求刑無期懲役、判決有期懲役 2022年





 2022年に地裁、高裁、最高裁で求刑無期懲役に対し、有期懲役・無罪の判決(決定)が出た事件のリストです。目的は、無期懲役判決との差を見るためですが、特に何かを考察しようというわけではありません。あくまで参考です。
 新聞記事から拾っていますので、判決を見落とす可能性があります。お気づきの点がありましたら、日記コメントでご連絡いただけると幸いです(判決から7日経っても更新されなかった場合は、見落としている可能性が高いです)。
 控訴、上告したかどうかについては、新聞に出ることはほとんどないためわかりません。わかったケースのみ、リストに付け加えていきます。
 判決の確定が判明した被告については、背景色を変えています(控訴、上告後の確定も含む)。



【2022年の有期懲役、無罪判決】

氏 名
内田潤(38)
逮 捕
 2020年11月9日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死他
事件概要
 茨城県水戸市の解体業、内田潤被告はひたちなか市の無職の元少年(事件当時19)と共謀。2016年2月1日午前3時から同5時45分ごろまでの間、城里町の資材置き場で積まれていた銅線などを盗むためトラックに載せていた際、敷地内に住む銅線やアルミを扱う古物商の男性(当時77)に見つかったため、男性の頭や顔を殴り、首を両手で締め、顔や両手首に粘着テープを巻き付けるなどして死亡させ、銅線など約6トン(計108万円相当)を奪った。
 他に内田被告は3日前の1月29日、元少年の弟と共謀し、男性方の無施錠の出入り口から銅線などを盗む目的で侵入し、気付いた男性の顔面に催涙スプレーを吹き掛け、抵抗され逃走した。
 内田被告は当時1人で解体業を営んでおり、男性とは資材の売買といった取引を通じた面識があった。元少年は、内田被告の下で働いていたことがあった。
 1日朝、男性の妻が男性の遺体を発見した。
 県警は2020年10月、内田被告ら2人が男性殺害の数時間前に水戸市内の建設会社からコンテナ1台(約6万円相当)を盗んだとして窃盗容疑で逮捕。盗んだコンテナが男性殺害後の敷地内に残されていたことから、捜査本部は慎重に裏付けを進めた。
 捜査本部は11月9日、別の事件で服役中だった内田被告と、別の事件の傷害罪などで公判中だった元少年を強盗殺人の容疑で逮捕。水戸地検は2人を強盗致死罪で起訴した。同地検は罪名変更の理由を明らかにしていないが、殺意の認定が困難と判断したとみられる。元少年は逮捕時に成人だったため、20歳未満が対象の少年法ではなく、成人と同じ刑事訴訟法の手続きが適用されて裁判員裁判で審理される。
裁判所
 水戸地裁 小川賢司裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年2月16日 懲役30年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年2月7日の初公判で、内田潤被告は「間違いありません。申し訳ございません」と述べ、起訴された内容を認めた。
 冒頭陳述で検察側は、内田被告が銅線などを積み込み、元少年が見張り役だったと指摘。元少年が犯行に気付いた男性を殴って首を絞め、内田被告も男性が逃げられないよう立ちふさがったと説明した。手袋や粘着テープなどを準備した計画性にも触れ、「内田被告が主導的役割を担った」と強調した。弁護側は内田被告が、男性を死なせるまで元少年が暴行すると想定していなかったと釈明、「綿密に計画された犯行ではない」と述べた。元少年との関係性も「主従関係があったわけではない」と主張し、量刑を争う姿勢を示した。
 この日出廷した内田被告の母親は、内田被告が仕事でうまくいかず、生活に苦しんでいたことを説明。「罪を償って真面目に生きてほしい」と涙ながらに訴えた。
 8日の第2回公判における被告人質問で内田被告は、元少年が男性の首を絞めてうめき声が聞こえなくなり、「やりすぎじゃない」と元少年に声を掛けたが制止され、その後、1時間ほど銅線の積み込みをしたと説明。元少年が男性の顔と両手に粘着テープを巻くのを目にしたものの、そのまま逃走したと語った。犯行動機について内田被告は、当時の妻が、窃盗を繰り返していた被告を心配して地元の高知県に引っ越す日取りを決めたのを機に、「引っ越す費用が必要になった」と話した。男性方を狙った理由に関しては、2013年ごろに盗品の売却先として知り合い、「盗品だから(警察に)言わないと思った」と述べた。盗品を男性に売った際、「代金の未回収分があるから(盗んでも)良いだろうと思った」とも語った。
 10日の論告求刑公判で、論告に先立ち、男性の妻の意見として「罪としっかり向き合い、できる限り重い罰になるのを望む」との文書が読み上げられた。
 論告で検察側は、強盗致死事件の3日前の同年1月29日、内田被告が男性から銅線を奪うことに失敗し、共犯とされる元少年を誘い、男性の抵抗を排除するため準備したとして、「計画性が高く、強固な犯意に基づく」と指摘。元少年の暴行で男性が死亡したとする弁護側の主張については、「そばにいながら制止せず、想定外とは言えない。被害者の顔に巻き付けた粘着テープを緩和せずに逃走し、元少年と比較して責任を減少させる要素はない」と強調した。
 弁護側は、男性が抵抗した場合の対処法は2人の間で決めておらず、粘着テープは逃走時の車のナンバーを隠すためだったと説明した。元少年は内田被告の制止を聞かずに暴行したとして、「元少年と対等の立場だった」と主張。賠償の意思があることなどから「懲役17年が適切と考える」と述べた。
 判決で小川裁判長は男性の死因となった暴行は共犯者の元少年が加えたとしつつ、「車両や粘着テープなどを準備し、元少年と役割分担を決めるなど、犯行は計画的で悪質だ。金欲しさからの犯行で動機にくむべきものはなく、被告は共犯者を誘うなど主導的な立場だった」と指摘。一方で「暴行の方法について具体的な指示はしておらず、銅線を売った利益を折半していることなども考慮すると責任が格段に重いとは言えない」とした。
備 考
 検察・被告側は控訴した。2023年8月30日、東京高裁で一審破棄、懲役28年判決。2023年11月29日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
大竹純平(28)/山中暁熙(29)
逮 捕
 2020年7月16日
殺害人数
 1名
罪 状
 山中被告:強盗致死、住居侵入、窃盗 大竹被告:強盗致死、住居侵入
事件概要
 埼玉県吉川市の職業不詳、大竹純平被告と、住所不定無職の山中暁熙(あきひろ)被告は、他男性3被告と共謀。2019年2月25日、千葉県山武市の木材加工会社工場で、会社倉庫内にある実質的経営者の男性(当時71)の居住スペースに金品強奪目的で侵入。男性の手足を縛り、粘着テープで鼻や口をふさぐなどして死亡させた。金品は見つからなかった。
 25日午後10時40分ごろ、男性と連絡が取れないことを不審に思った従業員が工場を訪れ、居住スペースで倒れている男性を発見した。
 2020年7月16日、千葉県警は防犯カメラの映像などから特定し、他事件で起訴されていた大竹被告、山中被告、他3人を強盗殺人と住居侵入の容疑で逮捕した。
 8月7日、千葉地検は大竹被告と山中被告を住居侵入と強盗致死の罪で、他の3被告を住居侵入と窃盗未遂の罪で起訴した。
裁判所
 千葉地裁 守下実裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年3月18日 山中暁熙被告:懲役28年、大竹純平被告:懲役26年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年2月28日の初公判で、2人は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
 検察側は冒頭陳述で、山中被告は男性の会社倉庫に多額の現金があるとの情報を得て、山中被告ら男4人は工場に2回空き巣に入るも現金を発見できなかった。人が住んでいるコンテナハウスに大金があると考え、大竹被告に現金を奪うことを持ちかけ、車両の手配を依頼するなどした。見張り役を用意していたことから「結果的に金品は得ていないが、周到な計画で組織的な犯行だ」と指摘。顔面を殴打した上、男性の顔に粘着テープを巻いて口と鼻を塞ぐなどしており、「死に直結する危険性がある」と批判した。
 大竹被告の弁護側は「山中被告から誘われ、全体像を把握していない。山中被告の指示で動いた」と言及。粘着テープを巻いたことに関して「黙らせようと口を塞ぐためで、鼻まで塞ぐつもりはなかった」などと主張。男性は心筋梗塞の既往歴があるため、窒息か急性心不全とされる死因は「暴行行為と関係なく、基礎疾患の影響による病死の可能性もある」と主張した。  山中被告の弁護側は「山中被告は当時、家族とうまくいっておらず、生活費工面のために行った」と指摘。「山中被告は殴打した記憶がない」と検察側に反論した。
 3月9日の論告求刑公判で、論告前に男性の妻が「金欲しさに人の人生をめちゃくちゃにした」と厳罰を求めた。
 検察側は論告で、倉庫に大金があるという情報に基づき、何のためらいもなく計画的に強盗に及んだとして、「きわめて厳しく非難するべきだ」と主張。男性の体を押さえTシャツと粘着テープで鼻や口をふさいだとして「死に直結する暴行を2人で協力して行った。極めて悪質」と指摘した。
 最終弁論で山中被告の弁護側は、2人の間で金品を奪う方法の情報共有がされていないことから「計画性は高くない」と主張。別の窃盗事件で起訴されている点を踏まえても懲役25年が相当とした。大竹被告の弁護側は、被害者の死亡には持病による影響も否定できないとして懲役20年を求めた。
 判決で守下実裁判長は「大竹被告を犯行に引き入れた山中被告は、犯行前に2回侵入していて、金品奪取への強い欲が感じられる。2人がお互いに協力し合いながら、粘着テープを何重にも巻き付けた非常に危険な犯行だ。金銭欲しさという身勝手な考えから犯行に及んでいて、2人の刑事責任は誠に大きい」と指摘した。一方、「直接的な暴行は顔への殴打1回のみで、生命に重大な危険を与える意図はなかった」とも指摘。「将来的な更正の可能性がないとは言えず、無期懲役ではなく有期刑がふさわしい」とした。
備 考
 大竹純平被告は他被告と共謀し、2019年2月1日に東京都渋谷区の高齢夫婦宅で、現金約400万円などを奪ったアポ電(アポイントメント電話)強盗事件他で逮捕、起訴。2020年2月17日、東京地裁で懲役9年判決(求刑不明)。2020年9月25日、東京高裁で被告側控訴棄却。上告せずに確定している。
 住居侵入と窃盗未遂の罪で起訴されたKK被告は、2018年10月の山口県での詐欺事件、2019年5月の岐阜県での2件の強盗事件、同月の千葉県での強盗致傷事件でも起訴された。2021年10月21日、岐阜地裁(入江恭子裁判長)の裁判員裁判で懲役14年判決(求刑懲役17年)。被告側控訴中。2022年3月14日、名古屋高裁(鹿野伸二裁判長)で判決。
 住居侵入と窃盗未遂の罪で起訴されたNT被告は2022年2月21日、東京地裁(裁判官不明)で懲役4年判決(求刑不明)。被告側控訴中。
 住居侵入と窃盗未遂の罪で起訴されたKR被告は、他の詐欺未遂事件などでも起訴された。2022年3月15日、東京地裁(長池健司裁判官)で懲役1年6月+懲役3年判決(求刑不明)。被告側控訴中。

