要
 北海道由仁町の会社員織田佳克被告は2005年4月24日午前、同居している祖母(当時66)に小遣いを要求したが断られたため、祖母の首を絞めたり、頭などを殴ったりしたうえ、消火器の噴射口を口に当てて噴射させ、粉末をのどに詰まらせて窒息死させた。遺体を一階台所の床下収納庫に遺棄した後、祖母名義の郵便貯金口座から現金500万円を引き出し、一部を数百万円ある消費者金融の借金返済に充て、一部は高級ブランド品の購入に充てた。
裁判所
 札幌高裁 長島孝太郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年11月30日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 織田被告は10月の控訴審初公判の被告人質問で、「生きるのが面倒だったので、死刑になりたかった。死刑になれないなら、真実を話そうと思った」などと主張。一審では強盗目的を否認しながらも殺人を認めていたが、控訴審では殺人を否認した。祖母の遺体を床下に隠したことや、祖母の貯金通帳を使い現金五百万円を引き出したことは従来通り認めた。遺体発見後に通報しなかった理由については「第一発見者は警察から疑われると思ったから」と述べた。
 長島裁判長は「被告が殺害したことは明らかで、一審判決に事実誤認はない」とした。
備 考
 織田佳克被告は自ら多重人格などと供述したため、札幌地検岩見沢支部は織田被告を精神鑑定するための鑑定留置を2005年5月17日に請求、札幌地裁岩見沢支部は許可した。鑑定期間は16日から3ヶ月間。
 2006年4月20日、札幌地裁岩見沢支部で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年3月13日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
伊藤萬壽男(67)
逮 捕
 2005年6月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗他
事件概要
 埼玉県草加市の飲食業伊藤萬壽男被告、東京都荒川区の無職佐々木彰被告、住所不定無職城後健一被告、住所不定無職中村謙二被告、群馬県藤岡市の無職I被告、アルゼンチン国籍で群馬県伊勢崎市の無職ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、ブラジル国籍で群馬県県太田市のレンタルビデオ店手伝いド・アマラル・アンドレ・ルイス・アキラ被告は共謀し、強盗殺人を計画。
 2004年12月7日午前4時頃、主犯格の伊藤被告と佐々木被告、城後被告、アンドレス被告、アキラ被告の5人が、群馬県作詞の無職女性宅に押し入り、同居していた会社員の男性(当時49)の首を絞めて殺害。キャッシュカードや現金5000円、指輪など貴金属計20数点(時価合計48万円相当)を奪った。
 伊藤、佐々木の両被告と、中村、城後、アキラ、ミウラの4被告は、それぞれ別の窃盗グループを構成。群馬県前橋市に住む女性は中村被告の知人、I被告は中村被告と仕事で知り合った仲という。今回の事件は、伊藤被告と中村被告が知り合って8人がグループになり、I被告が中村被告に情報を提供、計画した。
 その他、県外での強盗など7件(現金計680万円や物品計約1000万円相当)の罪で起訴されている。
裁判所
 東京高裁 高橋省吾裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月4日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 伊藤被告は「殺すつもりはなかった」などと殺意を否定し、無期懲役は不当だとして控訴していた。
 高橋裁判長は「人間性を欠如した残虐な行為であり、確定的殺意が推察される」として控訴棄却を言い渡した。
備 考
 7人と一緒に逮捕された群馬県の女性は処分保留で釈放。佐久署捜査本部が、別の事件でだまし取ったと知りながら貴金属を質店に売ったとして、盗品等処分あっせんの疑いで再逮捕した。
 I被告は求刑無期懲役に対し一・二審懲役15年判決。佐々木彰被告、中村謙二被告、アンドレ・ルイス・アキラ・ド・アラマル被告、ルーザック・ミウラ・マキシミリアノ・エルナン・アンドレス被告、城後健一被告は求刑通り一・二審無期懲役判決。
 2006年5月25日、長野地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年4月9日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
川戸義雄(69)
逮 捕
 2002年11月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 無職川戸義雄被告は2002年7月1日午前11時35分前後、三重県亀山市にある不動産業者の女性(当時70)の自宅兼不動産事務所で、女性の左胸を刃渡り17センチ以上の刃物で刺して殺害。手提げかばんの中にあった現金200万円を奪った。
裁判所
 最高裁第一小法廷 甲斐中辰夫裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月4日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 凶器の刃物や血痕、指紋など物証は見つかっていない。検察側は間接証拠の積み重ねで起訴に踏み切った。
 被告は一審・二審とも無罪を主張していた。
備 考
 この事件で津地検は2002年11月、公判維持は困難として川戸被告をいったん処分保留で釈放。だが、目撃証言の裏付け捜査を重ね、「十分に立証できる」として約10カ月後の2003年9月25日、起訴に踏み切った。
 2005年3月23日、津地裁で一審無期懲役判決。2006年7月24日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
青木恵子(42)
逮 捕
 1995年9月10日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、現住建造物等放火、詐欺未遂
事件概要
 青木被告は内縁の夫である朴龍晧(ぼく・たつひろ)被告(38)(求刑通り無期懲役判決が最高裁で確定)と共謀。借金返済などのため長女(当時11)を殺して死亡保険金を詐取しようと計画。朴被告は1995年7月22日夕、大阪市東住吉区にある自宅車庫内の車の下に、車のタンクから抜いたガソリンをまき、ライターで火をつけて自宅を全焼させ、入浴中の長女を殺害し、保険金1500万円を請求した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 津野修裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月11日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 青木被告は、逮捕直後に容疑を認めたが、一審の公判以後は全面否認している。
 最高裁でも冤罪を訴えたが、最高裁は「上告理由に当たらない」と退けた。
備 考
 1999年5月18日、大阪地裁無期懲役判決。2004年11月2日、大阪高裁で被告側控訴棄却。
 「東住吉冤罪事件」を支援する会が作成した東住吉冤罪事件のホームページがある。
 再審決定。2016年8月10日、大阪地裁で一審無罪判決。大阪地検は同日、上訴権を放棄し、無罪は即日確定。

