無期懲役判決リスト 2020年




 2020年に地裁、高裁、最高裁で無期懲役の判決(決定)が出た事件のリストです。目的は死刑判決との差を見るためです。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントなどでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。



地裁判決(うち求刑死刑)
高裁判決(うち求刑死刑)
最高裁判決(うち求刑死刑)
12(0)
9(3)
10(2)

 司法統計年報によると、一審:12件、控訴審9件(棄却8件、破棄自判1件。上告9件。取下げ1件)、上告審10件。
 検察統計年報によると、一審確定:7件、控訴棄却で確定1件、上告棄却で確定11件(うち取下げ1件)。



【2020年の無期懲役判決】

氏 名
宮口義弘(60)
逮 捕
 2016年4月15日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 埼玉県春日部市の不動産コンサルタント・宮口義弘被告は約200万円の借金返済を免れるため、2016年2月3日頃、春日部市に住む知人の無職男性(当時73)を窒息させて殺害し、遺体を自分の車の荷台に隠した。5日頃、遺体を群馬県藤岡市の空き地に埋めた。
 男性は一人暮らしで、2月5日に福祉関係者が訪ねたが、室内に姿がなく、連絡を受けた男性の長男が2月12日、春日部署に行方不明者届を提出。埼玉県警は事件に巻き込まれた可能性があるとみて捜査を開始。交友関係から宮口被告に話を聞いたが、説明に不審な点があったため、関係先を捜査したところ、藤岡市の空き地に掘り返した場所があり、地表に手が出ているのを4月8日に捜査員が発見。県警は15日、宮口被告を死体遺棄容疑で逮捕した。6月9日、強盗殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 さいたま地裁 田尻克己裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年1月8日 無期懲役
裁判焦点
 差し戻し裁判員裁判。
 2019年12月9日の初公判で、宮口義弘被告は一審と同じく強盗殺人罪について、「そのようなことはしていない」と否認。死体遺棄罪については「運搬したが土に埋めてはいない」と一部否認した。
 冒頭陳述で検察側は、「被告が男性を乗せた車内に男性の血痕が付着していた。鼻や口に巻かれた粘着テープは被告が購入し所持していたもの」と指摘。事件当日に男性の携帯電話を使って自身に電話をかけ、「男性が死亡したのに生存していると見せかける偽装工作をした」と述べた。そして宮口被告が男性との「証拠上認められる最終接触者」であり、死体遺棄場所に「相当時間とどまっていた」などと指摘した。弁護側は男性を殺害したのはヤンと名乗る男1人で、土に埋めたのはヤンとその仲間たちと主張。宮口被告は遺体の運搬を手伝ってしまったとして、強盗殺人罪について無罪を主張し、死体遺棄罪については一部を否認した。
 17日の論告で検察側は、生存した被害者と最後に接触したのは被告であり、遺体の口などに巻かれていた粘着テープは被告が事前に購入したものと指摘。借金返済を言い逃れができないと考え、殺害を決意したとして「確定的殺意に基づく残忍な犯行」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、粘着テープなどは「犯行の準備行為ではなく、仕事のために買ったもの」と主張。被害者を乗せた車を処分しなかった点などから「あえて証拠を残すような行為には疑問が残る」などとして、男性を殺害して遺体を埋めたのは、ヤンと名乗る男とその仲間であるとした。
 最終意見陳述で宮口被告は「私は殺害していない。適切な判断をしてほしい」と述べた。
 判決で田尻裁判長は変更前の訴因で審理した上で、借金の返済を先延ばしにしていた被告が、露見する可能性の高いうそをついて追い込まれていた状況や、被害者の鼻や口に巻かれた粘着テープや、遺体を埋めるのに使うくわを被告が購入したことなどを挙げ、殺害と死体遺棄の実行犯であるとともに強盗殺人の故意を認定。そのうえで「借金の返済を免れるために男性を殺害した動機は身勝手で強く非難されるべきだ」と述べた。
備 考
 2018年2月6日、さいたま地裁の裁判員裁判で一審懲役10年判決。強盗殺人の成立を認めず、傷害致死を適用した。2019年2月8日、東京高裁で一審破棄、地裁差し戻し。一審の裁判官が証拠調べ終了後、検察官に単独または氏名不詳者との共謀による犯行とするよう訴因変更を促したうえで変更を許可した一方、弁護人の弁論再開請求を却下したと指摘。「弁護人の反証の機会を奪うもので極めて不当」と非難。審理をやり直す必要があると結論付けた。上告せず、差し戻し確定。
 被告側は控訴した。2020年9月1日、東京高裁で被告側控訴棄却。2021年9月13日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
平野達彦(45)
逮 捕
 2015年3月9日(現行犯逮捕)
殺害人数
 5名
罪 状
 殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反
事件概要
 兵庫県洲本市の無職、平野達彦被告は2015年3月9日午前4時ごろ、自宅近くに住む無職の男性(当時82)宅で、男性と妻(当時79)の胸などをサバイバルナイフで複数回刺して殺害。7時ごろ、近くに住む嘱託職員の男性(当時62)方で、男性と団体職員の妻(当時59)、母親(当時84)をサバイバルナイフで刺して殺害した。
 同居していた長女(当時32)が110番通報。洲本署員が倒れている男女3人を発見、まもなく死亡が確認された。7時45分ごろ、同署員が近くにいた平野被告の服に血がついていたため職務質問したところ、関与を認めたため、この3人に対する殺人未遂容疑で現行犯逮捕した(後に容疑は殺人に切り替えられた)。その後、先に殺害された2名の遺体が発見された。

 平野被告は父親と祖母との3人暮らし。母親は淡路島内で別居していた。神戸市の私立高校を2年で中退し、実家に戻るなどしていた。
 2005年9月、平野被告は淡路島内で物品を壊したとして警察官に保護され、島内の病院に措置入院した。退院後の2009年7月、最初に殺害された男性の孫の男性と平野被告のオートバイの騒音を巡って口論となった。2010年7月、平野被告の母親が「インターネットへの書き込みを巡って近隣トラブルを起こした」と、洲本健康福祉事務所と洲本署に相談。12月、最初に殺害された男性の親族をネット上で中傷したとして名誉毀損容疑で逮捕されるも、精神障害のため、明石市内の病院に措置入院した。妄想性障害と診断され、2013年秋の退院後は明石市内に住んでいたが、医療機関での受診は2014年7月で最後となった。しかし両親は10月、「ネットでの中傷をしている」と相談。母親は洲本健康福祉事務所にも「息子が金の無心に来るかもしれない。以前にテーブルを蹴るなどしたことがあり、怖い」と話した。相談は両事務所に少なくとも7回あり、洲本健康福祉事務所は明石健康福祉事務所への相談内容と合わせ、同署に「母親が不安がっている」と伝えたという。
 洲本事務所は、平野被告の家族らから2005年以降に計5回、近隣トラブルなどの相談を受け、家族を介して支援していた。2014年10月の相談後も明石、洲本両事務所は内容を共有し、県警洲本署に協力を依頼。受け入れ先の病院を調整していた。しかし20日、明石事務所が問い合わせると、母親は「姿を見せなかった」と答えた。明石事務所は平野被告に面談し、健康状態に問題はないと判断。母親からの相談は途絶え、洲本事務所も追跡の電話や訪問はしなかったという。
 平野被告は2015年1月、洲本市の実家に戻った。平野被告は自宅に閉じこもり、会員制交流サイトのフェイスブックやツイッターなどに本名で登録し、被害者や近隣住民を批判する書き込みを繰り返していた。また、米軍や政府への批判も書き連ねた。
 2月14日、最初に殺害された男性の孫の男性が自宅近くで平野被告と口論になり、写真を撮られた。男性の娘が15日、自宅を訪れた県警洲本署員に不安を訴え、その後も連日、二つの別の駐在所を訪問。「写真を勝手にインターネットに掲載されたら犯罪になるのか」と相談し、地元でのパトロールの状況を確認した。20日、駐在所ではなく、洲本署を直接訪れた。「何とかできないか。犯罪にあたるなら捕まえてほしい」と訴えるも、対応した刑事課員は「写真を撮られただけでは事件化は難しい」と回答した。刑事課員がこの際、「何かあったら110番してください」と告げたところ、21日、男性が「(平野被告が)自宅付近を徘徊している」と110番通報。署員が駆けつけたが、平野被告の姿はなく、接触できなかった。一家は、平野被告が「ツイッター」に写真を掲載したのを確認し、家族が28日に駐在所を訪問。写真撮影やネット上の中傷行為について「人権侵害にならないのか」「事件化してほしい」と求めたり、「自宅周辺を徘徊している」と通報したりしていた。署は「写真を撮られただけでは難しい」と応じ、付近のパトロールを強化するなどしていた。署は平野被告本人への警告も提案したが、被害者側は望まなかった。3月2日には、親族が洲本市役所の人権推進課の窓口を訪れ、相談。市は弁護士の無料法律相談を紹介。3日には洲本署を訪れ、同署が捜査を始めた。親族は4日、弁護士の無料法律相談に訪れて相談していた。
 結果として、2月14日から3月3日まで9回、男性や親族は洲本署に相談していた。すべてデータベースに入力されていたが、県警によると、同署単独の取り扱い事案だったため、広域相談指導係のチェックから漏れたという。同署はパトロールのほか、駐在所員が2月15、16両日に平野被告宅を訪問したものの、父親に「(妄想性障害のため)ふさぎ込んでおり、入院させようかと思っている」と言われて本人に会えていなかった。また、繰り返し相談はあったが、被告の行為に暴力や殺害をほのめかす言動がなかったため、同署が凶悪性は低いと判断したとみられ、人身安全関連事案対策係にも報告されていなかった。また保健所は、平野被告は洲本市に戻っていることを知らなかった。

 2015年3月30日、先の2名の殺人容疑で平野被告は再逮捕された。
 神戸地検は、刑事責任能力の有無を調べるための鑑定留置を神戸地裁に請求し、認められた。4月9日から8月31日まで実施され、神戸地検は9月8日、「刑事責任能力があると認めた」として、平野被告を殺人容疑で起訴した。
裁判所
 大阪高裁 村山浩昭裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2020年1月27日 無期懲役(一審破棄)
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
(一審)
 裁判員裁判。地裁主導でもう1度、精神鑑定が実施されている。
 2017年2月8日の初公判で、平野達彦被告は起訴内容について「いずれも争います」と否認し、「事件は工作員によって仕組まれたものであり、本当の被害者は私。工作員に脳を支配され、殺害するよう強制された。完全な冤罪だ」と無罪を主張した。「無職ですか」と問われると「違います」と即答し、ウェブサイトの名前を3つ挙げて「サイトのサポーターをしている」と答え、長井裁判長から「それは何ですか」などと問い返された。
 検察側は冒頭陳述で、平野被告が2010年にインターネットの会員制交流サイトを利用して犠牲者の親類を中傷し、名誉毀損容疑で逮捕されたことに言及。被告が「復讐に一部成功」とネットに書き込むなどしていたことから、「正常な心理状態で殺害を実行した。犯行は精神障害によるものではなく報復によるものだった」と主張した。そして、「落ち度のない近隣住民を惨殺した。被害者が5人という結果も重大」と指摘。「被告は妄想性の精神障害があり、被害者らが工作員だと考えて殺害を決意した。犯行直後、警察官に『報復したんや』と話していた」ことから、「善悪を判断し、行動を制御する能力も著しく低下していなかった」として責任能力があると主張した。ナイフをインターネットで購入するなど準備をしていたとし、殺害の実行は妄想によるものではなく、完全責任能力があったと主張した。被告が事件の様子の一部をボイスレコーダーで録音していたことも明かした。
 弁護側は、被告の主張に沿って犯人性を争う姿勢を示すとともに、「被告の言っている通りならば、病的妄想に支配されていることは明らか」と述べ、被告が仮に犯人だとしても妄想によるものであり、心神喪失か心神耗弱の状態だった、と述べた。そして、被告の鑑定を担当した精神科医の証人尋問を通じ、被告が事件当時、心神喪失か心神耗弱の状態にあったことを立証していくとした。
 14日の第3回公判における被告人質問で平野被告は、弁護側から「5人をサバイバルナイフで刺殺したことを認めるか」と聞かれて、「はい」と答え、当時のことを「覚えている」と説明。5人を襲った理由について「思考や行動を操る電磁波兵器を工作員に使われた」などと述べた。
 15日の第4回公判で、被害者参加制度に基づいて遺族2人が「被害者に謝罪する気持ちはありますか」などと直接質問したが、平野被告は供述を全て拒否した。
 21日の第7回公判で、証人で出廷した平野被告の父親は「ご遺族にはできるだけのことをさせていただく。命をもって償いたい」と謝罪した。
 同日の被告人質問で、被害者参加制度を利用した遺族の質問に5人を殺害したことは認めた一方、「仕事もせず、親の金でナイフを買って殺人したことを恥ずかしいと思わないか」との問いには、「君は電磁波攻撃をやめなさい。今はもうやっていないのか」と反論。さらに「反省の弁はないのか」と促されると、「答えたくありません」と供述を拒否。遺族が「答えんかい」と怒鳴ったため、裁判長がたしなめた。
 22日の第8回公判で起訴後に精神鑑定をした医師が出廷し、動機について「精神障害による妄想の影響があった」と証言する一方、「事件当時は平素の人格だった」とし、事実上責任能力はあったとの見方を示した。地検が実施した精神鑑定の担当医も、同様の発言をした。
 3月1日の第9回公判で、被害者の遺族らが被害者参加制度を利用し「被告を死刑にしてもらいたい」と意見陳述した。
 3日の論告で検察側は、精神障害があったとしつつ、被告が量刑を事前に調べて事件後も落ち着いていたことから「精神障害の影響は及んでおらず、完全な責任能力があったことは明らかだ」と主張。事件前にサバイバルナイフを購入したり、殺人罪の量刑をインターネットで調べたりしていたことから「犯行には計画性があり、合理的な判断に基づいて行われた」と強調た。そして、「極めて残虐で執拗な犯行だ。何ら落ち度のない5人の命を奪った」と断じた。
 被害者参加制度を利用して遺族も出廷し「社会に戻ると同じ犯罪を繰り返す可能性が高い。被告に反省もなく、死刑にすべきだ」などと訴えた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「電磁波で操られていた」などとする被告の供述を踏まえ、「被告は向精神薬を服用していたことによる精神障害から電磁波攻撃を受けたと思い込み、正当な報復行為と確信して犯行に及んだ」と主張。「精神障害による妄想がなければ本件は起きていない。自分の行動が正当化されると確信して犯行に及んでおり、心神喪失か心神耗弱の状態だった」と述べ、無罪か刑減軽を求めた。
 平野被告は最終意見陳述で改めて殺害行為を認めた上で、「工作員に脳を操られ無意識下で殺意を抱かされた。私の体が殺害したとしても、私の自由意思からではなく、冤罪です」と無罪を主張した。
 判決で長井秀典裁判長は、向精神薬の大量摂取による薬剤性精神病で「被害者一家が電磁波兵器で攻撃してくる工作員だ」という妄想を抱くようになったと指摘。事件当時の精神状況について、直接的に殺害を促すような幻覚・妄想の症状はなく、自分の行為が殺人罪になり逮捕され裁判になると認識していたと判断した。さらに、「被告の犯行前後の行動は合理的で一貫していた」と指摘。被害者の就寝時間を狙ったことや、犯行時にハンドタオルを落として被害者の注意をそらしたこと、被害者家族に対し現実のトラブルから悪感情を持っていたこと、逮捕時に「弁護士が来るまで答えない」と話したことなどを列挙し、精神鑑定を実施した鑑定医2人の意見も踏まえ、「計画性があり、殺害を決意し実行した行動に病気は大きな影響を与えていない」と結論づけた。そして、「一定の計画性の下で非常に強い殺意があり、動機は極めて身勝手で悪質」と強調。「落ち度のない5人もの命を奪った上、犯行を正当化し続けている。犯行態様の悪質さからも死刑回避の事情は見当たらない」と断じた。