 検察・被告側は控訴した。2023年4月13日、東京高裁で検察・被告側控訴棄却。

氏 名
大谷竜次(46)
逮 捕
 2018年2月12日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、死体遺棄、窃盗
事件概要
 住所不定、無職の大谷竜次被告は2018年2月7~8日、埼玉県所沢市にある知人女性(当時76)宅で、別居していた女性の次男で幼稚園バス運転手の男性(当時53)の胸や背中などを多数回包丁で刺して殺害した。さらに女性も浴槽に沈め、溺死させた。そして女性宅に住み込みで介護などの身の回りをしていた知人男性SY元被告とともに、男性の遺体を1階浴槽に遺棄した。同日午後1時35分ごろ、女性名義の銀行口座からキャッシュカードを使って573,990円を引き出して盗んだ。
 大谷被告は現場とは別の住宅で、女性の長男と同居していた。SY元被告は次男と中学時代の同級生だった。
 2人の遺体は8日午後、発見された。埼玉県警は12日午後、電車で千葉市内まで逃走していた大谷被告とSY元被告を死体遺棄容疑で逮捕した。3月6日、さいたま地検は2人を処分保留で釈放したが、埼玉県警は銀行口座からお金を引き出した窃盗容疑で2人を再逮捕した。
 2019年4月4日、初公判がさいたま地裁(石川慧子裁判官)でそれぞれ開かれ、2人はそれぞれ起訴内容を否認。2人の弁護側はいずれも、女性の承諾を得て現金を引き出したと主張した。
 16日の大谷被告の第2回公判で、SY元被告が証人として出廷。女性の介護をするようになった経緯や、事件前日に遺体で見つかった女性の次男とトラブルになっていたことなどを明らかにした。検察側の証人尋問でSY元被告は、女性の介護を巡って次男ともみ合いになっていたことを説明。その後、女性にカードを渡され、「お金を下ろしていいと言われた」などと証言した。また、翌日外出する際の女性と次男の様子について問われると、「お湯の中に入って死んでいた」と述べたが、2人が死亡した詳しい経緯などについては語らなかった。大谷被告は黙秘する姿勢を示したので、被告人質問は行われなかった。
 17日のSY元被告の第2回公判で、被告人質問などが予定されていたが、弁護側が主張の変更を申し出たため行われなかった。
 5月28日の大谷被告の第3回公判で、検察側は大谷被告に懲役1年6月を求刑して結審した。
 同日のSY元被告の第3回公判で、証拠調べが行われた。証人として出廷した大谷被告は、女性方に出入りしていたことなどは認める一方で、事件前後に関することについては証言を拒否した。その後の被告人質問は、佐久間被告が黙秘する姿勢を示したため行われなかった。
 6月19日、埼玉県警は次男の携帯電話を盗んだ窃盗容疑で2人を再逮捕した。
 7月1日、埼玉県警は次男への殺人容疑で2人を再逮捕した。23日、さいたま地検は次男への殺人と死体遺棄罪で大谷被告を起訴した。SY元被告の殺人容疑は処分保留とし、死体遺棄罪で起訴した。携帯電話を盗んだ窃盗容疑については、2人も不起訴とした。
 11月13日、SY元被告の追起訴審理がさいたま地裁で開かれ、SY元被告は次男の死体遺棄容疑を認めた。
 12月4日、SY元被告の論告求刑公判が開かれ、検察側は窃盗と死体遺棄罪で懲役3年6か月を求刑、弁護側は窃盗罪については無罪を主張し結審した。
 20日、さいたま地裁(石川慧子裁判官)は両方の罪を認定し、懲役2年を言い渡した。控訴せず確定。
 2020年12月3日、埼玉県警は女性への殺人容疑で大谷被告とSY元被告を再逮捕した。24日、さいたま地検は大谷被告を女性への殺人罪で起訴した。SY元被告は処分保留で釈放した。
裁判所
 さいたま地裁 小池健治裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年3月18日 懲役28年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年2月14日の初公判で、大谷竜次被告は「やっていません」と起訴内容を全面的に否認した。
 検察側は冒頭陳述で、次男の遺体に20か所以上の刺し傷があったことや、現場に残っていた大谷被告のシャツに次男の血痕や女性の細胞片などが付着していたと指摘。殺害後は、次男の勤務先に欠勤の電話を入れるなど偽装工作し、逃走したと主張した。そして「刑の決定に向けて、犯行態様の悪質性や被害結果などを考慮してほしい」と述べた。弁護側は、大谷被告が犯行当時、女性宅の別の部屋で寝ていて殺害に関与しなかったと主張。女性と同居していたSY元被告に頼まれて偽装工作をしたとし、「2人を殺す理由は全くない」とした。そして「大谷被告が犯人で間違いないという状態になって、初めて、刑を決めることができる」と訴えた。
 医師が証人出廷し、大谷被告のIQが52であること、軽度精神遅滞であることなどが明らかになっている。
 3月7日の論告で検察側は、大谷被告が次男と何らかのトラブルになって、無抵抗の次男の背中や脇腹などを少なくとも24回以上刺して殺害したと指摘。口封じのために次男の母親も浴室で溺死させたとし、「強い殺意に基づく残忍な犯行で、遺族の処罰感情は強い」と主張した。
 弁護側は、大谷被告が事件後にさまざまな偽装工作をしているのに、自身のシャツを遺棄現場に残したのは不自然と指摘。「大谷被告には2人を殺害する動機がない」と無罪を主張した。SY元被告について「他人の介護をさせられて強く恨んでいたので、犯人と推認できる」と述べた。
 判決で小池裁判長は、現場にあったシャツに付着した飛沫血痕などから大谷被告が次男を殺害したと断定。背部を包丁で少なくとも24回突き刺していることから「強い殺意に基づく残忍な態様」と述べた。また、シャツに次男の母親のDNA型が付着していたことなどから、被告が母親を浴槽に沈めて溺死させたと結論付け、次男殺害の発覚を遅らせるための犯行は「短絡的で身勝手だ」とした。SY元被告は、大谷被告と口裏合わせをしていたことや犯行状況から「少なくとも母親への殺害については被告と意思を通じて実行したことは間違いない」と指摘し、「共謀の上で母親への殺人を行った」と述べた。死体遺棄についても共謀して実行したことが認められた。次男とSY元被告が、介護を巡ってトラブルとなったことが事件の契機になったと指摘し、「各犯行で(SY元被告の)関与がうかがえる」としたが、「刑を軽くする理由にはならない」と強調した。一方、検察側の求刑に対しては、被害者の男性側が先に包丁を持ち出した経緯を踏まえ、長期の有期刑が妥当とした。
備 考
 被告側は控訴した。2023年4月20日、東京高裁で被告側控訴棄却。2023年9月26日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
斉賀啓明(35)
逮 捕
 2019年12月17日
殺害人数
 0名
罪 状
 覚醒剤取締法違反(営利目的輸入未遂)、関税法違反
事件概要
 東京都港区の自営業、斉賀啓明被告は、台湾人や日本人ら計7被告や氏名不詳者らと共謀。2019年12月7日頃、東シナ海の公海上で、船籍不詳の船が積んだ覚醒剤約586.523kg(末端価格約352億円)と覚醒剤であるフエニルメチルアミノプロパンを含有する液体約764mLを共犯者が乗る船に積み替え、同11日に天草市から陸揚げしようとしたが、海上保安官らに発見された。