氏 名
梅田嘉栄(32)
逮 捕
 2004年4月29日(恐喝未遂容疑。5月21日、強盗殺人容疑他で再逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、逮捕監禁、恐喝未遂他
事件概要
 愛知県岡崎市の暴力団組員で人材派遣業梅田嘉栄(うめだ・かえい)被告は、とび職安達誠受刑囚(無期懲役が確定)と社員の少年(19 一審懲役5年以上8年以下が確定)と共謀して、2004年3月9日夜、市内の路上で元愛知県職員の男性(当時71)を拉致し、車のトランクに監禁して現金約3万円と預金通帳などを奪った。3月11日未明、男性を後ろ手にして手錠をかけ、手足にそれぞれ鉄アレイを針金で結びつけ、同県半田市の岸壁から海に投げ込み殺害した。
 男性は2003年8月、梅田被告夫婦が乗っていた車との接触事故を起こし、梅田被告に治療費など60万円余りを支払った。しかし、梅田被告は安達受刑囚らと共謀して、休業補償などの名目で現金250万円を脅し取ろうと、男性の自宅に押し掛けたりしていた。
裁判所
 名古屋高裁 前原捷一郎裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月14日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 梅田被告は一審同様、拉致を除いて無罪であると主張。
 裁判長は交通事故偽装詐欺、強盗殺人についていずれも被告が主犯であると指摘。被告の供述には、共犯者の供述やその他事実と矛盾する部分が多く、信用できないと退けた。
備 考
 2006年3月22日、名古屋地裁岡崎支部で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年4月10日、最高裁で被告側上告棄却、確定。