(二審)
 2018年9月28日の控訴審初公判で、弁護側は、一審判決には責任能力に関して事実誤認があるなどと主張した。村山浩昭裁判長は職権で精神鑑定の実施を決めた。検察側は一審で十分な鑑定をしていると異議を申し立てたが、裁判長は退けた。鑑定人の精神科医が出廷し、来年1月末までに結果を提出することを了承した。
 2019年7月17日の第2回公判で、平野達彦被告の精神鑑定をした医師の証人尋問が行われ、「薬剤性の障害という鑑定は誤っている」と指摘。被告が「電磁波攻撃から身を守る」などと主張した動機について「被害妄想しか考えられない」と指摘。被告は被害者から攻撃を受けているという妄想を抱いていたとして、「事件当時は被害妄想が圧倒的に影響していた妄想性障害だった」と主張した。妄想と本来の人格についての、どちらがどの程度事件に影響したかは「はっきりと分けては言えない」とした。一方、一審時の鑑定医の証人尋問もあり、薬剤性の精神障害だったと改めて主張。「妄想の著しい影響があったが、普段の人格が全く機能していなかったとは言えない」と述べた。
 9月18日の第3回公判で、犠牲者の遺族4人が意見陳述し、厳罰を求めた。事件で母と兄夫婦を奪われた女性は「人を殺していいはずがないし、刑を減らされるような事情とはとても思えない」「被告や(被告の)親族から謝罪はおろか、一本の連絡もない」「私たちの家族を戻してほしい」などと声を詰まらせ、死刑判決を求めた。
 30日の第4回公判で、弁護側は新しい鑑定結果を踏まえ、「心神喪失または心神耗弱の状態だった」と主張。検察側は「被害者が寝ている時間帯を選ぶなど、合理的に行動していた」と指摘し、結審した。
 判決で村山裁判長は、起訴前後の鑑定結果について、控訴審に証人出廷した担当医の証言が一審段階では「明らかに妄想が活発化した形跡はない」としたのに、二審では妄想の活発化を認めるなど意見が食い違っていることなどを挙げ、「責任能力の判断の点で重大な変更で、信用性に大きな疑問がある」と指摘した。二審で新たに実施した精神鑑定の担当医の「犯行時の被告の妄想性障害は活発だった」との証言を重視。「妄想でしか動機を説明できず、病気の影響はきわめて大きい」とし「被告は重い妄想性障害で被害妄想が悪化し、攻撃性などが極めて高まっての犯行。犯行を思いとどまる能力が著しく減退していた」と判断して心神耗弱状態だったと認定した。ただ、犯行前に殺人の方法についてインターネットで検索していたことなどから、「制御能力は保持されていた」とした。
備 考
 地元の洲本保健所には、平野被告が洲本市に転居したことや通院をやめたことなどの情報が伝わっておらず、何の対応もできなかった。事件後、兵庫県の「精神保健医療体制検討委員会」は提言をまとめ、2015年12月16日、井戸敏三知事に提出した。今後は、現行の保健所と県警の連携体制を拡充し、自治体や医療機関なども含めるべきだと指摘。自傷、他傷の恐れがある精神障害者の治療が途切れないよう、関係機関がチームで支援することを求めた。市町の相談業務義務化も盛り込んだ。
 平野被告に対する県の対応について、田中究(県立光風病院長)座長は記者会見で「基本的に不十分。被告が治療を中断しなければ事件は起こらなかった」と結論づけた。
 兵庫県は洲本市の事件を受けを2016年4月、医師ら5人前後でつくる専門家チームを設けて県内13保健所に配置し、退院後も患者を訪問し、家族らの継続支援を行い、9月までに44人の患者をケア。措置入院の解除の是非などを医師に助言する第三者機関も2017年1月に新設した。厚生労働省はこうした取り組みをモデルケースとするが、県は十分に正規職員を追加配置できず嘱託職員で対応するなど問題も残っている。
 政府は再発防止策を盛り込んだ精神保健福祉法の改正案を2017年2月28日に閣議決定し、国会に提出。患者の入院中から行政側が医療機関と協力して退院後の支援計画を作成するようにし、計画の期間中に患者が転居した場合は移転先の自治体に計画の内容を通知することを柱としている。

 2017年3月22日、神戸地裁(長井秀典裁判長)の裁判員裁判で求刑通り一審死刑判決。
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 被告側は上告した。検察側は上告せず。2021年1月20日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
芥川誠(60)
逮 捕
 2016年10月14日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 愛知県北名古屋市の無職、芥川誠被告は2016年8月26日、当時交際していた女性の友人だった、一宮市のパート従業員の女性(当時62)宅を訪れ、女性の首をひもで絞めるなどして殺害、指輪など47点(時価約298万円相当)と現金2,000円、商品券15枚(計15,000円分)を奪った。殺害された女性は20年以上前に夫を亡くし、その際に高額の遺産や保険金を受け取っていたとみられ、独り暮らしだった。芥川被告は交際していた北名古屋市の女性宅に転がり込み、交際女性を通じて被害者女性と知り合った。
 8月30日午後、夫の法要で女性宅を訪れた近所の寺の副住職が遺体を発見。首に圧迫した痕があったことから県警は殺人事件と断定し、捜査を進めた。10月14日、芥川誠被告を強盗殺人の疑いで逮捕した。
裁判所
 名古屋高裁 堀内満裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年1月30日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2020年1月14日の控訴審初公判で、弁護側は一審の事実誤認を指摘した。検察側は控訴棄却を求め即日結審した。
 判決で堀内満裁判長は、「犯行前日に貴金属の売却を買取店に伝えていて、金品を奪う目的だったことが推認できる」などとした。
備 考
 2019年10月7日、名古屋地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。上告せず確定。

氏 名
板橋雄太(35)
逮 捕
 2013年12月7日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、窃盗、傷害、覚醒剤取締法違反
事件概要
 柏市の無職、板橋雄太被告は共犯M・K被告、A・Y被告と共謀し2013年2月22日午前6時50分ごろ、柏市に住む会社員の男性(当時31)の自宅アパート前駐車場から乗用車を盗んだ。そして逃走を阻止しようと立ちふさがった男性を殺意を持ってボンネットに乗り上げさせた上、急加速後に減速して振り落とし、頭を強打させて6日後に死亡させた。そしてM・S被告とM・M被告は盗品と知りながら男性の車を袖ケ浦市内の中古車解体作業所(ヤード)に運搬した。
 現場周辺の防犯カメラに、男性の車ともう1台の車が逃げる様子が映っており、県警は自動車窃盗グループによる犯行とみて捜査。男性の車が袖ケ浦市にあるヤード(自動車解体場)に運ばれたことを突き止めたが、車は既に解体されていた。その後も千葉県や埼玉県で自動車盗が相次いだことから、捜査線上にこの自動車窃盗グループが浮上。県警は10月15日、埼玉県春日部市で9月に起きた別の自動車窃盗事件でA・Y被告を逮捕。A・Y被告は調べに対し、事件発生時に男性の車を運転していたのは板橋被告だったと説明。県警は、現場に残ったタイヤ痕などから板橋被告が約50mにわたり車の急発進と急ブレーキを繰り返し、ボンネットに乗り上げた男性さんを振り落としたとみて、強盗殺人容疑での逮捕に踏み切り12月7日、板橋被告、M・K被告、A・Y被告(二人は窃盗容疑)を逮捕した。板橋被告は事件後、松戸市から柏市に引っ越していた。同日、M・S被告を、12月8日、M・M被告を逮捕した。
 逮捕された5人のグループは計十数人で構成され、県内や周辺の都県で自動車盗を繰り返していた。
裁判所
 東京高裁 後藤真理子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年2月13日 無期懲役(被告側控訴棄却)
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 弁護側は、車を運転したのは板橋被告ではなく、車の運転者にも殺意はなかったと主張した。
 判決で後藤裁判長は、仲間の供述や被告との手紙のやりとりから、被告が運転したと認定した。
備 考
 窃盗で逮捕されたM・K被告は懲役5年が確定、A・Y被告も懲役3年6月が確定している。盗品等運搬容疑で逮捕されたM・S被告、M・M被告は不明。

 2015年7月9日、千葉地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審懲役6年判決。【判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)。2016年8月10日、東京高裁で一審破棄、差し戻し判決。2017年3月8日、被告側上告棄却、差し戻しが確定。
 2019年2月26日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2020年9月2日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
佐竹秀樹(33)
逮 捕
 2017年3月11日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人他
事件概要
 長崎県佐世保市の露天商アルバイト、佐竹秀樹被告は2017年11月10日午後7時半ごろ、佐世保市にある廃業した自動車解体会社で、元経営者の男性(当時66)から借りた15万円の返済を免れようと、包丁で背中と首を刺すなどして殺害し、事務所内にあった現金約150万円を奪った。男性は5年ほど前に廃業したが、車を担保にした金銭の貸し付けや自動車保険の代理業務を個人的に営んでいた。男性はハトレースが趣味で、会社の敷地内で知人らとハトを飼っており、当日もハトの世話をしていた。
 同日午後8時半ごろ、敷地内の未舗装の地面に血を流してあおむけに倒れている男性を、訪れた知人男性が見つけた。
 長崎県警は11日、佐竹被告を強盗殺人容疑で逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 三浦守裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年2月17日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2019年3月15日、長崎地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2019年9月27日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
落合和子(44)
逮 捕
 2015年4月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 栃木県足利市の化粧品販売員、落合和子被告は2015年3月25日、知人で群馬県板倉町に住む40代の女性会社員と共謀し、群馬県内かその周辺で、足利市に住む同業他社の化粧品販売員で知り合いの女性(当時84)の首を絞めるなどして殺害。現金約50万円を奪い、群馬県館林市の川に遺棄した。被害者の女性は落合被告と会う前に自分の口座から現金50万円を下ろしていた。また、女性会社員も自分の預金数十万円を下ろしていた。落合被告は消費者金融などから数百万円の借金があり、奪った金を含む約94万円を同日と翌日、借金の返済に充てていた。
 4月2日、被害者の女性と同じ日に行方不明になった女性会社員の車が千代田町の駐車場で見つかり、車内に被害者の血が付着した衣服や指輪が残されていた。
 4月15日、館林市日向町の多々良川で被害者の遺体が発見された。遺体は頭に枕カバーのような布袋がかぶせられ、首にマフラーのようなものが巻かれていた。翌日、県警が館林署に捜査本部を設置し、被害者を司法解剖するも、死因は特定されなかった。
 6月26日、千葉県我孫子市の利根川で女性会社員の遺体が発見された。7月8日に身元が判明した。死因は水死だった。
 2018年1月24日、群馬県警は死体遺棄容疑で落合被告を逮捕。2月14日、強盗殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 最高裁第一小法廷 池上政幸裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年3月3日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 5裁判官全員一致の結論。
備 考
 2018年12月21日、前橋地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2019年10月10日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
勝又拓哉(37)
逮 捕
 2014年6月3日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、商標法違反、銃刀法違反
事件概要
 栃木県鹿沼市の無職、勝又拓哉被告は2005年12月1日午後2時50分ごろ、栃木県今市市(現日光市)で下校途中の小学1年の少女(当時7)を車で連れ去り、「1日午後2時38分ごろから2日午前4時ごろまでの間」(二審の途中までは翌2日午前4時ごろ)、「栃木県か茨城県内とその周辺」(二審の途中までは「約65km離れた茨城県常陸大宮市の林道」)で胸を数回刺して殺害した。
 帰宅した母親が家にいないことに気付き、1日午後5時ごろ、警察に届け出た。遺体は2日午後2時ごろ、狩猟の下見で訪れた男性らが遺体を見つけた。栃木・茨城の両県警が合同捜査本部設置。遺体の付着物から採取されたDNA型は当初、有力な手掛かりとみられていたが、当時の栃木県警の捜査幹部のものが誤って付着したことが2009年に判明。物証が乏しく捜査は難航した。警察庁は2007年7月、は本件を最重要未解決事件の一つとして、公費による懸賞金「捜査特別報奨金」(1年間)の対象に指定。2013年8月に6度目の更新をしている。
 勝又拓哉被告は2014年1月29日、高級ブランドの「ルイ・ヴィトン」に似た商標付きショルダーバッグを販売目的で所持していたとして、商標法違反の疑いで母親とともに現行犯逮捕された。起訴拘留中に少女の連れ去りへの関与を認める供述をした。6月3日、合同捜査本部は勝又被告を殺人容疑で再逮捕した。死体遺棄罪は3年の時効が成立している。
 また勝又被告は2014年1月29日午後、鹿沼市の自宅に駐車中の乗用車に、刃渡り約7.2cmのナイフを所持し、同日、母親と一緒に販売目的で、計206点の偽ブランド品を所持したほか、2013年9月、偽ブランド品を中国から輸入した。
 勝又拓哉被告は台湾出身の両親の間に生まれ、7歳で台湾から来日。1990年頃~2000年ごろ、骨董商を営む母親や再婚相手の日本人男性、家族らと当時の今市市に住んでおり、少女の自宅からは約5分の位置にあった。勝又被告は不登校になり、中学校卒業後の2000年頃から鹿沼市で一人暮らしを始め、2009年に日本に帰化した。
 県警は2014年9月10日、勝又拓哉被告の逮捕に結びつく情報を寄せた2人に、公的懸賞金(捜査特別報奨金)300万円と遺族らの寄付による情報提供謝礼金200万円の計500万円が支払われたと発表した。県警は「情報提供者を保護する必要がある」として、名前や懸賞金の分配比率などは明らかにしていない。
裁判所
 最高裁第二小法廷 三浦守裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年3月4日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 4裁判官全員一致の意見。
備 考
 母親は商標法違反で2014年6月に懲役1年6月、罰金30万円、執行猶予3年の有罪判決を受けた。
 2016年4月8日、宇都宮地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2018年8月3日、東京高裁で一審破棄のうえ、改めて無期懲役判決。