 日本と台湾双方の窓口機関は2018年12月、密輸・密航対策で海上保安当局間の協力に関する覚書を締結しており、今回の摘発は初の大型案件。台湾の海巡署(海上保安庁に相当)は2019年6月、密輸計画の情報を日本側に提供し、海上保安庁、福岡県警などが合同捜査本部を設置して捜査していた。
 福岡県警などは11日、船内で覚醒剤を所持していたとして覚せい剤取締法違反容疑で3人を現行犯逮捕。ほか5人も密輸に関わったとして同法違反容疑で逮捕した。この8人は外国人と日本人で、大半は台湾人。このほかの数人についても12日に同法違反容疑で逮捕。17日、漁船を用意するなどした覚醒剤取締法違反容疑で斉賀被告他1名を逮捕。
裁判所
 福岡地裁 岡崎忠之裁判長
求 刑
 無期懲役+罰金1,000万円
判 決
 2022年3月18日 懲役30年+罰金1,000万円
裁判焦点
 裁判員裁判。
 斉賀啓明被告は、船舶はアリバイ工作で漁業をするために購入したもので、密輸はしたくなかったと主張。弁護側は、別件の強盗致傷事件で逮捕された後、密輸について申告したので、自主が成立すると主張した。
 判決で岡崎裁判長は、斉賀被告の主張について趣旨が不明瞭で理解し難いと述べ、被告に密輸の意思があったとして主張を退けた。また被告の関与が判明した後に警察に出頭したということで、自主は成立しないと述べた。そして被告は日本側の共犯者らの中心の一人となって密輸の準備を行い、日本における司令塔的な役割を果たしたと断罪。ただし、別件で身柄拘束されていたため、犯行に直接関与していないことを考慮するとともに、自ら船の修理代金を持参するなど自分で動いていたことを考え、中国側の関係者を含めた共犯者の中で最も重い責任を負うべきとまでは言い切れないとして、有期懲役の上限を選択した。
備 考
 台湾人、日本人など男女24人が逮捕され、そのうち孫昀皓被告を含む16人が起訴されている。
 首謀者的立場だった台湾人の会社社長黄奕達(ホアン・イダ)被告は、2021年3月17日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で、無期懲役+罰金1,000万円判決(求刑同)。2021年10月19日、福岡高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 船長で台湾籍のA被告は2021年6月10日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役19年、罰金500万円判決(求刑懲役20年、罰金600万円)。2021年12月8日、福岡高裁(辻川靖夫裁判長)で被告側控訴棄却。2022年6月3日、被告側上告棄却、確定。
 乗組員で台湾籍のB被告は2021年6月10日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で無罪判決(求刑懲役13年、罰金300万円)。控訴せず確定。
 指示役で台湾籍のC被告は2021年6月10日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役30年、罰金1,000万円判決(求刑無期懲役、罰金1,000万円)。2021年12月8日、福岡高裁(辻川靖夫裁判長)で被告側控訴棄却。2022年6月3日、被告側上告棄却、確定。
 漁船購入の世話をしたK被告は2021年7月13日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役12年、罰金300万円判決(求刑不明)。2021年12月22日、福岡高裁で控訴棄却。2022年4月1日、被告側上告棄却、確定。
 乗組員を世話したD被告は2021年10月7日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役13年、罰金300万円判決(求刑同)。2022年3月17日、福岡高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 乗組員を世話したE被告(D被告の妻)は2021年10月7日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役8年、罰金250万円(求刑懲役10年、罰金250万円)判決。2022年3月17日、福岡高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 HY被告は2021年10月26日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役13年、罰金400万円判決(求刑懲役20年、罰金600万円)。2022年3月16日、福岡高裁で控訴棄却。2022年6月22日、最高裁で被告側上告棄却、確定。
 日本人乗組員の手配などをしたとされたT被告は2021年12月1日、福岡地裁(柴田寿宏裁判長)で懲役6年判決(求刑懲役10年、罰金250万円)。幇助罪が認定された。2022年6月8日、福岡高裁で控訴棄却。上告せず確定。
 日本人乗組員の手配などを行った住吉会系組員の男性N被告は2022年1月7日、福岡地裁(鈴嶋晋一裁判長)で懲役14年、罰金300万円判決(求刑懲役15年、罰金300万円)。2022年6月28日、福岡高裁(市川太志裁判長)で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 覚醒剤を積み込む予定だった冷凍車の見張り役だったH被告は2022年2月22日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役15年、罰金300万円判決(求刑同)。2022年8月4日、福岡高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 覚醒剤の積み替えを行った元少年被告(事件当時19)は2022年5月24日、福岡地裁(冨田敦史裁判長)で懲役10年、罰金200万円(求刑懲役15年、罰金300万円)判決。控訴中。
 洋上で覚醒剤を受け取る「瀬取り」の実行役を集める役割だった工藤会系組員の男性M被告は2022年6月13日、福岡地裁(武林仁美裁判長)で懲役14年、罰金300万円判決(求刑懲役15年、罰金300万円)。被告側控訴中。
 M被告の共犯だったI被告は2022年6月13日、福岡地裁(武林仁美裁判長)で懲役12年、罰金300万円判決(求刑不明)。被告側控訴中。
 Y被告は2022年7月29日、福岡地裁で懲役17年、罰金500万円判決(求刑不明)。別件の傷害、窃盗についても併合されている。控訴中。
 主犯格とされる山口組系の元組員の高田広喜容疑者は2021年1月、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕状が出ている。捜査関係者によると、高田容疑者は中国に潜伏しているとみられる。外務省は2022年6月20日付でパスポートを失効させ、30日の官報で通知した。今後は不法滞在状態となるため、現地で身柄が確保されれば強制退去となる見通し。