氏 名
後藤浩之(41)
逮 捕
 2003年4月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、恐喝未遂、死体遺棄、脅迫教唆、犯人隠避教唆
事件概要
 愛知県新城市の給食会社役員後藤浩之被告は、フィリピンパブで知り合ったホステスとの結婚資金などを得るために、青年会議所(JC)仲間である新城市の建設会社役員の男性(当時39)を殺して金を奪い、家族から身代金名目の現金を脅し取ろうと、2002年4月17日午後10時10分すぎ、愛知県新城市の市商工会館の駐車場に止めていた乗用車内で、男性の首をロープで絞め殺害、現金約12万円などを奪った。
 翌18日には男性の生存を装い、家族に17回の脅迫電話をかけて身代金1億円を要求。東名高速道路上から現金を投下するよう指示したが失敗。19日、男性の遺体を同県額田町の残土捨て場に遺棄した。
 21、22の両日、捜査かく乱を狙って知人の会社員(脅迫、犯人隠匿罪で懲役2年、執行猶予4年が確定)に、自分が誘拐されたかのような虚偽の脅迫電話を自らの両親にかけさせ、フィリピンへ逃亡を図った。会社員の被告は後藤被告が殺害の犯人と知りながら、捜査をかく乱し、フィリピンへの逃亡を助けるために後藤被告の両親に「息子を預かった」などと電話をして身代金3000万円を要求。21日夜に後藤被告をJR浜松駅まで車で送り、JR成田空港駅までの切符を購入して渡した。
裁判所
 名古屋高裁 門野博裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年12月15日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 控訴審で、検察側は「実質的に身代金目的誘拐殺人と同等で死刑が相当」と主張した。これに対し門野裁判長は「身代金目的の意図があったことは合理的かつ自然で極刑はやむ得ない部分もあるが、殺意は直前に抱いており、計画自体が周到な準備にあったとはいえない」と退けた。
 一方、弁護側は「殺害は交際女性のことを(被害者に)なじられたもので、恐喝や金品強奪の意思はなかった」と殺人と窃盗罪を適用し有期刑を求めたが、門野裁判長は「被告の供述は信ぴょう性が乏しい」などと述べた。
 そして門野裁判長は「利欲目的の凶悪な犯行で卑劣極まりない。刑事責任は極めて重く、有期刑の選択は到底考えられず、死刑求刑も理由がある」と指摘。その上で「罪刑均衡などの見地から極刑はちゅうちょを覚えざるを得ない」と述べた。
備 考
 愛知県警は後藤被告を身代金目的誘拐容疑などで逮捕したものの、名古屋地検は最終的に誘拐罪の適用を見送った。
 名古屋高裁の門野裁判長は捜査員が取り調べで後藤被告の元妻と子の声を録音したテープを聴かせた点に触れ、「心理的な動揺を与えて供述を引き出す意図があった。捜査手法として妥当とはいいがたい」と指摘した。
 2005年5月24日、名古屋地裁にて一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
宮田好信(56)
逮 捕
 2005年1月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 無職宮田好信被告、柏木信幸被告、K被告は、2004年9月24日夜に東京都江東区の路上で帰宅途中の会社経営者の男性(当時61)を拉致して乗用車の中に連れ込み、走行中の車内で現金50万円などを強奪。宮田被告は翌29日午前8時過ぎ、神奈川県綾瀬市の自宅に連行した男性の首を絞めて殺害し、遺体を八王子市の山林に埋めた。
 宮田被告らは、会社社長水越清一被告から依頼を受けていた。水越被告は男性に700~800万円を貸しており、貸金を回収するために宮田被告らに男性の顔写真と約110万円の準備資金を渡していた。
裁判所
 最高裁第三小法廷 裁判長不明
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月18日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 柏木信幸被告は2005年12月2日、東京地裁で一審無期懲役判決。2006年4月24日、東京高裁で被告側控訴棄却。被告側上告棄却、確定済みと思われる。
 水越清一被告は2006年3月9日、東京地裁で一審無期懲役判決。2006年7月13日、東京高裁で被告側控訴棄却。上告せず、確定。
 K被告は求刑無期懲役に対し、従属的立場が認められ、2006年5月18日、懲役15年判決。2006年10月11日、被告側?控訴棄却
 2005年12月2日、東京地裁で一審無期懲役判決。2006年8月29日、東京高裁で一審破棄、無期懲役判決。