氏 名
鹿嶋学(36)
逮 捕
 2018年4月13日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、殺人未遂他
事件概要
 山口県の会社員、鹿嶋学被告(当時21)は2004年10月4日、寝坊したことをきっかけに勤務先で叱られると思って自暴自棄になり、萩市の会社の寮を飛び出し、ミニバイクで東京方面へ出発。5日、広島県内へ入った。廿日市市で偶然見かけた高校2年生の女子(当時17)に乱暴しようと午後3時ごろ、女子高生の部屋がある自宅の離れに侵入。折り畳みナイフを突き付けて脅したが逃げられたため、胸や腹などを繰り返し刺して失血死させた。さらに悲鳴を聞いて母屋から駆け付けた祖母(当時73)の腹などを指して1か月の重傷を負わせた。女子は当日、高校の定期試験のため、普段より早い午後1時40分ごろ帰宅していた。
 母屋から駆け付けた妹の目撃証言などから似顔絵なども公表されたが、捜査は難航。2005年には父親がブログを開設し、情報提供を依頼。2007年3月、遺族が有力情報に懸賞金支払いを決定。2008年3月に捜査特別報奨金(上限額300万円)の対象となった。2010年からは父親も県警と一緒に情報提供のチラシ配りを行った。未解決事件を扱ったテレビ番組などでも取り上げられたが、解決に結び付く有力な証言は得られなかった。
 2018年4月、鹿嶋被告が勤務先の不真面目な同僚を蹴り、暴行容疑で3日に書類送検された。この時に採取された指紋やDNA型などが、廿日市市の事件現場に残っていたものと一致。4月13日、広島県警が殺人容疑で逮捕した。5月3日、祖母への殺人未遂容疑で再逮捕。
裁判所
 広島地裁 杉本正則裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年3月18日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2020年3月3日の初公判で、鹿嶋学被告は「間違っていません」と起訴事実を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、鹿嶋被告は性行為の経験がないことから偶然見掛けた女子高生を乱暴しようと企てたと述べた。弁護人は、鹿嶋被告が家族関係の不和や勤務先への不満から「自暴自棄になっていた」と裁判員たちに理解を求めた。
 4日の第2回公判における被告人質問で、鹿嶋被告は犯行動機について「(性行為の経験がなく)してみたい気持ちがあった。その先の人生はどうでもいいと思い、罪を犯す抵抗感が全くなかった」と語った。鹿嶋被告は逮捕までの約13年半について「捕まらないことに甘え、自首は考えていなかった」と述べた。検察側から被害者を刺した理由を問われ、被告は「1回目は被害者が逃げたことへの怒り。2回目以降は自分の置かれた環境への不満をぶつけ『くそ、くそ』と言いながら何回も刺した。八つ当たりです」と説明した。この日は鹿嶋被告の父親の証人尋問もあり、検察側席の遺族に対し「同じ親として大変申し訳ない」と謝罪の言葉を重ねた。
 5日の第3回公判で、鹿嶋被告の精神鑑定をした医師が出廷。「被告は自分に興味がなく情緒的な発達が乏しかった」「寝坊をきっかけにふるさとを捨てるという極端な行動をとるなど人格的に偏りはあるが精神障害ではない」と話した。
 10日の第4回公判で、女子高生の父親が被害者参加制度に基づく意見陳述を行い、「娘の命を奪い、母親の命も奪おうとした被告に対して死刑を望みます。自分の命で償ってほしい」と述べた。
 同日の論告求刑で検察側は、被告は帰宅中の被害者を見かけ、わいせつ目的で襲おうとしたが、逃げられたことに激高して殺害したと指摘。「被害者に落ち度はない。被告の動機は身勝手で、再犯も懸念される」などとした。そして「強い殺意に基づく残虐で非道な犯行」と断じた。
 同日の最終弁論で弁護側は、被告は当時勤務していた金属加工会社で長時間労働を強いられていたとし、「大きなストレスで極端な意思決定をする特性があった。殺害は突発的な行動だった」と計画性は乏しく十分反省しているとし、有期刑を求めた。
 最終意見陳述で鹿嶋被告は、被害者家族の方を向いて「自分勝手な思いで事件を起こし、大切なご家族の命を奪い傷つけた。これまでご家族の皆さんを苦しめ悲しませてきて申し訳ございません」と頭を下げた。
 判決で杉本裁判長は、「一人の生命を奪い、一人に生命の危険が迫る重傷を負わせた結果はあまりに重大。被害者は自宅でくつろいでいるところを突然襲われており、肉体的苦痛や恐怖感は想像を絶する」と指摘。鹿嶋被告の発達の偏りの影響や計画的な殺害ではなかった点を認めつつも「わいせつ目的が遂げられなかった怒りという動機は身勝手極まりなく、強い非難に値する。長期間逃亡し、遺族や地域社会への影響も甚大だった。事実の重大性を厳粛に受け止めさせ、贖罪の日々を送らせるのが相当」と述べた。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
於保照義(70)
逮 捕
 2014年8月15日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、業務上横領
事件概要
 土木建設会社社長の於保(おほ)照義被告は2014年8月15日午後3時頃から同6時15分頃の間、佐賀市の会社が管理する残土置き場で、在日韓国人で下関市の会社経営の男性(当時76)と知人で無職の女性(当時48)を呼び出し、2人が乗った軽乗用車が到着すると、被告は車から降りる間も与えずショベルのバケットを車の屋根に振り下ろし、さらにバケットとキャタピラで車を挟み込み、穴まで引きずって落とした。穴に土砂を掛け続け、車外に出た男性と、車内にいた女性を生き埋めにして窒息死させた。
 於保照義被告は男性から借金などの名目で計4千万円の返済を求められていた。残土置き場周辺の土地は複数の所有権が絡み合っており、その一部が男性のものだった。於保被告は事件3日前、油圧ショベルの先端を、爪が付いた「スケルトンバケット」に交換するよう従業員に指示。翌日、別の従業員に「お盆過ぎに取引先が廃棄物を持ってくる」として犯行現場となった縦横6~7m、深さ5~6mの穴を掘らせていた。
 それぞれの親族から捜索願が出された。2015年7月25、26日、2人の遺体が発見された。
 9月1日、捜査本部は死体遺棄容疑で於保照義被告を逮捕した。22日、殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 福岡高裁 鬼澤友直裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2020年3月18日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 2019年7月29日の控訴審初公判で、於保照義被告は無罪を主張した。一審では一切黙秘していた。
 於保被告は被告人質問で、借金の返済を迫られていたことを認めた上で「(事件当日の)正午頃に(残土置き場に)行った際には穴が開いていて、夕方頃に戻った時には穴が埋まっていた」と説明し、事件とは無関係と主張した。一方、検察側は、一審は刑が軽すぎるとして死刑を選択するよう求めた。
 9月25日の第2回公判における検察側の反対尋問で、於保被告は犯行があったとされる2014年8月15日の行動として、「恒例行事だから」と3カ所の寺に墓参りに行ったと主張。一方、被告の日記に「昨日(15日)は雨で墓参りに行けなかった」と記されている点を指摘されると、「たまたまそう書いた。書き間違いじゃないか」と反論した。当日は雨が心配だったため現場付近には計3回行ったとし、現場の穴はその間に知人が産業廃棄物を持ってきて埋めたと思っていたと主張。2人の死は事故か殺害によるものか見解を問われると、「分かりません」と述べた。
 2020年1月15日の第4回公判で、亡くなった女性の長女が代理人弁護士を通じて意見陳述した。一審では黙秘していた被告が控訴審で自ら無罪主張した点に触れ、「被告が語ったのは一方的な主張と唐突なアリバイ。知りたい事実は何一つなかった」と批判。「母は娘や孫と一緒に年を取る当たり前の幸せを奪われた。被告に極刑を下してほしい」と述べた。
 同日の論告求刑で検察側は、被告の証言は何一つ信用できないと批判。一審判決は軽すぎると、改めて死刑を求めた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「直接証拠がない中で、被告が犯人でなければ説明できない事情はない」などとして改めて無罪を主張した。
 判決で鬼澤裁判長は、殺害に使用された油圧ショベルの稼働記録や、携帯電話記録などから被告の犯行と認定した一審の判断について「不合理な点はない」と指摘し、弁護側の主張を退けた。。一方で、被告が被害者男性から多額の借金返済を執拗に迫られ、脅されていたとし、それが犯行を招いた点は否定できないことから、死刑を回避した一審判決は「正当だ」と述べた。
備 考
 2018年8月6日、佐賀地裁の裁判員裁判で求刑死刑に対し一審無期懲役判決。被告側は上告した。検察側は上告せず。2020年9月9日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
中野稚也(29)
逮 捕
 2017年12月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、昏睡強盗、窃盗他
事件概要
 長崎県諫早市の自営業中野稚也(わくや)被告は、実質経営していたスナックの従業員と共謀。2017年4月8日未明、睡眠薬を混入した酒を飲ませて昏睡状態になった客の男性会社員(当時37)から約3万円を奪い、吐いた物を喉に詰まらせ窒息死させた。
 男性客は事件当日、同じビルの下の階の店にいたところ、アルバイト少女に誘われてスナックに行った。男性客はスナックを数回訪れたことがあった。
 その他、中野被告らは3月26日、スナックで客の男性(当時23)に睡眠薬を混ぜた酒を飲ませて昏睡させた上でキャッシュカードを奪い、近くのコンビニエンスストアの現金自動預け払い機(ATM)で100万円を引き出した。
 3月28日、スナックで客の男性(当時21)に睡眠薬を混ぜた酒を飲ませて昏睡させた上でクレジットカードを奪い、店の端末を使って約10万円を決済した。
 長崎県警は12月6日、強盗致死容疑で中野被告、店長の男性Y被告、従業員の女性、アルバイト少女(当時17)、建設作業員の少年(当時17)ら5人を逮捕した。27日、別の昏睡強盗と窃盗容疑で中野被告ら4人を再逮捕し、1人のアルバイト少女(当時19)を新たに逮捕した。2018年1月17日、別の昏睡強盗事件の容疑で5人を再逮捕した。
 5月8日付で長崎地検は、強盗致死容疑で逮捕されたY被告、従業員の女性、建設作業員の少年について不起訴にした。また1件について中野被告ら4人の昏睡強盗罪についても不起訴にした。
裁判所
 最高裁第三小法廷 林景一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年3月18日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 3月のこん睡強盗並びに窃盗容疑で起訴された元店長のY被告は2018年5月18日、長崎地裁(小松本卓裁判官)で懲役3年6月判決(求刑懲役6年)。控訴せず確定。
 強盗致死容疑で逮捕されたアルバイト少女は、同非行内容で長崎家裁に送致された。
 強盗致死容疑で逮捕され不起訴となった従業員の女性に対し、中野稚也被告は不当と長崎検察審査会に訴えた。2019年4月24日付で長崎検察審査会は「昏睡強盗の共犯であることを自覚しており、加担した犯罪行為により尊い人命が失われている」などとして「不起訴不当」の議決をした。

 2019年5月23日、長崎地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2019年11月22日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
北嶋祥太(24)
逮 捕
 2018年11月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 石川県金沢市の無職、北嶋祥太被告は2018年11月8日午前9時半ごろ、自宅で同居する祖父(当時71)の首をひもで絞めて殺害した上、テレビなど家電製品3点(5万5千円相当)と現金約1万2千円を奪った。犯行後、祖父の軽トラックに乗ってテレビをリサイクルショップで換金し、能美市で11時の開店からパチスロをしていた。
 北嶋被告は祖父と2歳下の弟の三人暮らし。北嶋被告は高校卒業後就職した2014年に友人に誘われてパチスロをし、その後は一人で行くようになった。21歳の時、母を亡くした。コミュニケーション障害の影響もあって相談相手を失った。パチスロなどに使う金が足りず、借金するように。2018年春ごろからは同居する祖父や弟のテレビなどを無断で持ち出し、換金を繰り返した。2018年5月末、無職になった。祖父に叱責され、8月末ごろには家を追い出され、敷地内の納屋などで暮らしていた。
 同日午後5時ごろ、弟が仕事を終えて帰宅したが、祖父や被告の姿は見なかった。いったん外出後、午後8時ごろ帰宅し、祖父の姿を見つけ、警察に通報した。午後9時半ごろ、パチスロをしていた北嶋被告を捜査中の警察官が発見。事情を聴くと犯行を認めたため、緊急逮捕した。
裁判所
 名古屋高裁金沢支部 高山光明裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年6月2日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2020年4月21日の控訴審初公判で、弁護側は「北嶋被告のギャンブル依存症が事件に大きな影響を与えた」とし、情状酌量による刑の減軽を求め、懲役15年が妥当と主張。検察側は控訴棄却を求め、即日結審した。
 判決で高山光明裁判長は、「被告は犯行時に合理的行動を取っている。依存症は動機に一部影響したが、犯行にはほとんど影響していない」した。
備 考
 2019年12月3日、金沢地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2020年11月9日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
元少年(20)
逮 捕
 2018年3月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、窃盗、自動車運転死傷行為処罰法違反(無免許過失運転致傷)他
事件概要
 千葉県茂原市の無職少年B被告(事件当時18)は、同市内のアパートで同居する土木作業員の少年A被告(当時18)、無職少年C被告(当時17)と共謀。2018年2月26日午前1時15分ごろ、同市に住む女性(当時85)宅に侵入。寝室で女性を床に押し倒して殴ったり首を絞めるなどして現金約12,000円を盗み、包丁で首を3回刺して殺害した。
 女性は長女と同居していたが入院したため1人で生活。近くに住む長男夫婦が頻繁に訪れていた。
 26日午前8時55分ごろ、長男の妻が倒れている女性をみつけ、119番通報。3月2日、捜査本部は少年3人を強盗殺人と住居侵入の疑いで逮捕した。
 千葉地検は3月19日、少年A被告と少年C被告を千葉家裁に送致した。同家裁は同日、2週間の観護措置を決定した。23日、少年B被告を千葉家裁に送致した。家裁は同日、2週間の観護措置を決めた。4月3日までに千葉家裁は少年A被告に対し、2週間の観護措置延長を決定した。千葉地検は同日、少年B被告と少年C被告を別の窃盗事件で再逮捕した。千葉家裁は4月13日、少年A被告を検察官送致(逆送)とする決定をした。千葉地検は20日、強盗殺人罪などで少年A被告を起訴した。
 県警捜査3課は6月7日、茂原市を中心に2017年12月~2018年3月に相次いだ窃盗事件約50件に関与したとして、少年B、少年Cを含む同市などの17~19歳の少年5人を窃盗などの容疑で逮捕・送検したと発表した。そのうち少年B被告と少年C被告は事件前日の2月25日未明から早朝にかけて、盗み目的で女性方に侵入し金品を物色していた。千葉家裁は6月29日、少年B被告と少年C被告を検察官送致(逆送)とする決定を出した。千葉地検は7月6日、2人を強盗殺人や住居侵入などの罪で起訴した。
 他に少年B被告は、2018年2月16日午前、市川市の国道で乗用車を無免許運転し、交差点で停止中のワンボックス車に追突。運転していた30歳代男性にけがを負わせるなどした。
裁判所
 東京高裁 近藤宏子裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年6月3日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 控訴審で弁護側は、殺害は共犯者の単独行為で被告の元少年は合意していないと主張していた。
 近藤宏子裁判長は、被告の元少年が共犯者に絞殺の方法を指南し、凶器のナイフを渡したという共犯者2人の供述は信用できると指摘。「被告が殺害を強く促したとみるほかない。殺害の共謀があったとする一審判決の判断に不合理な点はない」と退けた。
備 考
 少年A被告は2019年1月24日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2019年6月27日、東京高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 少年C被告は2019年5月31日、千葉地裁の裁判員裁判で懲役20年判決(求刑無期懲役)。殺人について「共謀していなかった」と判断して適用せず、強盗致死を適用した。2019年10月28日、東京高裁で被告側控訴棄却。2020年6月までに上告棄却、もしくは上告取り下げで確定。