 被告側は控訴した。2022年8月24日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
孫昀皓(41)
逮 捕
 2019年12月11日
殺害人数
 0名
罪 状
 覚醒剤取締法違反(営利目的輸入未遂)、関税法違反
事件概要
 台湾籍の孫昀皓(スン・ユンハオ)被告は、台湾人の会社社長黄奕達(ホアン・イダ)被告や台湾人や日本人らと共謀。2019年12月7日頃、東シナ海の公海上で、船籍不詳の船が積んだ覚醒剤約586.523kg(末端価格約352億円)と覚醒剤であるフエニルメチルアミノプロパンを含有する液体約764mLを共犯者が乗る船に積み替え、同11日に天草市から陸揚げしようとしたが、海上保安官らに発見された。孫昀皓被告は指示役だった。
 日本と台湾双方の窓口機関は2018年12月、密輸・密航対策で海上保安当局間の協力に関する覚書を締結しており、今回の摘発は初の大型案件。台湾の海巡署(海上保安庁に相当)は2019年6月、密輸計画の情報を日本側に提供し、海上保安庁、福岡県警などが合同捜査本部を設置して捜査していた。
 福岡県警などは11日、船内で覚醒剤を所持していたとして覚せい剤取締法違反容疑で3人を現行犯逮捕。ほか5人も密輸に関わったとして同法違反容疑で逮捕した。この8人は外国人と日本人で、大半は台湾人。このほかの数人についても12日に同法違反容疑で逮捕。
裁判所
 最高裁 裁判長不明
求 刑
 無期懲役+罰金1,000万円
判 決
 2022年6月3日 懲役30年+罰金1,000万円(被告側上告棄却、確定)
裁判焦点
 
備 考
 台湾人、日本人など男女24人が逮捕され、そのうち孫昀皓被告を含む16人が起訴されている。
 首謀者的立場だった台湾人の会社社長黄奕達(ホアン・イダ)被告は、2021年3月17日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で、無期懲役+罰金1,000万円判決(求刑同)。2021年10月19日、福岡高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 船長で台湾籍のA被告は2021年6月10日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役19年、罰金500万円判決(求刑懲役20年、罰金600万円)。2021年12月8日、福岡高裁(辻川靖夫裁判長)で被告側控訴棄却。2022年6月3日、被告側上告棄却、確定。
 乗組員で台湾籍のB被告は2021年6月10日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で無罪判決(求刑懲役13年、罰金300万円)。控訴せず確定。
 漁船購入の世話をしたK被告は2021年7月13日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役12年、罰金300万円判決(求刑不明)。2021年12月22日、福岡高裁で控訴棄却。2022年4月1日、被告側上告棄却、確定。
 乗組員を世話したD被告は2021年10月7日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役13年、罰金300万円判決(求刑同)。2022年3月17日、福岡高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 乗組員を世話したE被告(D被告の妻)は2021年10月7日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役8年、罰金250万円(求刑懲役10年、罰金250万円)判決。2022年3月17日、福岡高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 HY被告は2021年10月26日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役13年、罰金400万円判決(求刑懲役20年、罰金600万円)。2022年3月16日、福岡高裁で控訴棄却。2022年6月22日、最高裁で被告側上告棄却、確定。
 日本人乗組員の手配などをしたとされたT被告は2021年12月1日、福岡地裁(柴田寿宏裁判長)で懲役6年判決(求刑懲役10年、罰金250万円)。幇助罪が認定された。2022年6月8日、福岡高裁で控訴棄却。上告せず確定。
 日本人乗組員の手配などを行った住吉会系組員の男性N被告は2022年1月7日、福岡地裁(鈴嶋晋一裁判長)で懲役14年、罰金300万円判決(求刑懲役15年、罰金300万円)。2022年6月28日、福岡高裁(市川太志裁判長)で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 覚醒剤を積み込む予定だった冷凍車の見張り役だったH被告は2022年2月22日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役15年、罰金300万円判決(求刑同)。2022年8月4日、福岡高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 船舶の準備を行ったS被告は2022年3月18日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役30年、罰金1,000万円判決(求刑無期懲役、罰金1,000万円)。2022年8月24日、福岡高裁(辻川靖夫裁判長)で被告側控訴棄却。
 覚醒剤の積み替えを行った元少年被告(事件当時19)は2022年5月24日、福岡地裁(冨田敦史裁判長)で懲役10年、罰金200万円(求刑懲役15年、罰金300万円)判決。控訴中。
 洋上で覚醒剤を受け取る「瀬取り」の実行役を集める役割だった工藤会系組員の男性M被告は2022年6月13日、福岡地裁(武林仁美裁判長)で懲役14年、罰金300万円判決(求刑懲役15年、罰金300万円)。被告側控訴中。
 M被告の共犯だったI被告は2022年6月13日、福岡地裁(武林仁美裁判長)で懲役12年、罰金300万円判決(求刑不明)。被告側控訴中。
 Y被告は2022年7月29日、福岡地裁で懲役17年、罰金500万円判決(求刑不明)。別件の傷害、窃盗についても併合されている。控訴中。
 主犯格とされる山口組系の元組員の高田広喜容疑者は2021年1月、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕状が出ている。捜査関係者によると、高田容疑者は中国に潜伏しているとみられる。外務省は2022年6月20日付でパスポートを失効させ、30日の官報で通知した。今後は不法滞在状態となるため、現地で身柄が確保されれば強制退去となる見通し。

 2021年6月10日、福岡地裁の裁判員裁判で求刑無期懲役+罰金1,000万円に対し、懲役30年+罰金1,000万円判決。2021年12月8日、福岡高裁で被告側控訴棄却。