氏 名
元少年(20 犯行当時17)
逮 捕
 2004年9月13日
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗殺人、銃刀法違反
事件概要
 石川県松任市に住む無職少年(当時17)は2004年9月13日午前3時頃、金沢市に住む会社役員宅に裏口のガラス窓を割って侵入。役員の妻に気付かれたため、役員の男性(当時66)と妻(当時64)をサバイバルナイフで160ヶ所以上刺して殺害。現金3700円とカードが入っていた妻の財布を盗んだ。妻は110番通報していたため、金沢西署員が駆けつけ、裏口から出てきた少年を現行犯で逮捕した。少年は夫婦と面識はなく、運転免許を取得する費用が欲しくての犯行だった。
裁判所
 金沢地裁 堀内満裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月18日 無期懲役
裁判焦点
 少年は「間違いないです」と起訴事実を認めた。
 2004年12月22日の初公判における冒頭陳述で、「不登校で自宅に引きこもるうちに他人への憎悪を募らせ、インターネットの殺人サイトなどを見て殺人への関心を深めた」と事件の背景を指摘。犯行動機については「運転免許の取得費用を手に入れようと、民家に押し入ることを企て、見つかったらナイフで殺害し、自らの殺人願望も充足できると考えた」とした。また、犯行の計画性について、カレンダーを見て、験を担いで大安を犯行日に選んだことも明らかにし、「返り血が目立ないよう紺色シャツ、黒色ズボンを着た」とも指摘した。弁護側は「殺意を持ったのは被害者に見つかった時であり、殺害が目的ではない」と殺害の計画性を否定した。
 弁護側は、少年の事件当時の記憶が正確で、取り調べなどでもちゅうちょなく語っているなどの特徴をあげ、「広汎性発達障害、アスペルガー症候群の症状と共通しているようで、当時、心神耗弱の状態だったと考えられる」と主張。「責任能力に関係ないとしても情状面で重要」として、精神鑑定を申請した。
 鑑定は、堀内裁判長の判断で行われ2005年7月~2006年3月に実施された。鑑定書は、犯行時や現在の精神状態について「非社会性人格障害には該当するが、アスペルガー症候群や行為障害には当てはまらない。性格の偏りはあるが、狭義の精神疾患は認められず、責任能力が減退していたといえない」とし、犯行当時の責任能力を認めた。
 また、犯行の目的は「運転免許の取得費用欲しさで、殺人願望の充足ではなかった」とし、倫理観の欠如や共感の乏しさが犯行に関係しており、長期の教育的治療の必要性を指摘した。
 その後の公判でも少年は、「事件前後と比べて薄れてきているが、今も殺人願望はある」と述べている。
 検察側は「犯行は残虐非道を極め、遺族の処罰感情も厳しい。本来は死刑を持って処断すべきことは明らか」として、犯行時18歳未満に対する最高刑の無期懲役を求刑した。
 弁護側は最終弁論で、自閉症の一種である「アスペルガー症候群の疑いが濃厚」として少年の刑事責任能力の欠如を主張。また、小学校高学年から不登校となり、家庭内暴力を繰り返しても注意できる家族がいなかったことなど生育環境の問題を挙げ、情状酌量を求めた。
 堀内裁判長は主文言い渡しの前に判決理由を述べた。
 最大の争点になった被告の刑事責任能力について、被告が凶器を複数準備していた▽返り血が目立たない服に着替えていた▽通報されないよう電話線を切断した▽運転免許取得費用を得るための犯行だった――ことなどを挙げ、完全責任能力があると指摘した。  元少年が公判を通じて謝罪の言葉を述べていない点は「公判途中にかろうじてみせた罪悪感や謝罪の意思も、事件の重大性からすればまったく不十分。犯行に真剣に向き合おうという姿勢を読み取ることはできない」と厳しく指摘した。
 そして「極刑がやむをえないと認められる場合にあたると言わざるを得ない。死刑をもって処断すべき事案だが、18歳未満を死刑にしない少年法51条の規定を適用して緩和する」とした。
備 考
 遺族は「両親には百か所以上の刺し傷があったと聞いている。許し難い残虐な行動で、少年といえども極刑に処してほしい」と語ったという。
 事件当時18歳未満の少年に対する無期懲役は、2002年6月の千葉地裁判決以来。
 被害者の遺族は元少年とその両親を相手取り、4970万円の損害賠償を求める訴えを金沢地裁に起こした。2006年12月4日の第1回口頭弁論で、元少年側は事実を認め、和解を希望し、即日結審した。12月26日の和解協議で元少年の母親は長期にわたって毎月数万円ずつを支払うことを示し、遺族側がこれを了承。2007年1月26日に正式に和解が成立した。
 弁護人が控訴した。2007年2月13日、被告側控訴取下げ、確定。