 2019年10月2日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2020年12月16日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
大沢康貴(37)
逮 捕
 2020年1月16日(別件の詐欺容疑で逮捕・起訴済み)
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 長野県飯田市の無職、大沢康貴被告は2018年6月26日、同市のアパートで就寝中の無職男性(当時43)の首を電気コードで絞めて殺害し、現金約4,000円が入った財布や通帳などを奪った。大沢被告は男性と知り合いで、約665万円の借金があった。
 大沢被告は12月13日、無免許で乗用車を運転し飯田市内の市道を走ったとして道交法違反容疑で逮捕された。同月末には、自動車の購入名目で金融機関から135万円をだまし取ったとして詐欺容疑で再逮捕され。2020年1月16日に詐欺罪で起訴された。長野県警は1月16日、強盗殺人容疑で大沢被告を逮捕した。
裁判所
 長野地裁松本支部 高橋正幸裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年7月20日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2020年7月6日の初公判で、大沢康貴被告は「殺してくれと頼まれた」と起訴事実を一部否認した。
 検察側は冒頭陳述で「男性に約665万円の借金があり、返済を免れるために殺害した」と指摘。弁護側は「男性から殺してくれと言われ、逆らえずにやったことだ」とし、強盗殺人罪は成立せず嘱託殺人罪にあたると主張した。
 7月13日の論告で検察側は、男性は7月以降の予定を入れるなど「死を望んでいなかったことは明らか」と主張した。
 同日の最終弁論で弁護側は、大沢被告は男性から「一括で返せないなら(自分を)殺せ」と告げられたとし、「男性の言いなりにならざるを得なかった」と訴えた。
 大沢被告は最終陳述で「遺族や関係者など事件に関わって心が傷ついた人全員が被害者。罪を一生背負い、償う」と述べ、結審した。
 判決で高橋正幸裁判長は弁護側の主張に対し、「親族に遺言などをしておらず、金銭の貸し借りをする程度の関係性にすぎない被告に殺害を依頼したとの供述は、不自然で不合理だ」として退けた。そして、「大沢被告は不倫相手との交際費など遊興費を必要とするなか、返済の見込みはほとんどなかった。犯行には計画性があり、債務の返済を免れるためだったと強く推認できる。多額の借り入れを繰り返して、男性からまとまった金額の返済を求められると殺害し、さらに金品も奪ったことは極めて悪質」と強調。「犯行は計画性を伴った確定的殺意に基づく」と指摘した。
備 考
 被告側は控訴した。2021年3月3日、東京高裁で被告側控訴棄却。2021年7月28日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
米原育隆(38)
逮 捕
 2019年3月25日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、死体遺棄、建造物侵入、窃盗
事件概要
 名古屋市港区の無職米原育隆(やすたか)被告は2019年1月24日、両親宅で母親(当時66)の首を両手で絞めたうえ、胸を包丁で刺して殺害。翌25日、配送業の父親(当時68)の背中を包丁で刺して殺害し、2人の遺体を物置に隠した。その後、父親の携帯電話の着信に応答するなどし、両親は船で世界旅行をしているなどと偽っていた。また父親の口座から現金合計103万8,000円を引き出した。
 他に、2018年8月15日~16日、元勤務先の工場からプロペラ2枚(時価合計約230万円相当)を盗んだ。
 育隆被告は職を転々とし、2018年2月以降、造船会社を無断欠勤して解雇された。3月ごろからは両親のクレジットカードを無断借用して113万円以上使い、5月からは家出してインターネットカフェや車で生活。9月中旬には家に戻り、毎月車のローン4万円を払う約束をするも、12月分が払えず、1月分も払えなかったことに母親から怒られて逆上した。
 3月13日、父親の知人から「連絡が取れない」と県警港署に相談があった。署はその後、何度か男性宅を訪問したが不在だった。14日と20日、育隆被告と連絡がとれて、22日に署で事情を聴く予定だったが現れなかった。このため、署員らが両親宅を訪問し、2人の遺体を発見した。育隆被告は所在が分からなくなったが、25日に同県蟹江町内のホテルに宿泊しているのを捜査員が発見。捜査本部は同日、育隆被告を逮捕した。4月5日、母親に対する殺人容疑で再逮捕した。5月8日、父親に対する殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 名古屋地裁 宮本聡裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年8月6日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2020年7月28日の初公判で、米原育隆被告は起訴事実を認めた。
 冒頭陳述で検察側は「両親が返済していた車のローンの支払いを先延ばしにしたことを母親に叱られ口論になり、激しい怒りを覚えて殺害した。口封じのために父親も殺害した」などとしたうえで、「殺害方法が残忍で冷酷。警察らに両親殺害を隠し生存を偽装してた。経緯や動機は身勝手で酌量の余地はない」と主張した。弁護側は「母親を殺害したあと出頭することも覚悟していた」と述べ口封じのための殺害ではないと主張した。
 米原被告は金銭トラブルで口論になった母親をとっさに殺害したと述べたが、父親を殺害した動機は「言いたくない」と語らなかった。
 30日の論告で検察側は、米原被告が仕事をせず、親のクレジットカードを無断で使っていたことなどに触れ「両親が肩代わりしていた車のローン代を巡って口論になり、母親に生活態度を指摘され、逆上し殺害を決意した。身勝手極まりない犯行で同情の余地は全くない。殺害方法が執拗かつ残忍で悪質性が際立つ。殺害後は両親が生存しているように偽装し、両親の金でテレビやスピーカーを購入するなど良心の呵責は感じられない」と指摘した。
 同日の最終弁論で弁護側は、「口論をきっかけとした突発的な犯行。いずれの殺人も計画性はない。永久的に社会から遠ざける判断をすべきではない」として有期刑を求めた。
 最終意見陳述で米原育隆被告は、「今の私には全ての人に謝罪することしかできない」と述べた。
 判決で宮本裁判長は、「両親のクレジットカードを無断で使ったり車のローンを支払わなかったり、生活態度は怒られて当然。怒りにまかせて母親を殺害し、反省や後悔する時間があったにも関わらず、逮捕を恐れ自己保身のために父親を殺害したことに、酌量の余地は見当たらない」と指摘。「両親の冥福を祈って罪を償ってください」と説諭した。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
高橋茂喜(29)
逮 捕
 2019年10月29日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、建造物侵入
事件概要
 群馬県みなかみ町の会社員高橋茂喜被告は2019年10月14日夜、沼田市の買取販売店に侵入し、店員の男性(当時59)の胸や首を刃物で複数回突き刺して殺害、現金約44,300円と、ゲーム機や付属品計9点(約18万8千円相当)を奪った。高橋被告は数年前から同店を利用しており、顧客リストにも載っていた。男性は経営者で弟(当時57)ら家族3人で古書店を切り盛りし、事件当日は閉店の午後9時まで1人でいた。
 同日午後11時50分ごろ、帰りが遅いのを心配した高橋被告の妻が、従業員が使う店舗裏口のすぐ内側で倒れているのを発見。
 高橋被告は近くに止めていたバイクで逃走したが、店の防犯カメラ映像や、ゲーム機などが県内の複数の買い取り店に高橋被告の名前で売却されていたことなどから浮上。29日、捜査本部は高橋被告を強盗殺人他の容疑で逮捕した。
裁判所
 前橋地裁 水上周裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年8月31日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2020年8月24日の初公判で、高橋茂喜被告は「金品を盗んだ事と男性を死なせたのは事実です」と話す一方、「殺そうと思ったわけではありません」と起訴内容を一部否認した。
 検察側は、「2人の間にもみ合いはなく、被告は死ぬ危険性を分かった上で殺意を持って意図的に刺した」などと指摘した。一方弁護側は、「脅すためにナイフを示したが、予期せぬ抵抗を受け、もみ合いの中で偶然刺さってしまった」と主張した。
 26日の公判に被害者参加制度で被害者の妻は、35年連れ添った夫を奪われ、「生涯、感謝の気持ちを伝えられない」と述べ、「法律で与えられる最も重い刑を与えてほしい」と涙をこらえて訴えた。
 被害者参加制度を利用した男性の長男が、被告に問いただした。「もし自分の家族が奪われたら、どんな刑がふさわしいと思うか」。問われた高橋被告は終始うつむき、「死刑がふさわしい。人を殺しておいてのうのうと生きているのは許せないと思う」と答えた。
 論告求刑で検察側は、もみ合った様子はなく、「ナイフを持った右手で肘を曲げて胸を刺し、横なぐり的に首を刺した」と指摘。当初から強盗殺人の計画があったとは断定できないが、男性に覆面を剥ぎ取られたことをきっかけに「殺意を抱き、意図的に突き刺した。危険、残忍極まりない態様で悪質」と非難した。倒れているのを確認後に金品を物色した点については、「殺害の意思があったから冷静な行動が取れたと考えるのが合理的」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、髙橋被告が男性ともみ合った裏付けとして衣類の痕跡を挙げ、肩や腕を捕まれて「振り払う際、ナイフが刺さった」と強調。殺害は意図せず、ナイフは脅すためだったと主張した。
 最終陳述で高橋被告は、裁判官らに向かって「男性とご家族に寄り添った判決をしていただけることを願います」と述べた。
 判決で水上裁判長は、「借金の督促で金に困ったとの身勝手な動機に、酌むべき事情はない」と指摘。殺意はなかったとする弁護側の主張を「被害者の傷の深さなどから、殺意は強いと認められる。被告の供述は傷の形状と矛盾し、信用できない」と退けた。そして「胸と首の傷が深くまっすぐであり、致命傷となる刺し傷が2度も偶然にできるとは考えがたい。強い殺意を持って犯行に及んだと認定できる」「およそ2週間前から強盗に関する記事を検索したり、店の下見をしたりするなど、一定の計画性を認められる」「犯行は危険かつ残忍だ」などと述べた。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
宮口義弘(61)
逮 捕
 2016年4月15日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄
事件概要
 埼玉県春日部市の不動産コンサルタント・宮口義弘被告は約200万円の借金返済を免れるため、2016年2月3日頃、春日部市に住む知人の無職男性(当時73)を窒息させて殺害し、遺体を自分の車の荷台に隠した。5日頃、遺体を群馬県藤岡市の空き地に埋めた。
 男性は一人暮らしで、2月5日に福祉関係者が訪ねたが、室内に姿がなく、連絡を受けた男性の長男が2月12日、春日部署に行方不明者届を提出。埼玉県警は事件に巻き込まれた可能性があるとみて捜査を開始。交友関係から宮口被告に話を聞いたが、説明に不審な点があったため、関係先を捜査したところ、藤岡市の空き地に掘り返した場所があり、地表に手が出ているのを4月8日に捜査員が発見。県警は15日、宮口被告を死体遺棄容疑で逮捕した。6月9日、強盗殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 東京高裁 平木正洋裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年9月1日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「殺害したのは別の男で、被告は遺体を運んだだけだ」と、強盗殺人罪について無罪を主張した。
 判決で平木正洋裁判長は「被告の供述は不自然かつ不合理で信用できない」と退け、「殺意を認めた一審の判断に誤りはない」と述べた。
備 考
 2018年2月6日、さいたま地裁の裁判員裁判で一審懲役10年判決。強盗殺人の成立を認めず、傷害致死を適用した。2019年2月8日、東京高裁で一審破棄、地裁差し戻し。一審の裁判官が証拠調べ終了後、検察官に単独または氏名不詳者との共謀による犯行とするよう訴因変更を促したうえで変更を許可した一方、弁護人の弁論再開請求を却下したと指摘。「弁護人の反証の機会を奪うもので極めて不当」と非難。審理をやり直す必要があると結論付けた。
 2020年1月8日、さいたま地裁の差戻裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2021年9月13日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
板橋雄太(35)
逮 捕
 2013年12月7日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、窃盗、傷害、覚醒剤取締法違反
事件概要
 柏市の無職、板橋雄太被告は共犯M・K被告、A・Y被告と共謀し2013年2月22日午前6時50分ごろ、柏市に住む会社員の男性(当時31)の自宅アパート前駐車場から乗用車を盗んだ。そして逃走を阻止しようと立ちふさがった男性を殺意を持ってボンネットに乗り上げさせた上、急加速後に減速して振り落とし、頭を強打させて6日後に死亡させた。そしてM・S被告とM・M被告は盗品と知りながら男性の車を袖ケ浦市内の中古車解体作業所(ヤード)に運搬した。
 現場周辺の防犯カメラに、男性の車ともう1台の車が逃げる様子が映っており、県警は自動車窃盗グループによる犯行とみて捜査。男性の車が袖ケ浦市にあるヤード(自動車解体場)に運ばれたことを突き止めたが、車は既に解体されていた。その後も千葉県や埼玉県で自動車盗が相次いだことから、捜査線上にこの自動車窃盗グループが浮上。県警は10月15日、埼玉県春日部市で9月に起きた別の自動車窃盗事件でA・Y被告を逮捕。A・Y被告は調べに対し、事件発生時に男性の車を運転していたのは板橋被告だったと説明。県警は、現場に残ったタイヤ痕などから板橋被告が約50mにわたり車の急発進と急ブレーキを繰り返し、ボンネットに乗り上げた男性さんを振り落としたとみて、強盗殺人容疑での逮捕に踏み切り12月7日、板橋被告、M・K被告、A・Y被告(二人は窃盗容疑)を逮捕した。板橋被告は事件後、松戸市から柏市に引っ越していた。同日、M・S被告を、12月8日、M・M被告を逮捕した。
 逮捕された5人のグループは計十数人で構成され、県内や周辺の都県で自動車盗を繰り返していた。
裁判所
 最高裁第一小法廷 池上政幸裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年9月2日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 窃盗で逮捕されたM・K被告は懲役5年が確定、A・Y被告も懲役3年6月が確定している。盗品等運搬容疑で逮捕されたM・S被告、M・M被告は不明。