氏 名
斉賀啓明(35)
逮 捕
 2019年12月17日
殺害人数
 0名
罪 状
 覚醒剤取締法違反(営利目的輸入未遂)、関税法違反
事件概要
 東京都港区の自営業、斉賀啓明被告は、台湾人や日本人ら計7被告や氏名不詳者らと共謀。2019年12月7日頃、東シナ海の公海上で、船籍不詳の船が積んだ覚醒剤約586.523kg(末端価格約352億円)と覚醒剤であるフエニルメチルアミノプロパンを含有する液体約764mLを共犯者が乗る船に積み替え、同11日に天草市から陸揚げしようとしたが、海上保安官らに発見された。
 日本と台湾双方の窓口機関は2018年12月、密輸・密航対策で海上保安当局間の協力に関する覚書を締結しており、今回の摘発は初の大型案件。台湾の海巡署(海上保安庁に相当)は2019年6月、密輸計画の情報を日本側に提供し、海上保安庁、福岡県警などが合同捜査本部を設置して捜査していた。
 福岡県警などは11日、船内で覚醒剤を所持していたとして覚せい剤取締法違反容疑で3人を現行犯逮捕。ほか5人も密輸に関わったとして同法違反容疑で逮捕した。この8人は外国人と日本人で、大半は台湾人。このほかの数人についても12日に同法違反容疑で逮捕。17日、漁船を用意するなどした覚醒剤取締法違反容疑で斉賀被告他1名を逮捕。
裁判所
 福岡高裁 辻川靖夫裁判長
求 刑
 無期懲役+罰金1,000万円
判 決
 2022年8月24日 懲役30年+罰金1,000万円(被告側控訴棄却)
裁判焦点
 斉賀啓明被告は、密輸の実行前に別件で逮捕され共犯関係が解消していたと主張。また自首が成立すると主張し、量刑不当を訴えたが、裁判長はいずれも否定した。
備 考
 台湾人、日本人など男女24人が逮捕され、そのうち斉賀啓明被告を含む16人が起訴されている。
 首謀者的立場だった台湾人の会社社長黄奕達(ホアン・イダ)被告は、2021年3月17日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で、無期懲役+罰金1,000万円判決(求刑同)。2021年10月19日、福岡高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。
 船長で台湾籍のA被告は2021年6月10日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役19年、罰金500万円判決(求刑懲役20年、罰金600万円)。2021年12月8日、福岡高裁(辻川靖夫裁判長)で被告側控訴棄却。2022年6月3日、被告側上告棄却、確定。
 乗組員で台湾籍のB被告は2021年6月10日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で無罪判決(求刑懲役13年、罰金300万円)。控訴せず確定。
 指示役で台湾籍のC被告は2021年6月10日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役30年、罰金1,000万円判決(求刑無期懲役、罰金1,000万円)。2021年12月8日、福岡高裁(辻川靖夫裁判長)で被告側控訴棄却。2022年6月3日、被告側上告棄却、確定。
 漁船購入の世話をしたK被告は2021年7月13日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役12年、罰金300万円判決(求刑不明)。2021年12月22日、福岡高裁で控訴棄却。2022年4月1日、被告側上告棄却、確定。
 乗組員を世話したD被告は2021年10月7日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役13年、罰金300万円判決(求刑同)。2022年3月17日、福岡高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 乗組員を世話したE被告(D被告の妻)は2021年10月7日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役8年、罰金250万円(求刑懲役10年、罰金250万円)判決。2022年3月17日、福岡高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 HY被告は2021年10月26日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役13年、罰金400万円判決(求刑懲役20年、罰金600万円)。2022年3月16日、福岡高裁で控訴棄却。2022年6月22日、最高裁で被告側上告棄却、確定。
 日本人乗組員の手配などをしたとされたT被告は2021年12月1日、福岡地裁(柴田寿宏裁判長)で懲役6年判決(求刑懲役10年、罰金250万円)。幇助罪が認定された。2022年6月8日、福岡高裁で控訴棄却。上告せず確定。
 日本人乗組員の手配などを行った住吉会系組員の男性N被告は2022年1月7日、福岡地裁(鈴嶋晋一裁判長)で懲役14年、罰金300万円判決(求刑懲役15年、罰金300万円)。2022年6月28日、福岡高裁(市川太志裁判長)で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 覚醒剤を積み込む予定だった冷凍車の見張り役だったH被告は2022年2月22日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)で懲役15年、罰金300万円判決(求刑同)。2022年8月4日、福岡高裁で被告側控訴棄却。被告側上告中。
 覚醒剤の積み替えを行った元少年被告(事件当時19)は2022年5月24日、福岡地裁(冨田敦史裁判長)で懲役10年、罰金200万円(求刑懲役15年、罰金300万円)判決。2022年10月5日、福岡高裁で判決。
 洋上で覚醒剤を受け取る「瀬取り」の実行役を集める役割だった工藤会系組員の男性M被告は2022年6月13日、福岡地裁(武林仁美裁判長)で懲役14年、罰金300万円判決(求刑懲役15年、罰金300万円)。2022年12月8日、福岡高裁で判決。
 M被告の共犯だったI被告は2022年6月13日、福岡地裁(武林仁美裁判長)で懲役12年、罰金300万円判決(求刑不明)。2022年12月8日、福岡高裁で判決。
 Y被告は2022年7月29日、福岡地裁で懲役17年、罰金500万円判決(求刑不明)。別件の傷害、窃盗についても併合されている。2023年2月3日、福岡高裁で判決。
 主犯格とされる山口組系の元組員の高田広喜容疑者は2021年1月、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕状が出ている。捜査関係者によると、高田容疑者は中国に潜伏しているとみられる。外務省は2022年6月20日付でパスポートを失効させ、30日の官報で通知した。今後は不法滞在状態となるため、現地で身柄が確保されれば強制退去となる見通し。

 2022年3月18日、福岡地裁の裁判員裁判で求刑無期懲役+罰金1,000万円に対し、一審懲役30年+罰金1,000万円判決。被告側は上告した。

氏 名
鳥井翔太(28)
逮 捕
 2021年5月6日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死
事件概要
 神戸市北区のコンビニエンスストア店員鳥井翔太被告は2021年5月5日午後5時15分ごろ、勤務先のコンビニエンスストアの駐車場で、同店の店長の男性(当時62)の乗用車に乗って同区内の寺へ移動。午後5時30分ごろ、寺の駐車場で男性の顔や両手首に粘着テープを貼るなどしてトランクに閉じ込め、現金約13万円が入った長財布や約400万円相当の乗用車など約422万円相当を奪った。さらに午後6時45分ごろ、無免許のまま乗用車を自ら運転するも、百数十メートル南の路上でハンドル操作を誤って車を畑に転落させ、トランク内に放置した男性を窒息死させた。
 鳥井被告は男性が店長のコンビニエンスストアに約1週間前から働き始めたており、事件当日は休んでいた。
 通報を受けて駆け付けた警察官らが転落した車から遺体を発見。鳥井被告は車のすぐそばにいた。兵庫県警はドライブレコーダーや防犯カメラなどの映像から6日、死体遺棄容疑で鳥井被告を逮捕した。ただし刑事責任能力の有無を確認するため、実名は公表しなかった。27日、強盗殺人容疑で再逮捕した。
 6月11日から11月29日まで鑑定留置の結果、神戸地検は刑事責任能力は問えると判断した。しかしドライブレコーダーに残されていた二人のやり取りの音声から、鳥井被告の殺意の立証は困難と判断。強盗致死罪に切り替えて起訴した。死体遺棄容疑については不起訴とした。また実名を明らかにした。
裁判所
 神戸地裁 入子光臣裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年9月29日 懲役24年
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年9月21日の初公判で、鳥井翔太被告は起訴内容に間違いがないかを問われ、約25秒間の沈黙の後、「大丈夫です」と起訴事実を認め、「(他人に)脅されているとうそをついて、金を取ろうと思った」と述べた。
 検察側は冒頭陳述で、鳥井被告は事件の数日前に男性のコンビニ店で従業員として採用されたと説明。そして、事件の数日前に粘着テープを購入するなど計画的だったと主張。事件当日は男性の運転で寺の駐車場に移動した後、「(架空の人物の)マサキの指示」とうそを言って男性を緊縛したと指摘した。また、鳥井被告が運転操作を誤って車が畑に横転してからも男性を放置し、現場近くで財布を隠すなど、「犯行の態様やその後の行動は非常に危険」と述べた。また、鳥井被告側とは事実関係に争いがなく、量刑(刑罰の程度を決めること)の争いになるとした。
 弁護側は「場当たり的で、被害者に危害を加える意図はなかった」と主張。「鳥井被告には(他人への共感や意思表明が苦手な)自閉症スペクトラム障害と軽度の知的障害がある」と主張。裁判員らに「計画や行動に疑問を持ったり、うそをついていると思ったりするかもしれないが、障害の影響と考えている」と呼び掛けた。
 27日の論告求刑で検察側は、「テープを貼って顔面を覆うなどし、(被害者の)視界や声を奪う行為は強盗の手段として危険」と指摘。「(被告は)祖母宅で生活しており、自分の小遣いが欲しくて事件に臨んだ」「(片足が不自由など)身体障害のある弱者を狙った卑劣な犯行」とした。
 同日の最終弁論で弁護側は、「テープを貼ってトランクに押し込んだ行為は、死亡に直結する危険性の高いものではなかった。犯行は場当たり的で、ずさんだった」などとして、懲役20年が相当と主張した。
 最終意見陳述で鳥井被告は、「すぐに救出していれば男性は亡くなっていなかった。命、お金の大切さを軽く見過ぎていた」と述べた。
 判決で入子裁判長は、鳥井被告には精神障害があったが事件に与えた影響は軽微とし、「責任を大きく低下させるものではない」と判断した。そして男性に抵抗させないよう第三者からの指示を装った点、事前にドライブレコーダーのカードの取り外し方を調べていた点、粘着テープを購入して待ち伏せるなどから「卑劣な計画的犯行」と認めた。一方、「(弁護側が主張するように)場当たり的で高度な計画性はない」「トランク内の被害者が声を出していたことなどから、死亡する危険性が高いと認識していたとまでは認められない」として、同様事件の量刑傾向などから「無期懲役相当の最も重い部類に属する事案とはいえない」とした。
備 考
 控訴せず確定。