氏 名
元少年(21 事件当時19)
逮 捕
 2004年11月24日(自ら通報)
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人
事件概要
 水戸市に住む無職少年の長男(当時19)は2004年11月23日午後11時半ごろ、自宅2階和室で寝ていた市立中学教諭の父親(当時51)の頭を鉄アレイ(重さ約4キロ)で数回殴打し殺害。さらに2階洋室で寝ていた母親(当時48)の頭を同様に殴り殺害した。
 当初「衝動的に殺した」と話していたが、その後の調べに対し「大学に入らなかったので両親から『習い事をしろ』と言われ、祖父からも『何をやっているんだ』と責められたので、皆殺しにしてやろうと思った。(父母を殺害したところで)力がうせてしまった」と供述している。当時、祖父は1階で就寝中、妹はテレビを見ていたが、けがはなかった。
裁判所
 水戸地裁 林正彦裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月18日 無期懲役
裁判焦点
 長男は鑑定留置の結果、「行っていることについて、自分がしているという感じがない」などの能動感がなくなる「離人症」だが、「現実を見失うほどではなく、責任能力に問題はない」と判断された。
 被告は2005年6月13日の初公判で起訴事実を全面的に認めている。
 検察側は冒頭陳述で「被告は他人と接するのが怖くなり、いわゆる『引きこもり』となったが、しつけの厳しい祖父に度々しかられ、祖父に強い憎悪を抱くようになった」と犯行の経緯や動機を説明している。
 両親を殺害したことについては「祖父の前に父と母を殺せば、祖父に対する恐怖心を克服するだけの勢いがつくと考えた」と述べた。
 論告で検察側は「実の息子に理由が分からぬまま命を奪われた無念さは余りある。結果は重大で『後悔は全くない』と供述するなど再犯の可能性も無視できない」と主張。「自己中心的な動機に基づく計画的事件で、反省の色がみられない」と指摘し、無期懲役を求刑した。弁護側は「家庭環境にも原因があった」と寛大な判決を求めた。
 林裁判長は判決理由で、「未熟で視野の狭い被告は、不満を抱いていた家族の殺害によって、抑圧的な引きこもり生活から抜け出せると考えた」と犯行動機を指摘。そのうえで「自ら生活を立て直す努力を全くせず、将来を案じていた両親の心情を理解しようとする姿勢もない。検挙後も犯行を真摯に受け止める姿勢を示しているとは認められない」と厳しく非難した。そして「犯行は身勝手極まりなく、理不尽な責任転嫁ないし逆恨みと言うほかない。被告人の未熟な側面を勘案してもそこに酌むべき事情を見いだすのは困難」とした。
備 考
 控訴せず、確定。