 2015年7月9日、千葉地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審懲役6年判決。【判決文】(「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)。2016年8月10日、東京高裁で一審破棄、差し戻し判決。2017年3月8日、被告側上告棄却、差し戻しが確定。
 2019年2月26日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2020年2月13日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
於保照義(71)
逮 捕
 2014年8月15日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、業務上横領
事件概要
 土木建設会社社長の於保(おほ)照義被告は2014年8月15日午後3時頃から同6時15分頃の間、佐賀市の会社が管理する残土置き場で、在日韓国人で下関市の会社経営の男性(当時76)と知人で無職の女性(当時48)を呼び出し、2人が乗った軽乗用車が到着すると、被告は車から降りる間も与えずショベルのバケットを車の屋根に振り下ろし、さらにバケットとキャタピラで車を挟み込み、穴まで引きずって落とした。穴に土砂を掛け続け、車外に出た男性と、車内にいた女性を生き埋めにして窒息死させた。
 於保照義被告は男性から借金などの名目で計4千万円の返済を求められていた。残土置き場周辺の土地は複数の所有権が絡み合っており、その一部が男性のものだった。於保被告は事件3日前、油圧ショベルの先端を、爪が付いた「スケルトンバケット」に交換するよう従業員に指示。翌日、別の従業員に「お盆過ぎに取引先が廃棄物を持ってくる」として犯行現場となった縦横6~7m、深さ5~6mの穴を掘らせていた。
 それぞれの親族から捜索願が出された。2015年7月25、26日、2人の遺体が発見された。
 9月1日、捜査本部は死体遺棄容疑で於保照義被告を逮捕した。22日、殺人容疑で再逮捕した。
裁判所
 最高裁第三小法廷 鬼澤友直裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2020年9月9日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2018年8月6日、佐賀地裁の裁判員裁判で求刑死刑に対し一審無期懲役判決。2020年3月18日、福岡高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン(35)
逮 捕
 2015年10月8日
殺害人数
 6名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、住居侵入
事件概要
 2015年9月13日午後1時30分ごろ、外国人の男性から片言で金を無心されたと住民から相談を受けた熊谷市内の消防分署から、意味不明の言葉を話している外国人がいるとの通報があり、ペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告が熊谷署に任意同行された。ナカダ被告は署員に「母国のペルーに帰りたい」「姉が川崎にいる」と話した。
 川崎市に住む姉と電話で話し、姉は「ストレスをためているようだ」と説明。さらに、姉はナカダ被告が帰国を希望していることを明かし、「飛行機代くらいは出す」と伝えてきた。ただ、ナカダ被告も姉も細かい日本語を理解できず、同署は通訳を要請。その間、ナカダ被告はたばこを吸いたいといって署内の正面玄関わきにある喫煙所で一服した後、付き添いの署員を振り切って逃走した。現金3,417円入りの黒革の財布と健康保険証、在留カード、パスポートなどの所持品を残していた。付き添いの警察官は交通量が多いと追わなかった。その後、署員5人が警察犬を連れて付近を捜索したが、見つからなかったという。午後5時9分、熊谷市石原の住宅の物置小屋に男が侵入していると住民から110番通報があった。午後5時34分ごろ、別の民家の敷地に男が侵入したと住民から110番通報があった。いずれも「カネ、カネ」と話していた。
 ナカダ被告は9月14日午後5時ごろ、熊谷市内の夫婦(当時55、53)方に侵入し、奪った包丁で二人を殺害。乗用車とスマートフォン1台、現金約9,000円などを奪った。午後6時5分ごろ、妻の父親が二人の遺体を発見し、110番通報した。
 15日、奪われた車が近くの駐車場で見つかった。熊谷署は、13日の住居侵入事件でナカダ被告の逮捕状を取った。熊谷署は防災無線による注意喚起を口頭で市教委に要請したが、防災無線による注意喚起は、所管する市安心安全課に文書で要請することになっていたたため、注意喚起は行われなかった。
 9月15~16日、ナカダ被告は最初の殺人現場から約1km離れた独り暮らしの女性(当時84)方に無施錠の1階窓から強盗目的で侵入し、1階和室で女性の腹部を数回、突き刺すなどして殺害し、新たに包丁を奪ったほか、遺体を風呂場の浴槽に入れ、蓋などをかぶせて隠した。
 16日、熊谷市の会社員方に無施錠の1階窓から侵入、1階トイレで妻(当時41)の胸を包丁で数回、突き刺すなどして殺害して、敷毛布をかけて1階クローゼットに隠す一方、学校から帰宅した小学5年の長女(当時10)、小学2年の次女(当時7)を2階寝室で切りつけて殺害、2人の遺体を2階クローゼットに隠した。
 16日午後4時半ごろ、三番目の犠牲者方に訪れた女性の義理の娘が、「家の中に血痕があり、義母の姿が見えない」と110番通報。駆けつけた警熊谷署員が浴室で女性の遺体を発見した。この事件で周辺の聞き込みをしていた捜査員が午後5時半ごろ、西に約100m離れた民家の扉が開いたままで中に声をかけても返答がなかったため、裏に回り込んだところ、2階の窓から顔を出し、自分の腕を刃物で刺しているナカダ被告を見つけた。ナカダ被告は間もなく2階の窓から飛び降り、頭の骨を折るなどの一時意識不明の重体となって深谷市内の病院に運ばれた。捜査員はこの家の屋内3人の遺体を発見した。
 ナカダ被告は2005年4月にペルーから入国。在留資格はあった。父が日本人、母がペルー人の日系2世で姉2人と兄2人が日本で暮らしている。その後、派遣会社などに登録し、関東や関西、九州、東海など各地の食品工場を転々としていた2015年7月30日からは埼玉県の工場で働いていたが、「作業があわない」と本人から申告があり、8月15日からは伊勢崎市の工場で働いていた。しかし9月12日、「背広を着た人に追われ、工場に戻れないので辞めます」と人材派遣会社の担当者に電話をかけ、そのまま姿を消していた。
 ナカダ被告は入院から約1週間後に意識を回復。医師の許可が出たため、県警は10月8日、夫婦に対する殺人と住居侵入容疑でナカダ被告を逮捕した。しかしナカダ被告は頭痛がすると言い、15日に再入院。髄膜炎などのおそれがあるとして22日に頭部の手術を受けた。23日、さいたま地検は勾留の執行停止をさいたま簡裁に請求し、認められた。地検は29日、執行停止を取り消すよう申し立て、30日、簡裁は決定を出した。
 弁護団は10月30日付で、証拠保全のための精神鑑定をさいたま簡裁に請求した。後日、同簡裁は「現時点では必要ない」などとして却下していた。
 11月25日、県警は親子3人の殺人容疑でナカダ被告を再逮捕した。
 ナカダ被告は12月8日から2016年5月13日まで鑑定留置された。さいたま地検は5月20日、責任能力が認められると判断して、強盗殺人と死体遺棄、住居侵入容疑で起訴した。
裁判所
 最高裁第一小法廷 山口厚裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2020年9月9日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 弁護側は心神喪失で無罪として上告していた。5裁判官全員一致の結論。
備 考
 ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告の兄の一人は、ペルーで2005~2006年、拳銃で17人を殺害したとして、2006年に逮捕され、2007年に禁錮35年の刑を言い渡されていた。実際には25人を殺害したと供述していた。妄想型統合失調症と診断され、医療刑務所に収監されている。
 埼玉県警は2015年10月29日、反省点と今後の取り組みをまとめた報告書を公表した。住民への注意喚起が不十分だったとされた点を検討。積極的な注意喚起が必要とし、今後の取り組みとして「『戸締まりをしてください』『不要な外出を控えてください』など具体的な措置を示すよう努める」ことを盛り込んだ。また「高齢世帯にも確実に情報が届くよう、メール以外の情報発信を活用する必要がある」とし、地元密着型のローカルテレビなどとの連携▽自治会、町内会などのネットワークの活用▽防災無線の積極的な活用――を進めるとした。他に、外国語に通じた警察官の育成や、民間の嘱託通訳人の拡充を図るとした。県警が直轄警察犬を保有しておらず、署から逃走したナカダ容疑者の捜索のために民間の嘱託警察犬を手配した際、約3時間がかかったことを踏まえ、直轄警察犬の導入や犬舎の整備を急ぐとした。
 埼玉県警の報告書公表にあわせ、警察庁は29日、連続発生の恐れのある凶悪事件が起きた場合の対応強化を求める通達を全国の警察本部に出した。発生直後に事件の性質がはっきりしない場合でも、連続して被害が出る可能性を前提に初動捜査を行うとともに、住民に情報を提供することを求めている。
 2015年12月、市と警察署と自治会連合会の三者によって結ばれた不審者・犯罪情報提供をめぐる協定「熊谷モデル」が締結された。生命身体への危険などを基準に情報を3段階に分類し、防災無線、市のメール、自治会連絡網を積極的に利用する。また、三者の連絡窓口を一本化し、防災無線の依頼手順などを明記。情報交換を年1回以上行う三者間協議会を設置する-などが内容。熊谷市を皮切りに、2016年6月までに県内全39警察署と全63市町村で協定が締結された。

 2018年3月9日、さいたま地裁(佐々木直人裁判長)の裁判員裁判で求刑通り死刑判決。2019年12月5日、東京高裁で一審破棄、無期懲役判決。

氏 名
オーイシ・ケティ・ユリ(35)
逮 捕
 2017年4月23日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、詐欺、死体遺棄、旅券法違反、有印私文書偽造・同行使
事件概要
 東京に住む日系ブラジル人、オーイシ・ケティ・ユリ被告は2014年3月22日午前、大阪市西成区に住む小中学校時代の同級生だった准看護師の女性(当時34)宅で、女性の胸や腹をナイフで何度も刺し、出血性ショックで殺害。現金6,000円やクレジットカード2枚を奪った。オーイシ被告は24日、女性の遺体が入った箱を宅配便で東京の自分が住むマンションに搬送した。マンションの契約期限が切れる4月下旬、便利屋サービスに依頼して八王子市のトランクルームに運び、女性のカードで使用料を支払った。他にも出国前の日用品などの購入を含め、計約12万円を不正使用した。オーイシ被告は奪った健康保険証を利用し、女性になりすましてカード6枚を新たに作成。盗んだカード2枚も含めて利用し、総額は100万円を超えて使用したとされる。
 オーイシ被告は幼いころ、家族とともにブラジルから移住。准看護士の女性の実家と家が近かった。高校生の時に家族でブラジルに帰国し、再び大阪に戻った後は、アルバイトなどをしていた。しかし、2011年ごろ、両親に「友達のところに行く」と出て行った後、連絡は途絶えたままだった。
 オーイシ被告は2011年頃から東京で同居する中国人女性の留学生がいた。留学生は上海の企業に就職が内定し、3月中旬に帰国が決まっていた。オーイシ被告はブラジル国籍で、数年前から在留資格を更新しておらず、不法滞在の状態だった。住居の賃貸契約や就職も難しく、留学生の女性と一緒に中国へ行きたくても、正規の手続きでは不可能だった。
 オーイシ被告は1月頭、フェイスブックで准看護師の女性に「友達申請」を行い、2月1日に大阪市内の居酒屋で再会していた。
 オーイシ被告は3月下旬、大阪市内のパスポートセンターで女性名での申請を行い、4月上旬に受け取りに来た。パスポートの取得歴がある人は、外務省のデータベースに顔写真などの情報とともに登録される。戸籍謄本を提出しても、顔が違えば発給は受けられないが、女性はパスポートを取得したことがなかった。
 オーイシ被告は4月まで女性のアドレスからメールを送り、生きているように誤魔化した。オーイシ被告は5月3日、中国へ向かった。
 女性の母親は、5月4日に大阪府警に相談した。府警の調査で女性名義のパスポートで羽田空港から上海へ出国した記録があった。女性のクレジットカードを発行する会社への照会で、渡航後に上海で買い物をしていたこともわかった。しかし羽田空港での防犯カメラを確認したところ、別人の女2人が出国する様子が映っていた。5月21日、大阪府警は八王子市のトランクルームで女性の遺体を発見した。送付状の依頼主欄にはオーイシ被告の携帯電話番号が記載されており、遺体の梱包物からオーイシ被告の指紋も検出された。
 オーイシ被告は5月27日、元留学生の付き添いで上海の日本総領事館に出頭し、中国の公安当局に不法入国の疑いで身柄を引き渡された。中国の公安当局に不法入国の疑いでオーイシ被告を拘束。大阪府警は死体遺棄と旅券法違反、詐欺などの容疑で逮捕状を取った。日中間には犯罪人引き渡し条約がなく、大阪府警は外交ルートを通じて身柄の引き渡しを要求した。
 2016年5月20日、中国の最高人民法院(最高裁)はオーイシ被告の日本への引き渡しを認めた。中国政府も6月に決定を認めたが、日本での取り調べは詐欺罪に限る条件付きだった。中国は自国の刑法で規定がある罪名でしか、引き渡し後の取り調べは認めなかった。中国には死体遺棄罪がないためで、事実上、殺人事件としての捜査が日本で許されない状況だった。大阪府警は6月、新たに強盗殺人容疑で逮捕状を取って交渉を継続。オーイシ被告は自分の旅券を持っておらず、引き渡し時に中国から出国できないという問題も浮上したため、日本側は夏、オーイシ被告の国籍があるブラジルに旅券発行を申請した。ブラジルは12月、オーイシ被告の旅券を発行した。中国は2017年1月16日、強盗殺人容疑での訴追を認めた。
 2017年1月25日、中国政府は上海空港でオーイシ被告の身柄を大阪府警に引き渡した。府警は航空機内で詐欺などの容疑で逮捕した。逮捕容疑は2014年4月29日、東京都内のペットホテルで女性名義のクレジットカードを使い、犬2匹の宿泊代約37,000円を支払ったとしている。3月3日、強盗殺人容疑で再逮捕。
裁判所
 最高裁第三小法廷 宇賀克也裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年9月11日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2019年3月14日、大阪地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2019年12月12日、大阪高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
古賀哲也(36)
逮 捕
 2019年7月14日(死体遺棄罪)
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人、強制性交等致死、死体遺棄、窃盗他
事件概要
 福岡県粕屋町の土木作業員古賀哲也被告は2019年7月6日午後10時26~46分ごろ、同町の須恵川の川岸付近で、自転車で帰宅中の会社員の女性(当時38)の首を絞めて暴行後、殺害。女性の遺体を川に遺棄し、財布やスマートフォンなど29点(時価総額約24,000円)を持ち去った。
 女性は同日夜、自宅から約3km離れたショッピングモールで夫と一緒に自転車を購入。夫と別れ、ファストフード店に立ち寄った後、県道沿いの歩道を通って自転車で帰宅中、自宅まで約0.9kmの現場で襲われた。古賀被告は勤務先の軽ワゴン車を運転中、1人で自転車で帰宅していた女性に気づいて先回りして川岸近くの暗がりで待ち伏せした。古賀被告は事件当時、現場から約2.5km離れた会社の寮で生活していた。女性との面識はなかった。
 遺体は7月8日午前、川の中央付近でうつぶせで浮かんでいるのが見つかった。事件当日に現場周辺を行き来する不審な車が防犯カメラに映っていたことなどから捜査線上に浮上し、福岡県警は7月14日、死体遺棄罪で古賀被告を逮捕した。8月20日、強盗殺人他の容疑で再逮捕した。
裁判所
 福岡地裁 岡崎忠之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年9月17日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2020年9月8日の初公判で、古賀哲也被告は起訴内容についておおむね認めましたが、「最初から殺すつもりはなかった」と殺意については一部否認した。
 検察側は冒頭陳述で、古賀被告は当時働いていた建設会社から借りた車で女性を物色中に自転車で走行する女性を発見。先回りして待ち伏せし、すれ違いざまに自転車から引きずり下ろしたと指摘。女性の首を絞め、遺体を川に遺棄した後、現場を離れたが「バケツを持参し再び犯行現場に戻り、指紋を洗い流したり遺留品がないかを確認したりした」と非難した。
 これに対し、弁護側は「首を絞めたのは気絶させるためだった」とし、強固な殺意はなかったと主張。深く後悔し反省するなど、量刑で考慮すべき事情を述べた。
 その後の被告人質問で、古賀被告は「誰でもよかった」などと話した。
 9日の公判で、古賀被告は過去に性犯罪事件を3回起こしたことが明かされた。被告は2006年に大阪で強姦事件を起こして服役。出所後の2014年にも長崎で強制わいせつ事件を起こして服役するなどし、2017年8月に出所していた。検察側から2度目の服役中に受けた性犯罪の再犯防止プログラムについて問われると、被告は「机上の空論のように感じた。効果がないと感じた」と述べた。現在、被告の治療に当たっている精神保健福祉士の証人尋問も行われ、「出所後、プログラムを継続して受けられなかったことが一因。今の被告は治療への意欲が高く、一生継続することで再犯は防げる」と証言した。最後に女性の夫が証人として出廷。「被告は出所すればまたやる。社会に出してはいけない」と極刑を求めた。
 9月11日の公判で、中学生の女性の息子の手紙が代理人弁護士によって読み上げられ「ママが亡くなったことが今でも認められない自分がいます。なぜママを殺したのか。ママを返してほしい。(被告は)一生刑務所から出てきてほしくない」と訴えた。
 同日の論告で検察側は、自転車で走行する面識のない女性を引きずり下ろし、逃げようとする女性の背後から首を絞めており「1人でいる女性を狙い、ゲーム感覚で犯行に及んだ。執拗に襲われた被害者の恐怖や苦痛は計り知れない」と指摘。事件発覚を免れようと遺体を川に投げ入れており「自身の保身のため、被害者を物のように扱った」と厳しく批判した。そして「被告の行為は執拗、危険、残忍なもので強固な殺意があった」と断じた。さらに、古賀被告が過去に、強制わいせつ事件や強姦事件を起こして服役中に性犯罪の再犯防止プログラムを受けたのに、出所して約2年で今回の事件を起こしたと指摘。「何度も更生の機会があったのに残忍な事件を犯した。犯行がエスカレートしており、再犯の可能性が高く、酌量の余地はない」とした。
 同日の最終弁論で弁護側は、首を絞めたのは女性を気絶させることが目的で「強固な殺意はなかった。被告は更生できる。懲役30年が相当」と主張した。古賀被告の母親は、償いとして被害者遺族に賠償金を支払う意向を示している。
 最終意見陳述で古賀被告は、「被害者や遺族に本当に申し訳ない。人の命を奪ったので、死刑が妥当ではないかと思う」と述べた。
 判決で岡崎裁判長は、古賀被告が乱暴目的で女性を物色し、現場を通りかかった被害者を狙ったと説明。2度にわたって女性の首を強い力で絞めたことや、逃げる女性を追いかけたことから「強い殺意があった」と認定。「ゲーム感覚で通行中の女性を狙った」と指摘した。また岡崎裁判長は、被告が性犯罪事件での出所後約2年で今回の事件を起こしたことから常習性を認め、「治療に強制力はなく本人の意欲だけが頼り。家族などの支援が続くか疑問」と指摘した。さらに「何ら落ち度のない被害者が命を奪われ、人格や尊厳が傷つけられた。犯行結果は重大だ。経緯や動機に酌量すべき点はない。被害者の無念は計り知れない。犯行と向き合って反省できているとは言えず、再犯の可能性が高い。終生その罪を償わせるのが相当だ」とした。
 言い渡し後、岡崎裁判長は古賀被告に対し「本当の意味で償うことはできないかもしれないが、残りの人生のすべてをもって償い、罪の重さに向き合ってほしい。被害者に思いを致し、どうすればよいのか真剣に考えてほしい」と述べた。
備 考
 被告側は控訴した。2021年2月24日、福岡高裁で被告側控訴棄却。2021年6月28日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
天野十夢(34)
逮 捕
 2018年10月22日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、死体遺棄・損壊
事件概要
 住所不定、会社役員の天野十夢被告は2018年3月15日、投資名目で預かっていた金の返済を免れようと、東京都豊島区に住む職業不詳の男性(当時49)を宇都宮市の会社員O被告とともにレンタカーで連れ出し、天野被告が福島県会津美里町の空き地で鉄パイプで不数回殴り殺害。二人で遺体を山林近くの雪の中に隠した。さらに17日、O被告に加え天野被告の会社に勤める千葉県鎌ケ谷市の会社役員K被告と共謀し、遺体の両手首をのこぎりで切断し、山林に穴を掘って埋めた。
 男性は都内で無登録の貸金業をしていた。男性は一人暮らしだった。天野被告は男性から仮想通貨の取引名目で被害者から多額の出資を受けていたが、返済を迫られていた。天野被告は会津美里町出身で、現場に土地勘があった。
 4月26日午前9時ごろ、会津美里町旭舘端の山林で、山菜採りに訪れた男性が発見。27日、司法解剖で外傷から事件性があると判断し、福島県警に捜査本部が設置された。5月中旬、男性の兄弟から行方不明届が警視庁目白署に出された。7月27日、DNA鑑定の結果、遺体が男性と判明した。
 9月26日、別件の詐欺容疑で、会津若松市の建設会社役員I被告が逮捕された。
 10月22日、死体損壊・遺棄容疑で天野被告、O被告、K被告、I被告が逮捕された。11月13日、殺人容疑で天野被告、O被告が、殺人ほう助容疑でI被告が再逮捕された。同日、福島地検郡山支部は死体損壊・遺棄の罪で天野被告、O被告、K被告を起訴した。12月5日、地検は天野被告を強盗殺人の罪で追起訴した。O被告とI被告は処分保留とした。21日、地検はO被告の殺人容疑と、I被告の殺人ほう助、死体遺棄・損壊容疑について不起訴とした。
裁判所
 福島地裁郡山支部 須田雄一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年10月14日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2020年9月14日の初公判で、天野十夢被告は「殺していません」と述べ強盗殺人罪について起訴内容を否認した。死体損壊・遺棄の罪については認めた。
 検察側は冒頭陳述で、天野被告は仮想通貨の取引名目で被害者から多額の出資を受けており、少なくとも900万円の支払いを求められていた、と金銭トラブルがあったことを説明。支払いを先延ばしにしようとしたが、約束していた金銭の一部しか用意できていないことに気付かれ、男性の頭部を鉄パイプで複数回殴って殺害し、金銭の支払いを免れた、と指摘した。弁護側は「現場にいた別の男が殺人の実行犯で被告人は見ていただけ」などと主張した。
 28日の論告求刑で検察側は、弁護側が被害者を殺害したとする男性について「男性は被害者と人間関係や金銭の貸し借りがなく、殺害動機はなかった。被害者を殺害したのは被告」などと主張した。そして天野被告は被害者から多額の金銭の支払いを要求されていたと説明し、「殺害する動機があったのは天野被告だけで共謀した仲間の目撃証言もある、強い殺意に基づく残酷な犯行。被告人が犯行の首謀者であるにも関わらず、反省の態度を示していない」などと指摘した。
 同日の最終弁論で弁護側は、有力な証拠である共謀者の男の目撃証言は変遷があるなど信用できないことや、男の行動に不合理性があるなどと反論。「検察側の証言は信用できず被告の殺害行為を明らかにできていない」と主張し、「慎重な判断をお願いしたい」と強盗殺人の罪については無罪を求めた。
 同日の最終意見陳述で天野被告は「自分に原因があるのは分かっているが、(共謀者の)男が殺した。すべて正直に話したつもり。自分が犯した罪を背負って生きていきたい」と述べた。
 判決で須田裁判長は、現場にいた別の男性が殺害したという天野被告側の主張に対し、「男性が被告人と無関係に被害者を単独で殺害する動機が見当たらない」と退けた。そして天野被告が被害者から多額の金銭を要求され追い込まれていたこと、天野被告の供述や被告人質問での証言が一致していることや通話履歴の状況証拠などから、天野被告が一人で、または現場に一緒にいた男性と共謀のうえ殺害したと断定。「仲間が関与していたとしても、被告が首謀者であることは明らかだ」と指摘し、強盗殺人罪について認めた。そして「不合理な弁明に終始し、反省の態度は見受けられない。強固な殺意に基づく残酷で悪質な犯行で、金銭の支払いを免れるために殺害するという動機は身勝手」と述べた。
備 考
 死体損壊と遺棄の罪に問われたK被告は2019年1月28日、福島地裁会津若松支部(清野英之裁判官)で懲役1年6月、執行猶予3年判決(求刑懲役1年6月)。控訴せず確定。
 死体損壊と遺棄の罪に問われたO被告は2019年2月25日、福島地裁会津若松支部(清野英之裁判官)で懲役1年8月判決(求刑懲役2年)。おそらく控訴せず確定。
 I被告は別件の、2016年9月から2018年7月までの間に会社で自衛官を雇用しているかのように装い、即応予備自衛官の雇用企業への国の給付金8回計102万円をだまし取ったとして、詐欺罪に問われた。2019年2月18日、福島地裁会津若松支部(清野英之裁判官)で懲役1年6月、執行猶予3年判決(求刑懲役1年6月)。おそらく控訴せず確定。