氏 名
何進威(35)
逮 捕
 2019年6月4日
殺害人数
 0名
罪 状
 覚醒剤取締法違反(営利目的輸入未遂)、関税法違反
事件概要
 香港在住の何進威被告は他6人と共謀し、2019年6月2日午前3時ごろ、静岡県伊豆諸島の鳥島南西沖の太平洋上で船籍不明の船に積載されていた覚醒剤約1t(末端価格600億円相当)を積み替え、陸揚げして密輸した。何進威被告は指揮役の1人だった。
 7人は5月以降に空路で順次入国。5月31日朝、3人が小型船に乗り横浜市のクルージングクラブを出港。6月1日に八丈島で給油後さらに南下し、2日ごろに洋上で別の船から移し替えていた。
 警視庁や海上保安庁などは2017年11月、南伊豆町の住民から「不審な船が港に出入りしている」との通報を受け、内偵捜査を始めた。その後、捜査員が不審な船や中国人グループを確認した。6月3日午後9時30分ごろに南伊豆町の港に到着し、レンタカーで来た4人と合流して積み荷を移し替え始めたところを、捜査員が逮捕した。何被告は逃亡するも、翌日逮捕された。
裁判所
 東京高裁 近藤宏子裁判長
求 刑
 無期懲役+罰金1,000万円
判 決
 2022年9月30日 懲役26年+罰金1,000万円(検察・被告側控訴棄却)
裁判焦点
 2022年7月15日、控訴審初公判。公判内容は不明。
備 考
 7人が逮捕され、起訴された。
 漁船での運搬役のV被告は2020年9月28日、東京地裁(裁判長不明)で懲役18年+罰金1,000万円判決(求刑懲役20年+罰金1,000万円)。控訴せず確定。
 漁船での運搬役のCB被告は2021年6月16日、東京地裁(浅香竜太裁判長)で懲役16年+罰金750万円判決(求刑不明)。2022年6月16日、東京高裁で控訴棄却。
 陸上での運搬役のCI被告は2021年7月21日、東京地裁(浅香竜太裁判長)で懲役14年+罰金700万円判決(求刑不明)。2022年2月4日、東京高裁で控訴棄却。
 陸上での運搬役のR被告は2021年11月8日、東京地裁(浅香竜太裁判長)で懲役13年+罰金600万円判決(求刑不明)。被告側控訴中。
 指揮役のS被告は2022年2月9日、東京地裁(裁判長不明)で懲役17年+罰金800万円判決(求刑不明)。被告側控訴。2022年10月26日、東京高裁で判決。
 漁船での運搬役のZ被告は2022年6月1日、東京地裁(裁判長不明)で懲役16年+罰金750万円判決(求刑不明)。被告側控訴。2022年12月14日、東京高裁で判決。

 2021年12月6日、東京地裁の裁判員裁判で求刑無期懲役+罰金1,000万円に対し、懲役26年+罰金1,000万円判決。

氏 名
佐藤俊彦(41)
逮 捕
 2019年6月24日
殺害人数
 2名
罪 状
 殺人、銃刀法違反
事件概要
 名古屋市北区に住む無職、佐藤俊彦被告は2019年6月24日午後10時半ごろ、近所に住む会社員の男性(当時41)と、愛知県大府市に住む同僚の男性(当時44)と口論になり、同区の路上で二人の胸などをサバイバルナイフ(刃体約18.5cm)で複数回刺すなどして殺害した。そして男性が所持する現金712円のほか、指輪が入った財布(時価計約20,100円相当)を奪った。
 佐藤被告宅と男性が住むマンションは道路を挟んで向かい合わせにあり、男性は数年前から、車にいたずらされるなどの嫌がらせを受け、県警に相談していた。
 愛知県警は同日、佐藤被告を同僚男性への殺人容疑で逮捕。7月15日、近所に住む男性への強盗殺人容疑で再逮捕。
 名古屋地検はおよそ4カ月間の鑑定留置の結果、刑事責任を問えると判断。「強盗目的で殺害したと立証できる証拠が足りなかった」として近所に住む男性への強盗殺人容疑を殺人と窃盗容疑に切り替えた上で、2件の殺人罪で起訴した。窃盗罪については不起訴とした。
裁判所
 名古屋地裁 山田耕司裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年10月4日 懲役30年
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 裁判員裁判。
 2022年8月29日の初公判で、佐藤俊彦被告は何も話さず、代わりに弁護士が「間違いありません」と起訴内容はおおむね認めた上で、「統合失調症で判断能力が著しく欠け、心神喪失または耗弱の状態だった」として責任能力の有無や程度は争う意向を示し、無罪または刑の減軽を主張した。
 検察側は冒頭陳述で、被告が自宅に設置していた防犯カメラに向かって手を振った被害者らに対し、2階から水を浴びせたのが発端と指摘。殺害後は自宅で血の付いた着衣を着替えてナイフを洗い、現場に落としたメガネを同居の親族に取りに行かせたとし「うつ病と診断されたことはあったが、当時は了解可能な行動をとっており責任能力はあった」と主張した。
 一方弁護側は、被告は「下まで降りてこい」などと促されて出た路上で、被害者らに腕をつかまれ、背中を押された際に聞こえた「刺せ」との幻聴に突き動かされたと反論。2度の自殺未遂を経験し、複数の精神科病院に通院したと説明し、「(幻聴が聞こえる)統合失調症とは診断されていないが、責任能力はなく、あっても限定的」と訴え、無罪や減軽を求めた。
 20日に論告公判の予定であったが、台風14号の接近に伴い翌日に延期された。
 21日の論告公判で殺害された2人の妻などが意見陳述を行い、このうち赤松さんの妻は、「時間が止まっていて今も受け入れられません。夫の命、幸せだった家庭を返してほしい」などと話した。
 論告求刑で検察側は「精神障害の程度は重篤ではなく、犯行に与えた影響は著しいものではない」と指摘した上で、「被告は自宅の防犯カメラに手を振った被害者らに挑発されていると感じた。2人を殺害した結果は極めて重大。遺体には20カ所以上の刺し傷があり、強固な殺意に基づく執拗で残虐な犯行、動機も身勝手だ」とした。
 22日の最終弁論で弁護側は、精神障害のある佐藤被告が「誰かに拉致される」などと思い込み、五台の防犯カメラを見る生活を送っていたと説明。「統合失調症の精神疾患が佐藤被告の犯行に一定の影響を与えている」「自宅の防犯カメラに、面識のない被害者が手を振ったことが事件の発端になり、大声を出されたり、押されたりしたことで一時的に病態が深い水準に落ち込んだ。妄想に支配されていた」などと述べた上で、心神喪失か心神耗弱状態にあったとして無罪や減軽を主張した。
 判決で山田裁判長は、佐藤被告の総合失調症について、影響は大きくなかったと指摘。自宅に設置した防犯カメラに向け、被害者が手を振ったことに対する怒りが動機だったとし、「自分の意思で犯行に及んだと言える部分も相応に残っていた」と判断した。そして「殺傷能力の高いサバイバルナイフで急所を一方的に突き刺すなど非常に危険かつ残虐な犯行だ。被害者の無念さや苦しみの大きさは筆舌に尽くしがたく残された遺族の悲しみや喪失感の大きさも計り知れない」と指摘した。一方、「佐藤被告の家に設置された防犯カメラに手を振るなど、被害者らが犯行を誘発した面もある」「被告が幻聴を聞くなど統合失調症による影響を受けていたことを考慮」し、無期懲役を選択すべきとは言いがたいとした。
備 考
 被告側は控訴した。2023年2月28日、名古屋高裁で被告側控訴棄却。2023年8月24日、被告側上告棄却、確定。