氏 名
石川良(50)
逮 捕
 2004年8月12日(死体遺棄容疑 うその不動産登記を法務局に申請したとする事件で2005年7月24日、有印公文書偽造、同行使の疑いで逮捕・起訴済み)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、有印公文書偽造、同行使他
事件概要
 会社員石川被告は、自分が勤めるホテルの客室の区分所有権取得を、世田谷区に住む会社社長の女性(当時57)に頼まれた。計約6000万円の代金を受け取ったが遊興費などで使い込み、発覚を防ぐために偽造した登記済権利証を渡してごまかした。架空取引に気づいた女性は2005年2月4日、返済を迫るためにホテルに出向き、資金回収を石川被告に迫ったが、石川被告は女性の首を絞めて殺害。さらに娘婿(死体遺棄容疑で起訴)に手伝わせ、遺体を静岡県裾野市の山林に遺棄した。
 石川被告はかねてから女性に架空の不動産投資を持ちかけており、女性は2002年9月、自宅に投資会社を設立。親族2人のほか、知人の紹介で知り合ったばかりの石川被告も役員に就任した。石川被告はそのころから、品川区内のホテル客室を対象とした架空の不動産投資を女性に持ち掛けており、計約1億5千万円をだまし取っていた。
裁判所
 最高裁第二小法廷 古田佑紀裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月19日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 一審で石川被告は殺意や強盗目的を否定している。
備 考
 2006年1月26日、東京地裁で一審無期懲役判決。東京地裁で初めて「期日間整理手続き」が適用された。2006年8月31日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
安藤博(66)
逮 捕
 2006年2月18日(死体遺棄容疑で)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、詐欺
事件概要
 元保険代理業安藤博被告は、保険の顧客であったさいたま市に住む女性が、家を火災で焼失して土地を売却したことなどにより多額の金を手にしたことを知り、2003年7月、虚偽の資金運用話を持ちかけて1900万円の小切手を受け取った。しかし、株式運用に失敗し金を返すことができなくなり、女性から返済を求められたことから、女性の殺害を決意。安藤被告が返済を約束した日である2004年12月28日正午ごろ、女性(当時77)のマンション駐車場に止めた自分の乗用車の中で女性の首をロープで絞めて殺害し、同月30日ごろ、遺体を同市浦和区内の雑木林に埋めた。
 女性の家族は2005年1月に家出人捜索願を出していた。安藤被告は株取引の失敗などで5000万円以上の借金があった。
裁判所
 東京高裁 須田賢裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月19日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 須田裁判長は「女性から預かった資金の返還を免れるための自己中心的な犯行で、情状酌量の余地は皆無だ」と指摘。「無期は重過ぎる」との被告側主張を退けた。
備 考
 2006年9月27日、さいたま地裁で一審無期懲役判決。被告側は上告した。2007年3月26日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
曽我慶司(49)
逮 捕
 2003年7月14日(死体遺棄容疑)
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄、現住建造物等放火、強盗他
事件概要
 相模川河川敷で野宿生活していた曽我慶司被告は2003年5月16日午後9時半ごろ、神奈川県厚木市内の中津川河川敷で路上生活をしていた住所不定、無職の男性(当時60)らにバイク盗などを知られたとの妄想を抱き、男性の首を絞めて窒息死させ、現金約6万円と乗用車2台を奪った。翌日、男性の遺体を相模川河川敷に掘った穴に遺棄した。
 さらに同年6月10日午前4時ごろ、男性の行方を捜していた神奈川座間市に住むアルバイト従業員の知人男性(当時55)宅に押し入り、男性に高圧電流銃を当てるなどして現金25,000円などを奪ったうえ、ロープで首を絞めて失神させた上で灯油をまいて火を付け逃走。男性を焼死させるとともに、男性宅約60平方メートルのうち約30平方メートルを焼いた。
 2003年3月28日、神奈川県大和市の路上で、乗っていたタクシー運転手(当時49)にナイフを突きつけ現金約7万円を奪った。
裁判所
 横浜地裁 栗田健一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月19日 無期懲役
裁判焦点
 論告で検察側は「強固な殺害意志に基づく執拗、冷酷極まりない犯行で、二人の尊い命が奪われた結果はあまりに重大。本来極刑で臨むほかないところ」とする一方、「被告は当時、妄想の影響下にあり、心神耗弱状態にあったことは謙虚に受け止めざるを得ない」とした。
 弁護側は「犯行当時は心神喪失で無罪」と主張した。
 栗田裁判著夫は被告を「犯行当時は心神耗弱だった」と認定。理由について「一連の犯行を引き起こす契機となった妄想の内容は全く了解し得ないものではない。犯行において被告の行動は合理的であり、当時の記憶は清明である」と述べた。その上で「遺族が極刑を望むのは無理もない」「被告の刑事責任は極めて重大で死刑を選択するのが相当」としたうえで「心神耗弱と認められ、法律上の減軽をする」とした。
備 考
 曽我慶司被告は厚木市における無職男性の死体遺棄容疑で2003年7月14日逮捕。鑑定留置の結果、責任能力を問えると判断され、12月5日に起訴。2004年1月13日、大和市の強盗事件で再逮捕。2004年2月20日、横浜地裁で初公判。2004年3月2日、男性に対する強盗殺人容疑で再逮捕。2004年5月19日、座間市の事件で再逮捕された。
 被告側は控訴した。2007年7月19日、東京高裁にて被告側控訴棄却。

氏 名
丸林寿人(66)
逮 捕
 2004年11月8日(現行犯逮捕)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、強盗殺人未遂他
事件概要
 無職丸林寿人(まるばやしひさと 当時63)被告は、2003年11月5日午後11時25分ごろ、東京都荒川区にある居酒屋で飲食代7000円の支払いを免れようと、調理場にいた店長の男性(当時53)を殺害。現金約7000円が入っていた手提げ金庫を奪った。丸林被告は、店内に最後まで客として残っていた。
 丸林被告は事件直後の11月8日未明、京都市の飲食店で代金を支払わず店を出て、追い掛けた男性従業員2人の腹を刃物で刺して重傷を負わせたとして、殺人未遂の現行犯で京都府警に逮捕された。強盗殺人の疑いでは、2004年5月11日に逮捕された。
 また丸林被告は、2003年10月、名古屋市中区にあるスナックに客を装って入店し、女性経営者(当時42)を包丁で脅して、現金約8万円や預金通帳が入った財布を奪った。丸林被告はその後、「預金通帳に数百万円の残高があり、女性からこんなにもとってはいけないと考えた」と考え、現金以外の財布類を宅配便で女性に返送し、強盗容疑で2004年1月26日に逮捕された。
 丸林被告は2003年2月頃から、飲食先の店の外で携帯電話をかけるふりをしてそのまま逃走する手口を用い、全国各地で無銭飲食を繰り返していた。
裁判所
 東京高裁 植村立郎裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2006年12月20日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 丸林被告は殺意を否認し、量刑不当を主張。検察側は死刑判決を求めた。
 植村裁判長は、殺人を起こすつもりで強盗に入ったとはいえないなどとし、「死刑が真にやむを得ないほど犯情が悪いとはいえない」と指摘。その上で「社会内で自立生活できない極めて危険な犯罪者。無期懲役の中でも最も重い中に位置する」と述べ、一審に続いて未決拘置日数を刑期に参入しなかった。
備 考
 2006年5月16日、東京地裁にて求刑死刑に対し、一審無期懲役判決。被告側は上告したが、1月7日に上告を取下げ、確定。