 被告側は控訴した。2021年8月26日、仙台高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
荒木忠治(62)
逮 捕
 2019年6月7日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、詐欺、住居侵入
事件概要
 長野県飯田市の無職荒木忠治被告は2019年4月15日午後、市内に住む男性(当時82)宅に侵入して部屋を物色中、男性に見つかったため、部屋にあった鉄アレイで頭部を最低12回殴るなどして殺害した。
 荒木被告と男性は近くの飲食店で客同士として知り合った。荒木被告は2018年12月から複数回男性宅に盗みに入り、盗んだ金を自分の口座に入れていた。
 男性は一人暮らしで、4月18日午後、1階寝室の布団の上で倒れているのを飯田署員が発見した。首に切り傷、頭に殴られた痕など複数の傷があったことから、県警は殺人事件として捜査本部を設置した。
 捜査本部は6月7日、現金240万円余り収入があったにもかかわらず、飯田市福祉事務所に届け出をしないで継続して1月から4月までの生活保護費約51万円をだまし取ったとして荒木被告を詐欺容疑で逮捕。この現金は荒木被告が男性宅から盗んだ金の一部だったことが判明。6月27日、強盗殺人と住居侵入容疑で荒木被告を再逮捕した。
裁判所
 長野地裁松本支部 高橋正幸裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年10月19日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2020年10月12日の初公判で、荒木忠治被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、被告は男性宅に侵入して気付かれたことでうろたえ、「危害を加えて口を封じることを決意した」と指摘。鉄アレイで頭を殴った後、「命を奪わなければならない」と考え、電気コードで首を絞め、包丁で切りつけたことを明らかにした。弁護側は事実を争わず「あらかじめ計画されたのではなく、パニックになり無我夢中で殴るうちに殺意を抱いた」とした。
 15日の論告求刑で検察側は、「口封じのため何の落ち度もない被害者を殺害し、無慈悲で悪質な犯行だ」と主張。凶器に室内にあった鉄アレイを使用したことに「冷静な判断の下、確実に殺害する方法を選択している」と指摘した。
 同日の最終弁論で弁護側は、被告は室内で男性に見つかってうろたえ「冷静な判断ができない混乱状態で、場当たり的な行動」と計画性を否定。責任能力について「既往症の影響で善悪を判断する能力が一定程度低下していた」とし、懲役25年が相当と述べた。
 荒木被告は最終陳述で「多くの方に迷惑をかけ、被害者や遺族に本当に申し訳なく思っています」と述べた。
 判決で高橋正幸裁判長は、「被告は遊興費欲しさに被害者宅で繰り返し現金を盗んでいた。その罪の跡を隠滅するためという動機や経緯は身勝手極まりなく悪質」などと述べた。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
海老澤浩(60)
逮 捕
 2019年1月11日
殺害人数
 0名
罪 状
 覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)他
事件概要
 栃木県宇都宮市の指定暴力団住吉会系組長、海老澤浩被告は仲間と共謀し2017年8月21日、茨城県ひたちなか市の東方沖で、船で受け渡しする「瀬取り」という手法で覚醒剤約474.72kg(末端価格約307億円)を香港から密輸し、22日、同市の那珂湊漁港に陸揚げして輸入した。
 情報を入手した県警などが陸揚げ後の動きを追い、北茨城市内で袋に入れられた大量の覚醒剤を積んだトラックを発見した。
 捜査本部は22日、北茨城市内の商業施設駐車場で、他の買い物客の車両に混じってトラックを止め、覚醒剤を確認していた宇都宮市の暴力団組員男性と上三川町の無職男性を、覚醒剤約1kgを所持していたとして同法違反(営利目的所持)の疑いで逮捕。22日から24日にかけ、中国国籍の男性2人とオランダ国籍の男性を、覚醒剤を輸入するため国内に滞在したとして同法違反(輸入予備)の疑いで逮捕した。捜査本部は、共謀したとみられる数人を同法違反容疑で全国に指名手配した。
 県警薬物銃器対策課は11月30日、漁船や倉庫など県内外の関係先を一斉捜索。指定暴力団極東会系会長ら9人を覚醒剤取締法違反(営利目的密輸)容疑などで新たに逮捕したと発表した。また一部の容疑者をかくまったなどとして、別の6人を犯人蔵匿や犯人隠避の容疑で逮捕したことも明らかにした。
 合同捜査本部は12月14日、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)容疑で逮捕状を取っていた海老澤浩被告を、国際刑事警察機構(ICPO)を通じ国際手配した。12月18日、外務省は海老澤被告に旅券返納命令を出した。
 水戸地検は12月19日付で、覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)容疑で逮捕されたうち、指定暴力団極東会系会長ら4人を不起訴(嫌疑不十分)にした。1人は同日付で同法違反で水戸地裁に起訴した。
 2018年1月10日、合同捜査本部は犯人隠匿の容疑でひたちなか市に住む女性を逮捕した。
 11月8日、海老澤浩被告は逃亡先の香港の入国管理局に不法滞在で身柄を拘束された。退去強制処分に伴い、2019年1月11日、日本に移送された。同日夕方、県警の捜査員が機内で逮捕状を執行した。
裁判所
 水戸地裁 寺沢真由美裁判長
求 刑
 無期懲役、罰金1千万円
判 決
 2020年10月22日 無期懲役、罰金1千万円
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2020年10月7日の初公判で、海老澤浩被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
冒頭陳述で検察側は、当時組長だった海老沢被告が、事件に関わった香港マフィアの構成員と何度も交渉をし、実行役に船や人の依頼をしたり、覚醒剤の運搬先を指示したりしていたと指摘。「複数の反社会勢力が関わる組織的かつ計画的な犯行で、被告は事件の全体像を描いた首謀者だ」と主張した。
 弁護側は「香港マフィアから密輸を持ちかけられた際に被告は断っている。主導していたのは別の男2人であり、被告は実行役と香港マフィアとの連絡役にすぎなかった」と反論した。
 17日の公判において、検察側は論告で「組織的かつ計画的犯行であり、密輸された覚醒剤の量は極めて大量で、(大量輸入を可能とする)瀬取りという最も悪質な態様で行われた」と指摘。「これまでをはるかに超えた重大事案だ」として財産的な制裁も必要とした。そして「犯行は常習的なもので、更生可能性は極めて低い」と強調した。
 同日の最終弁論で弁護側は、「被告は円滑に進むよう間に入った連絡役にすぎない」とし、主犯はひたちなか市の漁業男性であり、それよりも罪は軽いとして、懲役20年の適用を求めた。
 最終意見陳述で海老澤被告は「一日も早い社会復帰を願い、日々反省して生きたい」と述べた。
 判決で寺沢裁判長は、香港の反社会的組織との計画、日本国内での準備、 陸揚げ後の運搬など、被告が重要なポイントを全て掌握して指揮した唯一の人物だったとして、「日本側の最高責任者の立場にあった」と指摘。「組織的かつ計画的な犯行で、果たした役割は共犯者の中で最も重い」とした。瀬取りについては「他の密輸方法に比べ非常に悪質」と述べ、大量の覚醒剤が国内に拡散される危険があった、とした。
備 考
 押収した覚醒剤の量は当時、国内4番目の量だった。当時の最大は、1999年10月に鹿児島県南さつま市(旧笠沙町)の黒瀬海岸で密輸入された約565kg。2番目は1996年の神奈川で密輸入された528kg。その後、2019年6月に静岡県南伊豆町で過去最大となるに約1tが、2019年12月に熊本県天草市で約590kgが押収されている。
 オランダ国籍の男性は2019年4月4日、水戸地裁(寺沢真由美裁判長)で懲役24年・罰金1000万円判決(求刑懲役30年・罰金1000万円)。同年中に被告側控訴を取下げ、確定。
 栃木県上三川町の無職男性は2019年5月7日、水戸地裁(寺沢真由美裁判長)で懲役12年・罰金300万円判決(求刑懲役15年・罰金300万円)。共同正犯でなく、ほう助罪の成立にとどまるとした。2019年12月3日、東京高裁で控訴棄却。被告側上告中。
 ひたちなか市の漁業男性は2019年7月3日、水戸地裁(結城剛行裁判長)で懲役23年・罰金500万円判決(求刑懲役25年・罰金500万円)。同年中に被告側控訴を取下げ、確定。
 ひたちなか市の土木業男性は2019年8月9日、水戸地裁(寺沢真由美裁判長)で懲役21年・罰金500万円判決(求刑懲役25年・罰金600万円)。2020年1月21日、東京高裁で判決。被告側控訴が棄却されたものと思われる。被告側上告中。
 ひたちなか市の運送業男性は2019年9月19日、水戸地裁(結城剛行裁判長)で懲役20年・罰金600万円判決(求刑懲役28年・罰金800万円)。2020年8月21日、東京高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 ひたちなか市の男性は2019年11月6日、水戸地裁(結城剛行裁判長)で懲役19年・罰金400万円判決(求刑懲役25年・罰金600万円)。2020年3月30日、東京高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 中国籍の無職男性は2019年11月28日、水戸地裁(寺沢真由美裁判長)で懲役7年・罰金150万円判決(求刑懲役15年・罰金300万円)。共同正犯でなく、ほう助罪の成立にとどまるとした。控訴せず確定。
 中国籍の内装工男性は2020年2月25日、水戸地裁(寺沢真由美裁判長)で無罪判決(求刑懲役15年・罰金300万円)。「未必的にも輸入の故意があったとは認められない」とした。控訴せず確定。