氏 名
宮本浩志(57)
逮 捕
 2021年6月18日
殺害人数
 1名
罪 状
 殺人
事件概要
 兵庫県西宮市の会社員宮本浩志被告は2021年6月11日午後9時29分~57分の間、大阪市北区の雑居ビル5階に入るカラオケパブで、経営者の女性(当時25)の首や胸を刃物で何度も突き刺すなどして失血死させた。
 女性は家計を支えるため、高校時代から複数のアルバイトを重ね、2016年5月から2020年7月まで大阪市北区のカラオケバーで働いていた。宮本被告は2017年からこの店に通い始めた。2021年1月18日、女性は独立してカラオケパブを始めたが、宮本被告は事件が起きるまでのおよそ5か月の間、2日に1回のペースで83回も通い詰めていた。宮本被告は女性のLINEや電話でしつこく言い寄っていた。
 宮本被告は妻と2人の娘と暮らしており、大阪市内の機器メンテナンス関連会社でエンジニアとして勤務。同社によると、勤務態度は真面目で、パブに飲みにいっていたことなどは周囲に話していなかった。
 カラオケパブは12日、13日は営業日だったが、施錠されたままだった。14日午前10時半前、女性と連絡が取れないことを不審に思って店を訪ねた友人の女性が鍵を開けてもらい、パブ店内で血まみれで倒れているのが見つけた。
 大阪府警は女性の交友関係を調べた結果、店に出入りしていた宮本被告とのトラブルを確認した。パブの店内に設置されていた防犯カメラは事件後に取り外されてSDカードが持ち去られていたが、ビル入口の防犯カメラで宮本被告が閉店後に出る姿が記録されていたことを確認。18日、殺人容疑で逮捕した。
裁判所
 大阪地裁 大寄淳裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年10月20日 懲役20年
 判決文「裁判所ウェブサイト」内のPDFファイルが開きます。リンク先をクリックする前に、注意事項をご覧下さい)
裁判焦点
 裁判員裁判。宮本浩志被告は逮捕当初から犯行を否認している。
 2022年9月16日の初公判で、宮本浩志被告は「被害者家族の意思を汲み、迷わず死刑判決でお願いします」などと述べた後、犯行の関与については黙秘した。
 検察側は冒頭陳述で、ビルの防犯カメラには事件当夜、宮本被告が出入りする姿が映っていたほか、職場や自宅から押収したジャケットや靴、現場で見つかった結婚指輪からは、被害者の血液やDNA型が検出されたことから、宮本被告が犯人であると主張。いったん店を出たがビル内にとどまって再び店に戻り、「被害者が一人きりになったタイミングで襲った」とした。また、被害者に毎日LINEを送っていたとし「常連客として店に通う中、一方的に被害者に好意を抱き、満たされない思いから犯行に及んだ」と主張した。一方、宮本被告の妻が、「主人に暴力を振るわれたことはない。人を殺すようなことはしていないと思う」と供述した調書も読み上げられた。弁護側は「被告が犯人なのか、立証の手続きは正しいのかを見てほしい」と述べ、裁判員らに慎重な検討を求めた。
 9月27日の公判で、元従業員の女性が出廷。事件当日に宮本被告が店を訪れた様子について「2時間ぐらいで帰った。(接客中に)仲が良さそうに見えた」などと話した。
 10月5日の公判で、予定されていなかった被告人質問が弁護側の要望で行われた。裁判を通じて思ったことを問われた宮本被告は「検察が頼りない。証人尋問で同じような質問を何度もするなどしていて残念に感じた」などと検察側を批判。一方で、「私自身は初日に申したように、死刑にしてほしい気持ちに変わりはない」などと自分の主張を述べた。検察官や裁判員から「死刑を望む理由は何か」などと聞かれましたが、その他の質問には黙秘した。
 12日の論告求刑公判で、被害者の母と兄が意見陳述。母親は「どれほどの痛みと恐怖だったか。幸せな未来図を全てかき消され、無念と悔しさでいっぱいです。どうか重い実刑判決をお願いします」と訴えた。兄は妹との思い出を語った後、「罪と向き合って真人間になったら真優子の仏壇に線香を立てて、冥福を祈ってほしい」と訴えた。最後に椅子から立ち上がると、宮本被告に向かって約10秒間頭を下げ、「これ以上、傷つけないでほしい。妹を安らかに休ませてください」と訴えた。
 検察側は論告で、被告のビジネスシューズ、スーツなどに被害者の血液が付着していたほか、犯行に使用した粘着テープに被告の指紋が着いていたこと、店内に被告の結婚指輪が落ちていたこととそこから被害者の皮膚片が検出されたこと、店を出たのは午後9時過ぎだったのにビルを出た時刻が防犯カメラの映像から確認できたのが午後10時頃であり、他に不審人物はいなかったことから事件への関与は明らかだと指摘。「一方的に好意を抱いた被害者に対して連日金を使ったのに距離を置かれ、気持ちを鬱積させた」と主張した。そして被害者のスマートフォンをアルミホイルで包み、LINEなどを受信できないようにするなど、犯行は計画的であると指摘。「犯行は執拗かつ残忍で、強固な殺意と計画性があった」とした。
 弁護側は最終弁論で血痕の付着の経緯が不明確で、被告を犯人とする立証は不十分だと反論。防犯カメラには死角があるため、第三者が関与した可能性もあると主張。動機についても「2人の関係は良好だった」と否定。「検察側は被告が犯人だと十分に立証できていない」と述べ被告は無罪であるとし、「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の原則に従って、判断するよう求めた。
 宮本被告は最終意見陳述で、自らは被害者と仲が良かったと主張。被害者が語ったとされる家族のことについても触れ、(被害者の)兄を被害者は信用していないと語っていたと述べた。そして第三者の目線という形で検察側の立証方法を批判し、「証拠隠滅という言葉もなかなかいいものだなと。捜査して見つからなかったから証拠隠滅」「見つけられなかった捜査の不手際だ」などと語った。そして最後に「迷惑をかけないで済むので、判決は死刑を宣告してほしい」と50分近く持論を展開した。
 判決で大寄淳裁判長は犯行動機について、「好意や強い執着心がみてとれ、それが受け入れられなかったこと」と指摘、「被告の靴やジャケットから血痕が発見され、DNA鑑定によって被害者のものと特定された。犯行以外の機会に付着したとは考えられない」として宮本被告の犯行と断定した。そのうえで、「身勝手で無慈悲。犯行後の証拠隠滅行為も含めると相当計画的な犯行で強い非難に値する。被告人の供述からは反省を見出すことはできない」としたが、同種事件との公平性を踏まえ、有期懲役の最高刑が相当と述べ、懲役20年を言い渡した。
 最後に、裁判官は「あなたにとっては難しいと思いますが、遺族について考えてみてください。あなたにも家族がいるでしょう」と宮本被告に諭した。
備 考
 被告側は控訴した。2023年7月10日、大阪高裁で被告側控訴棄却。上告せず確定。