氏 名
西原隆児(50)
逮 捕
 2006年6月17日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 倉敷市のリフォーム会社経営西原隆児被告は2006年6月5日午前9時ごろ、マスクやサングラスなどで覆面をし、刺し身包丁(刃渡り21.3センチ)を持って、井原市に住む男性(当時76)方離れに侵入。居合わせた妻(当時72)が大声を出したため、胸や腹を23ヶ所刺すなどして殺害した。その後、母屋などを物色したが何も取らずに軽乗用車で逃走した。
 西原被告は3月ごろで約200万円の借金や未払い金があった上、5月分の生活費30万円の用意に困り、確実に金を取れる方法として強盗を考え、前日に立ち寄った被害者方を狙った金に困っていた。西原被告は、井原市の男性方の屋根を修理するなどして、顔見知りだった。
裁判所
 岡山地裁 白神文弘裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2006年12月27日 無期懲役
裁判焦点
 西原被告は初公判で「間違いない」と起訴事実を認めた。
 検察側は「借金苦から弱者を狙った、計画的で卑劣な犯行」として無期懲役を求刑した。
 白神裁判長は「被害者の無念さ、恐怖、苦痛は察するに余りあり、遺族らの処罰感情が極めて峻烈」「借金苦から生活費などの現金欲しさで犯行に及んだもので、利欲性が強く短絡的」とした。
備 考
 公判前整理手続きで争点は「量刑」に絞られており、12月20日の初公判で結審した。
 被告側は控訴した。2007年3月15日、被告側控訴取下げ、確定。




※最高裁は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。

※銃刀法
 正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」

※麻薬特例法
 正式名称は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」

※入管難民法
 正式名称は「出入国管理及び難民認定法」

※高裁判決
 阪口郁哉被告(2006年3月23日、一審無期懲役判決)、清水久美子被告(2006年7月10日、一審無期懲役判決)は2006年中に大阪高裁で被告側控訴が棄却されている。日付がわからないので、ここに記す。
 近内有被告(2005年6月23日、一審懲役15年判決)は2006年中に東京高裁で一審破棄、無期懲役判決が言い渡されている可能性が高いので、ここに記す。
 薛行全被告(2005年8月18日、一審無期懲役判決)は2006年中に名古屋高裁で被告側控訴が棄却されているものと思われる。日付がわからないので、ここに記す。
 施建泉被告(2005年10月27日、一審無期懲役判決)は2006年中に名古屋高裁で被告側控訴が棄却されているものと思われる。日付がわからないので、ここに記す。
 中川一夫被告(2005年11月4日、一審懲役15年判決)は2006年中に大阪高裁で一審破棄、無期懲役判決が言い渡されている可能性が高いので、ここに記す。
 陳明金被告(2006年7月11日、一審無期懲役判決)は2006年中に名古屋高裁で被告側控訴が棄却されているものと思われる。日付がわからないので、ここに記す。

※最高裁
 徐寧被告(2005年4月27日、一審懲役15年判決。2005年10月18日、一審破棄、二審無期懲役判決)、陳玉興被告(2005年9月30日、一審無期懲役判決)、柏木信幸被告(2005年12月2日、一審無期懲役判決)、薛経章被告(2006年1月13日、一審無期懲役判決)、薛行強被告(2006年1月27日、一審無期懲役判決)、林家泉被告(2006年2月24日、一審無期懲役判決)は2006年中に最高裁で被告側上告が棄却されているものと思われる。日付がわからないので、ここに記す。

※確定について
 求刑死刑について一審無期懲役判決、検察側のみ控訴して無期懲役判決が下された被告については確定したものと見なしている。

【参考資料】
 新聞記事各種



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