 被告側は控訴した。2021年7月5日、東京高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
久保田良子(60)
逮 捕
 2019年11月24日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 青森県八戸市の無職久保田良子被告は2019年10月29日午後4時半ごろから同日午後5時50分ごろまでの間、市内に住む知人の女性(当時81)宅で、女性の首をネクタイで絞めて窒息死させ、現金約6万円と商品券11枚(計5,500円相当)、貯金通帳1通やショルダーバッグを盗んだ。
 久保田被告は、地元の高校を卒業後、結婚して三沢市内で暮らしたが、自身の消費者金融からの借金が原因で離婚。その後、十和田市内や八戸市内を転々とした。事件当時住んでいたアパートは知人男性がもともと暮らしており、2014年夏ごろから同居するようになった。食費は久保田被告が負担する約束で同居を始めたが、それまで金を借りていた実母が2019年7月に亡くなると次第に金を工面できなくなった。これとは別に少なくとも約125万円の借金も抱えており、15年ほど前に知り合った女性に野菜を持っていくことを口実に借金を頼みに行こうと考え、バスで女性方へ向かっていた。
 市内のパチンコ店の入退店状況を防犯カメラの映像から調べたところ、事件翌日の10月30日から逮捕の11月24日までの間、被告がパチンコ店に出入りしなかったのは2日間だけだった。
 捜査本部は11月24日、殺人容疑で久保田被告を逮捕した。青森地検は12月13日、強盗殺人で起訴した。
裁判所
 青森地裁 寺尾亮裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年10月29日 無期懲役
裁判焦点
 裁判員裁判。公判前整理手続きの結果、裁判の争点は量刑のみとなった。
 2020年10月12日の初公判で、久保田良子被告は「最初から殺すつもりではなかった」と話した。
 検察側は冒頭陳述で、殺害場所となった女性方の玄関にあった傘や、遺体の首に巻かれていた凶器のネクタイ、被害者のジャンパーに血痕があり、DNA鑑定の結果、久保田被告のDNA型と一致したことを明らかにした。また、被告は女性方の居間で背後から首を絞めようとしたが、気づかれ、逃げる女性を玄関で捕まえて倒し、馬乗りになって犯行に及んだと指摘した。
 弁護側は「被害者方を訪れてから、やりとりの中で殺意を持ったということ」と説明し、起訴内容を認めた。そして「借金を断られてとっさに犯行に及んでおり、計画性は一切ない」などと述べた。
 13日の公判における弁護側の被告人質問で、犯行に使ったネクタイを事前に準備しカバンに入れていたことについて「いつでも自分で死ねるようにカバンに入れていた」と答えた。ネクタイの両端にはそれぞれ結び目を作っており、「(自死するときに)ほどけにくいと思った」と説明した。検察側からの質問で、犯行前に被害者と同じバスに乗っていたことについては「下を向いていたから気づかなかった」と話した。金を借りる必要性について「同居人に2万円を返済するため」と説明し、殺害に至った理由を「自分でも何を考えていたか分からない。手を掛けて(お金を)持って行けばなんとかなると思った」と話した。寺尾裁判長から犯行後、奪ったバッグを捨てていることについて「ずいぶん落ち着いて行動しているようだが、事前に殺害後の行動を決めていたのではないか」と聞かれると「それはないです」と話し、一貫して犯行の計画性を否定した。
 15日の公判において、女性の長男が被害者参加制度を利用し意見陳述。「孫の成長を見ることが楽しみだったがそれもかなわない」と無念さを語った。「謝罪が表面的にしか聞こえない」とし、強い処罰感情を示した。
 同日の論告で検察側は、「借金を背負ったのは被告人自身の責任で人を殺す理由にならない。酌むべき事情でない」と指摘。凶器のネクタイを準備していたことなどから「計画性はあった」とした。
 同日の最終弁論で弁護側は、被告が被害者の家に行ったのは借金以外の理由はない─として「計画性は立証できていない」と主張。情状面を考慮し寛大な処分として懲役20年を求めた。
 久保田被告は最終意見陳述で、「被害者と遺族を心に思って罪を償っていきたい」と話した。
 寺尾亮裁判長は判決理由で、計画性について「被害者宅を訪れる前から計画していたとはいえない」と弁護側の主張を認めた。しかし、ネクタイを二重に巻き付け、相当強い力で首を絞め続けた態様に触れ「執拗で非常に悪質な犯行」と指弾。「他に方法があるのに借金に関係ない被害者を殺害し問題解決を図った。犯行に至る経緯や身勝手かつ短絡的な動機で酌むべき事情はなく、友人に突然命を奪われた被害者の苦痛は計り知れない」と述べた。そして逮捕までの間、奪った金で平然と生活していたとして「反省、悔悟の様子はなかった」と判断した。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
北嶋祥太(25)
逮 捕
 2018年11月8日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 石川県金沢市の無職、北嶋祥太被告は2018年11月8日午前9時半ごろ、自宅で同居する祖父(当時71)の首をひもで絞めて殺害した上、テレビなど家電製品3点(5万5千円相当)と現金約1万2千円を奪った。犯行後、祖父の軽トラックに乗ってテレビをリサイクルショップで換金し、能美市で11時の開店からパチスロをしていた。
 北嶋被告は祖父と2歳下の弟の三人暮らし。北嶋被告は高校卒業後就職した2014年に友人に誘われてパチスロをし、その後は一人で行くようになった。21歳の時、母を亡くした。コミュニケーション障害の影響もあって相談相手を失った。パチスロなどに使う金が足りず、借金するように。2018年春ごろからは同居する祖父や弟のテレビなどを無断で持ち出し、換金を繰り返した。2018年5月末、無職になった。祖父に叱責され、8月末ごろには家を追い出され、敷地内の納屋などで暮らしていた。
 同日午後5時ごろ、弟が仕事を終えて帰宅したが、祖父や被告の姿は見なかった。いったん外出後、午後8時ごろ帰宅し、祖父の姿を見つけ、警察に通報した。午後9時半ごろ、パチスロをしていた北嶋被告を捜査中の警察官が発見。事情を聴くと犯行を認めたため、緊急逮捕した。
裁判所
 最高裁第二小法廷 菅野博之裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年11月9日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 2019年12月3日、金沢地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2020年6月2日、名古屋高裁金沢支部で被告側控訴棄却。

氏 名
石田美実(63)
逮 捕
 2014年2月26日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人
事件概要
 鳥取県米子市の元ラブホテル従業員、石田美実被告は2009年9月29日午後10時ごろ、9月中旬まで働いていた米子市内のラブホテルの従業員事務所で金品を物色中、支配人の男性(当時54)に見つかり、頭を壁にぶつけたり、首をひも状のもので絞めたりして意識不明の重体に負わせ、現金約26万8千円を強奪した。
 鳥取県警は内部に詳しい人物の犯行とみたが、被害者の男性が意識を取り戻さないことから、慎重に捜査を続けた。
 その後トラック運転手をしていた石田被告は2014年9月5日、別のクレジットカード詐欺で逮捕された。鳥取県警は2014年2月26日、石田被告を強盗殺人未遂、建造物侵入の両容疑で再逮捕した。
 被害者の男性は暴行に基づく多臓器不全が基で2015年9月、60歳で死亡。鳥取地検は12月15日、石田被告について強盗殺人罪への訴因変更を地裁に請求。2016年2月15日付で認められた。
裁判所
 鳥取地裁 荒木未佳裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年11月30日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 裁判員裁判。公判は(1)被告以外に犯人となる可能性がある人がいるか(2)事務所から奪われた金と、被告が所持していた千円札が一致するか(3)事件後の行動が逃走にあたるか(4)暴行が被害者の死亡原因といえるかといった四つの争点ごとに冒頭陳述、中間論告を実施する。
 2020年9月28日の地裁差し戻し初公判で、石田被告は 「私はこの事件に関与していない」と無罪を主張した。
 検察側は冒頭陳述で、石田被告はホテルの構造などを知っている犯人像と一致し、事件後、石田被告は妻や警察の連絡に応じず逃げていることを指摘。さらに石田被告が事件直後に1000円札を230枚所持し、翌日に被告名義の銀行口座に入金したとして「大量の1000円札を持っていることは通常ない」として、他の従業員らの犯行とは言いがたいと主張した。弁護側は、検察は石田被告を犯人と決めつけるため、間接証拠を並べたてており、被告が犯人であれば、合理的に説明できない事実が軽視されていると述べた。また、(検察側が)侵入経路と想定する場所から石田被告のDNAは一切検出されていないと指摘。千円札は仕事のために事件前から所持していたもので、事件発生当時は現場にいなかったとして犯人性を争うと主張した。
 10月12日の中間論告で、検察側は、被告は事件当日午後9時34分ごろホテルに侵入し、事務所を物色中、同40分ごろ食事休憩を終えた男性と鉢合わせして犯行に及んだとした差し戻し後の2次控訴審判決を支持。被告は交際相手との電話を切った後、ホテル敷地内で従業員に会うまで「不自然な空白の50分間があった」と指摘し、車内で時間をつぶしていたとする被告の主張は「ホテル周辺にいたことを否定するための虚偽弁解」と断じた。弁護側は、従業員のフロント係が入力した売り上げ記録から、食事休憩は同9時26分より前に終了したと反論。2次控訴審の根拠となった従業員のフロント係の証言について「客観的な裏付けがない。第2次控訴審判決は誤った判断で、本裁判員裁判を拘束する力はない」と強調した。
 10月27日の公判で検察側は、被告は事件後自宅に戻らず兵庫県や大阪府、京都府内に滞在し、逃走していたと指摘。警察から事情聴取を求める連絡を受けても警察へは連絡せず、鳥取県内に戻った後も行方をくらましていたと主張した。家族から自身の口座に入金を受け、車上生活などを続けていたとした。弁護側は、自宅に戻らなかったのは自身の女性関係により妻の精神状態が悪くなり、帰宅しても夫婦関係が悪化すると考え距離を置いていただけだと反論。警察に連絡を取らなかったのは、警察からの留守番電話で被告が犯人として疑われていることを知り、無実の罪で逮捕される恐怖心があったためだと主張、「逃亡の事実はなかった」と強調した。
 11月5日の論告で検察側は、当時石田被告以外に犯行が可能な人物はおらず、石田被告がホテル事務所で金庫付近を物色中に男性が戻ってきたため、暴行を加えて死亡させたとして、強盗殺人罪が成立すると主張。「突発的ではあるが、強固な殺意に基づく犯行」と述べた。また、被告が事件直後に所持していた230枚の千円札は事務所から奪われた金で、事件後も自宅に帰らず、家族や警察などの連絡に応じなかったのは、逮捕を免れようとする犯人の典型的な行動だと指摘。被告が一貫して無罪を主張していることについては「被害者を顧みる態度は認められない」とした。
 同日の最終弁論で弁護側は、支配人に激しい暴行が加えられたにもかかわらず、事件現場から石田被告のDNAが検出されていないのは不自然だと主張。ホテルにいた従業員の中には証言を変遷させている人もいることなどから、「総合判断をした場合、被告が一分の合理的な疑いもなく犯人だと言い切れない」と主張。千円札については、過去にも業務に必要で集めていたことがあり、自宅に帰らなかったのは「無実の罪で逮捕される恐怖心からだった」と反論し、「被告を有罪とする証拠はない」として、無罪を主張した。
 石田被告は最終意見陳述で「僕は無実です」と述べた。
 判決で荒木裁判長は、大量の1000円札を1万円札に両替したことに、「ホテルの被害金の一部として矛盾のない現金で、犯人であることを強く推認させる」と指摘。その上で「ホテルの構造にも詳しい」「事件後に逃走して警察を避けた」「被告以外の者が犯行に及んだ具体的な可能性は認められない」などとし、被告の犯行と結論付けた。そして荒木裁判長は「被告を犯人としなければ合理的な説明ができない。金品を奪う目的で暴行を加えたと認められる」と述べ、強盗殺人罪を適用した。さらに荒木裁判長は、「金を奪う目的で事務所に立ち入り、被害者の命を犠牲にした身勝手な犯行だ」と断じた。
備 考
 2016年7月20日、鳥取地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審懲役18年判決。起訴罪状である強盗殺人を否定し、殺人と窃盗を適用した。2017年3月27日、広島高裁松江支部で一審破棄、無罪判決。2018年7月13日、最高裁第二小法廷で高裁差し戻し判決。2019年1月24日、広島高裁で地裁差し戻し判決。
 被告側は即日控訴した。