氏 名
元少年(26)
逮 捕
 2020年11月9日
殺害人数
 1名
罪 状
 強盗致死、窃盗、風営法違反、傷害、窃盗未遂、犯人隠避教唆、道交法違反、過失運転致傷
事件概要
 茨城県ひたちなか市の無職の元少年(事件当時19)は、水戸市の解体業、内田潤被告は共謀。2016年2月1日午前3時から同5時45分ごろまでの間、城里町の資材置き場で積まれていた銅線などを盗むためトラックに載せていた際、敷地内に住む銅線やアルミを扱う古物商の男性(当時77)に見つかったため、男性の頭や顔を殴り、首を両手で締め、顔や両手首に粘着テープを巻き付けるなどして死亡させ、銅線など約6トン(計108万円相当)を奪った。
 内田被告は当時1人で解体業を営んでおり、男性とは資材の売買といった取引を通じた面識があった。元少年は、内田被告の下で働いていたことがあった。
 1日朝、男性の妻が男性の遺体を発見した。
 県警は2020年10月、内田被告ら2人が男性殺害の数時間前に水戸市内の建設会社からコンテナ1台(約6万円相当)を盗んだとして窃盗容疑で逮捕。盗んだコンテナが男性殺害後の敷地内に残されていたことから、捜査本部は慎重に裏付けを進めた。
 捜査本部は11月9日、別の事件で服役中だった内田被告と、別の事件の傷害罪などで公判中だった元少年を強盗殺人の容疑で逮捕。水戸地検は2人を強盗致死罪で起訴した。同地検は罪名変更の理由を明らかにしていないが、殺意の認定が困難と判断したとみられる。元少年は逮捕時に成人だったため、20歳未満が対象の少年法ではなく、成人と同じ刑事訴訟法の手続きが適用されて裁判員裁判で審理される。
裁判所
 水戸地裁 小川賢司裁判長
求 刑
 無期懲役
判 決
 2022年12月14日 懲役27年
裁判焦点
 強盗致死と窃盗罪を除く八つの罪につき、水戸地裁は2022年3月、区分審理で有罪判決を言い渡した。

 裁判員裁判。
 2022年11月24日の初公判で、元少年被告は「全てやってないです」と述べ、起訴内容を全面的に否認した。
 冒頭陳述で検察側は、犯行が2人がかりでないと実行が困難であるなど、現場に内田被告とは別の足跡など、元少年が関わった証拠を示していく方針を明らかにした。弁護側は、元少年は事件当時、現場に行ったことは争わないとするものの、元少年は内田被告から犯行について相談を受けたこともなく、窃盗も含めて共謀の事実がないと主張した。客観証拠がなく、内田被告が元少年と強盗を実行したとの証言も信用性に欠けるとして、今後の審理について裁判官や裁判員に向け「元少年と内田被告の証言と食い違っている部分を慎重に検討してほしい」と述べた。
 29日の第2回公判で、内田潤被告が証人として出廷。尋問冒頭で検察側から事件の実行が単独か複数だったのか尋ねられると「言いたくありません」と証言を拒否、尋問が一時中断した。午前中の審理では、内田被告は証言を「(理由は)いろいろある」「検察が信用できないので無理」と拒み続け、検察側が、証言が自らの控訴審に関わる可能性があるからかと尋ねられると「はい」と答えた。小川裁判長は刑事訴訟法で証言拒否の罰則に加え、証言が内田被告の控訴審で不利益な証拠として使われることができないことなどを説明。午後からの尋問で内田被告は、当時、銅線を盗むために自身がパワーショベルで積み込み、元少年が見張りをしていたと説明。被害者に犯行を気付かれ、「やめろ」と言われた場面を振り返った。検察側は、内田被告の裁判での証言を元に、元少年が被害者に跳び蹴りし馬乗りになったか尋ねると、「はい」と応じた。
 30日の第3回公判で、被告人質問が行われた。弁護側の被告人質問で元少年は、内田被告と「言い分が180度違う」と述べた。現場で内田被告に「銅線積んでみろよ」と言われてパワーショベルに乗り、15~20メートルほど離れた場所に2人の人影があり、暴行の様子がうかがえたと証言した。現場を去る際には頭部や手に粘着テープを巻かれた人が倒れているのを見つけ、「頭が真っ白になった」と振り返った。「銅線の売り上げ108万円を折半した」という内田被告の証言も否定した。
 12月6日の論告で検察側は、内田被告の証言などから、強盗などの計画自体は内田被告が主導したものの、激しい暴行を加えたのは元少年だったと指摘。「今回の犯行は2人がかりでなければ実行が困難な計画的な犯行で、元少年は被害者が亡くなる原因となる激しい暴行を主体的かつ積極的に行った。被害者の死に対する責任は内田被告より重い」と非難した。
 同日の最終弁論で弁護側は、内田被告の証言について変遷しているため信用できず、うそをついている可能性があると主張。一連の犯行は内田被告だけでも実行可能で、元少年は無罪と訴えた。
 最終意見陳述で元少年は「殺していないのは絶対に断言できる」と、声を詰まらせながら話した。
 判決で小川裁判長は犯行の状況について、元少年と終始行動を共にしていた内田潤被告が、「元少年の協力を得ながら主導的な立場で敢行したと見るのが合理的かつ自然」と説明。暴行には一切関わっていないという元少年の主張は、「被害者の着衣に残された安全靴の足跡痕を合理的に説明できるものではない」と退けた。一方で、暴行に関する内田被告の証言は「自らの関与を過小に述べている疑いがある」として、元少年の積極的な暴行への関与を強調する検察側の主張は採用しなかった。そして「安易に犯行に関与したものと言わざるを得ず、当時19歳の少年だったことなどを併せて考慮しても、関与の経緯に格別酌むべきものはない」とした。
備 考
 内田潤被告は2022年2月16日、水戸地裁(小川賢司裁判長)の裁判員裁判で求刑無期懲役に対し、一審懲役30年判決。判決は、被害者の首を両手で絞め、顔などに粘着テープを巻き付けるなど、「死因となった暴行を加えたのは共犯者」と認定した。2023年8月30日、東京高裁で一審破棄、懲役28年判決。地裁判決後、遺族に1千万円を弁償した点などを考慮した。




※最高裁ですと本当は「判決」ではなくて「決定」がほとんどですが、纏める都合上、「判決」で統一しています。


【参考資料】
 新聞記事各種

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