氏 名
武井北斗(27)
逮 捕
 2018年2月10日
殺害人数
 2名
罪 状
 強盗殺人、強盗致死、強盗致傷、建造物侵入、窃盗、窃盗未遂、詐欺
事件概要
 神奈川県厚木市の無職武井北斗被告は以下の事件を起こした。
  1.  武井北斗被告は山梨県甲斐市のアルバイト、K被告と共謀。金品を奪う目的で2016年8月17日午後10時15分ごろ、甲府市に住む一人暮らしの会社役員の男性(当時73)方の掃き出し窓を割って侵入し、男性の首や腹部に暴行を加えて腹腔内出血に伴う出血性ショックで死亡させた。さらに警報装置が作動して駆けつけた警備員の男性(当時34)を凶器で殴って2週間のけがをさせた。武井被告とK被告は甲府市内の小学校の同級生だった。
  2.  武井被告、K被告、静岡県御殿場市のクレーンオペレーターY被告、山梨県甲斐市の建設作業員N被告は2016年11月20日午後11時半ごろ、甲府市内のガソリンスタンドの事務所に侵入し、売上金など現金13万8千円が入った耐火金庫1台(1,000円相当)を盗んだ。
  3.  武井被告、K被告、Y被告、N被告は2016年11月21日午前1時55分ごろ、同市内の車両整備会社の事務所に侵入し、金庫をこじ開けようとして失敗した。
  4.  武井被告は、Y被告、甲府市の土木作業員W被告、N被告と共謀。山梨県昭和町の貴金属買取店の金品を奪おうと計画した。
     2016年11月26日午後9時ごろ、甲州市に住む貴金属買取店店長の男性(当時36)宅に武井被告、Y被告、W被告が2階の窓や玄関から侵入して待ち伏せ。N被告が会社から帰宅する男性を尾行。帰宅した男性の頭や胸などを棒状の物で強打して殺害し、店の鍵1束と乗用車1台(約503,000円相当)などを奪った。27日未明、長野県南佐久郡南牧村の畑で男性の遺体を畑の所有者の重機を使い、遺体を埋めた。さらに4被告は27日午前3時ごろ、男性が店長を務めていた昭和町の貴金属買取店に侵入。商品の貴金属を奪おうとしたが、警備システムが働いて警備員が駆け付けたため、何も取らずに逃走した。
     武井被告は少年のころ、この貴金属買取店に盗品を持ちこみ、通報されて検挙されたため恨みがあった。
     同日午前、男性の遺体が畑で見つかり、畑から約2km離れた村道脇では、男性が仕事で使っていた車が全焼した状態で見つかった。
  5.  武井被告、K被告、N被告、川崎市のアルバイトS被告は2017年4月10日午後7時10分ごろ、甲府市の質店駐車場で店から出てきた30代の女性を従業員と勘違いし、金庫のカギを奪う目的で女性を車に押し込み暴行し、けがを負わせた。勘違いに気づき、女性を近くの路上で解放した。
  6.  武井被告、K被告、N被告、S被告は2017年4月11日午前3時10分ごろ、南アルプス市の会社事務所に侵入し、現金80万円などが入った耐火金庫1台(15万円相当)を盗んだ。
  7.  武井被告らは2017年11月、架空の民事訴訟をかたった電話詐欺で、兵庫県の70代女性から400万円をだまし取った。武井被告は受け子役だった。
  8.  武井被告はW被告、笛吹市の建設作業員H被告とともに2018年1月10日未明、東京のJR吉祥寺駅近くの駐車場で男性(当時60)の顔を殴り鼻などを骨折させ、現金46万円が入ったトートバッグを奪った。
 1の事件で山梨県警は、周辺の防犯カメラの映像や、現場に落ちていたたばこの吸い殻や髪の毛からのDNA型鑑定などで武井被告、K被告を特定。2018年2月10日、強盗致死傷容疑で2人を逮捕した。
 W被告は武井被告の逮捕を知り、2月17日に県警へ出頭。犯行を自供した。3月15日、8の事件で武井被告を再逮捕、W被告とH被告を逮捕。
 1の事件で残された武井北斗被告の足跡と、4の事件で遺体の遺棄現場に残された足跡が似ていることが判明。さらにW被告が、山梨、長野両県警の任意の事情聴取に対し、武井被告とともに男性の遺体を遺棄したことを認めた。山梨、長野県警の合同捜査班は2018年5月31日、Y被告とN被告を逮捕した。6月1日、武井被告を逮捕した。6日、W被告を逮捕した。さらに数日前に貴金属買取店などを下見していたとして強盗予備容疑で28日までにK被告を再逮捕した。
 7月5日、2と3の事件で武井被告、Y被告、N被告、K被告を再逮捕。8月20日、5の事件で武井被告、K被告、N被告を再逮捕するとともに、S被告を逮捕。
裁判所
 東京高裁 平木正洋裁判長
求 刑
 死刑
判 決
 2020年12月1日 無期懲役(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2020年10月6日の控訴審初公判で、検察側は一審判決の量刑を是正すべきだとして、改めて死刑を求めた。そして刑の均衡を裏付ける証拠として、強盗致死傷事件の共犯とされるK受刑者の判決内容の証拠採用を求め、平木裁判長は職権で証拠採用した。弁護側は一審同様、強盗殺人事件や強盗致死事件について関与しておらず無罪を改めて主張。5の事件では、金品を奪う目的を否定して強盗致傷罪の成立を争い、7の事件では強盗致傷罪の幇助犯にとどまると主張した。このほかに起訴された窃盗や窃盗未遂罪については起訴内容を認め、有期刑を主張した。弁護側は武井被告の家族による陳述書や上申書を提出したが、平木裁判長は却下。即日結審した。
 判決で平木裁判長は、武井被告が二つの事件に関与した一審判決の事実認定に誤りはないと判断。計画性については一審とは異なり、「相応に高い」と指摘し、犯行に主導的に関与したとした。量刑理由で、3カ月間に二つの犯行に及んでいる点は、生命軽視の態度を如実に表しているとし「凶器を使って執ように暴行を加えていて悪質だ。死刑の選択も十分に考慮しなければならない」と指摘。しかし、殺意を持って被害者の命を奪ったのは1件で「犯行当時、22歳から24歳と若く、死刑の選択には、ちゅうちょを覚えざるを得ない」とした。検察側は、甲州市の事件にのみ関わった共犯者が無期懲役となった点からも、武井被告の量刑は軽いと主張したが、「直ちに被告を死刑にすべきことにはならない」とした。
備 考
 強盗殺人などに問われたW被告は2018年11月30日、甲府地裁(丸山哲巳裁判長)の裁判員裁判で懲役30年(求刑同)判決。量刑については、共犯者の指示を受けて犯行に及び、警察に出頭して捜査に協力したとして酌量の余地があるとした。2019年5月9日、東京高裁(平木正洋裁判長)で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 強盗致死などに問われたN被告は2018年12月14日、甲府地裁(丸山哲巳裁判長)の裁判員裁判で懲役20年(求刑懲役25年)判決。2019年6月14日、東京高裁(中里智美裁判長)で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 強盗殺人などに問われたY被告は2019年1月28日、甲府地裁(丸山哲巳裁判長)の裁判員裁判で無期懲役(求刑同)判決。2019年6月20日、東京高裁(平木正洋裁判長)で被告側控訴棄却。2019年9月24日、被告側上告棄却、確定。
 強盗致傷や別の窃盗事件に問われたS被告は2019年2月1日、甲府地裁(丸山哲巳裁判長)の裁判員裁判で懲役4年6月(求刑懲役6年)判決。控訴せず確定。
 強盗致死などに問われたK被告は2019年2月28日、甲府地裁(丸山哲巳裁判長)の裁判員裁判で懲役28年(求刑懲役30年)判決。控訴せず、確定。
 H被告は不明。

 2019年11月8日、甲府地裁の裁判員裁判で求刑死刑に対し、一審無期懲役判決。被告側は上告した。2021年5月19日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
山野輝之(46)
逮 捕
 2013年8月9日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、殺人未遂、現住建造物等放火
事件概要
 埼玉県志木市の会社員、山野輝之(当時の姓荒木)被告は2008年12月3日午前5時過ぎ、妻(当時33)と次女(当時4)、長男(当時12)の3人を殺害する目的で、当時住んでいた志木市の自宅木造三階建てに放火して全焼させ、長男は逃げて無事だったが、3階で寝ていた妻と次女が一酸化炭素中毒で死亡した。長女は別居していた。
 埼玉県警は火災の再現実験を重ねるなど捜査した結果、失火の可能性が否定され、火の気のない室内に放火されたとみられることが判明。さらに、外部から人が侵入した形跡がないことも分かった。出火当時、山野被告は「外出していた」と説明していた。山野被告は火災前、別の女性と交際し、妻に離婚を求めて8月に家裁に離婚調停を申し立てていた。火災後、山野被告は再婚して志木市のマンションに暮らしていた。
 埼玉県警は燃焼実験の結果、漏電などによる失火の可能性は低いと判明したことから、放火とみて捜査。2013年8月9日、殺人他の容疑で山野被告を逮捕した。
裁判所
 東京高裁 若園敦雄裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年12月11日 無期懲役(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 弁護側は「精神的に不安定だった妻が放火した可能性がある」と無罪を主張したが、若園敦雄裁判長は、妻は睡眠導入剤の影響で眠っていた可能性が高く、付近の防犯カメラの映像から被告が出火直前に外出したのが確認できると指摘。その上で「被告の犯行と認定した一審判決に不合理な点はない」と退けた。
備 考
 2015年3月23日、さいたま地裁の裁判員裁判で、求刑無期懲役に対し、一審無罪判決。2016年7月14日、東京高裁で一審破棄、地裁差し戻し。殺人罪に対する裁判員裁判の無罪判決が破棄されるのは初めてとみられる。2017年2月8日、被告側上告棄却、差戻確定。
 2019年10月31日、さいたま地裁の差戻裁判員裁判で、求刑通り一審無期懲役判決。被告側は上告した。2021年10月12日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
佐々木達也(35)
逮 捕
 2020年3月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 建造物侵入、強盗殺人、窃盗
事件概要
 大阪市在住の無職佐々木達也被告は2月下旬に大阪市内の自宅を家出。死にたいと思い放浪し、福岡市に行き着いた。2月下旬に知人が捜索願を出していた。
 金が無くなった佐々木被告は、3月4日午後4時~5時40分ごろ、金品を奪う目的で福岡市の自転車販売店に出入り口から侵入し、店長の女性(当時42)の首を手で絞めて殺害し、少なくとも現金10万7500円を奪った。女性は1人で店を切り盛りしていた。佐々木被告は女性と面識はなかった。
 同日午後8時50分ごろ、知人男女が営業時間中に店の電気が消えているのを不審に思い訪問し、奥のバックヤードで遺体を発見した。
 佐々木被告は事件後に店周辺をうろついた後、中洲など福岡市内の宿泊施設に偽名で数日宿泊。その後関西方面に移動し、3月中旬に帰宅した。
 県警は防犯カメラやタクシーのドライブレコーダーの映像を解析し、当日夕方に店に出入りした人物の特定を進めた。佐々木被告が店を訪れる様子や事件後に大阪市内に逃走する姿が確認できた。県警は18日午前から大阪市内で任意で事情聴取したところ犯行を認めたため、強盗殺人容疑で逮捕した。
裁判所
 福岡地裁 溝国禎久裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年12月14日 無期懲役
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2020年12月7日の初公判で、佐々木達也被告は「首を絞めて死亡させたが、殺意はなかった」と述べ、起訴内容を一部否認した。
 検察側は冒頭陳述で、佐々木被告は事件前、大阪市の居住先を出て放浪の末に福岡市にたどり着いたと説明。同市博多区の歓楽街・中洲のキャバクラで接客した女性と連絡先を交換し、後日食事に行く約束をしたという。しかし、手持ちがなかったため、ひったくりや強盗をして現金を手に入れようと考え、犯行に及んだと指摘した。さらに、首を絞める行為は人が死ぬ可能性が高く、殺意が認められると述べた。一方、弁護側は被害者を失神させようとしただけで殺意はなく、強盗致死罪にとどまると主張した。
 8日の公判における被告人質問によると、佐々木被告は2月下旬に大阪市内の自宅を家出。死にたいと思い放浪し、福岡市に行き着いた。「金が無くなる時が死ぬ時と考える半面、本心では死にたくないと思って金を得ようと思い、犯行に及んだ」と説明した。また、自転車店は物が多く、外から中の様子が見えづらいことや、一人で営業していることから客を装って入店したという。防犯カメラが無いことなどを確認し、背後から女性の首を腕で絞めた。女性の抵抗で2人とも倒れ、馬乗りになって女性の首を両手で絞めたほか、犯行中に別の客が来店した際も発覚しないように追い返し、もう一度戻って女性の首を意識が無くなるまで絞めたという。当時の心境を「自暴自棄になり場当たり的な行動をして常識的な判断ができなかった」と説明。女性の遺族には「非常に申し訳ない。許されることではないが、一生償いと反省と謝罪を尽くしたい」と述べた。
 9日の論告で検察側は、佐々木被告が1人で営業している女性を背後から襲い、もみ合いになった後、馬乗りになって両手を使い、首を絞めたと説明。ちょうどその時来た客を閉店を装って追い返し、再び首を絞めていることから「死亡させる危険性は認識し、強固な殺意があった」があったと指摘した。さらに奪った金でキャバクラ店で遊興したと批判した。遺体を隠し、事件後に着替えた点も踏まえ「被害者を顧みる気持ちや反省は皆無で、更生の可能性に疑問がある」と述べた。
 同日の最終弁論で弁護側は、「突発的な犯行だった」とし、首を絞めたのは「失神させるためだった」との被告の供述などから、「女性を殺害する意図や意欲があったとはいえない」として殺意を否定。個人的な悩みから冷静さを失って起こした場当たり的な犯行で、真摯に反省していると強調した。そして強盗致死罪の適用を求め、有期の懲役刑が妥当と訴えた。
 被告は最終意見陳述で「被害者と遺族に深くおわび申し上げる。この先一生謝罪と反省、償いを尽くすと固く誓います」と謝罪し、傍聴席を向いて頭を下げた。
 判決で溝国裁判長は争点となった殺意の有無について、佐々木被告が女性に馬乗りになって首を絞めている最中に来客があり、客を追い返した後に再び首を絞めた行為を非難。「被害者は自力で逃げ出すこともできないほど弱っていたにもかかわらず1回目よりも長く首を絞め続けており、死亡させる危険性はこの上なく高い」と弁護側の主張を退けた。動機については、自己嫌悪から大阪市内の自宅を出て放浪し、金を強奪する目的で店に侵入したと指摘。溝国裁判長は「被害者の恐怖、絶望、苦痛は計り知れない」と述べ、殺害して奪った金でキャバクラ店などで遊興した行為などを挙げ「あまりにも身勝手で、動機や経緯に酌むべき事情は見いだせない。被害者には、何の落ち度もなく理不尽と言うほかない。他人の生命を犠牲にしてでも自分の都合を優先させた態度は強く非難される」などと量刑理由を述べた。言い渡し後、「被害者に自分ができることを終生、考え続けてほしい」と説諭した。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
元少年(20)
逮 捕
 2018年3月2日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗殺人、住居侵入、窃盗、自動車運転死傷行為処罰法違反(無免許過失運転致傷)他
事件概要
 千葉県茂原市の無職少年B被告(事件当時18)は、同市内のアパートで同居する土木作業員の少年A被告(当時18)、無職少年C被告(当時17)と共謀。2018年2月26日午前1時15分ごろ、同市に住む女性(当時85)宅に侵入。寝室で女性を床に押し倒して殴ったり首を絞めるなどして現金約12,000円を盗み、包丁で首を3回刺して殺害した。
 女性は長女と同居していたが入院したため1人で生活。近くに住む長男夫婦が頻繁に訪れていた。
 26日午前8時55分ごろ、長男の妻が倒れている女性をみつけ、119番通報。3月2日、捜査本部は少年3人を強盗殺人と住居侵入の疑いで逮捕した。
 千葉地検は3月19日、少年A被告と少年C被告を千葉家裁に送致した。同家裁は同日、2週間の観護措置を決定した。23日、少年B被告を千葉家裁に送致した。家裁は同日、2週間の観護措置を決めた。4月3日までに千葉家裁は少年A被告に対し、2週間の観護措置延長を決定した。千葉地検は同日、少年B被告と少年C被告を別の窃盗事件で再逮捕した。千葉家裁は4月13日、少年A被告を検察官送致(逆送)とする決定をした。千葉地検は20日、強盗殺人罪などで少年A被告を起訴した。
 県警捜査3課は6月7日、茂原市を中心に2017年12月~2018年3月に相次いだ窃盗事件約50件に関与したとして、少年B、少年Cを含む同市などの17~19歳の少年5人を窃盗などの容疑で逮捕・送検したと発表した。そのうち少年B被告と少年C被告は事件前日の2月25日未明から早朝にかけて、盗み目的で女性方に侵入し金品を物色していた。千葉家裁は6月29日、少年B被告と少年C被告を検察官送致(逆送)とする決定を出した。千葉地検は7月6日、2人を強盗殺人や住居侵入などの罪で起訴した。
 他に少年B被告は、2018年2月16日午前、市川市の国道で乗用車を無免許運転し、交差点で停止中のワンボックス車に追突。運転していた30歳代男性にけがを負わせるなどした。
裁判所
 最高裁第二小法廷 草野耕一裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2020年12月16日 無期懲役(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 少年A被告は2019年1月24日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2019年6月27日、東京高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 少年C被告は2019年5月31日、千葉地裁の裁判員裁判で懲役20年判決(求刑無期懲役)。殺人について「共謀していなかった」と判断して適用せず、強盗致死を適用した。2019年10月28日、東京高裁で被告側控訴棄却。2020年6月までに上告棄却、もしくは上告取り下げで確定。

 2019年10月2日、千葉地裁の裁判員裁判で求刑通り一審無期懲役判決。2020年6月3日、東京高裁で被告側控訴棄却。




※最高裁は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。

※銃刀法
 正式名称は「銃砲刀剣類所持等取締法」

※麻薬特例法
 正式名称は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」



【参考資料】
 新聞記事各種



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